東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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借金をしている方の中に、生活保護を受けている方がいるでしょう。
お金が必要になって、あるいはお金が足りなくなって借金をしているため、生活保護を必要とする人と状況はよく似ています。
では、生活保護を受けることとなった方がそれまで抱えていた借金は、どのようになるのでしょうか。
生活保護を受けるためには、いくつかの要件が定められています。
まずは、その要件を確認しておきましょう。
生活保護法では、最低限度の生活の維持のために、利用しうる資産を活用することを要件としています。
そのため、保有する資産がある場合には、生活保護を受ける要件を満たさないことがあります。
なお預貯金については、最低生活費の半額以下であれば所有が認められる一方、これを上回ると生活保護は受けられません。
扶養義務者からの援助は、生活保護より優先されるという規定が生活保護法にあります。
つまり、生活保護を受ける前に、家族や親族からの援助を求める必要があるということです。
財産がなくても収入を得られるのであれば、生活保護の対象にはなりません。
病気やケガなど、何らかの理由で働くことができない人は、生活保護を受けられます。
また、働いているにもかかわらず収入が低い場合も、生活保護の対象になることがあります。
毎月の給料が最低生活費に満たない場合、その不足分を補う形で生活保護が支給されることになります。
ここまで見てきたように、生活保護は財産がほとんどなく、また収入も極めて少ない場合に受給できます。
一方、借金の有無は生活保護の受給には一切関係なく、そのことを検討する必要はありません。
生活保護をすでに受給している人の中には、借金の返済に苦労している方もいるかもしれません。
しかし、このような方も借金があるから生活保護を受給しているわけではなく、財産や収入が少ないために要件を満たしていることになります。
また逆に、借金があるために生活保護が受けられないということもありません。
借金をした理由が何であっても、その借金について生活保護を受給する際に問題になることはありません。
借金をしている方が生活保護を受けると、生活を立て直すために借金がなくなると思っている方がいるかもしれません。
しかし、借金がある人が生活保護を受給しても、その借金の返済が免除されることはありません。
生活保護を受けることになったとしても、借金の返済は続けなければならないとされています。
また、借金の返済を滞納してしまった場合には、債権者から督促を受けることとなります。
生活保護を受給するようになっても、借金がなくなるわけではありません。
借金がなくならないということは、生活保護を受給するようになっても、借金の返済をしなければならないということです。
ただ、生活保護を受給するようになったら、借金に関して注意しなければならない点があります。
生活保護を受けるようになると、現金収入が増えるので、借金の返済が楽になると考えるかもしれません。
しかし、生活保護費を使って借金を返済することは認められません。
生活保護費として支給される金額は、その支出の内容ごとに決められています。
生活保護費に含まれる主なものは、以下のとおりです。
しかし、これらの項目に借金の返済は含まれていません。
つまり、生活保護費を使って借金を返済することは、認められていないということです。
もし生活保護費を使って借金の返済を行った場合、生活保護の受給が不正とみなされ、支給停止になることがあります。
また、生活保護費から借金の返済にあてた金額については、返済を求められることがあります。
最悪の場合、ペナルティを上乗せして返済を迫られることや、刑事罰を科されることもあり得ます。
もう1つ注意が必要なのは、生活保護を受けている状態で新たに借金するのは、避けるべきということです。
生活保護を受けられるのは、収入が少ないという条件を見たしているためです。
しかし、借金とはいえ多額の収入を得ることができた人は、生活保護の対象から外れてしまいます。
そのため、借金をしたことがきっかけで、生活保護を打ち切られる可能性があるということです。
福祉事務所は、生活保護を受給している人の金融機関の口座を調査する権限を有しています。
そのため、借金したことを隠すことはできないと覚えておきましょう。
生活保護費の支給が停止される、あるいは借金した分だけ受給額を返還しなければならないことがあります。
生活保護を受給する人が借金の返済に行き詰まった場合、生活保護費を差し押さえられることはあるのでしょうか。
貸付を行っている金融機関や貸金業者、そしてクレジットカード会社は、滞納した人に督促を行うことができます。
督促を行っても返済が行われない場合には、債務者の財産を差し押さえることも可能です。
しかし、債権者であっても生活保護費を差し押さえることは認められていません。
生活保護費は、借金返済のために使うものでないことはすでに説明しました。
生活保護を受ける人の生活を守るため、生活保護費を差押えできないようにされているためです。
生活保護を受給する人は、生活保護費で借金の返済はできず、新たな借金もできないことがわかりました。
また、債権者も生活保護費を差し押さえることができません。
このような決まりがあるため、生活保護を受給する人は、最低限度の生活を維持できるようになっています。
その一方で、生活保護を受ける人は借金の返済がなかなか進まないことが予想されます。
ただ、金融機関や貸金業者などからは借金の返済を求められるなど、生活保護を受けても返済が猶予されるわけではありません。
そこで、借金を抱えた状態で生活保護を受ける人は、自己破産を行うしか借金をなくす方法はありません。
なお、借金の返済に行き詰まった状態で生活保護の受給を検討し、いずれを優先するべきかと迷っている方もいると思います。
自己破産と生活保護のどちらを先に行うといいのかということについては、まず自己破産を先に行うべきです。
自己破産を行う際には、ほとんどの財産を没収されてしまうからです。
また、生活保護を受給しても借金がなくなるわけではなく、借金の返済を進めることもできません。
そこで、まずは自己破産で借金の整理を行い、その後に生活保護を受給するのがいいでしょう。
自己破産を行って借金をなくそうと考えている方は、まずどのような手続きから始めるといいのでしょうか。
その手続きの流れや、必要になる書類を確認しておきましょう。
借金の返済が苦しくなり、次第に支払期限に間に合わなくなるようなことがあります。
このような場合には、債務整理を行い、借金を減らすことを考えましょう。
債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産の3種類がありますが、債務整理後の借金返済には大きな差があります。
この中で借金を完全になくすことができるのは、自己破産です。
自己破産を行うと、個人の財産をほぼすべて失うというデメリットはあります。
しかし、生活保護を受けている方にとっては、それほど大きなデメリットにならないのではないでしょうか。
それより、借金をゼロにして自己破産後の再出発をスムーズに切れるような準備をしておくことに大きな意味があります。
なお、最終的にどのような方法で債務整理を行うのかは、弁護士に相談して決めることとなります。
自己破産など、債務整理を行うことを決めたら、弁護士に相談しましょう。
自分では決断できない場合も、弁護士に現状を相談すれば、最適な方法をアドバイスしてくれるはずです。
なお、正式に弁護士に自己破産の依頼を行うと、弁護士から債権者に対して受任通知と呼ばれる書類が送付されます。
受任通知には、これから自己破産の手続きを行うこと、そしてその手続きを弁護士が行うことが記載されています。
また、この通知を受けた日以後は弁護士が窓口となり、債権者は借入をしている人に対して直接連絡できなくなります。
これまで取り立てを受けていた人は、この日以降取り立てが止まるため、精神的に落ち着いた日々を取り戻すことができます。
自己破産の手続きは、裁判所での手続きとなります。
そのため、自己破産の手続きを依頼した弁護士を通じて、裁判所に自己破産申立書を提出し、自己破産の申立てを行います。
なお、裁判所に自己破産の申し立てを行う際には、自己破産申立書以外にも必要な書類がいくつかあります。
この他にも、裁判所に提出を求められる書類が発生するケースがあります。
手続きの詳細は弁護士の指示のもと行うこととなるので、連携して書類を準備していきましょう。
審尋とは、裁判所がその事件の当事者や利害関係者に対して、意見を述べる機会を与えることをいいます。
破産事件の場合、破産手続開始のための要件を満たしているかを確認するため、破産審尋が実施されます。
基本的には、自己破産を申し立てた債務者が裁判所に呼び出され、裁判官から質問を受けます。
ただ、必要に応じて書面での提出が求められることもあります。
破産審尋を終えると、裁判所で同時廃止事件または管財事件のいずれになるかが決定されます。
生活保護を受ける方の場合、債権者に分配できる財産がないため、同時廃止事件となるケースがほとんどです。
同時廃止事件になった場合、破産手続きの開始決定と同時に破産手続きが終了することとなります。
同時廃止となっても、免責審尋のため裁判所に出かけなければなりません。
免責審尋が行われると、裁判官に氏名や住所など申立書の記載内容の確認や、今後の経済生活の立て直しの方針が聞かれます。
免責審尋に大きな問題はほぼないため免責が確定し、借金の返済義務が正式になくなります。
弁護士費用に関しても、法テラスの立替制度を利用することができ、自己破産手続き完了時に生活保護を受給している場合は、その支払いを免除されます 。
生活保護受給と自己破産手続き完了のタイミングによっては法テラスに返済しなければならないこともありますが、その分については認められる場合があるので、担当ケースワーカーに相談しましょう。
収入や財産が少ない場合、最低限の生活を維持できるように、生活保護を受給することができます。
ただ、生活保護を受けるようになっても、借金が減額されることやなくなることはありません。
生活保護を受給すると借金を返済することが難しくなるため、借金をなくすための方法を別に考える必要があります。
自己破産で借金をなくすのも有力な選択肢となるため、前向きに考えていきましょう。