東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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収入を超える借金を背負っているとき、返済の義務から逃れる方法の一つとして自己破産があります。
しかし、自己破産したからと言って全ての支払いが免除される訳ではありません。
自己破産しても支払わなければならないものの一つに「養育費」があります。
昨今、さまざまな事情で離婚をする方が増えていますが、離婚後も子どもを扶養する義務は残ります。
たとえば母親が親権者となる場合、父親には一定の額の養育費を支払う義務が生じます。
しかし、自己破産をするほど経済的に追い込まれているのであれば、今後の養育費の支払いが難しいこともあるでしょう。
ここでは、自己破産時の養育費の取り扱いや養育費の支払いが難しい場合の対処法を解説します。
Contents
自分の収入や財産では支払うことのできない借金を負ってしまった場合、「自己破産」という選択肢を取ることができます。
自己破産をすると、ほとんどの債務から逃れられますが、一定の事項は「非免責債権」となり、支払い義務が残ります。
養育費は非免責債権に該当するため、自己破産をしても支払いは免除されません。
話し合いや調停で事前に取り決めた通りに養育費が支払われない場合、強制執行によって財産が差し押さえられることもあります。
ここでは、養育費の定義や自己破産の仕組み、非免責債権とは何かについて詳しく解説します。
そもそも養育費とは、未成熟子が経済的・社会的に自立するまでの間に要する子の生活費用のことをいいます。
子どもを扶養する義務は両親に課せられ、離婚したとしてもその義務は残ります。
養育費には食費、住居費(家賃)・水道光熱費・衣服類の購入費・教育費用(授業料など)が含まれています。
具体的な額は、当事者同士で話し合って決める方法の他、調停や審判・訴訟において決める方法があります。
基本的に養育費の支払い義務は拒否できません。
養育費の支払の終期については、話し合いや調停において20歳までとすることが多く、子どもが大学進学を予定している場合には、大学を卒業する22歳の3月までとするケースもあります。
民法改正によって18歳から成人となりましたが、従来通り20歳までもしくは大学卒業までとするのが一般的です。
自己破産とは、現在の収入や財産では債務の返済ができなくなった個人の申立てにより開始される破産手続のことです。
自己破産が認められると、最低限度の財産以外は全て換価され、債権者に分配されます。
この時、配当を得られなかった債権がいつまでも残ってしまうと、自己破産をしても生活を立て直すことが難しくなります。
そこで、裁判所は免責の審査をします。
基本的には自己破産の申立てと同時に、免責の申立ても行います。
裁判所から免責許可を得られると、自己破産をした人は債務を支払う責任から免れる(免責)ことができます。
ただし、全ての債務が免責される訳ではありません。
一部、免除できない支払い(非免責債権)もあります。
非免責債権とは、自己破産をしても免責されない債権のことです。
破産法では、自己破産手続き後も残り続ける債務を規定しています。
その一つが「養育費」です。
破産法253条1項では「子の監護に関する義務」は免責されないと定めています。
こうした家族間の義務が自己破産によって免責されてしまうと、子どもなどの弱者を守れなくなるためです。
非免責債権には、他に次のようなものが挙げられます。
自己破産をしても、養育費の支払い義務は免責されません。
しかし、自己破産をするほど経済的に困難な状況に追い込まれている場合、養育費の支払いを続けるのは容易ではないでしょう。
養育費の支払いが難しい場合の対処法としては、減額の請求が挙げられます。
養育費の減額をしたい場合、以下の2つの方法を検討しましょう。
基本的にはまず、当事者(元配偶者)同士の話し合いを経て、それでも交渉がまとまらない場合に養育費減額調停の申立てを行うという流れになります。
それでは、対処の流れについて詳しく解説していきます。
月々に支払う養育費の額は離婚時の話し合いや調停で決定します。
ただし、自己破産など経済的に困窮している事情がある場合、養育費の減額を求めることが可能です。
減額の交渉は当事者同士で行います。
元配偶者の同意が得られれば、養育費の減額ができます。
減額で合意を得られなければ、分割払いを持ちかけるという方法もあります。
分割払いであれば支払う総額自体は減らないので、合意が得られる可能性が高まるでしょう。
ただし、あくまでも交渉によって成立するものなので、確実に養育費を減額できる訳ではありません。
人によっては自己破産により債務が免責されることで、かえって経済的に余裕が出ることもあります。
この場合、養育費の減額は難しいでしょう。
当事者同士の話し合いで合意に至らない場合、家庭裁判所に養育費減額調停を申し立てます。
離婚後の生活が変化して離婚時に定めた養育費の支払いが難しくなった場合、減額を認められる可能性があります。
養育費減額調停は、相手方の住所を管轄している家庭裁判所に申し立てます。
調停委員が当事者の間に立ち、養育費の減額について話し合いを行うことになります。
このとき弁護士にサポートしてもらうことで、必要書類をスムーズに準備できるうえ、あらかじめ減額の程度の見通しを立てて養育費の支払い計画も立てられます。
判断に迷う場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
自己破産の手続きを始める前から、養育費の支払いを滞納してしまっている場合も考えられます。
養育費の支払い義務は、自己破産手続き中と手続き後で扱いが変わるので注意が必要です。
自己破産の手続き前から養育費を滞納している場合、その滞納分の養育費を請求する権利を持つ親権者も、銀行や消費者金融など他の債権者と同様に扱われます。
破産手続きでは、自己破産をした者の財産を一部を除いて換価し、債権者に分配します。
裁判所はすべての債権者を平等に扱うため、親権者が得られる分配は養育費のごく一部であることがほとんどです。
しかし、養育費は非免責債権のため、免責自体はされません。
つまり、破産手続きにおいて弁済した分以外の残った養育費については、支払う義務があります。
ただし、時効が到来した養育費については、支払いが免除されます。
また、破産手続き中に滞納している養育費を一括で支払わないよう注意しましょう。
特定の債権者に優先的に弁済をしてしまうと「偏頗弁済」に当たり、借金の免除が受けられない可能性があります。
破産手続き後に養育費の滞納をした場合、その滞納分の支払義務は弁済するか又は時効によって消滅するまで残り続けます。
自己破産はあくまでも「破産手続き時」の債務を整理する手続きです。
自己破産後に生じた債務については対象外なので、免責はありません。
また、そもそも養育費は非免責債権であるため、支払いが免除されることはありません。
養育費の支払いを滞納している場合、強制執行が行われて財産を差し押さえられてる可能性があります。
支払いが難しい場合はできるだけ早く元配偶者と話し合い、減額や分割払いの交渉をしましょう。
収入を大きく超える借金を抱えている場合、借金から逃れる手段として自己破産を選ぶ方も多いでしょう。
自己破産をすると、ほとんどの債務が免責され、支払義務がなくなります。
とはいえ、なかには支払義務がなくならない非免責債権もあります。その一つが養育費です。
自己破産手続きの前から養育費を滞納していたとしても、時効によって消滅していない限り、その全額を支払わなければなりません。
経済的に困窮し支払いが難しい場合には、当事者同士で話し合うか裁判所に調停を申立てるなどして、養育費の減額を交渉する必要があります。
養育費の滞納を放っておくと、強制執行により財産が差し押さえられてしまうこともあります。
養育費に関する悩みがある時は、早めに弁護士に相談することが大切です。
弁護士のサポートを受けることで、元配偶者との交渉や調停などをスムーズに進められるでしょう。