東京弁護士会所属。
破産をお考えの方にとって、弁護士は、適切な手続きをするための強い味方になります。
特に、周りに相談できず悩まれていたり、負債がかさんでしまいそうで破産を考えていたりする方は、ぜひ検討してみてください。
金融広報中央委員会の2020年調査によると、借金のある単身世帯は全体の約18%、借入残高は平均513万円であり、ほとんどが日常の生活資金となっています。
意外に大きな金額ですし、5年間の均等返済では毎月10万円近くの返済額になります。
年収によっては債務整理や自己破産も必要となりますが、結婚を予定している場合は借金の扱いをどうすべきか戸惑ってしまうでしょう。
借金がバレたら縁を切られる、債務整理が発覚すると破談になるなど、結婚への悪影響になると考えるのが一般的な心理です。
しかし今後の人生も考えると債務整理は早めが「吉」であり、後回しにするほど状況は不利になってきます。
今回のコラムは「結婚と債務整理」をテーマに、なぜ結婚前に借金を整理するとよいのか詳しく解説します。
Contents
借金問題の法的な解決策を債務整理といいますが、以下のような手段があります。
債務整理により借金の返済負担は軽減できますが、結婚には少なからず影響が出てしまいます。
しかしそのまま放置すると状況は更に悪化するため、まずは結婚にどのような影響が出るのか理解しておきましょう。
法律的な面では、借金の有無や債務整理が結婚に影響することはありません。
多重債務者や債務整理した人が結婚すると、パートナーもブラックリスト入りするという話もありますが、単なる「噂」でそのような事実もありません。
債権者側や信用情報機関は負債状況と登録していますが、あくまでも債務者個人の問題です。
ただし、結婚すると現金や預貯金は夫婦の共有財産になるという考え方もあるため、借金の返済義務も夫婦で負うのか?という疑問も出てきます。
では次に、結婚前の借金が発覚した場合について、夫婦の責任がどうなるかみていきましょう。
夫婦には生活全般に「日常家事債務の連帯責任」が生じるため、夫婦のどちらかが債務(借金)を負った場合はパートナーも連帯責任を負うことになります。
しかし原則的には「夫婦別産制」の考え方に従うため、自分名義の財産はその人固有のものと判定されます。
負の財産となる借金や、債務整理も同じように考えるため、夫婦となってもクレジットカード契約などの与信審査は別々に扱われることになります。
従って、借金のある人や債務整理した人と結婚した場合でも、パートナーの与信力(信用力)が下がるわけではありません。
ちなみに結婚前からある借金については、保証人にならない限りパートナーが返済義務を負うこともありません。
車や住宅など、高額な買い物は夫名義になることが一般的です。
しかし夫が結婚前に債務整理していた場合は、事故情報として信用情報機関に登録されているため、夫名義のクレジットカードやローン契約はできなくなります。
当然、車やマイホームの購入も夫名義では契約できず、ローンを利用した買い物はすべて妻名義の契約となりますが、妻に十分な経済力がなければ実現しません。
過去の債務整理は信用情報機関に5~7年、自己破産の場合は7~10年登録されています。
夫が結婚前に債務整理していた場合、車の買い換えや住宅ローン契約は数年待たなければならないでしょう。
親の債務整理が信用情報に登録されていると、子どもが奨学金を借りる際の保証人にもなれません。
一般的に、子どもが奨学金を必要とするシーンでは債務整理の事故情報も抹消されているため、進学に影響するケースはそれほど多くないでしょう。
ただし、連れ子のいるパートナーと結婚した場合は、過去の債務整理が子どもの進学に影響してしまうかもしれません。
債務整理の方法として自己破産を選択した場合、借金は全額免除されますが、家や車などの高額資産は差し押さえられてしまいます。
20万円以下の財産や仕事に必要な道具類は手元に残り、借金もリセットされるため、結婚そのものには影響しませんが、改めて購入する家財は増えてしまうでしょう。
過去の債務整理が発覚すると婚約解消されないか?といった不安から、婚約者に債務整理を隠してしまうケースもあります。
しかし金融機関等から情報が洩れることはなく、信用情報の開示請求も基本的には本人しかできません。
個人再生や自己破産の場合は官報に住所・氏名を掲載されますが、一般人の目に触れることは滅多にないため、他人の借金や債務整理を知ることはできません。
借金を隠し通すことは決して不可能ではありませんが、何をきっかけに発覚するかわからず、もしそうなってしまった場合は信頼関係が一気に崩れる可能性は否めません。
結婚生活に影響する事実を隠すと発覚したときのリスクが大きいため、借金や債務整理は正直に打ち明けた方がよいでしょう。
多額の借金を抱えているのであれば、債務整理は結婚前に決着させておくべきです。
任意整理や自己破産を先送りにして結婚すると、結婚生活には次のような悪影響が出てしまいます。
借金を隠したまま結婚しても、債権者からの郵便物やメールでほぼ確実に発覚してしまいます。
滞納していた場合は督促状も届くため、債務整理は独身のうちに済ませておき、ある程度身軽になった状態で結婚するべきでしょう。
債務整理の事実はしばらく残りますが、「内緒の借金がある」という後ろめたさは無くなります。
債務整理しないまま結婚すると、本人名義では車の買い換えや携帯電話の契約、住宅ローンなどの契約はすべてできなくなります。
夫または妻個人の問題ではなくなるため、少しでも早く借金返済できるようパートナーも協力せざるを得ない状況になるでしょう。
収入を上げるため転職を余儀なくされることもあるかもしれませんし、娯楽や趣味は我慢するようになるかもしれません。
家庭の雰囲気も暗くなってしまうので、やはり債務整理は結婚前に済ませておくべきだといえるでしょう。
借金が原因となり婚約解消になったとしても、早めに債務整理をしておけば次のチャンスを掴みやすくなります。
また、独身のまま過ごすにしても、債務が軽くなれば生活の自由度も上がり、借金に悩まず過ごせる期間が長くなります。
借金を抱えたまま、または債務整理しないまま結婚すると生活の質が落ちてしまうため、パートナーにも迷惑をかける羽目になってしまいます。
夫婦間の愛情も大事ですが、生活基盤がしっかりしていなければ喧嘩にもなりやすく、最悪の場合は離婚もあり得るでしょう。
長い人生を考えても債務整理は早めに決着させるべきですが、どの方法を選択するかが重要となります。
また、債権者との交渉力も必要になるため、不慣れな人の対応では期待外れの結果になるかもしれません。
借金問題に悩んでおられる方は債務整理に強い弁護士を探し、早めに相談されることをおすすめします。