最終更新日:2023/6/29
【完全保存版】起業の方法・必要な手続きまとめ
ベンチャーサポート税理士法人 税理士。
大学を卒業後、他業種で働きながら税理士を志し科目を取得。
その後大手税理士法人を経験し、現在に至る。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-tori
起業して自分でビジネスを始めたいと考えた場合、まずは何をしたらいいのでしょうか。
そこで、起業する際に必要な手続きについてまとめました。
個人事業主として起業する場合と法人を設立する場合では、その手続きに大きな違いがあるため、間違えないようにしましょう。
個人で起業するか会社にするか
まずは、起業する際に個人事業主とするか会社を設立するかを決めておかなければなりません。
それは、個人の場合と法人の場合では、その後の手続きが異なるためです。
どちらにしたらいいか分からない場合は、それぞれのメリットとデメリットを比較して考える必要があります。
個人事業主として起業した場合のメリットとデメリット
個人事業主として起業する際の最大のメリットは、手続きが非常に簡単ということです。
これは、法人を設立する場合には、その法人設立のために必要な手続きがあるのに比べて、個人事業主になるために特別な手続きは必要ないためです。
手続きが簡単になることから、開業のためにかかる費用が少なく済むこともメリットとしてあげられます。
また、法人を設立すると、その法人が納税義務者となって法人税の計算をしなければなりません。
これに対して、個人事業主として開業する場合は、確定申告で個人の所得税だけを計算すればいいため、税金の計算を簡単に済ませることができるのもメリットです。
個人事業主として起業する場合のデメリットは、社会的な信用が法人より低いとみなされる場合があることです。
特に大企業と取引をしようとする場合には、大企業が個人事業主とは直接取引をしないこととしているケースもあるため注意が必要です。
どのような相手先と取引を行うかによっては、法人を設立して営業を行うことが必須となることを頭に入れておきましょう。
法人を設立する場合のメリットとデメリット
法人を設立するメリットは、税金計算上、多くの節税策を実行できることにあります。
中でも大きいのは、法人の決算が赤字となった場合には最長10年間にわたってその赤字を繰り越せることです。
この特典を利用すれば、開業当初は赤字になったとしても、その後に発生した利益に対する法人税の税負担を軽減することができます。
個人事業の場合は所得税を納めることとなりますが、赤字となった場合でもその赤字を繰り越すことができるのは3年間と短いため、その間に黒字化できなければ節税にはつながらないのとは大きな違いがあります。
また、法人税は税率が原則として一律(中小企業にはより低い税率が適用される特例があります)であるため、利益金額が大きくなってきたことによる税負担の増加は想定内となりますが、個人事業の場合は、利益金額が大きくなればなるほど税率が高くなるため、想定以上に税額が増えることとなります。
開業当初はあまり関係ないかもしれませんが、最初から大きな利益が見込める場合には、法人として事業を開始するべきなのです。
さらに、個人事業の場合とは逆に、法人とすることによって社会的な信用力が高まる傾向にあります。
法人とでなければ取引できない企業があったり、金融機関からの借入をスムーズに行うことができたりするため、法人とするメリットは大きいのです。
一方で、法人の設立には多くの手続きと費用が必要となることはデメリットです。
開業準備で忙しく、また資金的に苦しい状況の中で法人を設立すること自体が大きな負担になるため、余裕を持って準備することが大切になります。
また、法人税の申告書の作成は、個人事業主が所得税の計算のために確定申告書を作成するよりも複雑なため、すべてを自分で完結させることは難しいと思われます。
そのため、税理士などの専門家に申告書の作成を依頼する必要があり、費用での負担が増える結果となることが考えられます。
個人事業主から法人成りという方法も
ゆくゆくは法人化したいと考えている場合でも、まずは個人事業主として開業し、順調に推移したところで法人にステップアップする方法もあります。
いきなり法人を設立するのではなく、資金的な余裕ができたときに法人を設立することができるため、リスクを軽減することができます。
また、個人事業主のまま利益の金額が大きくなると税負担がかなり大きくなってしまうため、一定の利益が安定して出るようになったら法人化するのは、税負担を減らすうえでも効果的です。
ただし、個人事業主として事業を開始した時と、法人を設立したときの2回にわたって様々な手続きをしなければならなくなります。
特にホームページや名刺などの備品を作る際には、法人設立によって新たに作り直す必要があるため、費用負担が大きくなります。
また、すでに事業を始めた状態で法人を設立するために時間を割かなければならないため、思いどおりに進まない可能性があることも覚えておかなければなりません。
具体的な起業の手続き
起業するといっても、具体的に何をしなければならないのか分からないかもしれません。
起業にあたっては、まず以下の手続きを必ず行わなければなりません。
個人事業主の場合と法人を設立する場合では手続きの内容が異なるため、それぞれ確認しておきましょう。
個人事業主として起業する場合
個人事業主となるために必要な手続きは、税務署に開業したことの届出書を提出するだけです。
住所を管轄する税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」という書式が準備されているため、そこに住所や氏名、個人番号のほか、簡単に事業の内容について記載し提出します。
税務署に行く時間がないという方は、書式を国税庁のホームページからダウンロードできるため、自宅で記載して税務署に郵送することもできます。
なお、この「個人事業の開業・廃業等届出書」は、事業を開始してから1月以内に提出することとされているため、忘れないようにしましょう。
また、個人事業として開業する場合でも、次のような場合には提出しなければならない書類があるため、確認して提出するようにしましょう。
⑴ 青色申告を行う場合
個人事業主の方が青色申告を行うと、赤字を3年間繰り越すことができる、生計を一にする配偶者や子供などに青色事業専従者給与を支払って経費とすることができるなどの恩典があります。
税金計算上の優遇があるため積極的に利用すべきなのですが、複式簿記による経理を行わなければならないという要件があります。
青色申告を行うためには「青色申告承認申請書」を税務署に提出し、その承認を受ける必要があります。
新規に開業する場合は、その開業の日から2月以内に管轄の税務署に提出しなければなりません。
⑵ 給料を支払う場合に源泉所得税について納期の特例を受ける場合
従業員に給料を支払う場合には、その支給の時に源泉所得税を徴収し、事業主が税務署に納付しなければなりません。
個人事業を開始した際に提出する「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出していれば、給与支払に関する届け出は不要とされていますが、従業員の数が10人未満である場合には、毎月支払った給料から徴収した源泉所得税を半年に1回ずつ納付することとする特例を適用できます。
ただし、この特例を適用するためには、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に提出しておかなければなりません。
特例を適用しない場合には、源泉所得税を徴収した月の翌月10日までに納付しなければならないため、できるだけ手間をかけないようにするためには納期の特例を利用するといいでしょう。
法人を設立する場合
法人として事業を行う場合は、まず法人を設立するための手続きが必要です。
法人を設立した後は、その法人が納税を行ったり社会保険に加入したりしなければならないため、個人事業主として開業する場合より多くの手続きが必要となります。
法人の設立に必要な手続き
法人を設立するために必要な手続きは、大きく分けて⑴定款の認証と⑵登記です。
⑴定款の認証
定款とは、会社の組織や運営に関する基本的な規則を定めたものです。
「会社の憲法」とも呼ばれるもので、会社の称号(会社名)や目的(事業の内容)、本店所在地、株式、会社の機関(株主総会や取締役会など)、事業年度などの事項を定めています。
定款を作成したら、その会社の本店所在地を管轄する公証役場の公証人による認証を受けなければなりません。
この認証を受けることによって、定款が正式な手続きによって作成されたものであることを公的機関である公証役場で証明してもらったこととなります。
公証人の認証を受けた定款は、その後の登記の際に必ず必要となります。
⑵登記
法人設立のための登記は、法務局で行います。
法務局に提出する書類は、認証を受けた定款のほか、登記申請書、登録免許税納付用台紙、払込証明書、発起人の決定書、就任承諾書、取締役の印鑑証明書、印鑑届書など多岐にわたります。
このうち、登記申請書はパソコンで作成するか黒インクのボールペンなどを使って作成します。
法務局のホームページには書式や記載例があるため、これにしたがって作成することができます。
また払込証明書は、会社の資本金を払い込んだことを証明するものです。
資本金の払込がされた発起人代表者の通帳のコピーを提出することとなります。
印鑑届書は、会社の実印を登録するために必要な書類です。
必ずしも設立の際に登録しなくても構いませんが、いずれ必要となるため、通常は設立の際に一緒に登録を行います。
法人の印鑑を準備しておくと同時に、法務局に用意されている用紙に必要事項を記載することとなります。
税務署への手続き
法人を設立し登記が完了すれば、その法人の所在地を管轄する税務署に各種届出を行う必要があります。
⑴ 法人を設立したことの届け出
すべての法人は、設立してから2月以内に「法人設立届出書」を管轄の税務署に届け出なければなりません。
この届出書を提出する際には、ほかに定款、登記事項証明書、株主名簿、設立趣意書、設立時貸借対照表を添付しなければなりません。
⑵ 青色申告の承認申請
法人税の申告の際に青色申告を行うと、赤字を最長10年間繰り越すことができる、特別償却や税額控除により税負担を軽減することができるといったメリットがあります。
ただし、個人事業主が青色申告を行う場合と同じように、法人が青色申告を行うためには複式簿記による帳簿を作成しなければならないなど、どのような法人であっても青色申告が自動的に認められる訳ではありません。
青色申告を行おうとする法人は、法人設立後3か月もしくは設立事業年度終了日のいずれか早い日の前日までに「青色申告の承認申請書」を管轄の税務署に提出する必要があります。
⑶給与を支払うことの届け出
法人が従業員や役員に給料や報酬を支払う際には、その支払いの際に源泉所得税を徴収しなければなりません。
源泉所得税を徴収した法人は、その徴収をした月の翌月10日までにその源泉所得税を納付しなければなりません。
この一連の手続きを行うために、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を税務署に提出しなければなりません。
また、給与や報酬を支払う対象者が10人未満の場合は、源泉所得税の納付を毎月ではなく半年に1回(1月・7月)とすることができます。
毎月納付書を作成して税務署や金融機関の窓口で納付するよりも手間がかからないため、特例が適用できる場合には利用する会社が多くなっています。
ただ、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出しないと適用が認められないため、適用を考えている場合には忘れずに提出しましょう。
なお、従業員を雇う予定がない場合でも、自分の報酬を支払うためには「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」の提出が必要ですので、忘れないようにしましょう。
社会保険に関する手続き
社会保険に関する手続きとして、⑴健康保険や厚生年金への加入手続きと、⑵労働保険に加入する手続きがあります。
⑴ 健康保険や厚生年金への加入手続き
法人はその規模の大小に関係なく健康保険と厚生年金の加入義務があるため、最寄りの年金事務所で手続きを行う必要があります。
具体的には、会社設立から5日以内に「健康保険・厚生年金保険新規適用届」、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」、「健康保険被扶養者(異動)届」の各種届出書を提出しなければなりません。
なお、これらの届出書は日本年金機構のホームページからダウンロードすることができ、窓口での提出のほか、郵送でも受理してもらうことができます。
「健康保険・厚生年金保険新規適用届」は、はじめて健康保険や厚生年金に加入手続きを行う際に提出するものです。
会社の登記事項証明書の原本を提出しなければなりません。
「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」は、法人の役員や従業員として健康保険や厚生年金の被保険者となる人について、その詳細を記載して提出するものです。
「健康保険被扶養者(異動)届」は、役員や従業員について、その配偶者や子供、父母などの扶養親族がいる場合にその詳細を記載して提出するものです。
被扶養者の健康保険被保険者証を添付しなければなりません。
いずれの書類も、提出期限が会社設立から5日以内と短いため、準備できるものはあらかじめ準備しておくといいでしょう。
また、従業員を雇用する予定のない場合でも、自分が役員となって報酬を受け取る際には関係があることから、必ず手続きをしなければなりません。
⑵労働保険に加入する手続き
一般的に労働保険と呼ばれるものには、労災保険と雇用保険があります。
①労災保険
労災保険とは、従業員が業務をしているときや通勤の途中でけがをしたり病気になったりした場合に、その治療費などを補填する制度です。
仮に亡くなった場合には、その遺族に保険給付を行うケースもあります。
正式には労働者災害補償保険という名称で呼ばれます。
従業員を雇用した日の翌日から10日以内に「保険関係成立届」を労働基準監督署に提出しなければなりません。
「保険関係成立届」を提出する際には、会社の登記事項証明書、会社あてに届いた郵便物または公共料金の請求書か領収書、会社の事業内容が分かる営業許可証または納品書・請求書・領収書などの書類、労働者名簿、賃金台帳、出勤簿またはタイムカードなどを添付書類として提出しなければなりません。
また、従業員が10人以上いる場合には、「就業規則届」もあわせて提出しなければなりません。
また、保険関係が成立した日から50日以内に「労働保険概算保険料申告書」を労働基準監督署に提出しなければなりません。
「保険関係成立届」と一緒に提出し、その後50日以内に保険料を納付するのが一般的な流れとなるので、一緒に手続きをしておきましょう。
②雇用保険
雇用保険とは、従業員が失業した際にも生活を安定させて、再就職先を探すことができるように失業給付を行う制度のことです。
失業保険と呼ばれることもありますが、正式には雇用保険という名称です。
会社設立当初から従業員を雇用することとなった場合は、会社設立の翌日から10日以内に「雇用保険適用事業所設置届」をハローワーク(公共職業安定所)に提出しなければなりません。
また、従業員を雇用した月の翌月10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」をハローワークに提出しなければなりません。
「雇用保険適用事業所設置届」は、従業員を雇用する事業所を設置したことを届け出るものです。
労災保険の保険関係成立届、会社の登記事項証明書、労働者名簿、賃金台帳、出勤簿またはタイムカード、雇用契約書を添付書類として提出しなければなりません。
このうち、労災保険の保険関係成立届は、先に説明した労働基準監督署での手続きにより受理されたものが必要となります。
「雇用保険被保険者資格取得届」は、従業員を雇用保険に加入させるための書類です。
従業員を初めて雇用する場合には、労働者名簿、賃金台帳、出勤簿またはタイムカード、雇用契約書などの書類を添付するように求められます。
これらは「雇用保険適用事業所設置届」を提出する際の添付書類と同じなので、一緒に手続きするのがおすすめです。
起業にかかる費用
自分で事業をはじめようと思ったときにネックになるのが、金銭的な負担です。
ここでは、個人事業主となる際に、あるいは法人を開設する際に、法律上定められている費用について解説します。
個人事業主として起業する場合
個人事業主となるためには、税務署に届出書を提出するだけと説明しました。
このことから分かるように、個人事業主になるための法定費用はありません。
法人を設立する場合
法人を設立するために定款の認証を受けたり、登記を行ったりしなければなりません。
そして、この時に費用がかかります。
⑴ 定款の認証
作成した定款を公証役場に持ち込み、公証人の認証を受けなければなりません。
この認証を受ける際に5万円の手数料がかかります。
また、作成した定款を紙に印刷している場合には、4万円の収入印紙を貼らなければなりません。
定款の作成方法には、紙に印刷するほか電子定款としてデータを作成する方法もあります。
ただ、電子定款を作成するためにはいくつかの要件をクリアしなければならず、自分ですべてを行うことは難しいと考えられます。
そうすると、電子定款の作成を専門家に依頼する必要があることから、かえって費用がかかる可能性もあります。
どちらを選択するかは費用面だけでなく、法人設立のための作業をどこまで自分でできるかも考慮したうえで決めるようにしましょう。
⑵登記
法務局で法人の設立登記を行う際にも、費用がかかります。
登記を行う際には、登録免許税と呼ばれる税金を負担しなければならないためです。
株式会社を設立する際の登録免許税は、①資本金の0.7%と②15万円のいずれか高い方の金額となります。
つまり、株式会社を設立する際は最低でも15万円の登録免許税が必要になります。
一方、合同会社を設立する際の登録免許税は、①資本金の0.7%と②6万円のいずれか高い方の金額となります。
合同会社を設立する場合は、最低6万円の登録免許税が必要になる計算です。
以上の結果から、会社の設立に関する手続きをすべて自分で行う場合、株式会社を設立するのであれば定款の認証+登記で最低24万円、合同会社を設立するのであれば定款の認証+登記で最低15万円が必要となります。
また、法人を設立する際には、法人の印鑑を作成し法務局で印鑑登録しなければなりません。
印鑑代は法定費用ではありませんが、この印鑑を作成するために別途費用がかかることは覚えておく必要があります。
起業に必要なものとは
個人事業主としてであっても、法人としてであっても、起業するにあたって必要なものは手続きやその費用だけではありません。
実際に仕事を確保していくために必要なツールは数多くあります。
また、その事業を継続していくために必要なものもあります。
ここでは、事業を開始し継続していくために必要なものについてまとめました。
起業する際に必要となるもの
起業する際に一番ネックとなるのは、知名度がほぼゼロであるため、仕事を確保することが極めて難しいことです。
そのため、どのような事業を行っているのかを知ってもらうための広告宣伝を行わなければなりません。
また、単なる知名度の上昇だけでなく、個人や会社の信頼性を上昇させるためにも必要なものが数多くあります。
⑴ ホームページ
ホームページを開設したからといって、すぐに仕事を獲得できるわけではありません。
しかし、ビジネスチャンスを広げておくとともに、どのような事業を具体的に行っているのかを知ってもらうためのパンフレット代わりに、また実際に事業を行っていることの証明としても必須のツールとなっています。
自分でホームページを作るのは時間的、技術的に難しいため、業者に依頼することになるでしょう。
ホームページは一度作れば終わりではなく、その後の維持・管理費やサーバー使用料などもかかるため、トータルのコストを比較して業者を選ぶ必要があります。
⑵名刺
ホームページはあくまで個人事業主や会社の窓口にすぎず、実際に仕事を獲得するためには直接会って話をしなければならないというケースが多いのは、今でも変わりません。
そのため、直接会った時に相手に渡す名刺は、今でも必要不可欠な営業ツールの1つです。
一番安く名刺を作るには、名刺用の用紙を買ってきて自分で印刷する方法があります。
しかし、紙質や印刷の技術などは業者に依頼した場合に比べて格段に落ちてしまいます。
初めて会った人の印象を残すこととなる名刺は、あまりに費用をかけずに作成すると、悪い印象を残してしまうこともあるため注意しましょう。
⑶挨拶状
開業直後に起業したことを知らせることができるのは、昔からの友人や以前からのビジネス上の関係者など、人数としてはわずかな人だけです。
しかし、そのような人たちに起業したことを知らせることで、直接仕事をもらったり、間接的に業者を探している人を紹介してもらえたりして、仕事を獲得するチャンスが生まれます。
挨拶状を送ることができるチャンスは何度もありません。
起業したことや、どのような事業を行っていくのかを明確に記載した挨拶状を送っておくことで、その後のビジネスチャンスを逃さないようにしましょう。
⑶ パンフレット
挨拶状だけで事業の内容を伝えきれない場合は、事業内容を伝えるためのパンフレットを作成し、一緒に見てもらうといいでしょう。
事業の内容はホームページにも載せることができますが、検索しなければ見てもらえないうえ、誰でも見られるわけではありません。
そのため、まずはパンフレットで少しでも多くの人の目に触れるようにしましょう。
事業を継続していくために必要なもの
事業を開始し、その事業を継続していくうえでは、事業を行うための場所を確保し、多くの設備や道具を使用しなければなりません。
ここでは、すべての人に共通して必要となるものをいくつかあげます。
⑴ 事務所やオフィス
事業を行う場合には、そのための場所が必要となります。
製造業であればそのための作業場が必要となりますし、小売業であれば商品を並べることができると同時に、客が入りやすい店舗が必要です。
一方で、特別な事務所を必要としない、あるいはアパートの1室があればそれで充分というケースも考えられます。
例えばネット上でのビジネスを行う場合、来客がほとんどない事業を行う場合、従業員を雇用する予定のない場合などです。
このような場合は、どの程度の事務所が必要となるのか、あるいは事務所を用意する必要がないため、自宅で開業してもいいのかを考えるようにしましょう。
いったん事務所を構えた場合に、その後移転するのは簡単な話ではありません。
特に法人を設立した場合は、法人の所在地を変えると登記をし直す必要があるため、できるだけ途中で変わらなくても済むような場所を探しておくのがいいでしょう。
また、自宅で開業する場合は、事務所の賃料を支払う必要がないため、資金的には大きなプラスとなります。
一方で、自宅と事務所を分けていないことから公私混同となる可能性があること、特に税金計算を行ううえで経費と家事費をどのように分けるかが問題となるケースがあることには注意が必要です。
⑵ 事務用品
パソコンやプリンター、固定電話や携帯電話は事業を行ううえで欠かせないものとなっています。
これらの中には、毎月の使用料や固定費を負担するものもあるため、過剰投資にならないように注意しましょう。
またパソコンは、個人事業や法人の収支計算を行ったり、請求書を発行したり様々な業務に使用します。
本業でパソコンを頻繁に使用する場合には、本業用のパソコン以外に経理や請求業務を行うためのパソコンを準備しておくと、作業の効率化を図ることができるはずです。
⑶ 広告費
ホームページは一度作れば終わりではなく、その内容を適宜更新していく必要があります。
また、宣伝用のチラシやパンフレットを作ったり名刺を作ったりして、常に広告活動を行う必要があります。
広告を行えばすぐに売り上げが伸びる、というわけではありませんが、少しでも多くの人の目に触れるように、地道な活動を行うことが必要です。
起業するにあたっての注意点
起業する際に必要なものは、各種手続きや資金だけではありません。
起業にあたっては、その事業に対する根本的な知識と意欲、そして綿密な計画が重要です。
ここでは、起業前に検討しておくべきポイントについて解説していきます。
注意点①資金繰りに無理はないか
起業しようとしたときに、何百万円もの資金が必要になるため、そのための開業資金を準備している人は多くいます。
しかし、開業後に資金繰りで苦労しないためには、開業資金だけではなくその後の運営資金をしっかり確保するための準備が必要です。
一番大事なのは、事業を行う中で売り上げを確保し、そのお金で次の経費を支払っていくことです。
したがって、売り上げを確保することが事業継続のためには最も重要なことだということが分かります。
また、確保した資金をそのように運用するかで頭を悩ませる方もいるかもしれませんが、基本的に事業で獲得した資金は次の事業のために使うお金であるため、上手に運用して増やすという考えは捨てなければなりません。
特に株式投資やFXなど元本割れのある金融商品はリスクがあるうえ、日々の値動きに気を取られると本業に集中できなくなる可能性もあるため、よほどの余剰資金でない限りはお勧めできません。
また、資金繰りを考えるうえでは、金融機関からの借入をするかどうか(できるかどうか)を検討する必要があります。
借入金はその後の返済に追われるイメージがあるため、できれば避けたいと考えている人も多いと思います。
当然、借入金がない状態で事業を拡大できればいうことはありません。
しかし、事業を拡大するための設備投資を行う際に、手元資金だけでは足りないことも考えられます。
そして、このような場合に借入を行うのは悪いことではありません。
設備投資を行った結果、売り上げが増加する場合や、売り上げの増加には直結しなくても、業務の効率化を図ることができれば事業上の収支は好転するため、借入をすることにも意味があります。
一方で、特別な設備投資を行ったわけでもないのに、運転資金が足りないからという理由で借入をしようとする場合は要注意です。
借入をしても一時的に資金繰りが楽になるだけで、根本的にお金が足りていない原因を突き止めなければ何の解決にもなりません。
また、運転資金が足りないということは、その事業から利益を生み出せていないということです。
しばらく事業を継続しても資金繰りが楽にならない場合には、何か無駄遣いはないか、収益として計上すべき売り上げを請求できていないのではないか、といった点を見直す必要があります。
注意点②従業員を雇用する計画はあるか
事業の拡大に欠かせないのは、従業員を雇用することです。
1人ですべてを行うのには限界がありますが、人材を確保できれば、これまでの何倍もの売り上げをあげることも可能になります。
しかし、従業員を雇用することには、様々な難しい面があるのも事実です。
どのように優秀な人材を確保したらいいのか、給料や賞与はいくらくらい払えばいいのか、福利厚生はどのようにすべきか、といった悩みは尽きません。
またその人が辞めてしまった場合には、どのように事業を継続していくかを考えなければならなくなります。
従業員を雇用した場合に特に注意が必要なのは、給料は毎月の固定費となり、支払わないわけにはいきません。
たとえ事業が低迷し、その月の売り上げが大きく落ち込んだとしても、その分給料を下げて支払うわけにはいきません。
そのため、事業が順調に推移し、かつ人を増やすことで更なる拡大が見込まれる状態でなければ、従業員を雇用することがかえって全体の足を引っ張る結果になるのです。
また、従業員を雇用した際に発生するのは給料や賞与にとどまりません。
従業員が加入する社会保険(健康保険・厚生年金・労働保険)については、事業主としての負担も発生します。
事業主の社会保険料負担割合は給料として支払う額の15%を超えることから、社会保険料の負担まで考えて人件費となることを覚えておきましょう。
注意点③事業計画はしっかりしているか
起業する際に、なんとなくぼんやりとしたイメージはあっても、書面にその計画を書き起こすことまでしているケースは少ないかもしれません。
しかし、きちんとした事業計画を作成することができていれば、起業の際もその後の事業運営においてもスムーズに進めることができるはずです。
特に、どれだけの売り上げと利益を見込んでいるかについては、事業計画という形で書面にすることと、具体的な形にしないままぼんやりと考えているだけでは違いがあります。
事業計画を作成するために、どのような費用がかかるのかを考えている場合には、予想外に費用がかかるといった事態に陥る可能性は低く、また事業計画の段階で費用の削減や効率的な経営までイメージしていることも少なくありません。
しかし、具体的な費用の金額をイメージできていないまま開業してしまうと、次々に発生する費用支払のために手元の資金では足りなくなることも考えられるのです。
また、資金繰りに苦労すると、効率的な経営や費用の削減を行う余裕もなくなってしまうため、悪循環に陥りやすいのです。
開業してからは、時間的な余裕もなく過ごすことになる可能性が高くなります。
ぜひ開業前に、事業計画を作成しておくようにしましょう。
まとめ
自分で事業を起こすアイデアは持っていても、実際にどのように事業を始めればいいか分からない場合は、これらの手続きを行うようにしましょう。
特に、最初から法人を設立して事業を始めたい場合は、まず法人を立ち上げるところから進めていかなければなりません。
非常にすべきことが多く、また費用もかかるため、時間的にも金銭的にも余裕をもって取りかかるようにしましょう。
また、事業のアイデアを持っている場合でも、具体的な売り上げや費用の額をイメージできていなければ、資金不足や赤字のために破たんしてしまう可能性があります。
どの程度の利益を確保できるのか、あるいは資金繰りに問題はないのかといった運営上のリスクを把握したうえで、できるだけ開業前にできる準備はしておきましょう。
開業した後はとても忙しくなるため、できるだけ開業前に計画を立てるとともに、問題点について対処しておくようにしましょう。