東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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Contents
社長が破産をすることで、社長個人の持ち家や預金以外でも家族に影響を及ぼすことがあります。
破産は借金をリセットできる反面、家族が間接的な影響を受けることは避けて通れません。
実生活で、「家族に迷惑をかけてしまう」「子供の人生に支障はないのか」など、家族に及ぼす影響に不安を覚えることもあると思います。
家族への影響があることとないことについて、くわしく見ていきましょう。
自己破産で家族への影響が大きいのは、財産を失うことで日常的に不自由になることでしょう。
身の回りにある財産がなくなることで、これからの生活にどんな影響があるのでしょうか。
社長個人の資産として持ち家を保有していた場合、賃貸物件に引っ越しすることになります。
今まで住んでいた家は差し押さえられ、競売により売却処分されます。
近くで最適な物件が見つかればいいのですが、場所によっては通勤・通学がしにくくなり転職・転校を伴う場合もあるかもしれません。
住む家が変わるのは、最も大きな生活環境の変化と言えるでしょう。
車がなくなると、バスや電車など車以外の交通手段が不可欠です。
原則として、ローン残があり査定額が20万円以上の場合は、換金処分するために没収されてしまいます。
マイカー通勤していた場合、通勤が困難になることで転職を余儀なくされるケースもあります。
また、子供の学校や習い事への送迎、介護者がいる場合は通院にも不便になるなど、家族に迷惑がかかることも考えられます。
なお、ローン残がなく査定額が20万円以下の場合は、マイカーを維持できることもあります。
子供の将来に向けて契約した、預金・学資保険なども換金処分が原則となります。
定期預金と解約返戻金が20万円を上回る場合は、財産として扱われ差し押さえ対象になるからです。
たとえば、子供が契約者であったとしても、親であるあなたの収入から支払われるのが実情でしょう。
最高裁でも、預金の名義人ではなく、お金を出した人を預金者とする確定判例があります。
親が破産をすると、名義が違っても形を変えた親の資産とみなされます。
契約したカードに家族カードがある場合、全てのカードが解約となります。
あなたがカードを利用できなくなった時点で、家族カードも自動的に契約解除されます。
ただし、妻や子供が契約主であるカードは、問題なく使うことができるでしょう。
家族がカードを作る時に、ブラックリストに載る家族と同居していると審査に落ちることがあります。
審査をする際には、信用情報機関へ借り入れ状況の照会が行われます。
そこで、あなたと同じ住所であることが判明すると、家族を隠れ蓑にした借り入れと疑念を持たれることがあります。
もし、子供が一人暮らしをしていた場合は、親の事故履歴とは関連がないため審査に影響を与えることはありません。
あなたの家族が保証人の場合、家族に借金の支払いが及ぶことになるため、家族に迷惑がかかります。
保証人になるということは、契約者が支払えない場合は代わりに支払うという重大な契約です。
破産手続きで免責を得ると借金はなくなりますが、家族である保証人に支払い義務は残ってしまいます。
とは言え、生計をともにしている家庭であれば、同様に財産がないのは明白でしょう。
保証人がある借金は、保証人も債務整理をすることが前提です。
社長が破産をしても、家族に影響しないこともあります。
たとえ家族と言えども、手続きの影響は原則的に社長個人となるからです。
「親が破産をすると子供の人生に悪い影響が出るのではないか」と、子供の将来を案じることもあるでしょう。
では、家族の生活に影響がないこととは、どのようなことでしょうか。
自己破産しても、妻や子供の就職・転職に影響はありません。
戸籍や住民票など個人的な書面に載ることはなく、あなたの情報しかブラックリストに登録されないからです。
たとえば、子供の就職が決まっているけど破産を知られて取り消しになる、ということはありません。
つまり、同居家族に破産者がいても、家族の就職・職業選択に影響することはありません。
自己破産しても、子供の結婚に影響はありません。
「親が破産をしたら、子供の結婚が破談になるのではないか」と不安になることもあると思います。
実のところ、戸籍等に載ることはなく、家族が相手方に破産したことを話さなければ知られることはありません。
個人的な書面で知られることはなく影響が出ることはありませんので、ご安心ください。
とは言え、現実的には子供の婚姻費用を負担できなくなるなど、親として金銭的な援助をできないケースがあることは避けて通れないでしょう。
妻や子供名義の財産に、影響が及ぶことはないでしょう。
家族の財産は、個人的な財産であり差し押さえの対象にはならないためです。
ただし、実質はあなたの財産と疑われるケースでは、処分の対象となる場合はあります。
原則として、家族名義の預金・車のローンなどの財産が処分されることはありません。
同居家族に、破産の手続きを内緒で行うことは難しいでしょう。
というのも、持ち家から引っ越ししたり車がなくなったり、日常生活に必要なものを失うからです。
ただし、別居の親族にはばれないですむこともあります。
ここでは、家族に知られるケース・知られないケースについて解説します。
一緒に暮らしていない家族(両親・兄弟など)に、破産したことを気づかれる可能性は少ないでしょう。
弁護士や裁判所からは、あなたにしか連絡が入らないからです。
一緒に住んでいないと、裁判所や弁護士からの郵便物などを目にすることはありません。
ただし、持ち家なのに賃貸に引っ越したり、車がなくなるという日常の変化で勘付かれる可能性はあるでしょう。
一方、別居の家族が保証人のときは、内緒で破産手続きを行うのは無理な話です。
保証人に黙って破産をすると、債権は保証人へ移行するので保証人に取り立てがはじまってしまいます。
最悪の事態にならないよう、保証人に迷惑がかからない形で債務整理をする方法もありますので、黙って破産手続きをするのはやめましょう。
同居の家族に秘密で進めることは難しく、いずればれることは間違いありません。
なぜなら、破産をするには配偶者の収入証明が必要となるからです。
収入証明を出してもらう時に理由を尋ねられるでしょうから、黙って手続きを行うのは困難でしょう。
家族が保証人になっている場合も、破産を決める前に話し合いをすることが鉄則です。
また、同居家族の場合、生活環境の大きな変化に巻き込まれるので、破産を知られてしまうでしょう。
破産した記録は、戸籍や住民票に載ることはありません。
例外として、破産時に免責許可が出なかったときは、市区町村のデータベースである破産者名簿に載ることがあります。
とは言え、誰もが簡単に閲覧できる書面に記載されることはありません。
つまり、戸籍などの個人的な書面に載ることはなく一般の人に知られる可能性はないので、ご安心ください。
「破産をするには離婚が必要?」「離婚後に破産手続きをすると家族に財産を残せそう」「離婚は破産の前か後どちらがいい?」など、離婚と破産について疑問が湧くこともあるでしょう。
実は、破産をすることは離婚の正当な理由にはならず、離婚をする必要はありません。
ただし、もともと離婚を考えていた場合、実行に移すタイミングを考える必要があります。
破産と家族の形態について簡単に解説していきます。
離婚後に破産手続きをする場合は、注意が必要です。
時期や財産の額によりますが、財産隠しを疑われると裁判所への心証が悪くなるからです。
財産分与後に離婚し破産手続きをした場合、家族に財産を残せる可能性があります。
しかし、裁判所に「財産隠しのための偽装離婚」と疑念を持たれると、最大の目的である免責許可に影響を与えることもあるので慎重に判断しましょう。
破産とは関係なくもともと離婚を決めていた場合も、破産手続き後にする方がいいでしょう。
前述の通り、破産前の離婚は財産隠しを疑われることがあります。
裁判所から疑念を持たれないように、破産手続きを終えてから離婚をするのが鉄則です。
破産前後に離婚を考えている場合は、弁護士に相談をして適切なタイミングで行うことが大切です。
離婚する時期を誤り、財産隠しが疑われて免責がおりなくなるのは一大事です。
また、妻が保証人の場合は、妻の債務整理も考えなくてはなりません。
時期の問題だけではなく、破産と離婚という2つの法律手続きには、お金に関する決め事(慰謝料・養育費など)も発生します。
これらの手続きを円滑に進めるためにも、弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします。
自己破産以外にも、借金を解決できる「任意整理」と「個人再生」という手続き方法があります。
たとえば、「家族が保証人だけど迷惑をかけたくない」「自己破産は家や車がなくなってしまうのが辛い」という方に、最適な手段と言えるでしょう。
任意整理と個人再生について簡単に解説していきます。
任意整理自己破産より「任意整理」がすすめられるケース
家族が保証人の場合は、任意整理で解決をするのがいいでしょう。
なぜなら、家族を保証人にしている借金を任意整理から外すことができるからです。
家族が保証人の場合、あなたが破産をすると返済義務が家族に移ってしまうため、家族に迷惑をかけてしまいます。
それを回避するために、保証人付きの借金はそのまま支払うことを選択し、それ以外の借金を任意整理しましょう。
つまり、全ての借金はなくせませんが、支払いをしない借金を自由に選択することができます。
ただし、大幅な減額は難しく、利息のみが減額となるケースが多いでしょう。
自己破産とは異なり借金の残高は残ってしまいますが、保証人に迷惑をかけることなく支払いの負担を軽減できます。
個人再生自己破産より「個人再生」がすすめられるケース
「家族と暮らす家を手放したくない」という方は、個人再生で解決するのがいいでしょう。
個人再生なら、家に住みつつ借金を減らすことができます。
減額された借金を3年以内に支払うことで、残りの借金は支払わなくてすむのです。
そのうえ、ローン残のない車を保有している場合は手元に残しておけるので、一見借金の整理をしたようには見えないのが利点でしょう。
なお、個人再生には上限があり、最大で5分の1まで減額が可能です。
破産の手続きと共通していることもあり、受任通知が郵送されると債権者の取り立てがなくなります。
しかし、官報にも記載されるので借り入れやローンを組むことはできなくなります。
自己破産で家族の連帯保証人になっている場合、影響が及ぶことがあります。
破産をすると、連帯保証人を解除され、新たに別の人を立てるよう要求されることがあるからです。
たとえば、「ペアローンを組んでいる」「子供の奨学金の連帯保証人になっている」場合はどうなるのでしょうか。
こちらでは、家族の連帯保証人なっているケースについて解説します。
あなたが破産をすると、連帯保証人である妻に支払いが及びます。
ペアローンの特性上、お互いに連帯保証人となっているからです。
1つの住居を2つの契約で支払うペアローンは、どちらか一方が支払えなくなるとマイホームは競売にかけられてしまうでしょう。
もし、妻の方に支払う能力がある場合は、肩代わりをしてもらうことで家を手放さなくてもよくなります。
子供の賃貸契約で連帯保証人になっている場合、契約に影響することがあります。
賃貸の保証人は、別居の親族である父が連帯保証人となることが多いでしょう。
破産手続きをすると、貸主から別の連帯保証人を要求されることがあります。
賃貸契約そのものは、子供が契約者で支払い義務もあるので解約されることはありません。
子供の奨学金で連帯保証人になっている場合も、契約に影響はあるでしょう。
貸主から別の連帯保証人を要求された場合、代わりの連帯保証人を立てるか、機関保障(毎月保障額を支払う)を選ぶ必要があります。
奨学金を借りる際の連帯保証人は父母のいずれか、保証人は親族がなるのが前提です。
なお、奨学金は子供の契約であり支払い義務は子供にあるため、契約上の問題はありません。
破産手続きをする前には、財産隠し・処分・虚偽などの行為は絶対に行ってはいけません。
家族に迷惑をかけないために行ったことでも、深刻な結果を招くことがあります。
たとえば、以下に該当する行為は、免責不許可事由にあたるため免責を得ることができなくなります。
また、免責後に発覚した場合は、より深刻な詐欺破産罪という罪に問われて免責を剥奪されるケースもあります。
家族への迷惑になるため、してはいけないことを確認しておきましょう。
破産手続きを控えているのに、あなたの名義から家族に名義変更することはやめましょう。
家族のものは差し押さえの対象とならないことを逆手にとった、悪質な行為とみなされます。
たとえば、家や車などの財産を妻名義に変えることを指します。
もし家族名義になっていても、実態はどうかで判断されますので処分の対象となるでしょう。
一度も返済をしていない借金がある場合、返す意思はないとみなされ詐欺罪に該当するおそれがあります。
破産を考えるほど支払いに困窮しているのに、新たに借金をしても返せるはずがないからです。
たとえば、破産手続き中に知人から借金をすること、今まで使っていなかったカードを使うなどしてはいけません。
意図的に借金を増やす行為は、免責不許可事由にあたるので絶対にやめましょう。
破産手続きをするときに、嘘を書いたり財産を処分したり、隠したりするのはやめましょう。
ありのままを正直に申告しない場合、免責不許可事由にあたります。
たとえば、報告していない借金がある、残高がある口座を隠すなどの隠蔽行為は行ってはいけません。
所有している車を売却する他、解約返戻金のある保険を隠して申告しないなどの行為も言語道断です。
破産時には、借金の額や利害関係を問わず、洗いざらい申告することが重要です。
破産手続き後は、家族や友人であろうとも特定の人に返済を行ってはいけません。
破産をするには、債権者平等の原則により平等に手続きを行うという決まりがあります。
「お世話になった人だから少しでも返したい」など、手続きを進めている最中に支払いをすることは禁止です。
一部の債権者だけに支払いをすると、偏った返済と判断され免責の許可を得ることができなくなるのでやめましょう。
所有している財産に対して、意図的に価値を下げる行為をしてはいけません。
売却価値を落とす行為は悪意があるとみなされ、免責許可の妨げになるでしょう。
たとえば、処分の対象となる車や絵画などの財産を意図的に傷つけることを指します。
財産処分となることが決定しているものは、大切に保管することが重要です。
自己破産をしようと思っても、「手続き方法や費用がわからない」「弁護士に依頼したらどれぐらいかかるのか」など、慣れない法律手続きに頭を悩ませることもあると思います。
こちらでは、手続きの流れと費用、弁護士に依頼した方がいい理由について解説します。
破産をするには、お住まいの裁判所に申し立てを行い免責許可を得るまでの流れがあります。
準備から免責の許可まで、以下の内容で進みます。
自己破産の手続きの流れ
破産手続きにかかる費用は、最低でも500,000円程度です。
内訳は、裁判所に支払う費用と弁護士に支払う費用の2つがあります。
破産するほどお金がない状況で費用を捻出するのは難しいでしょう。
そこで、お金がない人でも利用できる法テラスを介して弁護士に依頼するのがおすすめです。
法テラスは、もともと経済的な理由で弁護士に頼めない人が利用するためにできた機関です。
一般的な弁護士事務所と比較して、おおよそ1/3程度の費用で利用できます。
さらに、法テラスを介した依頼なら毎月5,000円から分割払いにも対応してもらえます。
以下は、一般的な弁護士事務所と、法テラスを利用したケースについてまとめてみました。
どちらで依頼する場合でもメリット・デメリットがあるので、状況に応じて依頼をしましょう。
項目 | 手続きの方法 | 一般の弁護士事務所に依頼 | 法テラスを介して依頼 |
---|---|---|---|
手数料(印紙・切手代) | 5,000~10,000円程度 | 実費23,000円 着手金132,000円 合計155,000円 ※債権者が1~10社までの場合 | |
予納金 | 同時廃止 | 300,000円 | |
一般管財 | 500,000円 | ||
通常管財 | 700,000円 | ||
弁護士費用 | 200,000~400,000円程度 | ||
メリット | 契約後すぐに受任通知が発送されるので、督促が止まる | ・3回まで無料相談(同一案件) ・5,000円からの分割払いができる | |
デメリット | ・法テラスよりも費用がかかる (※同時廃止で500,000円~) ・分割でも支払えるが、月額数万円からのケースが多い | ・利用するには収入と資産が一定の金額であること ・審査完了後に着手の場合、審査期間中に督促があるケースも |
破産手続きは自力でもできますが、弁護士に依頼した方がいいでしょう。
なぜなら、借金を帳消しにできる免責を得ることができないと、破産手続きの意味はないからです。
破産手続きには、同時廃止と管財事件という2つの手続き方法があります。
同時廃止であれば費用も安くてすむのですが、マイホームや車など財産がある場合は、管財事件になるケースが多いです。
管財事件の場合は、弁護士が代理人になることで一般管財という費用が安い手続き方法を利用できます。
破産をするには、借金が帳消しになる免責を得られなければ、何もメリットはありません。
法律のプロである弁護士に依頼して確実に免責を得ることが大切です。
自己破産が家族に及ぼす影響について、まとめてみました。
家族に迷惑をかけることになる事柄をしっかり認識した上で、手続きをすることが大事です。
自己破産は、深刻な借金の悩みを解決できる手段の1つです。
まるごと借金をなくすのか、保証人がいるから任意整理するのか、マイホームを残すのか、借金の整理方法には種類がありますので、状況に合わせて選択しましょう。