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私的整理とは?企業再生における法的整理との違いやメリット・デメリットを解説

弁護士 水流恭平

この記事の執筆者 弁護士 水流恭平

東京弁護士会所属。
破産をお考えの方にとって、弁護士は、適切な手続きをするための強い味方になります。
特に、周りに相談できず悩まれていたり、負債がかさんでしまいそうで破産を考えていたりする方は、ぜひ検討してみてください。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/tsuru/

私的整理とは?企業再生における法的整理との違いやメリット・デメリットを解説

この記事でわかること

  • 私的整理とは何かわかる
  • 私的整理の種類がわかる
  • 私的整理の手続きがわかる
  • 私的整理のメリット・デメリットがわかる

会社を整理する方法には、破産手続きを経て会社を清算するものと、会社を立て直して再建を目指すものとがあります。

このうち会社の再建を目指す方法には、大きく分けて私的整理と法的整理と呼ばれる2種類の手続きがあります。

ここでは、私的整理とはどのようなものか、そしてその手続きの方法について解説します。

法的整理に比べてその実態が分かりにくいため、その中身について確認しておきましょう。

企業の私的整理とは?

私的整理とは、裁判所が関与せずに債権者と債務者の話し合いで債権の処理をする手続きのことをいいます。

会社を整理する方法の1つで、対象債権者となるのは一般的に金融機関のみです。

そもそも会社を整理する方法には、破産などのように会社を清算する方法と、民事再生などのように会社の再建を目指す方法とに分かれます。

私的整理は、民事再生などと同じく会社の再建を目指すものです。

私的整理と法的整理の違い

会社の再建を目指す方法でも、私的整理と法的整理(民事再生)には下記のような違いがあります。

項目私的整理民事再生
費用原則かからない200〜1,300万円
対象債権者金融機関のみを対象すべての債権者が対象
秘密性金融機関以外には知られにくい債権者だけでなく、取引先に知られる可能性がある
事業への影響公に知られる可能性が低いため、事業への影響も少ない公に知られる可能性が高く、事業への影響も大きい
手続きの透明性について債権者との合意が取れればいいため、不透明になってしまう場合もある裁判所の監視下で進むため、手続きの透明性は保たれる
計画成立要件全員の合意が必要になる多数決で成立できる
権利変更の内容返済の期間設定から、債権カットまで柔軟に設計できる厳格なルールがある(債権の返済は最長10年)
債権者の回収額民事再生を超える回収ができる可能性が高い多額の回収は困難なケースが多い
成立までの必要期間3ヶ月〜数年6ヶ月程度

法的整理は、すべての手続きが裁判所において行われます

すべての債権者を対象とし、その事実が広く公表されるという特徴があります。

そのため、直接的に関わっていない人でも、その事実を知ることができます。

これに対して私的整理は、裁判所での手続きではありません。

債権者と債務者が直接交渉を行い、債権金額の減額や返済条件の変更を決定します。

交渉に参加していなければ、債権の減免などの影響を受けることはありません。

私的整理の種類

私的整理は法的整理とは異なるため、その手続きや進め方に決まった形はありません。

再建を目指す会社と債権者との間で合意ができれば私的整理は成立します。

ただ、実際には私的整理にもいくつかのスキームがあり、そのスキームにしたがって進めていくこととなります。

私的整理のスキームには、以下のようなものがあります。

私的整理のスキーム

  • ・私的整理ガイドライン
    金融機関や産業界が中心になって定められた私的整理の規定です。
  • ・中小企業再生支援協議会
    各都道府県に設置され、第三者の立場からアドバイスを行います。
  • ・特定調停スキーム
    小規模な企業の再生にあたって、個人の債務整理の方法が利用されることがあります。

私的整理の手続きの流れ

私的整理には、決まった流れはありません。

再建を図る会社(債務者)と、その会社に対する債権を有する債権者との間で話し合いを行うことが手続きのすべてであり、法的整理のように具体的な手続きの流れは定められていないのです。

債権者とは主に「債務の減免」と「支払い条件の見直し」について話し合います。

債務を減免してもらえれば返済総額を減らせるため、経営再建を目指す会社にとっては大きなメリットがあります。

また、支払い条件を見直してもらうことで返済方法の変更や返済期限の延長を受けられるため、経営再建のために資金を投入できるようになるのです。

そのためにもまずは、会社の再生計画を作成し、債権者の同意を得なければなりません。

債権者の中に反対する人がいると私的整理は進められないため、債権者に納得してもらえる再生計画を作成することが、私的整理の成否を左右します。

また、債権者との話し合いだけでは進展が望めない場合には、弁護士などの専門家の協力を得て進めることも検討しましょう。

私的整理を行うメリット

私的整理は、民事再生などの法的整理とは異なる手続きであることから、民事再生にはないメリットがあります。

ここでは、そのメリットについて確認しておきましょう。

私的整理を行うメリット

  • ・会社整理を行っていることを知られない
    私的整理は当事者しかその事実を知らず、公表されることもないため、他の人に知られることはありません。
  • ・再生までのスピードが速い
    法的整理の場合は、定められた手続きを順番に行う必要があり、結論が出るまで時間を要します。
    しかし私的整理は決まったスケジュールはなく、交渉しだいで早急に結論を出すこともできます。
  • ・費用を抑えられる
    法的整理の場合は、予納金として裁判所に納付すべき金額が定められており、数百万円になることも珍しくありません。
    しかし私的整理の場合、予納金は発生しません。
    そのため、再生までにかかる費用負担を軽減することができます。

私的整理を行うデメリット

私的整理には、メリットだけでなくデメリットもあります。

私的整理を行うデメリット

  • ・債権者が同意してくれないことがある
    私的整理は、債権者と債務者との直接交渉によって成立します。
    債務者は経営不振に至った事情を説明し、これからの再建案を提示することとなります。
    しかし、債権者は自身の判断で私的整理に応じるか決定することができるため、交渉がうまくいかないこともあります。
  • ・債権者が担保権を行使する
    私的整理の場合、債権者の多くは金融機関となります。
    金融機関は債務者に対して担保権を有しており、返済が滞った場合にはその担保権を行使することが考えられます。
    担保権を行使すれば、私的整理の交渉は実質的にそこで終了してしまいます。

まとめ

私的整理には、メリットもデメリットもあります。

債権者と合意できれば、その後の会社再建までの時間も短くなるなど大きな効果があると考えられます。

しかしその一方で、会社の提示した再生計画や債務の返済計画について、債権者の同意を得るためには高いハードルがあります。

私的整理は法的整理に比べて費用面や時間面でのメリットがありますが、その点だけに注目して私的整理を進めてもうまくいきません。

私的整理にするか法的整理にするか、私的整理ならどの方法を選ぶのか、多くの選択肢があるため、会社の再生に最適な方法を選びましょう。

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