東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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自己破産を検討する際に心配になることの一つが、自己破産にかかる費用です。
とりわけ、借金などの債務を抱えているような状況では、自己破産した場合に費用が一体いくらかかるのかということが、非常に重要な問題となってくるはずです。
今回は、自己破産した際に支払う予納金とはどのようなものなのか解説した上で、自己破産のケースごとにその費用相場をご紹介します。
自己破産を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
Contents
自己破産の予納金とは、自己破産の手続きを行う上で、裁判所に対してあらかじめ支払う費用のことです。
この予納金は、破産手続きを進めるために様々な用途に使われます。
具体的には、自己破産の予納金は主に次のような費用に充てられることになります。
破産申立手数料とは、破産を申し立てる際に必要となる手数料です。
裁判所に対して収入印紙で納めます。
官報公告費とは、申立人(破産手続きを申し立てた者)が自己破産した旨などを官報に掲載して公告するために必要な費用であり、破産を申し立てる際に支払わなくてはなりません。
予納郵券(郵便切手)とは、債権者に対して、申立人が破産した旨などの通知を郵送で通知する際に必要なもので、事前に納める必要があります。
引継予納金とは、申立人から破産管財人へ破産事件を引き継ぐ際に、破産手続きの遂行のために納める費用です。
ここでいう破産管財人とは、破産手続きにおいて破産者の財産や負債の調査、またそれらの管理・処分、債権者に対して破産財団(破産者の保有する財産)の配当を行う権利を有する者のことで、通常は裁判所が弁護士を選任します。
この引継予納金は、破産管財人が業務を行う上で必要となる経費です。
これらの費用はすべて、破産事件を管轄する裁判所や、破産事件の種類によって異なります。
破産事件は一般的に、破産事件の内容(個人・法人、財産や負債の状況など)によって3つの種類に分類され、破産手続きにおける費用にそれぞれ違いが生じます。
上記3つの破産事件の予納金の相場について、このあと詳しくご紹介します。
同時廃止とは、破産手続きが開始されるのと同時に、破産管財人の財産調査のもとで行われる管理・処分などの手続きや、債権者への配当などの手続きを行うことなく廃止(終了)となることです。
当該破産事件は同時廃止事件と呼ばれます。
同時廃止が認められるのは、破産手続きが開始した時点で、破産者が保有する財産から破産手続きの費用を支払うことが困難であるような場合です。
つまり、破産手続きを申し立てた後に、債権者へ配当する財産がないことが明らかで、破産者の保有する財産を調査したり、管理や処分を行ったりする必要がない場合などは、基本的に同時廃止事件として扱われるのです。
同時廃止事件の場合、自己破産の予納金の相場は、おおよそで次のような内訳となります。
上記のとおり、東京地方裁判所における同時廃止事件の予納金の相場は約1~2万円程度です。
個人と法人では、破産申立手数料の金額が異なります。
同時廃止事件となった場合には、小額管財事件や通常管財(特定管財事件)と比べ、引継予納金を納める必要がないため、破産手続きでの費用が大幅に軽減されます。
これらの相場は、破産事件を管轄する裁判所や破産事件の内容により、若干変動するので、一つの参考としてください。
自己破産の手続きを行う際には、あらかじめ予納金の相場を確認しておきましょう。
少額管財とは破産手続き開始後に、破産者が保有する財産が明らかに少額であるなど、裁判所が定める一定の要件に該当した場合に、破産管財人が自己破産の手続きを簡略化して迅速に行う裁判所の運用制度です。
当該破産事件は、小額管財事件と呼ばれます。
同時廃止は主に個人に適用されることが多く、破産者の保有する財産状況が不明瞭で破産管財人の調査が必要である場合、破産者の保有する財産が債権者に配当する分だけしか残っていない場合、また、免責不許可事由に該当する(破産となった原因や経緯に責に帰すべき事由がある)場合などが例として挙げられます。
小額管財事件の場合、自己破産の予納金の相場は、個人・法人によって変動しますが、おおよそで次のような内訳となります。
上記のとおり、東京地方裁判所における小額管財事件の予納金の相場は概ね20万円前後です。
個人と法人では、破産申立手数料と官報公告費の金額が異なります。
少額管財事件は、このあと紹介する通常管財(特定管財)事件と比べて予納金は少額で抑えられていますが、破産管財人への引継予納金を納めなくてはならないことから、同時廃止事件よりも高額となります。
引継予納金は、最低でも約20万円となることがほとんどで、破産事件のケースによってはそれ以上必要となる可能性もあります。
これらの相場については、破産事件を管轄する裁判所や破産事件の内容によって若干変動するため、一つの参考としてください。
自己破産の手続きを行う際には、あらかじめ予納金の相場を確認することが必要です。
通常管財(特定管財)とは、上述した小額管財のように簡素化された破産手続きの運用制度では進めることが困難で、破産管財人による綿密な財産調査や管理・処分などの手続きや債権者へ配当する財産が高額となるような場合に適用される、裁判所の運用制度です。
当該破産事件は、通常管財(特定管財)と呼ばれます。
この通常管財は、主に大規模な法人で、特に債権者が多数存在するような場合などに認められます。
通常管財事件の破産申立手数料と予納郵券の相場については、次の通りです。
さらに、官報広告費を含む引継予納金については、負債額や法人・個人に応じて次のように変動します。
上記のように、通常管財の場合の相場は、個人であれば少なくとも50万円以上となります。
引継予納金の相場は、破産事件を管轄する裁判所や破産事件の内容によって若干変動するため、あくまで一つの参考としてください。
自己破産の手続きを行う際には、あらかじめ予納金の相場を把握しておくことをおすすめします。
ここからは、予納金の支払いが困難な場合の対処方法を3つ、ご紹介します。
対処方法は次の通りです。
上記の3つの方法について、それぞれ順にご紹介しますので、確認していきましょう。
自己破産を弁護士に依頼すれば、破産手続きの予納金を積み立ててもらうことが可能です。
自己破産の手続きを弁護士に依頼した場合には、予納金を積み立ててもらうことができます。
この方法によって、自己破産の手続きで納めるべき予納金が現時点で準備できないような場合でも、弁護士が代理人となることで債権者への返済などを一時的に止めながら、その期間に予納金を積み立て、自己破産の申立を行える、というわけです。
予納金をすぐに納められない分、通常よりも自己破産の手続きに時間を要することにはなりますが、弁護士が債権者へ通知を発送することで、債務状況を整理し、返済を一時的にストップさせることができます。
そのうえ、弁護士が代理人となるので、債権者からの督促の連絡などが直接来ることもなくなります。
予納金の積立期間については財産の状況を考慮した上で、弁護士との相談し検討することになります。
一般的には、最長半年程度となることが多いようです。
なお、弁護士に依頼する場合には予納金などの裁判所に支払う実費の他、弁護士費用が発生しますが、弁護士事務所によっては分割払いが可能なところもあります。
弁護士に依頼する際には、事前に弁護士費用なども確認しましょう。
生活保護受給者である場合には、法テラスを利用して予納金を立て替えてもらうことが可能です。
法テラスを利用することで、予納金などの破産手続きにかかる実費だけでなく、弁護士に依頼した場合の費用(着手金など)も、一時的に立て替えてもらうことができます。
法テラスとは、法務省が所管している法人で、総合的な法律支援を行っています。
国が運営する機関であることから、適切かつ効果的な支援体制が整っていて、あらゆる法的トラブルの相談窓口として、紛争の解決に必要となる情報やサービスの提供を受けることができます。
この法テラスは、裁判制度や弁護士のサービスをより身近に利用できるようになることを目的とし、低収入である場合や生活保護を受けている場合には、裁判費用(裁判にかかる実費)実費や、弁護士費用の立て替えという援助も行っているのです。
ただ、あくまで一時的な立て替えであり、予納金の立て替えについては生活保護受給者に限られます。
裁判費用や弁護士費用が免除されるわけではないので、留意しておきましょう。
通常、引継予納金は、裁判所へ破産申立ての手続きを行った後に、原則として一括払いで速やかに納めなくてはなりません。
しかし、破産者によっては財産や負債の状況で、どうしても一括払いですぐに支払うことができない、ということもあるでしょう。
そのような場合には、裁判所に相談することで、引継予納金を分割払いできる可能性があります。
実際、自己破産の引継予納金の分割払いに応じている裁判所が多く、東京地方裁判所では最長4回の分割払いが可能です。
ただし、引継予納金を一括払いで納めない分、通常よりも自己破産の手続きには時間がかかることになります。
引継予納金を支払い終えるまで自己破産の手続きについては時間を要することになるので、その点注意が必要です。
今回は、自己破産した場合に支払う予納金の費用相場をご紹介しました。
予納金にいくら支払うことになるのかは、破産事件を管轄する裁判所や破産事件の内容などにより変動し、また破産事件の種類によっても異なります。
そのため、自己破産の手続きを行う際には、今回ご紹介した相場を一つの参考として、あらかじめ予納金の相場を確認してみてください。
予納金がすぐに支払えないような場合には、弁護士、法テラス、裁判所に一度相談しましょう。