最終更新日:2022/6/13
会社経営者の年収相場はどれくらい?給料の決め方・変更時の注意点も解説
ベンチャーサポート税理士法人 税理士。
大学を卒業後、他業種で働きながら税理士を志し科目を取得。
その後大手税理士法人を経験し、現在に至る。
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この記事でわかること
- 会社経営者がどれくらいの年収を得ているか、その相場がわかる
- 会社の経営者の年収を決める方法やしてはいけないことがわかる
- 社長や役員の年収を変更する際の注意点を知ることができる
自身で事業を始めたり会社を起業した場合、どれくらいの報酬をもらうことができるのか気になる方も多いでしょう。
そこで、会社経営者の方が平均するとどれくらいの年収を得ているのか、その相場を確認していきましょう。
また、経営者の報酬を決める方法や、報酬の金額を決める際に注意すべき点についても解説していきます。
従業員に対する給料とは異なる点があるため、その内容について確認しておきましょう。
目次
会社経営者の年収相場
まずは会社経営者である役員に対する報酬について調査した結果を解説していきます。
ここでご紹介するのは、労務行政研究所が毎年行っている「役員報酬・賞与等の最新実態」の2020年度版です。
この調査では、全国の上場企業・非上場企業3738社のうち回答のあった141社について集計したものです。
規模別に役員の年収を見ていくと、規模の大きな会社ほど高くなっていることがわかります。
また、役職が高くなるほど規模別の差が大きくなり、役職が低くなると年収の差も小さくなっています。
従業員1,000人以上の会社
一般的に大企業と呼ばれる会社の中でも大きな規模を有している会社であり、この調査においては3分の1の会社が該当します。
これらの会社の役員の年収は、社長で6,166万円、専務取締役で3,639万円、常務取締役で2,693万円となっています。
また、取締役は2,171万円となっています。
従業員300人以上999人以下の会社
従業員の数では若干少なくなりますが、上場企業の中にはこの規模に該当する会社も多くあります。
今回の調査対象の会社の3分の1が該当します。
これらの会社の役員の年収は、社長で4,167万円、専務取締役で2,565万円、常務取締役で2,216万円となっています。
また、取締役は1,786万円となっています。
従業員300人未満の会社
業種や適用する法律によっては、中小企業に分類されることもある規模の会社です。
ただ、上場企業の中にも該当する会社は多くあり、この調査では3分の1の会社が該当します。
これらの会社の役員の年収は、社長で3,334万円、専務取締役で2,268万円、常務取締役で2,043万円となっています。
また、取締役は1,726万円となっています。
社長・役員の年収を決める方法
会社の社長や役員の年収は、社長や役員が自ら決めることとされています。
先ほど紹介した役員の年収の相場を参考にすることもできますが、会社ごとに事情が異なるため、相場どおりにすればいいわけではありません。
そこで、どのように社長や役員の年収を決めたらいいのか、その考え方をご紹介します。
従業員の給料とのバランスを重視する
役員が自分の報酬を非常に多くする一方で、従業員の給料を低く抑えていた場合、従業員の志気に影響する可能性があります。
従業員の給料を犠牲にして役員報酬を支払うような形にならないようバランスをとるのも大切です。
法人税の節税を重視する
会社が多くの利益を計上すると、その分法人税を多く納税しなければならなくなります。
しかし、法人税を支払っても会社には何の得もないことから、会社の費用となる役員報酬を多く支払って、法人税を節税するのです。
ただ役員報酬を多く支払えば、その分役員個人に対する所得税が多く発生します。
報酬を多く受け取った役員にとっては節税にならないことは、考えておかなければなりません。
会社の資金繰りを重視する
役員に対する報酬は、原則として現金で支払いを行わなければなりません。
そのため、現金がなければ役員報酬を支払うことができなくなります。
会社が融資を受けていたりリースを利用したりして、月々の返済を行っていると、資金繰りが苦しい状況となっていることもあります。
このような場合は、安全な資金繰りを優先して報酬の額を決めるようにします。
社長・役員の年収を決めるときにやってはいけないこと
社長や役員の年収を決める方法をご紹介しましたが、逆にこのような決め方をしてはいけない、というものもあります。
ここでは、そのような役員報酬を決める際に注意すべき点についてご紹介します。
自身の生活費を確保できる金額で決める
生活費の金額をもとに、社長や役員に対する報酬を決めるのは、最も間違った報酬の決め方と言わざるを得ません。
そもそも、個人の生活レベルと会社の損益状況には関係がないためです。
生活レベルを下げたくないという理由で、社長や役員に対する報酬の額を一定金額以上にするという考え方があります。
また、新たに会社を立ち上げた場合には、前職でもらっていた給料の額をもとに報酬を決めるというケースもあります。
いずれの場合も、個人として受け取りたい金額があることは理解できます。
ただ、それと同時に会社としての支払能力があるか、あるいは税負担や資金繰りとの関係は問題ないかを検討しなければなりません。
そのような検討を行わずに、個人でほしい金額だけを考えて報酬を決めるのは問題がある決め方です。
役員報酬をゼロにする
会社を新たに立ち上げた場合など、役員報酬をゼロにするという経営者もいるでしょう。
しかしこの会社を経営して自身の収入を得るつもりであるならば、最初から適正な役員報酬を決めておくべきです。
これは、役員報酬をゼロにすることで会社を守ることはできても、個人の生活を守ることはできないからです。
もし、社長や役員個人の生活が破たんしてしまうと、会社の経営にも少なからず影響が出てしまいます。
役員報酬をゼロにすることではじめて会社の経営が安定するのであれば、それはまだ会社の経営状況としては不安定といえます。
適正な役員報酬を設定したうえで赤字になるのであれば、無理に黒字化を目指して法人税を支払っても意味はありません。
それよりも、翌年以降の売り上げを増やして、黒字化できるような経営戦略を考えるべきなのです。
社長や役員の給料・年収を変更するときの注意点
社長や役員に対する報酬は、どのタイミングで変更すればいいのでしょうか。
また、報酬の額を変更する際には、どのような注意点があるのでしょうか。
最後に確認しておきましょう。
事業年度開始から3か月以内に変更する
社長や役員に対する報酬の額は、原則として事業年度開始から3か月以内に変更しなければなりません。
これは、事業年度の途中で役員報酬を変更することは、会社の利益調整につながると税務署が考えているためです。
たとえば、予定より大きな利益が出そうな場合、役員報酬を増額してその利益を圧縮し、法人税の負担を軽減することはできません。
このような利益操作を防ぐため、事業年度の途中で役員報酬を増減することは原則できないのです。
また、役員報酬は株主総会で決議を受けなければならないことも関係しています。
株主総会は、事業年度が終了してから3か月以内に行われますが、役員報酬に変更があればその内容も決議します。
株主総会の承認を受けてから役員報酬の額を変更することとなるため、事業年度終了から3か月以内とされているのです。
なお、役員報酬を事業年度の途中で増減すると「増額または減額した金額×月数」の報酬については会社の損金になりません。
この場合、法人で法人税の負担が増える上に個人に対する所得税も課されるため、大きな税負担が生じることとなってしまいます。
役員報酬の増減が認められる場合もある
ただ、役員報酬を増減する理由がある場合には、損金算入が認められる場合もあります。
増額が認められるのは、役員が新たに就任した場合や、役職が上がった場合です。
従業員から取締役になった場合、あるいは取締役から専務取締役になった場合などが該当します。
一方、減額が認められるのは、役員を退任した場合や役職が降格した場合があります。
たとえば、専務取締役から取締役になった場合などが該当します。
また、会社の業績が悪化した場合も役員報酬を減額しても損金算入が認められる場合があります。
ただ、この場合はかなり要件が厳しく、単に予想より収益が悪化した程度では認められません。
資金繰りに著しく影響が出るような場合や、株主や債権者などの利害関係者に対する影響が出る場合が該当します。
まとめ
会社の社長や役員の報酬は、株主総会の承認を受けなければなりませんが、その金額は自分で決めることができます。
ただ、何を重視して報酬の額を決めるかにより、その金額は大きく変わります。
いったん役員報酬の額を決めると、その事業年度中で変更することは極めて難しくなります。
そのため、後悔することのないようにしっかりと会社の経営状況を把握して決定するようにしましょう。