最終更新日:2020/4/3
新規事業で活用できる各種補助金・助成金について|申請方法と注意点も解説
新規事業を立ち上げることは企業の発展に有効な手段ですが、資金に十分な余裕がなければ途中で頓挫してしまう場合も少なくありません。
また、金融機関などから資金調達をすることも簡単ではないでしょう。
そんなときに役立つのが、国や自治体が実施している補助金や助成金の制度です。
原則として返済の必要がないため、返済のための資金繰りを気にせずに資金を得ることができます。
今回は、新規事業に活用できる各種の補助金・助成金の制度についてご紹介します。
事業の立ち上げには資金が重要
既存の事業だけでは十分な利益や発展を得られない、会社を積極的に大きくしていきたいなどの場合には、新規事業の立ち上げが有効な選択肢になります。
一方で、新しい事業を立ち上げても、それを維持して長期間継続していくことは簡単ではない面もあります。
資金や資源が潤沢な大企業でも新規事業は難しいものですから、中小企業であれば十分な考慮やタイミングも重要になってきます。
せっかく新規事業を立ち上げても、それが軌道に乗って成功する確率は1%にも満たないという話もあり、ほとんどの新規事業は成功に至らないとも言えるかもしれません。
新規事業を立ち上げたが失敗してしまったというケースだけでなく、事業を立ち上げる段階にも至らず計画が頓挫してしまった、という場合もあります。
新規事業の立ち上げにさえ至らない大きな理由は、新規事業を開発するためのコストが想像以上に会社の経営を圧迫する点にあります。
新規事業がある程度の収益を上げたとしても、新規事業の立ち上げによる支出や負債などが多ければ相殺されてしまいます。
利益を出費が上回る場合は、新規事業を維持するのも困難でしょう。
新規事業を立ち上げ、かつそれを長期間にわたって維持していくためには、十分な資金があることが重要なポイントになります。
補助金や助成金は新規事業に有効
新規事業の立ち上げと維持には資金が必要ですが、十分な資金を確保すること自体が難しい課題になります。
金融機関や投資家から資金を調達することもできますが、経営が悪化すれば、返済のための資金繰りも悩みの種になることが多いでしょう。
低金利の融資や新規事業向けの融資などもありますが、融資はあくまでも先行投資で後には負債となるため、将来にわたって十分な返済ができるかどうか、慎重な検討が必要になります。
また、融資は会社の経営状態や社会的な信用性が重要な判断基準になります。
そのため、会社自体が立ち上げて間もない場合などは、銀行や信用金庫などの金融機関から融資を受けるのは難しい場合もあります。
そんなときに役立つのが、国や地方自治体などが実施している補助金や助成金です。
補助金や助成金は日本経済の発展のために運用されるものですが、新規事業のための補助金や、新規事業に役立つ助成金なども充実しつつあります。
補助金や助成金は原則として返済する必要がなく、利息もつきません。
返済のための資金繰りなどに悩まされることなく、新規事業の資金調達に非常に有効な手段になり得ます。
補助金や助成金の支給を実施する機関
各種の補助金や助成金の採択は様々な機関が実施しており、機関によって取り扱う補助金や助成金の種類や趣旨は異なります。
商工会議所なども実施していますが、それより多くの制度を運用しているのは国や地方自治体で、主な国の機関は経済産業省と厚生労働省です。
経済産業省は経済や産業を維持し発展させるための機関で、経済活動の推進に役立つ制度を多く運用しています。
設立から間もない企業を支援する制度、小規模な企業の発展を促進する制度などがあります。
経済産業省には、外局の機関として中小企業庁があります。
中小企業を育成し発展させるための機関で、モノづくりやサービスの促進、小規模事業者の補助、災害時に備えたインフラ整備の支援などの制度を実施しています。
厚生労働省は国民の生活を保証し向上させるための機関で、医療や福祉をはじめとする様々な事務を総合的に実施しているのが特徴です。
事業関連の事務としては、雇用や年金などがあります。
厚生労働省の補助金や助成金に関する取り組みとしては、雇用を維持し促進するもの、再就職をサポートするもの、人材開発を促すもの、働く環境を整えるものなどがあります。
地方自治体も補助金や助成金を実施しています。
地方自治体の支給制度は、事業の支援と地域の活性化をリンクさせたものが多く、新規事業のオフィスなどの賃料の助成、販路を拡大するためのサポート、新築やリフォームの補助などがあります。
地域ごとに独自性があるので、企業の所在地の自治体の取り組みを一度チェックしてみるのがおすすめです。
補助金と助成金の特徴
補助金と助成金は、どちらも金銭を支給して新規事業などを支援するための制度です。
また、受け取った金銭は原則として返済の必要がないことも共通しています。
補助金と助成金に厳密な区別はありませんが、それぞれに特徴があります。
補助金は主に新しい政策や事業を推進するための制度で、採択された場合に得られる金額は一般に高額な傾向があります。
一方、競争が激しく応募しても採択されない場合が多い、応募できる期間が短い、支給までに時間がかかる、などの特徴があります。
助成金は雇用の増加や人材育成など、主に国として推進したい取り組みを推進する企業に対して支払われるものです。
金額は補助金に比べて低い場合が多いですが、基準を満たせば基本的に金銭が支払われるのが特徴です。
新規事業に活用できる補助金の制度
補助金には様々な種類があります。
その中から新規事業の立ち上げや維持に役立つ制度の概要をご紹介します。
ものづくり補助金
ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者の設備投資などを支援するための補助金です。
ものづくり補助金とは略称であり、正確には「ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金」といいます。
斬新なサービスや試作品の開発を行う中小企業・小規模事業者を支援するための補助金で、新規事業として新しいサービスや商品の開発を行う場合に適しています。
補助金の主な対象は設備投資についてで、機械や技術の導入費、クラウドサービス利用費、原材料費や運搬費などが対象です。
新規事業に関連して設備投資を検討する場合に役立つ補助金といえます。
ものづくり補助金の申請をする場合、採択される可能性を高めるために経営力向上計画の承認を得ておくと良いでしょう。
経営力向上計画とは、人材育成、財務内容、生産性向上のための設備投資など、中小企業の経営力を高めるための計画です。
経営力向上計画の認定を受けると、ものづくり補助金の採択の決定においてプラス評価につながります。
また、税制や金融において支援措置を受けることも可能です。
創業支援等事業者補助金
創業支援等事業者補助金とは、地域と密着した創業を促進させるために、事業者が各市区町村と連携して行う創業に関する取り組みについて、支出する経費の一部を助成する制度です。
促進した創業を新規事業とリンクさせてビジネスを拡大するなどの運用が考えられます。
支援の対象となる取り組みは、創業を支援するための取り組み(特定創業支援事業)と、創業の普及啓発を促進するための取り組み(創業機運醸成事業)の2種類です。
補助金の支払いの対象となる経費は、人件費、設備費、事業費(謝金、旅費、会場費用を含む)、広報費、外注費、委託費などがあります。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、文字通り小規模事業者の事業を持続化させることを目的とする補助金で、主に商工会議所を中心に実施されています。
小規模企業者とは、主に20人以下の従業員数で小規模事業を実施する事業者のことです。
小売業や製造業などの小規模事業者の経営を持続性のあるものにするために、業務の効率化や生産性の向上につながる取り組みを支援するための制度です。
小規模事業者持続化の制度は補助金を受け取れるだけでなく、商工会議所から経営に関するアドバイスを受けることができるのが特徴です。
新規事業に活用できる助成金の制度
各種の助成金の制度の中から、新規事業に活用できるものをご紹介します。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、有期契約労働者や派遣労働者などの非正規雇用の労働者が企業内でキャリアアップすることを促進するための制度です。
キャリアアップを促進するための取り組みを実施した場合に助成金の対象になります。
キャリアアップ助成金は厚生労働省が実施する助成金の制度で、取り組みの性質によって7つのコースに分かれています。
正社員に転換するコース、賃金規定を改定するコース、諸手当制度を世紀と非正規で共通化した場合のコースなどがあります。
複数のコースに分かれていることで、企業の事情に合わせて様々なキャリアアップの仕組みを柔軟に構築できるようになっています。
新規事業に伴って正社員を増やす場合などに活用できる制度です。
トライアル雇用助成金
トライアル雇用助成金とは、職業経験、技能、知識などが不足している求職者を一定期間雇用した場合に助成金の支給対象になる制度です。
原則として3ヶ月間の試用期間を設けることで、求職者の能力や適正を見極め、常用雇用に移行するチャンスを広げることを目的としています。
就業を希望する未経験者を雇い入れる一般コース、障害者を雇用するコース、若年者や女性を建設労働者に誘致するコースなどがあります。
補助金や助成金を申請する場合の注意点
新規事業の立ち上げに関して補助金や助成金を申請する場合、あらかじめいくつかの注意点をおさえておく必要があります。
注意点について、項目ごとにご紹介します。
必ず採択されるとは限らない
補助金については、申請したからといって必ず採択されるとは限りません。
ものづくり支援や創業推進など、各種制度の中でも比較的メジャーな補助金についても、全体の応募の中から採択されるのは3割に満たない程度です。
また、補助金として助成される金額が大きいものや、募集の間口が広いものについては多数の応募がくるため、さらに競争が激しくなる傾向があります。
採択率が決して高くない状況においては、いかに審査を通過するかが重要なポイントになります。
そのためには補助金の応募に必要な書類などをしっかり準備すること。
特に重要になってくるのが事業計画です。
事業計画は事業の運用に必要な項目を計画していくもので、部門、短期、戦術など、異なる視点から具体的なアクションプランを練っていくものです。
事業計画は、金融機関から融資を受ける際にも重要な提出書類です。
補助金の審査を通過するためには、具体的で信頼性の高い事業計画を作成できるかがポイントになります。
また、事業計画は補助金の申請以外にも活用できる場面が多いため、良い機会として腰を据えて取り組むのがおすすめです。
補助金に採択される可能性を高めるためのサポートを行っている経営コンサルティングなどもあるため、必要に応じて外部の専門家に協力を要請することも有効です。
補助金や助成金は応募期間がある
補助金や助成金は応募できる期間が限られているので、申請できる期間内にきちんと応募することが大切です。
応募期間は一般的に1年の間の1〜2ヶ月程度で、しっかり把握しておかないと、気づいたら期間が過ぎていたという場合もあります。
二次募集を実施する補助金などもありますが、1年に1回しか募集しないというパターンも少なくありません。
募集期間を逃してしまった場合は翌年に再挑戦ということになりますが、必ずしも翌年以降に募集されるとも限りません。
募集のために準備をしておいて、期間を逃してしまったという場合は痛手も大きいので、補助金や助成金の募集期間には注意しましょう。
金銭の支払いは基本的に後払いになる
補助金や助成金が採択されたとしても、すぐに金銭が支払われるわけではありません。
補助金や助成金は基本的に後払いになっています。
例えば、設備投資や経営の革新などの補助金が採択された場合、まずは自費で設備投資などの費用を支出し、後から補助金や助成金が充当されます。
特に補助金については、決定した事業内容を実際に実施してから補助金の支払い金額が決まる場合も少なくないため、採択されたとしても気を緩めずに経営を行うことが大切です。
せっかく補助金や助成金が採択されたのに、支払いが行われる前に経営が悪化して倒産してしまったということがないように、ある程度資金に余裕をもたせておくと安心でしょう。
補助金や助成金はあくまでサポート
補助金や助成金は原則として返済する必要がないことから、振り込まれればある程度自由に使うことができます。
それによって、本来の目的に関係ないことに使用したり、無駄な支出を増やしたりすることがないように注意しましょう。
補助金や助成金は新規事業を支えるためのサポートであるという本来の目的を忘れずに、新規事業を維持するためにきちんと用いることが大切です。
まとめ
新規事業を継続して利益を出すためには、途中で撤退しないように十分な資金を用意することが重要です。
金融機関などからの借り入れで資金調達すると返済が負担になりますが、補助金や助成金の制度を利用すると原則として返済の必要がありません。
補助金は一般に高額ですが、競争が激しく採択されるとは限らないのが特徴です。
助成金の金額は低めですが、要件を満たせば基本的に支給されます。
2つの制度の特徴を把握しつつ、効果的に制度を利用しましょう。