最終更新日:2024/7/3
会社経営者に必要な知識・スキル5つ!経営者になる方法とは
ベンチャーサポート税理士法人 税理士。
大学を卒業後、他業種で働きながら税理士を志し科目を取得。
その後大手税理士法人を経験し、現在に至る。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-tori
この記事でわかること
- 会社経営に必要な知識5つ
- 会社経営に必要なスキル9つ
- 会社経営者の役割・仕事内容
- 会社経営者になる方法
会社を設立して経営者になる場合、経営戦略や法律面などの知識が求められます。
専門知識があれば事業の成長や安定経営を実現しやすくなり、法的トラブルにも対処できるため、従業員にとっても魅力のある会社になるでしょう。
ただし、知識だけでは会社を維持できないため、経営計画を実行に移す決断力など、様々なスキルも必要です。
経営方針の策定や資金繰りにも自らが対応し、問題が発生したときは経営者が最終的な責任を取らなければなりません。
そこで今回は、会社経営者に必要な知識やスキル、経営者になる方法などをわかりやすく解説します。
目次
会社経営に必要な知識5つ
会社の経営者になると、業種や業態を問わず、共通して求められる知識があります。
経営者の知識は会社の成長や人材育成につながるため、経営基盤の構築にも大きく影響するでしょう。
ただし、知識不足で会社を設立した場合、経営が不安定になり、労使間のトラブルや法律上の問題が起きる恐れもあります。
会社設立を検討している方は、まず以下の知識を習得しておきましょう。
経営戦略の知識
経営戦略の知識は会社によって異なりますが、まず目指すべき方向を決めておく必要があります。
たとえば、対前年比で毎年の売上げをどの程度上げるか、利益率をどの程度キープするかなど、数字の設定も経営戦略の一つです。
飲食業の場合は他社が真似できないメニュー開発や、接客品質で差別化するといった経営戦略もあります。
経営戦略を策定するときは、経営資源となる人材・モノ・お金の配分も考えておくとよいでしょう。
会社が目指すべき方向を定め、5年後や10年後を見据えた戦略があると、経営目標を達成しやすくなります。
マーケティングの知識
マーケティングとは、市場調査の結果を分析し、売れる商品・サービスの開発や、効果的な広告宣伝方法を検討するための事業活動です。
ターゲットの顧客を見極めると、商品の開発・改良が効率的になり、反響につながりやすい広告宣伝も可能です。
また、マーケティングの手法はチラシやパンフレットの配布、自社のホームページやSNSを使ったウェブ広告など、様々な種類があります。
マーケティングの知識は経営戦略に活かせるため、実務検定の受験や、ビジネススクールの学位取得などを目指してもよいでしょう。
組織づくりと人材育成の知識
会社を設立する場合、組織づくりと人材育成の知識も必要です。
たとえば、経営者が大株主になるケースであれば、独裁的な経営を防止するため、監査役や監査役会の設置を検討してもよいでしょう。
役員の不正を防止したいときは、取締役会を設置して役員同士を監視させる方法もあります。
また、縦割りの組織をつくると各部署がセクショナリズムに凝り固まり、相互の協力体制を構築できないため、柔軟性も考えておかなければなりません。
人材育成も会社の成長に影響するため、各自の適性に合わせて人材配置できるよう、マネジメント体制の構築や人事評価システムの導入も必要です。
会計・財務や税務の知識
会社の経営者になると、会計や財務、税務の知識も欠かせません。
会計によってお金の流れを記録すると、会社のお金がどこから入り、何に使ったか、または現在どのような状態にあるか把握できます。
また、会計処理は決算書を作成する際のベースになるため、株主などに開示する「財務会計」や、経営状態を分析するための「管理会計」にも役立ちます。
経営者には税務の知識も必要になり、法人税や法人住民税、法人事業税や消費税など、事業活動によって発生する税金はすべて確定申告しなければなりません。
会計システムを使うと税目は自動的に仕訳されますが、節税対策を考える上では税金の知識が必要不可欠でしょう。
税金の申告ミスが発生すると、税務調査の対象になる可能性もあるため要注意です。
法務の知識
経営者に法務の知識があれば、会社と従業員を法律トラブルから守れます。
会社関連の法律には以下のような種類があるため、「どの事業活動が何の法律に基づいているか」だけでも理解しておくとよいでしょう。
- 商取引や契約などに関する法律:民法
- 会社設立や運営などに関する法律:会社法や商法、商業登記法など
- 中小企業の施策などに関する法律:中小企業法
- 人事や労務に関する法律:労働基準法や健康保険法、厚生年金保険法など
- 税金に関する法律:法人税法や所得税法、消費税法など
- 外注業務に関する法律:下請法
- 特許や権利に関する法律:著作権法、特許法、商標法など
- その他の法律:独占禁止法、個人情報保護法など
法律違反は事業の根幹を揺るがす恐れがあるため、経営者が率先してコンプライアンスを遵守しなければなりません。
会社経営に必要なスキル9つ
会社経営に必要なスキルは以下の9種類ですが、すべてを兼ね備えた経営者はごく一部です。
- ヒューマンスキル
- マネジメントスキル
- テクニカルスキル
- 自己変革スキル
- 洞察力
- 決断力
- 好奇心
- 論理的思考
- メンタルの強さ
まず自分の得意分野と苦手分野を分析し、不十分なスキルを補っていきましょう。
各スキルの具体的な内容は、以下を参考にしてください。
ヒューマンスキル
ヒューマンスキルは取引先の開拓や人材育成など、様々な分野に活かせます。
具体的には以下のスキルを指すため、経営者の魅力や人間力ともいえるでしょう。
- コミュニケーション能力
- プレゼンテーション能力
- ファシリテーション能力(円滑な会議進行などの能力)
- リーダーシップ
- コーチング能力
- 交渉能力
- 傾聴能力
- 向上心
会社経営にはすべてのステークホルダー(利害関係者)が関わるため、役員・社員の協力や、取引先・顧客・株主の理解が欠かせません。
経営者に十分なヒューマンスキルがあれば、ビジネスパートナーと良好な関係を構築できるでしょう。
マネジメントスキル
会社経営には人材・モノ・お金の管理が欠かせないため、経営者にはマネジメントスキルが必要です。
マネジメントスキルの構成要素は以下のようになっており、ヒューマンスキルと密接な関係性があります。
- 目標設定や意思決定能力
- 進捗管理能力
- 状況把握する能力
- リスク分析能力
- 業務遂行能力
- コーチング能力
会社が目指すべき目標は経営者が決定し、進捗状況も経営者が管理するため、役員や社員との関係が良好であれば、正確な情報が早く集まります。
情報分析の結果、目標未達の原因が社員のパフォーマンス低下だった場合、コーチングによって本来の能力を引き出す必要もあるでしょう。
また、経営者として高い視座を持ち、問題解決能力のレベルを上げると、マネジメントスキルも高くなります。
テクニカルスキル
テクニカルスキルとは、簡単にいうと現場の仕事を理解し、実務をこなせる能力です。
現場の仕事がわからない経営者は社員の信用を得にくいため、以下のように職種に応じた専門知識や、専門技術があるかどうかを問われます。
- 事務職:事務処理やパソコン操作、資料作成能力など
- 企画職:情報収集や市場の分析力など
- 営業職:コミュニケーション能力やマーケティングの知識、自社・他社の商品知識など
- 販売職や接客職:接客マナーや商品知識、観察力など
経営者がエンジニア出身であっても、経理や営業などの仕事を理解し、一定レベルのテクニカルスキルを習得するとよいでしょう。
自己変革スキル
自己変革スキルとは、会社を取り巻く環境変化に対応し、柔軟に自己改善していく能力です。
マーケティングや商品開発が成功している場合でも、トレンドや顧客の嗜好が変わると、従来の手法では売れなくなるケースが少なくありません。
成功体験がいつまでも続くとは限らないため、経営者が環境変化を敏感にキャッチし、販売方法などを柔軟に変えていく必要があります。
また、「時代や環境が変わったから商品構成も変える」といった追従型の場合、新たな商品を開発する頃には、次のトレンドへ移行している可能性もあるでしょう。
経営者が柔軟に自己変革していると、チャレンジを恐れない社員が集まりやすくなります。
洞察力
会社経営者になると、物事の本質を見極める洞察力も必要です。
たとえば、商品の売れ行きが鈍化した場合、商品そのものや売り方に問題があるのか、他社にシェアを奪われたのか、冷静に分析しなければなりません。
社員のモチベーションが低下しているときは、労働環境や人事評価のしくみなどを見直し、何が原因なのか突き止める必要があります。
経営者に本質を見抜くスキルがあれば、問題が発生してもすぐにリカバリーできるでしょう。
決断力
決断力は、経営者に欠かせないスキルです。
会社が成長すると、新規事業の立ち上げや営業拠点の拡大、他社との提携(アライアンス)などを考えるケースがあります。
重要な経営判断はリスクを伴いますが、決断を恐れると会社が成長する機会を失ってしまうでしょう。
「焦って決める必要はない」「そのうち状況が変わるだろう」などと考えた場合、他社に差を付けられる可能性があるため、経営者の決断にはスピードも必要です。
好奇心
好奇心旺盛な経営者であれば、ビジネスチャンスを掴みやすくなります。
たとえば、顧客からのクレームや社員の不満がヒントになり、ヒット商品の開発に至ったケースは数えるとキリがありません。
また、電車内の広告や他社の看板なども注意深く見ると、自社に足すもの・引くものが見えてくる場合もあります。
自社とは直接関係ないニュースや、家族との会話にもビジネスヒントが詰まっているケースがあるため、経営者のスキルに好奇心は欠かせません。
論理的思考
会社を経営する場合、常に論理的思考が求められます。
トラブルが発生したケースであれば、人・環境・技術・管理の4要素から原因を分析し、論理的に再発防止策を考える必要があります。
商品開発の段階でも、なぜこの商品なのか、誰にどうやって売るのかなど、論理的に考えなければなりません。
感情論だけでは会社が成り立たないため、経営者には論理的思考も欠かせない要素です。
メンタルの強さ
メンタルの強さも経営者の必須スキルであり、転んでもタダでは起きないしたたかさが必要です。
チャレンジに失敗すると誰でも落胆しますが、メンタルの強い経営者はすぐに原因を分析し、改良・改善につなげる強靭さを持ち合わせています。
トラブルが発生したときは「会社の成長に必要」と捉え、プラスに考える思考力が必要でしょう。
会社経営者の役割・仕事内容
会社経営者になると、リーダーとしての役割を担いつつ、社員を支える仕事も発生します。
社員が担う業務と切り分け、経営者は以下の役割・仕事に専念してください。
経営方針の決定
会社を設立するときは、まず経営方針を決めておきましょう。
経営方針が定まると、会社が目指すべき方向や、将来的なビジョンが明確になります。
「5年後に売上げ○○円を目指す」などの方針を決めて、必ず社員と共有してください。
経営計画の実行
会社経営者の仕事には、経営計画の実行もあります。
マーケティングで市場の動向などを分析し、短期・中期・長期の経営計画を策定するとよいでしょう。
経営計画に遅れが生じないよう、ニーズの変化にも柔軟対応してください。
人材の募集と育成
会社経営者には人材を募集し、育成する役割があります。
採用と育成は人事部門や直属の上司などが担当しますが、会社が必要とする人物像は経営者が決定します。
社員育成は会社の成長に連動するため、現場任せにならないように注意してください。
優秀な人材はライバル企業も欲しがるため、公平・公正な人事評価制度を導入し、業務に活かせる資格を取得した社員には、試験費用を補助する工夫も必要です。
社内環境の整備
社内環境は社員のモチベーションに影響するため、経営者による積極的な整備が必要です。
業績に応じたインセンティブがあり、社会保険も完備している会社であれば、社員は十分な能力を発揮できるでしょう。
作業機械を扱う業種や飲食業、車で営業する会社の場合、定期的に安全衛生面をチェックしてください。
会社の資金繰り
会社の資金繰りは経営者の役割になるため、必ず財務の状態を把握してください。
資金繰りは会社経営の生命線ともいえるため、在庫や売掛金がいくらあり、自由に使えるキャッシュがいくらになるか、経営者が理解しておかなければなりません。
在庫や売掛金をすぐに解消できなくても、会社に入るお金と出ていくお金を把握していれば、資金繰りを改善しやすくなります。
また、財務状態を把握している経営者は金融機関が高く評価するため、資金調達のハードルも下がるでしょう。
会社経営者になる方法
会社経営者になる場合、脱サラによる独立開業が一般的なイメージでしょう。
しかし、オーナー会社ではなくても経営者になれるチャンスがあるため、以下の方法を参考にしてください。
独立して経営者になる
サラリーマンやOLが経営者になる場合、会社を退職して独立開業する方法があります。
会社の設立は早くて1カ月半、一般的には3カ月程度かかるため、まず事業計画書を作成し、定款の内容も考えておきましょう。
株式会社の設立は、法定費用が22万前後、合同会社は6万円円程度かかりますが、開業後は自分のアイデアを活かしたビジネス展開が可能です。
雇われの経営者になる
会社オーナーが引退する際、次の経営者を社内や社外から選ぶケースもあります。
自分が会社のオーナーになるわけではないため、いわゆる「雇われ社長」ですが、経営者には変わりありません。
ただし、優秀な業績があるかどうか、経営理念を引き継いでくれるかどうかなど、経営者としての資質を問われるでしょう。
従業員から経営者に昇格する
会社の従業員であっても、経営センスなどを認められると、次の経営者に昇格する場合もあります。
中小企業の場合、次期社長を部長職や執行役員から選ぶケースも珍しくありません。
フランチャイズ加盟で経営者になる
経営者になる場合、フランチャイズに加盟する方法もあります。
加盟金やロイヤリティは発生しますが、経営ノウハウを本部から教えてもらえるため、事業経験がなくても開業可能です。
事業承継で経営者になる
親族が会社を経営している場合、事業承継で経営者になる場合もあるでしょう。
ひとまず入社して業務全体を把握し、次に経営者としての経験を積むケースが一般的です。
会社の吸収合併で経営者になる
M&Aによって会社を吸収合併する際、買収した会社の経営者になる場合もあります。
中小企業は後継者問題を抱えているケースが多く、M&Aも増加しているため、経営を任される可能性があるでしょう。
ただし、M&Aが失敗しないよう、買収する会社の企業価値を入念に調査する必要があります。
まとめ
会社を設立して経営者になる場合、必要な知識は5つ、スキルは9つあります。
すべて兼ね備えている経営者は少ないため、不足する知識やスキルがあれば、セミナーなどに参加して徐々にレベルアップさせましょう。
ただし、レベルアップに時間がかかり過ぎると、ビジネスチャンスを逃し、他社に差を付けられるリスクもあります。
不十分なスキルを補いつつ、経営も安定させたいときは、ベンチャーサポートの無料相談を活用してください。