事故を起こしたことがなくても、恐らく『示談』という言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。
けれど、実際にその『示談』の中身は、というとお金に関する話し合いをするのだろう、慰謝料や賠償金の話をするのだろう、と曖昧にしかご存じでない方も多いと思います。
もちろん、それは間違ってはいません。
示談というのは俗に言われている言葉で、法律的には『和解契約』と呼ばれるものです。
その、和解契約の内容というのはもちろん賠償金などのお金の話題を含みますが、示談の意味はそれだけに止まりません。
示談というものがもつ意味をしっかり理解しておくことで、十分な賠償を得たり、あなたにとって不利な状況を回避したりすることができます。
そして、それはあなたが一刻も早く平穏な日常に戻るために必要なことなのです。
いざ、交通事故に巻き込まれてしまった状態では、加害者だとしても、被害者だとしても、平静ではいられません。
その時に慌てて自分に不利な状況を招く前に、示談とは何か、被害者である場合と加害者である場合に分けて、押さえておくべきポイントをご説明します。
あなたが交通事故の被害者となってしまった場合には、何よりもまず、加害者となる相手方の身元を確認しておくことが大切です。
このときに確認に用いるものは、口頭でのメモなどよりも、名刺を交換したり、実際に免許証を見せてもらうなどの本当かどうか確認ができるようにするのが望ましいでしょう。
また、交通事故には警察への報告義務があるため、あなたが連絡先を交換する前に、相手方が警察相手に連絡先を告げているところを見たとしても安心は出来ません。
警察は事故の実況見分書を作成しますが、必ずしも加害者の連絡先を教えてくれるとは限らないからです。
そのため、被害者たるあなた自身が必ず相手方の連絡先、身元を確認しておく必要があります。
交通事故の被害者たるあなたが実際に示談交渉をしようと思ったときに、実はその交渉相手となるのは多くの場合相手方である加害者ではありません。
もちろん相手方であることに変わりは無いのですが、多くの場合は相手方の代理人である保険会社と交渉を行っていくことになるからです。
けれども、相手はプロ。
そして、あなたは突然交通事故という非日常に放り込まれた素人です。
書類一つ取ってみても見慣れない単語、難しい言葉が並び、どうしても気後れからか言われたとおりの金額で示談書に署名捺印をしてしまいがちです。
けれども、あなたは自分が納得していないのならば、署名捺印を拒んでもいいのです。
相手方の提示する賠償金額や慰謝料に納得がいかなかったり、相手方の誠意が感じられなかったり、あなたが署名捺印さえしなければ、示談は成立しません。
けれど相手方としては、早期に示談が成立することで交通事故の刑事責任の起訴を免れる可能性があるため、早期の示談を望む傾向にあります。
こうなったとき、あなた一人の力では自分の人権を守りきれないと思った時には、妥協せずに交通事故に強い弁護士等、専門家に相談することも視野に入れてみて下さい。
詳しく知りたい方は、「適切な示談金額を受け取るために 弁護士に相談する3つのメリットと選び方」を参照してください。
あなたが交通事故の加害者になってしまった場合、恐らく平静ではいられないことでしょう。
目の前が真っ暗になってしまったような絶望感を味わうかも知れません。
しかし、それはあなたの目の前にいる被害者も同じであり、あなた以上に身体的な怪我という痛みも伴っているかもしれません。
この場合あなたが一番にしなければいけないのは、この被害者に対して誠実に対応するということです。
もちろん、示談交渉において引け目を感じることで必要以上に相手方に譲歩する必要はありません。
過失割合等、自分の非を一方的に認めることも必要ないですが、被害者の救護措置を行う、正しく正確に連絡先を伝える等相手方に対して誠実な態度を取ることは、あなたの平穏な日常を取り戻すためにプラスに働きます。
もしも事故当初の対応が不誠実で相手方の気分を害してしまうことがあれば、裁判に至った際にあなたに不利に働いてしまう場合があります。
法律的に『和解契約』として書面に起こして署名捺印する前にも、実は『示談』というものは始まっています。
あなたが事故を起こした直後、被害者に対して何か口約束したとしてもそれは法律的には有効な和解契約となり得るのです。
事故の直後に冷静でいようとおもってもなかなか出来ることではありませんが、軽はずみな約束や、その場限りの場当たり的な言動は慎んだ方が賢明でしょう。
詳しく知りたい方は、「もし交通事故で加害者となった場合「やらなければいけないこと」」を参照してください。
結局の所、示談をするメリットはなんでしょうか。
一番の大きなメリットは、被害者にとっても、加害者にとっても、裁判を回避できるということです。
交通事故に限らないことですが、人と人とのもめ事が起きたとき、当人同士で解決することが出来ないときの最終手段は、裁判になります。
しかしその裁判には、あなたが思っている以上に、時間も、お金もかかるものです。
実際に民事訴訟となった場合、被害者として相手を訴えようと思えば、弁護士を雇って相手を提訴しなければいけません。
加害者となって提訴された場合にも、公判に出廷するために仕事を休んで何度も裁判所まで通わなければいけませんし、自分が通えない場合には同じように弁護士を雇う必要があります。
もし交通事故に合ったのが旅行先であったりすれば、管轄の裁判所が違えば毎回そこに出向かなければなりません。
また、一般的な場合には争うのは加害者の保険会社ではなく弁護士になるため、保険会社が代理人で示談交渉をする場合よりも交渉が難航する可能性もあります。
被害者、加害者双方にとって大きな負担になりかねない、裁判を回避できる、というのが示談をする一番のメリットになります。
けれどまた別の側面として、一端示談が成立してしまえば『和解した』と見なされてしまうといった側面もあります。
もしもあなたが交通事故の被害者となり、誠意のない加害者に厳罰を望むのであれば和解したと見なされるのは本意では無いでしょう。
そして最後に、被害者になった場合も、加害者になった場合も、絶対におすすめできないことがあります。
それは、相手方が性急に示談を求めて来た場合、それに応じてしまうことです。
事故直後、まだ平静ではない当事者同士で賠償金額を話し合ったとしても、どうあっても落ち着いた金額交渉や冷静な現場の分析はできません。
もし相手からいきなり賠償金額等が提示され、文書に署名を求められたとすればあなたも警戒するでしょう。
しかし、示談は交通事故の関係者が、事故の損害をどのような分担でどうやって賠償するのか、という話し合いのことです。
ということは、事故直後にお互いが納得したと思われるような口約束でも、示談が成立したとみられてしまう可能性があることに注意が必要です。
もちろん、最終的に裁判となった場合には、事故直後に交わした文書の有効性が認められることは少ないと言われています。
けれど、裁判になるかどうか、その交渉の段階では事故直後に交わした文書によってあなたにとって不利な状況に陥ることも充分に考えられます。
裁判は、前述の通りあなたの日常にとって多大な負担を強いることになります。
正しい知識で運用すればその裁判に至らないように出来るのが、『示談』というものなのです。
詳しく知りたい方は、「「示談」ってなに?交通事故発生から示談までの流れをチェックしよう」を参照してください。