東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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自己破産すると、借金のすべてが帳消しとなり、その後に借金を返済する必要はなくなります。
ただ、自己破産した後は様々な制約が課せられ、不便な生活を送ることとなります。
自己破産した後にも経済的な影響があるのは、信用情報に自己破産の記録が登録され、しばらくその記録が残るためです。
ここでは、どれくらいの期間信用情報に記録が残るのか、そしてその間の対処法には何があるのか、解説していきます。
Contents
信用情報とは、個人の年収、勤務先やその勤務年数、借入金やローンの有無や支払いの状況を示す情報です。
金融機関やカード会社は信用情報を分析して、その人にお金を貸せるか、あるいはクレジットカードを発行するかの判断をしています。
この信用情報は、個人情報の中でも極めて重要なものであり、信用情報機関によって管理されています。
信用情報機関は全部で3社あり、それぞれ加盟する会社に違いがあります。
銀行などの金融機関やクレジットカード会社、消費者金融などの貸金業者は、必ずこの信用情報機関のいずれかに加盟しています。
自己破産した記録は、信用情報機関が管理する信用情報に登録され、そこに加盟するすべての会社が閲覧できるようになります。
一般的に、自己破産した情報が登録されることを「ブラックリストに載る」といいます。
ブラックリストに載ると、ローンを組むことやクレジットカードを利用することはできなくなります。
自己破産には直接関係していない会社とも取引できなくなるのは、ブラックリスト入りしたためです。
自己破産した記録が信用情報に登録されている間は、クレジットカードなどを利用することは基本的にできません。
しかし、自己破産の記録は永久に登録されるわけではなく、登録されている期間は決められています。
この期間は、信用情報機関によって異なるため、それぞれどれくらいの期間になるのか、確認しておきましょう。
株式会社CICは、1984年に設立された信用情報機関です。
CICに加盟しているのは、主にカード会社や信販会社となっています。
また、消費者金融も加盟している会社があります。
自己破産が発生すると、事故情報の発生から5年間、CICにおいてその情報が登録されます。
JICCは正式には株式会社日本信用情報機構といい、1986年に設立されました。
JICCに加盟しているのは、主に消費者金融と信販会社となっています。
貸金業法で指定信用情報機関に定められているため、貸金業を営む会社はほぼすべて加盟しています。
自己破産が発生すると、事故情報の発生から5年間、JICCにおいてその情報が登録されます。
KSCは正式には全国銀行個人信用情報センターといいます。
一般社団法人全国銀行協会(全銀協)という、銀行の全国組織により運営されています。
銀行業を営む銀行や信用金庫、信用組合、農協・漁協などが加盟しています。
自己破産が発生すると、破産開始の決定から10年を超えない期間、KSCにおいてその情報が登録されます。
自己破産したという記録が3つの信用情報機関に登録される期間を表にまとめると、以下のとおりです。
信用情報機関 | 登録期間 |
---|---|
CIC | 事故情報の発生から5年 |
JICC | 事故情報の発生から5年 |
KSC | 破産開始の決定から10年を超えない期間 |
なお、金融機関やカード会社など、1つの会社が複数の信用情報機関に加盟していることもあります。
そのため、カード会社だからといって、必ず5年で信用情報が回復するとは限りません。
特に銀行系のカード会社や信販会社などは、KSCに加盟しているケースが多いため、注意が必要です。
前述したように、自己破産した事実が信用情報に登録されると、ブラックリストに載るという言い方をします。
このブラックリストに載った状態では、様々なデメリットがありますが、具体的にどのようなものがあるのか確認していきます。
ブラックリストに載ると、ローンを組むことができなくなります。
そのため、住宅ローンや自動車ローンなどを利用することはできず、新たに住宅や車を購入することが難しくなります。
自己破産した人は、金融機関や貸金業者からの借り入れの返済が全額免除されます。
そのため、金融機関や貸金業者は、回収できなかった金額について、貸し倒れ損失という大きな損失を計上しています。
これらの会社が損失を被らないようにするには、少しでも貸し倒れが発生するリスクを抑える必要があります。
そこで、過去に自己破産した人は危険人物とみなして、ローンを組めないようにするためです。
ブラックリストに名前が載っている間は、間違いなくどの金融機関でもローンを組むことはできません。
自動車ローンは信販会社でも取り扱っていますが、やはりブラックリストに載っている間にローンを組むことは不可能です。
ブラックリストに載っている間は、新たな借り入れをすることはできなくなります。
ローンは借り入れの1つですが、ローン以外にも、貸金業者からの借り入れも利用できなくなります。
貸金業者からの借り入れができなくなるのも、ローンが組めなくなるのと同じ理由です。
貸金業者は、借り入れをした人が支払う利息が収益源となりますが、貸したお金が返ってこないリスクもあります。
そこで、よりリスクを軽減するために、お金を貸す人について制約を設けています。
過去に自己破産したという記録がある人は、そのことだけでお金を貸すことはできないとしています。
そのため、ブラックリストに載っている人はお金の借り入れができないこととなります。
ブラックリストに載っている人は、クレジットカードを使うことができなくなります。
これは、新たにカード会社と契約し、クレジットカードを作れなくなるだけではありません。
今まで使っていたクレジットカードを使って、買い物をすることもできなくなります。
クレジットカードを使って買い物しても、商品を手にした瞬間はまだ支払いが完了していません。
あくまでも、カード会社が本人の代わりに代金を支払っているだけだからです。
買い物した本人からカード会社への支払いは後日行われますが、それまではカード会社に借金をしているのと変わりはありません。
もし、カードの利用料金が支払われなければ、それはカード会社にとっては損失となります。
そこでカード会社は、支払い能力の低い人にはできるだけクレジットカードを利用しないように制約を設けています。
たとえば、人によって利用限度額が異なるのはその1つです。
また、ブラックリストに載っている人については、一切クレジットカードを利用できなくします。
また、新たな契約をして、クレジットカードを作ることもできなくなります。
携帯電話会社で携帯電話やスマホの契約をする時に、端末を一緒に購入することがあります。
この時に、端末の代金を一括購入するのではなく、毎月の利用料金と一緒に分割払いすることができます。
しかし、ブラックリストに載っている人は、この分割払いにより端末を購入することができないこととなります。
携帯電話会社は、端末を分割払いにより販売するかどうかを審査します。
仮に、信用能力の低い人に分割払いで販売してしまうと、代金を回収できなくなる可能性が高くなるためです。
携帯電話会社も信用情報機関に加盟しており、ブラックリストに載っている人に対しては、分割払いを認めません。
なお、端末代金の分割払いは利用できなくても、携帯電話会社と回線契約を行うことや、端末を一括で購入することはできます。
賃貸マンションを借りる際に、保証会社を利用するよう、義務付けられている場合があります。
保証会社を利用することで、仮に入居者が家賃を支払わない場合でも、家賃を回収することができるためです。
ただ、保証会社の利用にあたっては、保証会社が定める条件を満たさなければなりません。
ブラックリストに載っている人は、保証会社が保証してくれないことが多く、賃貸マンションの契約ができないことがあり得ます。
また、賃貸マンションの家賃の支払いにあたって、クレジットカードによる支払いに限定している場合があります。
クレジットカードを利用できない人は、それだけ支払い能力が低いため、そのような人を排除できるからです。
ブラックリストに載っている人はクレジットカードを利用できないことから、賃貸マンションの中には契約できない物件もあります。
自己破産すると多くのデメリットがあるため、様々な不便を感じることがあります。
そこで、信用情報が回復するまでの間にできる対処法をご紹介します。
自己破産して、クレジットカードを利用できなくなると、基本的に現金で支払うしかありません。
しかし、あらゆる支払いのために現金を準備するのも、大変なことです。
そこで、デビットカードを利用できるようにしておきましょう。
デビットカードは、カードで支払いをすることができますが、クレジットカードとは違い、その場で口座からお金が支払われます。
ブラックリストに載っている人でも、自己破産した直後であっても利用することができます。
ただし、預金口座の残高の範囲内でしか使うことができないため、その点は注意しなければなりません。
一方、お金の使い過ぎを防ぐ点ではデビットカードは有効なので、うまく使うといいでしょう。
自己破産すると、自身の名義のクレジットカードを持つことはできなくなります。
しかし、家族は自己破産の影響を受けるわけではないため、引き続きクレジットカードを利用できます。
そこで、家族が利用しているクレジットカードで家族カードを作ってもらい、そのカードを使わせてもらうことができます。
過去に自己破産した人でも、家族カードを持っていれば、自分のクレジットカードと同じように使うことができます。
ただし、家族カードを使うとその分、家族の支払いが増えることとなります。
家族カードを渡されたからといって安心して沢山使ってしまうと、今度は家族が支払いに苦労することとなってしまいます。
家族カードを使う際には、必ず家族間でルールを定め、使い過ぎることのないように注意しましょう。
自己破産したという情報は信用情報に登録され、すべての金融機関やカード会社の知るところとなります。
そのため、自己破産したことを隠してクレジットカードを使うことや、ローンを組むこと、お金を借りることはできません。
これから自己破産するという人は、必ず事前に自身の身辺整理を行い、自己破産後に苦労することのないようにしましょう。
また、自己破産した後はクレジットカードが使えなくなるため、デビットカードや家族カードの準備もしておきましょう。