東京弁護士会所属。
破産をお考えの方にとって、弁護士は、適切な手続きをするための強い味方になります。
特に、周りに相談できず悩まれていたり、負債がかさんでしまいそうで破産を考えていたりする方は、ぜひ検討してみてください。
住宅ローンの返済が行き詰まった場合、そのローンを解消するための方法の1つとなるのが任意売却です。
任意売却を行って、その後の生活を立て直すことができる場合があります。
しかし、任意売却を行った人の話を実際に目や耳にすることは一般的にはありません。
そこで、任意売却を行うメリット・デメリットや、その手続きの流れなどを確認していきましょう。
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任意売却とは、その名のとおり、強制的に自宅を売却するのではなく、本人の意思にもとづいて売却することです。
ただ、普通の売買と異なるのは、住宅ローンを抱えた状態にあり、自宅の売却代金を返済にあててもなお、残債があることです。
通常、住宅ローンの返済を続けている間は、自宅に金融機関の抵当権が付されており、勝手に売却することはできません。
しかし、住宅ローンの返済も進まず、自己破産も考えられるような状況にある場合は、金融機関が任意売却を認めます。
任意売却をして、売却代金をローンの返済にあてた上で、残債を毎月返済していくという返済方法を行うことがあるのです。
任意売却を行う最大のメリットは、自宅の売却価格が競売に比べて高くなることです。
競売を行うと、売却価格は市場価格の5割程度になるともいわれます。
これに対して、任意売却の場合は市場価格とほぼ同じ条件で、売買を行うことができます。
自宅の売却により発生した売却代金は、ローンの返済にあてられます。
そして、返済できずに残った金額は、任意売却の後も引き続き、毎月返済しなければなりません。
通常はローンの残額がある物件を売却すると、残債は一括返金となりますが、任意売却の場合は分割での返済が可能であることも大きなメリットと言えます。
任意売却により売却金額が増えることとなれば、その分、売却後のローンの返済も楽になります。
任意売却のデメリットは、自宅の土地や建物を任意売却したことについて、信用情報に記載されることです。
信用情報に記載されることとなれば、その後の住宅ローンやクレジットカードの利用は厳しく制限されます。
しかも、その後5年間ほどその制約を受け続けることとなるため、任意売却を行う際は要注意です。
任意売却を行う際は、どのような流れで行われるのでしょうか。
その際に必要な書類も確認しながら、その流れを見ていきましょう。
任意売却を行うこととなるのは、住宅の売却予定額より住宅ローンの残高の方が大きい場合です。
住宅ローンの残高が売却予定額より少ない場合は、任意売却にはならず、通常の売買となるためです。
住宅ローンの残高は、金融機関の残高証明書やローンの返済予定表で確認することができます。
これに対して、価格の査定は、不動産会社に依頼する必要があります。
任意売却になる場合、債権者である金融機関の同意が必要となります。
任意売却を行うこと、そして査定金額で売却することについて、同意を得る必要があります。
査定価格が高いほど、任意売却後の残債が少なくなるため、金融機関としてはリスクが少なくなります。
一方で、価格を高く設定しすぎると売れ残ってしまい、任意売却が成立しないこともあります。
価格の査定を行う段階で、不動産会社に実現性の高い査定価格を提示してもらう必要があります。
任意売却を行うため、不動産会社に買い手を探してもらうこととなります。
建物をそのまま利用したいという方に対しては、内覧を行うなど、スムーズに対応することが求められます。
買主が見つかったら、債権者である金融機関に、購入申込書と売買代金配分表を提出します。
その後、購入希望者と条件面で合意の上、売買契約を締結します。
売買契約を締結したら、そのまま物件の引き渡しや登記など、必要な手続きを行うこととなります。
なお、売却代金の一部を引っ越し費用にあてる場合は、事前に交渉しておかなければなりません。
任意売却を行う場合は、売却後にローンの返済を行っても、まだ債務が残ることとなります。
前述したように残った債務については、引き続き毎月返済を行う必要があります。
返済額は毎月数万円程度となり、返済しやすい金額になっているため、延滞しないようにしましょう。
返済を行う過程で、生活状況表を提出し、現実的に支払うことができる金額にしてもらうようにすることもできます。
任意売却を行う際に最も大きなネックとなるのが、任意売却を行うことができる期間があることです。
また、そのための費用も気になるところです。
任意売却にかかる期間と費用について、確認していきましょう。
任意売却ができる期間は、住宅ローンの支払いを滞納し始めた時から、競売の開札日直前までとなります。
住宅ローンの支払いが苦しくなって、次回の支払いでは滞納するかもしれない、という状況ではまだ任意売却はできません。
住宅ローンの支払いを3か月ほど滞納すると、金融機関から催告書や督促状が届き、放置すると取り返しのつかない場合があります。
また、6か月支払いを滞納すると、住宅ローンの残高について一括請求され、いよいよ自宅を売却しなければ難しい状況となります。
このような状況では、一刻も早く金融機関に相談に行き、任意売却に向けた行動を始める必要があります。
滞納してから9か月ほど経過すると、競売開始決定通知書が自宅に届き、自宅が強制的に売却されるおそれが現実になります。
その後、滞納から1年を超えてくると、競売の入札通知書が送られてくることとなり、開札日以降にその取り下げはできません。
競売が開札される日までであれば、任意売却が成立する可能性があるため、滞納からおおむね1年程度が任意売却できる期間です。
任意売却は、通常の売買と基本的には同じだけの費用がかかります。
不動産会社に支払う仲介手数料の金額は、「取引額×3%+6万円」が上限であり、別途消費税がかかります。
なお、この金額は仲介手数料の上限金額であるため、実際にはこの金額より少ない金額になる可能性もあります。
また、仲介手数料の他、契約書に貼る印紙代や、所有権の移転、抵当権の抹消にかかる登記費用もかかります。
これらの費用も、基本的に一般的な売買の差にかかる費用と同額です。
任意売却は取引に関係する人が多く、手続きも複雑なため、不動産会社の業務が多くなるように思われます。
しかし、発生する費用の計算は、特別なものではありません。
任意売却を行う上で注意しなければならないのは、不動産会社選びです。
任意売却は、通常の不動産売買より手順や注意点が多く、また金融機関との連絡や残債処理などの手続きが必要です。
また、所有者や債権者が複数人いる場合もあれば、連帯保証人がいる場合など様々なケースが考えられます。
そのため、住宅ローンや債務整理に関する法律にも精通した、任意売却の経験が多い不動産会社を選ぶのが成功のポイントです。
売却後の債務の返済に関する条件の交渉は生活再建のために非常に重要なため、おろそかにしてはいけません。
なお、任意売却を行うのは、本来はオーバーローンになっている場合だけです。
しかし、売却金額が変動する中で、オーバーローンの状態ではなくなり、売却金額が住宅ローンの残高を上回ることもあります。
こうなれば、残債がゼロとなり、生活再建をしやすくなります。
任意売却という言葉がそれほど知られているわけではなく、周りに任意売却したことのある人もあまり聞かないでしょう。
そこで、任意売却を行うにあたってよくある質問をご紹介し、その回答を掲載していきます。
基本的に、任意売却の手続きは通常の不動産の売買と同じ流れで行われます。
そのため、近所の人に見られたからといって、任意売却を知られることはありません。
また、競売を行う際は、インターネット上に物件の情報が掲載されたり、裁判所の調査が行われたりします。
しかし、任意売却の際はそのような手続きもないため、不特定多数の人に知られるということはありません。
任意売却してから自己破産しても、免責されないのではないかと心配する方もいます。
しかし、現実的には任意売却しても、その後に自己破産して免責を得ることはできます。
通常、財産を売却して得たお金を特定の債務の返済にあてることは、債権者の平等に反するため認められません。
しかし、住宅ローンの場合は、抵当権もついている債権者に対して返済しており、結果に変わりはないと考えられます。
そのため、任意売却後の自己破産も認められるのです。
任意売却は、通常の不動産の譲渡と変わりはありません。
そのため、任意売却が成立すると譲渡所得が発生することとなります。
譲渡所得が発生すると、その翌年の確定申告で申告しなければなりません。
なお、実際に譲渡所得の金額を計算すると、損失が発生していることもあります。
この場合も、確定申告することでメリットが受けられるケースがあるため、申告を忘れないようにしましょう。
任意売却は、住宅ローンの返済に行き詰った場合、最初に検討しなければならないものです。
しかし、誰もが任意売却できるというわけではないため、利用できない場合には、その対策もあわせて考える必要があります。
住宅ローンの返済が苦しくなってきた場合、まずは金融機関に相談することが重要です。
早めに相談して、任意売却ができるのか、あるいは他の対処法を考える必要があるのか、検討するようにしましょう。