最終更新日:2024/5/9
閉鎖事項全部証明書とは?必要になるケースや取得方法・手数料など
ベンチャーサポート税理士法人 税理士。
大学を卒業後、他業種で働きながら税理士を志し科目を取得。
その後大手税理士法人を経験し、現在に至る。
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この記事でわかること
- 閉鎖事項全部証明書の概要
- 閉鎖事項全部証明書が必要になるケース
- 閉鎖事項全部証明書を取得する方法
- 閉鎖事項全部証明書の取得手数料
- 閉鎖事項全部証明書を取得する際の注意点
会社(法人)の重要事項は法務局に登記されているので、登記事項証明書を取得すると役員構成や資本金などがわかります。
過去の情報は履歴事項全部証明書に記載されており、役員変更などの情報もわかるため、取引先の調査などに有効活用できるでしょう。
なお、会社の情報を調べる際は、閉鎖事項全部証明書が必要になるケースもあります。
歴史の長い会社は商号や経営形態などを変更している場合があるので、過去の情報を調べたいときは、閉鎖事項全部証明書を取得してみましょう。
今回は、閉鎖事項全部証明書の取得方法や、取得時の注意点などをわかりやすく解説します。
閉鎖事項全部証明書とは
閉鎖事項全部証明書とは、解散した会社などの閉鎖された登記事項が記載されている書類です。
過去の登記情報は履歴事項全部証明書に記載されますが、およそ3年間の変更履歴しかわからないため、それ以前の情報は閉鎖事項全部証明書で確認します。
清算結了した会社や、合併で消滅した会社の履歴事項全部証明書を取得すると、退任した役員や商号変更など、過去に遡って閉鎖された登記事項を調査できます。
役員の在籍期間や本店所在地の移転など、古い情報を調べたいときは閉鎖事項全部証明書を取得してみましょう。
なお、閉鎖の登記情報には閉鎖事項全部証明書と閉鎖事項一部証明書の2種類があり、記載事項が以下のように異なっています。
閉鎖事項全部証明書の記載事項
閉鎖事項全部証明書には、以下の内容が記載されています。
- 会社法人等番号
- 商号(原因年月日、登記年月日)
- 本店所在地(原因年月日、登記年月日)
- 公告をする方法
- 会社成立の年月日
- 目的
- 発行可能株式総数
- 発行済株式の総数並びに種類及び数
- 資本金の額
- 株式の譲渡制限に関する規定
- 役員に関する事項(役員や清算人の氏名など)
- 取締役会設置会社に関する事項
- 監査役設置会社に関する事項
- 登記記録に関する事項
体制変更を何度も行っている会社は役員に関する事項が多いため、閉鎖事項全部証明書が複数枚になるケースがあります。
閉鎖事項一部証明書の記載事項
閉鎖事項一部証明書は必要項目を選択して交付申請しますが、以下の登記情報は必ず記載されます。
- 会社法人等番号
- 商号
- 本店所在地
- 会社の成立年月日
- 公告をする方法
- 会社の解散状況など
法務局で閉鎖事項一部証明書を交付申請する場合、以下の「区」から必要な情報だけを選択できるようになっています。
- 株式・資本区
- 目的区
- 役員区
- 支配人・代理人区
- その他
代表取締役や取締役の就任状況などを調べたいときは役員区を選択し、支配人の住所・氏名や設置状況などを確認するときは、支配人・代理人区を選択してください。
閉鎖事項全部証明書が必要になるケース
会社の閉鎖事項全部証明書は、以下のようなケースに必要です。
事業の変遷や当時の経営体制などを確認したいときは、閉鎖事項全部証明書を取得しておきましょう。
履歴事項証明書よりも前の情報を調べるとき
会社の情報を過去に遡って調べるときは履歴事項証明書を取得しますが、請求日の3年前の1月1日以降の登記情報しかわかりません。
履歴事項証明書の記載内容からさらに遡って会社情報を調べたいときは、閉鎖事項全部証明書の取得が必要です。
たとえば、2024年1月に履歴事項証明書を取得した場合、3年前の2021年の1月1日以降の登記事項しか記載されていません。
2020年以前の登記事項を調べたいときは、閉鎖事項証明書の取得が必要です。
本店の移転や合併などの情報を調べるとき
本店所在地の移転や会社の合併などを調べたいときは、閉鎖事項全部証明書が必要になるケースがあります。
歴史の長い会社は有限会社から株式会社への商号変更や、本店所在地の移転で管轄の法務局が変わっている場合もあります。
合併・吸収によって消滅した会社の登記情報も閉鎖されるので、変更履歴が多い会社情報を調べるときも、閉鎖事項全部証明書が必要になるでしょう。
会社が倒産して清算結了したときも、閉鎖事項全部証明書に記載されます。
役員の就任状況を確認するとき
役員の就任状況についても、閉鎖事項全部証明書で確認する場合があります。
取締役などの就任や解任、在籍期間などがわかれば、当時の経営体制がどのようなものであったか推測できます。
また、役員の経歴や代表取締役の住所、監査役の有無などを調べたいときも、閉鎖事項全部証明書で確認するケースがあるでしょう。
清算手続中などを証明する必要があるとき
自社の状況を証明する必要があるときも、閉鎖事項証明書を取得することがあります。
たとえば、以下のような状況を証明するケースが考えられます。
- 会社が清算手続中であることを証明する場合
- 会社の合併や分割状況を証明する場合
- 清算結了登記の完了を証明する場合
- 支配人や、代理人登記していたことを証明する場合
履歴事項証明書に記載されない閉鎖された登記情報であれば、証明の際には閉鎖事項全部証明書が必要です。
閉鎖事項全部証明書を取得する方法
閉鎖事項全部証明書は法務局へ交付申請するので、以下のいずれかの方法で取得してください。
- 法務局窓口での直接請求
- 法務局の証明書発行請求機で請求
- 法務局への郵送請求
- オンライン請求
具体的な申請方法はそれぞれ以下のようになりますが、閉鎖事項全部証明書も登記事項証明書の一種なので、誰でも取得は可能です。
法務局窓口での直接請求
法務局や登記所で閉鎖事項全部証明書を取得するときは、窓口に登記事項証明書などの交付申請書を提出すれば、即日発行してもらえます。
交付申請書の様式は法務局窓口、または法務局のホームページから取得できるので、必要項目や通数を記入して、閉鎖事項証明書にチェックを入れておきましょう。
なお、コンピュータ化された後の閉鎖事項全部証明書であれば、どこの法務局でも交付申請を受け付けています。
もっとも近い法務局で閉鎖事項全部証明書を取得したいときは、法務省のホームページで所在地や連絡先を確認しておきましょう。
ただし、法務局や登記所は年末年始を除く平日8時30分~17時15分までしか開庁していないので、土日や祝日は交付申請できません。
参考:
登記事項証明書などの交付申請書(法務局)
法務局・地方法務局所在地一覧(法務省)
法務局の証明書発行請求機で請求
法務局によってはタッチパネル式の証明書発行請求機を設置しており、交付申請書を記入しなくても閉鎖事項全部証明書を取得できます。
証明書発行請求機を利用する場合、閉鎖事項全部証明書の受け取りまでは以下の流れになります。
- (1)画面案内に従って必要項目を入力
- (2)入力完了後に発行される整理番号票を受け取る
- (3)整理番号を呼ばれたら整理番号票と引き換えに申請書を受け取る
- (4)申請書に収入印紙を貼付して窓口に提出し、閉鎖事項全部証明書を受け取る
証明書発行請求機を使って閉鎖事項全部証明書を交付申請すると、通常の窓口扱いよりも待ち時間が短くなります。
法務局への郵送請求
郵送で閉鎖事項全部証明書を請求するときは、以下の書類などを同封して法務局へ送付してください。
- 収入印紙を貼付した交付申請書
- 郵便切手を貼付した返信用封筒
郵送請求の場合、法務局に書類が到着した日から3~5日後に閉鎖事項全部証明書が届きます。
法務局へ送付する封筒には赤字で「交付申請書在中」と記載しておきましょう。
オンライン請求
「登記ねっと」を利用すると、閉鎖事項全部証明書をオンライン請求できます。
オンライン請求のシステムにはブラウザ版とソフトウェア版があり、登記事項証明書なども会社や自宅から請求可能です。
どちらも推奨環境があるので、登記ねっとのホームページでブラウザやOSのバージョンなどを確認して利用しましょう。
なお、閉鎖事項証明書はオンライン上で請求できますが、PDFなどの画像データが送信されるわけではなく、郵送で会社や自宅に到着します。
オンライン請求は初期設定が少々複雑ですが、操作に慣れるとほとんどの登記情報を会社や自宅から請求できるので、早めに導入しておくとよいでしょう。
参考:
ブラウザ版のかんたん証明書請求(登記ねっと)
ソフトウェア版の申請用総合ソフト(登記ねっと)
閉鎖事項全部証明書の取得手数料
閉鎖事項全部証明書を取得する場合、申請方法によって以下のように取得手数料が異なります。
- 法務局窓口または証明書発行請求機による請求:1通600円
- 郵送請求:1通600円
- オンライン請求・郵送受取り:1通500円
- オンライン請求・法務局の窓口交付:1通480円
郵送請求は返信用封筒の重さによって郵便切手代が変わるので、4枚以下であれば84円切手1枚で到着しますが、変更履歴の多い会社は4枚を超える場合があります。
閉鎖事項全部証明書の枚数が予想以上に多く、郵便切手の額面が不足していたときは、配達員に不足分を現金で支払いましょう。
閉鎖事項全部証明書を取得する際の注意点
閉鎖事項全部証明書を取得する際は、以下の点に注意してください。
コンピュータ化されていない閉鎖事項全部証明書は取得できる法務局が限定されており、オンライン請求も24時間受け付けではありません。
閉鎖事項全部証明書には請求期限もあるので、注意しておきましょう。
オンライン請求は利用日と時間帯に制限あり
閉鎖事項全部証明書をオンライン請求する場合、以下のように利用日と時間帯が決まっています。
- 利用日:土日や祝日、年末年始を除く平日のみ
- 利用時間帯:8時30分~21時00分
法務局の開庁日と同じく、年末年始は12月29日~1月3日までオンライン請求を利用できません。
自分で印刷した閉鎖事項全部証明書は法的効力なし
登記情報提供サービスを利用すると、オンライン上で閉鎖事項全部証明書を閲覧できます。
法人が利用する際には740円の登録料を支払いますが、商業登記や法人登記の全部事項は1件331円で閲覧できるので、謄本が不要なときは利用すると様々な労力が省けます。
システム利用の時間帯などは以下の通りです。
- 平日:8時30分~23時00分まで
- 土日祝日:8時30分~18時00分まで
12月29日~1月3日までの年末年始も利用できないので、注意しましょう。
ただし、PDFファイルの閉鎖事項全部証明書を印刷しても法的効力がないため、会社が清算手続中であることなどの証明には使えません。
手続きの際に閉鎖事項全部証明書が必要な場合は必ず法務局に申請を行い、発行されたものを使用しましょう。
閉鎖事項全部証明書の請求期限は閉鎖から20年以内
閉鎖された登記事項は保存期間が20年になっているため、閉鎖事項全部証明書の請求期限も閉鎖から20年以内です。
ただし、法務局の繁忙などにより、20年を経過してもすぐには廃棄されず、数日程度は残っている可能性があります。
歴史の古い会社の閉鎖事項全部証明書を取得するときは、保存されているかどうかを法務局に問い合わせた方がよいでしょう。
コンピュータ化される前の閉鎖事項全部証明書を取得する場合
前述したように、閉鎖事項全部証明書はすべてコンピュータ化されておらず、法務局に紙ベースで保存されている場合もあります。
コンピュータ化される前に本店所在地が移転しており、管轄法務局が変わっていると、移転前の管轄法務局に申請しなければ閉鎖事項全部証明書を取得できません。
また、法務局の統廃合により、管轄法務局が遠方になっていると、閉鎖事項全部証明書は郵送請求しかできない可能性もあります。
コンピュータ化された時期も法務局ごとに異なるので、古い登記事項を調べたいときは、事前に法務局へ連絡してみましょう。
まとめ
閉鎖事項全部証明書には変更履歴がすべて記載されているので、商号変更や過去の経営体制などを知りたいときに有効活用できます。
ただし、古い情報はコンピュータ化されていないため、遠方の法務局へ交付申請するケースもあるでしょう。
また、自社の登記事項も第三者に閲覧されるので、定款に変更が生じたときは速やかに変更登記を申請しなければなりません。
社業が忙しく、登記申請や閉鎖事項全部証明書の取得などに対応できないときは、ぜひベンチャーサポートへ相談してください。