東京弁護士会所属。
交通事故の程度によっては、入院が必要になったり、定期的な通院、精神的にも疾患を負ったり、PTSDとして現れることもあります。
こうした状況の中で、交渉ごとを被害者本人でまとめようとすることは非常に大変です。
弁護士に示談交渉を依頼することで、直接示談交渉をしたり、資料を準備したりする精神的負担が軽減できます。
つらい事故から一日でもはやく立ち直るためにも、示談交渉は弁護士に任せて、治療に専念してください。
「追突されたのは私の方なのに、妥当な慰謝料額がわからない」、「どう考えても相手が悪いのに、過失割合にも納得がいかない」などと思われている交通事故の被害者の方も多いのではないでしょうか。
では、このようなときはどうすればよいのでしょうか。
打開策が見つからないまま示談交渉を進めるべきではありません。
ただただ無駄な時間だけが過ぎ去っていってしまいます。
ですが、過失割合については粘り強く交渉していくことが大切です。
そのためには、正しい知識を備えておくことが不可欠です。
自分が納得しないまま合意書にサインをする前に、是非本記事をご一読ください。
交通事故の過失割合でお悩みの方のご参考になれば幸いです。
目次
交通事故の「過失割合」は、示談交渉の際に大きく影響を及ぼします。
影響は、慰謝料を含む損害賠償額全体にまで及んでしまいますので、注意が必要です。
事故の怪我で長期入院を強いられても、車の損傷が大きくても、「過失割合」によりすべての金額が大きく左右されてしまうのです。
ここで、例を挙げてみてみましょう。
例えば、事故の過失割合が8:2や9:1だとします。
もしも、保険会社から「あなたの過失割合は0にはなりません」といわれたとしても、納得がいかないのであれば安易に応じる必要はありません。
「事故状況」を正確に把握し粘り強く交渉を続けることで変更できるケースもあります。
まず、「過失割合」とは、各々の事故当事者が負担しなければならない損害賠償の金額に影響を及ぼします。
そこには、一度は聞いたことがある方も多いと思いますが、「過失相殺」という概念が存在します。
過失相殺とは、事故により発生した損害賠償額(入通院費用や車の修理代など)を過失割合に応じて分担するという制度です。
わかりやすくいうと、「自分(被害者)のもらえる損害賠償額が、過失の分だけ減額されてしまう」というわけです。
つまり、10:0の事故以外はすべて賠償額が減額されてしまい、被害者側にとって損をすることになるのでデメリットといえます。
前述のとおり、「過失割合に応じて」損害賠償額が減額される(過失相殺されてしまう)ことはおわかりいただけたかと思います。
過失割合が影響する損害額の項目は以下のとおりです。
例えば、過失割合が8:2の場合の過失相殺例をみてみましょう。
加害者 | 被害者 | |
---|---|---|
過失割合 | 8 | 2 |
損害額 | 200万円 | 800万円 |
請求できる金額 | 200万円×0.2=40万円 | 800万円×0.8=640万円 |
実際にもらえる金額 | 0円 | 600万円 |
この表のポイントは以下のとおりです。
そもそも過失割合は誰が決めているかご存知でしょうか?
警察が実況見分の際に決めていると思われる方も少なくありませんが、実はそうではありません。
警察は、過失割合の決定には一切関与しません。
事故当事者が加入している、双方の保険会社のみで決められています。
過失割合の決定方法は、過去の裁判例を元に類似した事故のケースから、妥当な過失割合を割り出します。
その上で、今回の事故の諸事情を考慮して修正をしながら決められていきます。
ですので、示談交渉の際に保険会社同士で、延々と過失割合についてやり取りをし、時間ばかりが経過してしまうこともあり、被害者としてはストレスのかかることとなります。
では、どのような事故が8:2の過失割合に該当するのでしょうか。
前提として、車などの「交通強者」は、自転車や歩行者などの「交通弱者」よりも注意義務が重く課されています。
一般的には、自動車>バイク>自転車>歩行者の順に注意義務が重く課されるため、自動車の過失には歩行者の過失よりも重く考慮されます。
被害者が交通弱者であれば、加害者の過失は重くなるのです。
以下に主な過失割合が8:2(加害者:被害者)の例をケースごとに挙げてみます。
8:2 | |
---|---|
自動車:自動車 | 交差点での直進車同士の出会い頭の事故
|
交差点での右折車両:直進車両の事故 | |
道路外から道路に進入するため右折した車両:道路を直進してきた車両 | |
自動車:バイク | 交差点手前30m地点で左折の合図を出して左折した車両:直進していた後続バイク |
自動車:自転車 | 黄色信号で右折しようと交差点に進入してきた車両:黄色信号で交差点に直進進入した(対向車)自転車 |
自動車:歩行者 | 赤信号で横断歩道を歩行中の歩行者に、自動車が赤信号で進入し接触 |
歩行者が青信号で横断中に信号が黄色から赤信号に変更し、対面青信号で直進した自動車と接触 | |
右折自動車と歩行者の接触 | |
自転車:歩行者 | 青信号で横断を開始した歩行者が、途中から黄色、赤信号に変更し、青信号で進行してきた自転車に衝突 |
過失割合については、両者の主張が食い違ってしまった場合に問題となります。
いわゆる「片側賠償」について、以下の例をもとに解説していきます。
例:青信号で直進したB自動車に、赤信号を直進してきたA自動車が衝突
Bの言い分が正しいのですが、Aの保険会社が譲りません。
そこでBは、過失割合を9:0(A:B)とする、新たな提案をします。
これでは、100%にはなりませんが、いったいどういうことなのでしょうか。
結論からいえば、「損害賠償を放棄してもらう」ということです。
自分(B)にも10%の過失があることを認める代わりに、Aが有するBに対しての損害賠償請求権を放棄してもらいます。
BはAに対し、90%相当額の賠償金を請求します。
しかし、AはBに対し、損害賠償請求権を放棄しているので何も請求しません。
このことを「片側賠償」といいます。
片側賠償は一見すると手っ取り早く解決できそうな方法ですが、メリット・デメリットがそれぞれあります。
片側賠償のメリット・デメリットについてみていきたいと思います。
メリット |
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デメリット |
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示談が決裂してしまえば、訴訟へと移行しなくてはなりません。
訴訟は、時間もコストもかかり、煩雑な手続きを要します。
多くの方は、できれば訴訟はしたくないと思われるのではないでしょうか。
片側賠償とすることで、被害者側は自らの保険を使う必要がないので、等級を落とさず、保険料の増額も発生しません。
10:0の事故で、被害者に過失がなければ、自らの保険会社が、被害者に代わって相手方と示談交渉を行うことはできません。
これは、弁護士法72条に抵触してしまう危険があるためです。
「非弁行為」つまり弁護士資格のない者が、他人に代わり法的な紛争に介入し代理行為を行うことを禁止しています。
一方で、デメリットとしては受け取れるはずだった賠償額が少なくなることが挙げられます。
ですが、訴訟を行う時間やコスト、自ら訴訟を進めていかなくてはならない労力などを考えると、個々のケースにもよりますが、賠償額の減少よりもメリットの方が大きいといえるのではないでしょうか。
プロの保険会社と示談交渉自ら行うことは簡単ではありません。
強気な担当者におされたら、のみたくない条件でものまなければいけないような雰囲気になってしまうこともあります。
ですが、そこで簡単に諦めてはいけません。
「自分は本当にこの過失割合で納得しているのか?」ということを、少し時間をおいて考えてみてください。
自分の過失割合に納得がいかないのであれば、納得するまで交渉するべきです。
お怪我を負われたのですから、しっかりと適正な金額で賠償してもらいましょう。
どうしても自分一人では立ちいかなくなってしまったら、交通事故案件の経験豊富な弁護士に相談されてみてはいかがでしょうか。
弁護士独自の算定基準を用いることにより、慰謝料額が今よりも2倍近く増額することが期待できます。
過失割合についての妥当性も判断してもらえるでしょう。
何か、解決策が見つかるかもしれません。
今回は、過失割合の周辺知識について解説してきました。
保険会社から送られてくる書類は量も多く、小難しくて、電話口などでもよくわからないことを強気でいわれてしまうことが少なくありません。
嘘をいってこないまでも、被害者である自分にとってはとても不利に聞こえます。
ただでさえ、お怪我を負われて大変な思いをしているのですから、できるだけスピーディーに解決したいと思われるのも当然のことです。
適正な過失割合と、過失相殺について正しい知識を備えておくことで、交渉で自らの主張をする際に役立つことがあるでしょう。
片側賠償の知識は、知っている人は少ないと思いますので、これらの有益な知識を武器に今後の交渉にお役立てください。