東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!
自己破産の手続きを行っている間は、自由に行動することができないと考えるかもしれません。
しかし、実際はすべての行動が制限されているわけではないため、自己破産の手続き中であっても旅行に行くことも可能です。
そこで、自己破産の手続きを行っている人や、すでに自己破産した人が旅行に行く方法について解説します。
また、旅行に行った際の注意点についてもご紹介していきます。
Contents
自己破産とは、債務の返済をできなくなった人が、自ら裁判所に破産を申し立てて行う、破産手続きのことをいいます。
破産を申し立てても、必ず認められて債務の清算が行われるわけではありません。
また、債務の清算が認められても、残った債務の返済が免責されるとは限りません。
居住地の制限などの制約を守らない場合には、免責が認められない場合があるのです。
なお、自己破産の手続きは、基本的に債務者の財産を換価処分し、そのお金で債務を返済するという流れになります。
このような流れで処理する破産事件を「管財事件」といいます。
これに対して、破産を申し立てると同時にその処理が終了する場合もあります。
債務者が明らかに財産をもっていない場合などは、このような「同時廃止事件」として処理されるのです。
自己破産をしようとしている人やその手続きを始めた人などは、自由に旅行することができるのでしょうか。
それぞれの段階ごとに、旅行できるかどうか、そして旅行をするためには何をしなければならないのか、確認していきます。
自己破産の手続きをする前は、仮に自己破産しようと考えている人でも、特に旅行することに制約を受けるわけではありません。
そのため、自己破産前に旅行できないということはありません。
ただ、自己破産の申立てを行うことをすでに弁護士に依頼している場合は、弁護士に相談せずに旅行することは避けるべきです。
いつ破産の申立てを行うか決めているのに、その日に旅行に行ってしまうのは裁判所の心象がよくないからです。
また、これから破産手続きを行う人がその直前に旅行に行って旅先で散財してくるという行動も印象としてはよくありません。
旅行に行ってはいけないというわけではないのですが、破産直前でもあるため、よく考えて行動する必要があります。
自己破産の手続きを行っている場合は、その自己破産が管財事件になるか同時廃止事件になるかで大きく異なります。
管財事件となった場合は、破産手続きの開始が決定されると保有していた財産を換価しなければなりません。
財産の換価処分を進めるのは管財人ですが、自己破産しようとする人は、破産管財人の換価処分に協力しなければなりません。
また、破産手続き中に財産を持ち逃げしたり、処分したりする可能性もあるため、勝手な行動をしないよう制限を受けます。
そこで、破産手続きを行っている間には、旅行に行くことは原則としてできません。
またこの間は、旅行だけでなく出張など仕事の関係で遠方に出かけることも禁止されています。
さらに、旅行や出張だけでなく、引っ越しを行うことも破産手続き中には禁止されているのです。
ただ、破産手続き中に、旅行や引越しを一切できないこととすれば、人権にも関わる問題となってしまいます。
そこで、裁判所の許可を得ていれば、旅行や引越しなどの移動を認めることとされています。
引越しや2泊以上の宿泊を含む旅行や出張については、裁判所に許可の申立てを行う必要があります。
この申立てについては、裁判所は破産手続きに障害となることが明らかな場合を除いて、許可すると考えられます。
一方、破産手続きが同時廃止事件となった場合は、申立てと同時にその破産が確定することとなります。
つまり、自己破産の手続き中という時間がないこととなります。
この場合、自己破産しようとする人は移動の制限を受けることはありません。
同時廃止事件となった場合は、自由に旅行することが可能なのです。
自己破産の手続きが完了すると、その手続きに協力しなければならないという義務を果たしたこととなります。
また、財産を勝手に処分したり、隠したりすることを心配する必要もなくなります。
したがって、移動に関する制限を受けることもなくなるのです。
旅行に行きたい時に、自由に旅行することができるということです。
自己破産の手続きを行う前にも、自己破産の手続きが完了した後も、旅行に行くことはできます。
また、自己破産の手続きを行っている間でも、裁判所の許可があれば旅行することは可能です。
自己破産の前後に旅行する際には、どのような点に注意する必要があるのでしょうか。
自己破産を考えている人の中には、クレジットカードやローンの支払いができず、滞納している方もいることでしょう。
そのような場合には、クレジットカードの使用ができないように止められている場合もあるかもしれません。
そして、そのようにクレジットカードが使えない状態は、自己破産の手続きを進める上でも続くこととなります。
裁判所に自己破産の申立てを行えば、それまでクレジットカードを使えていた人も完全に使えなくなります。
また、それまでに作ったクレジットカードが使えなくなるだけではなく、新たにクレジットカードを作ることもできません。
そのため、クレジットカードを使用することも、所有することもできない状態となってしまうのです。
これは、自己破産したという情報が信用情報機関に事故情報として登録されるためです。
「ブラックリストに載る」といわれる状態となっているため、新たにクレジットカードを作ることもできなくなるのです。
信用情報機関に事故情報が登録されている間は、新たにクレジットカードを作ることはできません。
少なくとも5年間はその情報が登録された状態となるため、その間、クレジットカードは持てないと覚えておきましょう。
なお、クレジットカードを持つことができなくなった場合、他の支払手段を考えておく必要があります。
現金で支払うのが一番手軽ですが、多額の現金を持ち歩くのには不安もあります。
そのような場合、デビットカードを利用することができます。
デビットカードは、銀行の口座から支払いの度に引き落としされる支払方法です。
もし残高不足で支払いができない場合には、その場でカードの利用ができないという状態になるため、与信審査はありません。
自己破産した後でもデビットカードを発行することはできるため、支払手段の1つとして検討するといいでしょう。
自己破産の手続き中であっても、裁判所で許可を得れば旅行に行くことができます。
それでは、許可を得ずに旅行に行ってしまうと、どのようなことが起こると考えられるのでしょうか。
まず、無許可で旅行に行ってしまうと罰則を受けるのでしょうか。
この点については、現在の法律に罰則規定は設けられていません。
したがって、裁判所の許可なく旅行に行ったとしても、そのことで刑罰を受けることはありません。
それならば問題はないように思うかもしれませんが、実はそのことより大きな問題が生じる可能性があります。
それは、自己破産をしても免責が認められなくなる可能性があることです。
免責とは、財産を処分しても返済できなかった債務の返済を免除してもらうことです。
自己破産すれば、すべての借金をなかったこととして、ゼロからのスタートができると考えている方もいるでしょう。
しかし、これはすべての場合に認められることではなく、中には裁判所が免責を認めないこともあります。
そして、移動に関する制限を守らなかった場合には免責が認められないことが法律に明記されているのです。
免責されなければ、自己破産をしても借金が残ることとなってしまいます。
財産を失った上、残された借金の返済をしなければならないのでは、自己破産をする意味はありません。
免責が認められないという最悪の事態にならないよう、許可なく旅行には行かないようにしましょう。
自己破産を考えている場合、ほとんどの人は借金の返済ができずに滞納している状態にあるでしょう。
このような状況で、旅行に行くということは考えにくいかもしれません。
しかし、自己破産の手続きが始まり、少し気が楽になってくると旅行に行きたいと考える方もいるのではないでしょうか。
ただ、自己破産の手続き中は、必ず裁判所に許可を得る必要がありますから、安易な行動で最悪の結果を招くことのないようにしましょう。