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最終更新日:2022/6/7

起業で失敗して借金を背負う人の共通点と失敗しないコツ

税理士 鳥川拓哉
この記事の執筆者 税理士 鳥川拓哉

ベンチャーサポート税理士法人 税理士。
大学を卒業後、他業種で働きながら税理士を志し科目を取得。
その後大手税理士法人を経験し、現在に至る。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-tori

この記事でわかること

  • 起業に借金が必要な理由
  • 起業で失敗して借金を背負う人の共通点
  • 失敗しないためのコツ

起業を志す人にとって、「借金を背負う」ということからはなかなか逃れられません。

その事実をプラスのモチベーションに変えられる人もいれば、プレッシャーに感じてしまう人もいると思います。

プレッシャーに感じる人の多くは「起業に失敗して借金を背負ってしまったらどうしよう……」という思いに駆られるものです。

実際に、起業に失敗して借金を背負う人は数多く存在しています。

その人たちはある一定の共通点を持っているものです。

これから起業にするにあたって、その共通点を知っていれば、事前に対策を打って成功の可能性を高めることは十分可能です。

この記事では、その失敗しないためのコツについて詳しく解説していきます。

なぜ借金を背負うことになるのか

起業するとなぜ借金を背負うことになるのでしょうか。

それはどんな事業にも資金は必ず必要であり、その全てを自己資金で賄える人はほとんどいないからです。

借金をして事業を運営していくとそれがどんな効果をもたらすのか、それらを適正に認識できていると、借金をするということに対してポジティブなイメージを持つこともできるようになるでしょう。

その具体的な事実を確認してみましょう。

事業を成長させていく

事業を成長させて、継続的に利益を生み続けるためには

  • ・新しい設備の取得
  • ・新しい人材の確保
  • ・ノウハウの獲得、蓄積

これらの事柄を適切なタイミングで実行していくことが欠かせません。

変わり続ける社会情勢に対応し続けるには、すぐに次の一手を打っていくこと・打てる状態でいることが必要だからです。

そのためには、原資となる資金が必要です。

これらを自己資金で賄えなければ、借金をして回していくことになるのです。

銀行に実績を作る

借金を背負うという事実は銀行に対して、次の借入へと繋がる実績を作ることになります。

前述のように、絶えず事業を成長させていくには、適宜借金をしていくことがどうしても必要です。

「必要な時に必要なだけ」の借入ができるという状態は、実は実現できていない企業が多いものです。

その結果、事業が行き詰ってしまうことも珍しくありません。

生き残っていくためには、銀行に実績を作っておき、いつでも借りられる状態にしておくのも大事なことなのです。

資金ショートは即倒産に繋がる

事業運営は赤字になると倒産する、と認識している方が少なくありませんが、赤字でも倒産していない会社はたくさんあります。

しかし、キャッシュ(現金)が回らなくなると会社は倒産します。

黒字であろうとも、支払いが滞りなくできるだけのキャッシュがなくなると「黒字倒産」という形で事業は終わってしまうのです。

キャッシュが回っている、ということが事業の生命線となっています。

利益が出ていなかろうと、借金をしてでも回せるだけのキャッシュを手元に作っておくという状態が事業運営には欠かせないわけです。

借金で背負う責任の範囲

起業にあたって借金をして、失敗した際にその責任が及ぶ範囲について、大きく分けて2つ把握しておく必要があります。

個人事業主の場合

個人事業主の場合、個人として事業を営んでいるので、その責任はその個人がどこまででも背負うことになります。

無限の範囲で責任を負うからこそ、自分の名前を看板にして事業が営めるわけです。

法人の場合

会社の設立時には出資金が必要であり、経営者が出資をしている場合は、会社が抱えた負債に対してその出資額を限度として、その範囲内で責任を負うことになります。

法人での借入に際して連帯法証人になっている場合や、他者に損害を与える事態が発生した場合などは、相応の責任を負うこともあります。

起業で失敗して借金を背負ってしまう人の共通点

一念発起して起業する人はたくさんいますが、その大半が事業失敗に終わってしまいます。

その際に残った借金を背負って生きていく人がたくさんいるわけです。

こんな事態に陥る人が抱える共通の特徴について、それぞれ詳しく見てみましょう。

会社をすぐに辞める

独立したい、という気持ちだけですぐに会社を辞めてしまう人がいます。

「自分で事業を興す」ということと「会社を辞めたい」という気持ちが同居している人ほど、この選択をしてしまいがちです。

特に「独立をする」という言葉の響きが、同じ会社で働く同僚たちにも輝かしく映り、ある種のパフォーマンス的にその決断をしてしまうこともあります。

しかし、実際に独立して事業が軌道に乗るまでは、どんな職種であろうと売上が大きく変動することが珍しくありません。

その間に資金が尽きて、継続的に事業を営んでいくことができなくなる事態になるわけです。

準備が不足している

会社をすぐに辞めてしまう人にもよく見られる傾向ですが、綿密な事業計画がないままに事業を興して失敗してしまう人がいます。

アイディア1つでスタートさせてしまい、事業が行き詰ってしまうケースです。

金融機関が融資をする際の判断材料にもなる事業計画書さえまともにないような状況では、十分に融資を得られるわけもなく、続けていくことができなくなってしまいます。

無駄遣いが多い

事業を運営していくうえでは、

  • ・ないと事業に支障が出るもの
  • ・あった方が事業に有利なもの

が次々に目の前に現れます。

思いつくままにこれら全てに資金を使ってしまい、手元の資金が尽きてしまう人が多いものです。

「今の事業の状況においては何を優先すべきか」という視点が抜け落ちてしまっている人によくある傾向です。

サラリーマンの価値観が抜けていない

無駄遣いをしてしまう人の中には、「独立して事業主になった途端に気が大きくなる」タイプの人がいます。

サラリーマン時代の価値観が抜けていない人ほど、このタイプに当てはまるでしょう。

経営者とサラリーマンでは、視野にある事業の規模、責任の及ぶ範囲など、見えている景色が全く違うものです。

走り始めたばかりの経営者がその現実を理解していないと、サラリーマン時代の価値観で見栄をはってしまい、散財をしてしまう傾向があるものです。

資金が底を尽きてしまうことへの危機感の弱さが、この事態を招くことになります。

失敗しないためのコツ

起業で失敗して借金を背負ってしまう人の共通点を踏まえたところで、失敗をしないためにはどのような点に気を付けて取り組めばよいのでしょうか。

失敗例から学び取れる、失敗しないためのコツについて見てみましょう。

小さく始めてみる

独立をしなくても「週末起業」という形で起業することは可能です。

本業のサラリーマンとしての就業日ではない、休日にだけ稼働する起業方法です。

それだと限られた時間でしか事業展開できないから成長させるのは難しい、と感じるかもしれませんが、小さな規模から始めてみるということが大事なのです。

思い描く規模の事業に繋がるスモールビジネスを、まずは実験的に休日という限られた時間で展開していくのです。

十分な利益がそこで見込めなくても、そこで得られるものは多く存在します。

  • ・自分の実力の程度が把握できる
  • ・アイディアの実現性が確認できる
  • ・限られた時間に対するマネジメントに強くなる
  • ・独立後にもつながる顧客を獲得できる

など、独立後にも役に立つことばかりであり、仮に失敗をしたとしても、規模が小さいので金銭的なダメージも少なく済みます。

そういった意味では、週末起業から始めない手はありません。

週末起業の一番のメリット

週末起業として小さく始めてみることの一番のメリットは、「安定的な収入源を確保したまま、実験的にアプローチができる」ということです。

新しく事業を手掛けていくときは、売上がどうしても不安定になってしまうものであり、その売上の波に一喜一憂しているようでは、冷静な経営判断を下すことが難しくなってしまいます。

その売上に全ての生活費がかかっている状態であれば、そうなってしまうのも無理のない話です。

一方で、本業としてのサラリーマン収入を得ながら週末起業としてスモールビジネスを展開する場合は、事業がうまくいかずに売上がままならない時でも、生活費を本業で賄えているので、安心感を持って次の施策へと取り組むことができます。

「お金がない不安」を持たない状態で、独立できるまでのビジネスモデルにブラッシュアップしていけるのが最大の魅力です。

計画を綿密に立てる

アイディア1つで勢いで起業してしまう人は、その計画性の無さがいずれその経営状況を苦しめる事態を招いてしまいます。

事業計画を綿密に立てることは、事業を成功に導くための基本中の基本です。

しかし、実際は多くの企業や個人事業主がそのことに気付かないまま、目の前の仕事に取り組んでしまって、経営を行き詰まらせてしまいます。

事業計画書には、

  • ・経営理念
  • ・ビジネスモデル
  • ・人員計画
  • ・収支計画
  • ・資金繰り計画

などの事業には欠かせない骨組みとなる要素を記載していきますので、作成途中で詰めが甘かった部分に気付いていくことも可能です。

計画を綿密に立てること、つまり事業計画書を完成させるということから始めていきましょう。

財務計画の重要性

事業計画書の中で核となるのが、収支計画・資金繰り計画などの「財務計画」になります。

どんなに優れたビジネスモデルを作ることができても、それが確かな収益を生んで、事業の資金が健全に回っていかなければ、事業を継続していくことはできません。

どこまでいっても、事業の中心には「お金が回っている」状態があるのです。

この財務計画の詰めが甘い状態では、どれぐらいの借金を背負えばいいのかがわからず、金融機関も希望額の根拠がないのであれば、融資をすることができません。

この財務計画を作り上げていることが何より大切なのです。

立てた計画と現状を定期的にすり合わせて、軌道修正していくことも欠かせません。

計画通りに現実が進むことなど、あまり期待できないからです。

最低でも月に一回は、この財務計画を振り返る時間を設けましょう。

お金を使わない方法を考える

事業運営にはお金が必要であることは前述した通りですが、事業が軌道に乗っていくまでには、できる限りの出費を抑える必要もあります。

「どれだけ稼げればこの事業は成り立つのか」という基準は、必要な支出によって変わってきます。

駆け出しの事業において、この支出ばかりがかさんでいては、資金が尽きて事業が行き詰ってしまいます。

  • ・何にお金を使うべきかの優先順位を付けること
  • ・お金を使わない代替案は無いかを考えること

これが欠かせないポイントになります。

事業運営を円滑に進めていくには、「収入をできる限り大きく、支出をできる限り小さく」を目指すことがやはり基本になります。

事業は失敗するものという前提に立つ

起業して、事業が軌道に乗り始めるまでに計画が成功し続けることはまずありません。

どんな事業においても、失敗を繰り返して、その反省点を活かして成功に繋がっていくものです。

言い換えると、失敗を許容できる事業運営でなければ成功できないということです。

頭の中で描く限りは、どんなアイディアも秀逸に映りますが、実際にそれを市場に展開していくと、思いもしなかったフィードバックを得ていくものです。

これこそが次の成功につながる大事な要素になっていきます。

事業は失敗するもの、として計画を立ててください。

起業で失敗して借金を背負ってしまう人は、失敗を失敗のまま終わらせてしまう人なのです。

金銭的ダメージが少ない起業

失敗を前提とする起業を考える時は、失敗した時の金銭的ダメージが少ない起業方法をいかに選ぶかということが大切になります。

たとえば、「店舗型ビジネス」と「ネットショップ型ビジネス」であれば、どちらが金銭的ダメージが少ないかは一目瞭然です。

現実の店舗を持ってしまえば、そこの契約に至るまでにかかるコスト・維持していくのに必要なコストがそれなりにかかります。

一方、ネットショップであれば様々な既存プラットフォームが展開されているので、ほとんど無料で展開していくことも可能ですし、その維持費も店舗型ビジネスにかかるコストの比になりません。

失敗した時に何度もチャレンジし直すためには、必要コストが低い選択肢を選ぶことが欠かせない条件なのです。

まとめ

起業をするということは、借金をするということとほぼ等しい行為といえます。

その事実にプレッシャーを過剰に感じているだけでは、成功を手にするのは難しいでしょう。

失敗しないためのコツを振り返り、財務計画を中心とした事業計画を綿密に立てながら、成功へと繋がる起業を実現していきましょう。

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