東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!
生活に欠かせない携帯電話やスマートフォン。
「破産の申立をした場合に使用できなくなるのでは」と心配している方も多いのではないでしょうか。
ここでは、破産と携帯電話の関係に着目し、破産申立後に継続利用できる場合とできない場合、新規契約できない場合の対処法などを解説します。
Contents
原則として、破産申立を行ったとしても、そのまま携帯電話を利用することができます。
しかし、以下のとおり、一定の条件を満たしてしまうと、携帯電話が解約されてしまう可能性がありますので、常に安心できるわけではありません。
この他、端末の時価が20万円以上の場合、破産手続きの過程で、破産管財人によって換価されてしまい、使用を継続できなくなる可能性があります。
とはいえ、端末料金が20万円を超えることは稀ですので、特別に高価な端末を使用しているのでなければ、ほぼ問題ないでしょう。
以下の状況の場合、携帯電話の利用を継続できない可能性があります。
破産では、債務者は、全ての債権者を平等に扱わなければなりません。
上述の条件に当てはまる場合、債務の支払は、1人の債権者を優先的に扱うとして禁止されている「偏頗(へんぱ)弁済」に該当するとして、支払いを禁じられます。
月々の利用料金は、通常に払っている場合には、日常生活に不可欠なものとして、偏頗弁済に該当しないと考えられています。
しかし、分割払いの端末料金の支払や、滞納している利用料金の支払については、他の債権者に優先して弁済することは原則としてできません。
そのため、以上のような状況の場合、携帯電話会社に対する未納を解消することができず、携帯電話会社との契約の定めにより解約される可能性が生じます。
ただし、携帯電話会社によって、解約するかどうかの運用は異なります。
破産時の対応は携帯会社によって異なるため、事前に規約を確認するか、弁護士などの専門家に依頼して交渉することをおすすめします。
一度破産した場合、その後に携帯電話を新規契約することはできるのでしょうか。
結論から言えば、破産しても携帯電話の新規契約ができる場合があります。
ただし、携帯会社や支払い方法に制約が生じることがあります。
多くの携帯電話会社は一般社団法人電気通信事業者協会(TCA)に加入していますが、TCAは、利用者の信用情報をまとめており、携帯電話会社に提供しています。
携帯電話料金の滞納がある場合、はTCAのブラックリストに登録され、その滞納の度合いによって携帯電話の新規契約ができなくなります。
いわゆる「携帯ブラック」です。
もっとも、破産申立後に免責決定がされると、料金の滞納によるブラックリストからは削除されることが通常です。
そのため、携帯電話の新規契約自体は可能となります。
ただし、注意点が2つあります。
以下、それぞれについて見ていきましょう。
「携帯ブラック」に該当しなくなっても、過去に滞納により解約された携帯会社では新規契約できない可能性が高いと考えられます。
これは携帯会社独自の顧客情報に登録されていると考えられるからです。
さらに、端末の分割購入も困難と考えられます。
分割購入は住宅や車などのローンと同じ仕組みで、利用する前に信用情報のチェックがあります。
破産手続の事実も信用情報に関わるため、分割購入前の審査に引っかかってしまいます。
これらの情報は共有されていて、どの携帯会社に申請しても結果は同じである可能性があります。破産手続後に新しく端末を購入する際は、一括購入以外困難と考えられます。
ただし、信用情報は日々更新されています。
信用情報を登録している機関によって異なりますが、5〜10年といった時日を経過すればブラックリストから外されることもあります。
ブラックリストからの解除後であれば、端末の分割購入も可能となります。
自己破産後に携帯電話を新規契約できなければ、私生活だけでなく、仕事にも支障が出てしまうことがあるでしょう。
「携帯ブラック」に登録されているなど、携帯電話会社が新規契約を受けてくれないという場合には、以下の方法を試してみてください。
以下、それぞれがどういったものなのか、見ていきましょう。
auやdocomoなどの大手携帯会社の中には、預託金制度を利用できるところがあります。
預託金制度とは携帯電話を契約した時に、あらかじめお金を預けておく仕組みのことです。
携帯会社にとって破産の過去がある顧客との契約は、かなりリスクの高いものです。
しかし、預託金制度を利用すれば、仮に未払があっても預託金から料金を回収することが可能です。
ただし、契約時に預託金として5〜10万円のお金を用意する必要があるため、利用者にとっては負担が大きくなります。
一定期間、支払いに滞納がなければ預託金は返還されます。
最近は格安simと呼ばれる安価な通信サービスを提供する携帯会社も増えてきています。
格安simの会社の中にはTCAに加入していない会社があります。
こうした会社を選べば、料金滞納の情報が伝わっていないため、新規契約に対応してくれる可能性があります。
ただし、支払い方法に注意が必要です。
破産手続を経るとクレジットカードが作れなくなる可能性が高いため、銀行振込などの他の方法が利用できるかどうか確認しましょう。
信用情報は個人に結びついているため、自己破産や料金滞納をした本人以外には、原則として影響がありません。
どうしても本人名義で契約できない場合でも、家族名義であれば新規契約ができる可能性があります。
ただし、家族の信用情報に問題がないことが前提なので注意しましょう。
また、家族名義の携帯電話を利用することが、携帯電話会社の規約上問題がないかにも注意してください。
破産申立をしたとしても、当然に携帯電話やスマートフォンが利用できなくなるわけではありません
また、破産申立後に携帯電話の新規契約を行える場合もあります。
その他、携帯電話に関し、破産の際に注意すべき点をご紹介します。
どういうことなのか、見ていきましょう。
これまで、破産申立時に延滞料金や分割払いが残っている場合、携帯電話が解約される可能性があることを説明しました。
この解約を避けるため、「破産申立前に一括で払ってしまおう」と考える方がいるかもしれません。
結論として、破産申立の前に、他の債務者に一般的継続的に支払いができないような状況に(「支払不能」といいます。)になってからの一括支払いはしないようにしてください。
このような支払いは、特定の債権者に優先して弁済する偏頗弁済に該当し、破産申立を行ったにもかかわらず、債務の免責を受けなれなく可能性があります。
とはいえ、携帯電話は生活必需品。
解約されることはなるべく避けたいですよね。
そのためには自分で支払うのではなく、家族を含む第三者に頼むことを検討しましょう。
第三者の支払いは偏頗弁済に当たらないため、偏頗弁済とされることはありませんし、解約も避けることができます。
携帯電話の月額利用料は生活に必要なものとして扱われるため、偏頗弁済には該当しないと考えられています。
破産申立後やそれに先立ち支払不能となって以降も、利用料金の支払いを継続することが可能です。
ただし、日々の買い物の代金などを携帯料金と合算して支払うことができる「キャリア決済」は、携帯電話料金の支払とは異なります。破産申立後やそれに先立ち支払不能となって以降のキャリア決済は、偏頗弁済を見なされてしまう可能性がありますので、弁護士などに相談されることをおすすめします。
携帯電話では「Suica」や「Pasmo」といった交通系決済、「PayPay」を代表とするバーコード決済などで、キャッシュレス決済を利用することができます。
ただし、破産申立後やそれに先立ち支払不能となって以降は、現金または銀行引き落としでチャージするようにし、クレジットカードでのチャージは控えてください。
破産申立後やそれに先立ち支払不能となって以降に債務を負うことは、破産手続き上問題になりますので、避けるようにしてください。
破産申立後に当然にも携帯電話やスマートフォンを使えなくなるわけではありません。
毎月の利用料は、生活に不可欠と見なされ、偏頗弁済には該当しないと考えられています。
携帯電話を買い替えたいときに、新規契約をできる可能性もあります。
ただし、携帯端末を分割払いで購入した支払いが終わっていない場合や、毎月の使用料金を延滞している場合には、偏頗弁済として支払を禁じられる結果、携帯電話会社から解約される可能性があります。
新規契約でも、携帯端末の分割払いはできない可能性があります。
破産申立後も携帯電話を利用し続けられるよう、あらかじめ状況を確認しておくことが大切です。
不明点がある場合などは、弁護士などの専門家に相談するようにしましょう。