最終更新日:2022/6/6
会社設立で心強い相談相手とは?専門家別メリット・デメリットを解説
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
「会社を作りたい!」と思ったとき、あなたなら何から始めますか?なにをしたらいいのかわからない、という人が多いのではないでしょうか。
会社を作るための手続きを教えてくれる人、資金の集め方を襲えてくれる人、困ったときに相談に乗ってくれる人…。
会社を設立して運営していくためには、そのときどきで心強い相談相手が必要です。
会社を設立する前に、困ったときや不安なときに頼りになる専門家を知っておくと安心です。
それぞれの専門家のメリット・デメリットを詳しく解説します。
会社設立手続きの流れ
会社を作るときには、法律にのっとった手続きをとらなくてはいけません。
たいていの人は会社を作るのは初めてですから、どこでどんな手続きをすればいいのかわからないと思います。
どんな手続きが必要なのかわからないことには、ご自身で頑張ってみるか専門家に任せるか判断できませんよね。
まずは会社設立手続きの流れを簡単に把握しておきましょう。
会社の設立手続きは、大きく分けて次の4ステップです。
ステップ1 定款を書く
会社を作るなら、かならず「定款(ていかん)」というものを作らなくてはいけません。
定款とは会社の基本事項や組織などを書いた、いわば会社の法律のようなものです。
定款はパソコンなどを用いてご自身で作ることができますが、書くべき事項が会社法によって決まっています。
- ・絶対的記載事項
- ・相対的記載事項
- ・任意的記載事項
ひとつずつ詳しくみていきましょう。
絶対的記載事項
絶対的記載事項とは必ず書かなくてはいけない事柄のことで、これを書いていない定款は無効です。
設立手続きを進めることができません。
絶対的記載事項は会社法に定められており、次の6項目があります。
- ・商号
- ・事業目的
- ・本店所在地
- ・設立に際して出資される財産の価値またはその最低額(資本金)
- ・発起人または社員の氏名、または名称および住所
- ・社員全員が有限責任である旨(合同会社のみ)
つまり会社と作るときには、手続きをとる前に会社の名前や事業目的などを決めておかなくてはいけないということです。
手続き進めながら出資者を募ったりどんな事業をするか決めたりすることはできません。
絶対的記載事項として法律に定められていませんが、発行可能株式総数も定款に書いておきましょう。
書いていない場合は別途書類を作成する手間がかかってしまいます。
相対的記載事項
相対的記載事項とは定款に定めがないと効力がない事柄のことで、定める場合には書かなくてはいけません。
次の8項目があります。
- ・現物出資
- ・財産引受
- ・発起人の報酬
- ・設立費用
- ・株式の譲渡制限に関する規定
- ・株主総会の招集通知を出す期間の短縮
- ・役員の任期の伸長
- ・株券発行の定め
相対的記載事項を定款に書き忘れた場合も定款自体は有効で、設立手続きをとることができます。
しかしたとえば株式の譲渡制限を定款に書かなかった場合は、その項目については効力がないことになり、譲渡制限することができません。
このような事態を防ぐために、相対的記載事項についてもできるだけ記載しておくのがおすすめです。
いざというときに役立ちます。
任意的記載事項
任意的記載事項とは書いてもいいし書かなくてもいい事柄のことで、定款に記載がなくても効力を否定されません。
株主総会の議長になる人や取締役の人数など、会社がルールを定めたい場合にあえて書く場合が多いです。
任意的記載事項を定款に書いておくことで、対外的にも社内でもわかりやすくなり、会社のルールとして効力が増すというメリットがあります。
しかし定款に書いてしまうと定款変更の手続きを経ないと変更ができなくなるため、身動きがとりにくくなるというデメリットがあります。
定款の変更は株主総会の決議による必要があり、かなりの手間です。
そのため、書くのは自由だからとなんでもかんでも書くのではなく、より効力を持たせたい事柄に厳選する必要があります。
ステップ2 定款の認証を受ける
定款が完成したら、次は公証役場で認証を受けなくてはいけません。
作成した定款が法的に有効かどうか、公証人がチェックをして認証します。
公証人には管轄があり、本店所在地の都道府県を管轄する公証人の認証を受けましょう。
認証には紙と電子の2つの方法があります。
どちらにしても手続きの流れ自体の差はそんあにありません。
まずは定款をファックスや電子送信で定款を公証人に送って事前チェックを受け、必要に応じて修正し、公証人役場に定款を受け取りに行きます。
しかし、紙の定款と電子定款では費用が大きく違います。
紙の場合は収入印紙4万円分を貼付しなくてはいけないため、電子定款に比べて4万円も費用が多くかかるのです。
とはいえ電子定款を作成するには設備と初期投資が必要で、一般の人がこれを自力で行うのは難しいと思います。
専門家に依頼する場合は電子定款を利用できる場合がほとんどです。
なお、合同会社の場合はこの認証のステップは不要です。
ステップ3 資本金を払い込む
定款の認証が終わったら、次は資本金を用意します。
個人口座に定款に記載した資本金を払い込み、通帳をコピーします。
コピーした後であれば、払い込んだ資本金を引き出したとしても会社設立手続きに影響はありません。
しかしこれは見せ金という偽装行為であり、しばしば問題となります。
場合によっては処罰の対象になります。
資本金は会社の体力そのものであり、偽装行為をしないといけないような状態で会社を設立したところで上手くいきません。
融資を受ける際にも、見せ金ではないか厳しく審査されます。
会社を作る前に資金などの準備をしっかりとし、計画的に設立しましょう。
ステップ4 法務局で登記申請を行う
いよいよ最後に法務局で登記申請を行います。
本店所在地を管轄する法務局に、定款などの書類をそろえて提出します。
申請から登記完了までは3~7日ほどかかります。
登記申請は書面で、会社の代表者が行わなくてはいけません。
代表者が法務局に行けない場合には委任状が必要です。
例外的にオンライン申請も可能ですが、添付書類は紙で用意し、郵送しなくてはいけません。
登記申請に必要な書類は次の通りです。
- ・登記申請書
- ・定款
- ・資本金の払い込みを証明する書類(通帳のコピー)
- ・発起人(代表社員)の決定書
- ・役員の就任承諾書
- ・役員の印鑑証明書
- ・OCR用申請用紙またはCD―R
- ・会社印の届け出書
- ・印鑑カード交付申請書
このほか、必要に応じて財産引継書や調査報告書などが必要になります。
法務局に登記申請書類を提出した日が会社設立日になります。
会社のお誕生日ですから、好きな日を選んで申請しましょう。
ただし土日祝日や年末年始は法務局がお休みのため、設立日にすることができません。
注意してください。
自力でがんばる?専門家に頼る?
いかがでしょうか。
設立手続きを簡単にご説明しましたが、ご自身でできそうでしょうか。
ご説明した以外にも細かな注意点などがたくさんあり、自身でやる場合は公証人や法務局から指摘をうけながら修正を繰り返していくことになると思います。
それでも自身でやれば、専門家への依頼料を節約することができるというメリットがあります。
時間はかかっても自力でがんばることで、会社への思い入れも増すかもしれません。
逆に、時は金なりと考えて専門家に頼るのもおすすめです。
専門家ならスピーディーに設立手続きを進めてくれますし、自身でやるより確実です。
会社設立手続きは慣れた専門家にとってはさほど難しい手続きではないため、費用分の仕事はしてくれるはずです。
自身でがんばるのも専門家に頼るのも、どちらも正解だと思います。
ご自身の思う方を選びましょう。
それぞれの方に合わせた専門家をご紹介していきますね。
自力でがんばる人の相談相手
自身で会社設立手続きをがんばるなら、次の3つに相談するのがおすすめです。
- ・公証人
- ・法務局
- ・商工会議所、商工会
公証人
合同会社などの場合は公証人をはさまないため相談できませんが、株式会社の場合は必ず公証人の認証を受けるステップがあります。
そのため、定款の不備について公証人に相談することができます。
公証人とは裁判官OBなど、法律のプロです。
ベテラン揃いですから知識や経験があり、個人的な感想ですが、とても親切な方が多いです。
律のプロに定款をチェックしてもらい、問題点を指摘してもらえるのは大きなメリットです。
ただし、公証人にもデメリットがあります。
- ・株式会社を作る場合しか相談できないこと
- ・定款のチェックしかしてもらえない
- ・定款は自身でかかなくてはいけない
公証人はイチから定款の書き方を教えてくれるわけではありません。
自身なりに勉強をし、しっかりと定款を書いて、認証を受けるときに相談できるというだけです。
しかし、定款に不備があれば公証人は必ず指摘してくれます。
法定款は会社の基本ルールであり、変更手続きは面倒です。
公証人のチェックを受けることで少なくとも法的な問題は解消でき、安心することができます。
法務局
法務局には会社設立についての相談窓口があります。
・東京法務局の相談窓口
「http://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/category_00020.html」
・大阪法務局の相談窓口
「http://houmukyoku.moj.go.jp/osaka/300129toukisoudanshougyouhoujin.pdf」
最近は予約制のところが増えてきているうえ、かなり流行っています。
できるだけ早めに予約しておきましょう。
法務局に相談するメリットは、なんといっても無料ということです。
それに法務局は登記手続きを行う役所ですから、法務局のアドバイスを守れば絶対に登記できます。
ただデメリットもあり、ある程度はちゃんと勉強していかないと相談できませんし、法務局に足を運ばなくてはいけません。
書類は自身で書かないといけないため相談する分の手間が増します。
商工会議所、商工会
地元の商工会議所や商工会が独自に設立相談を行っていることがあります。
近くの商工会議所や商工会に問い合わせてみましょう。
商工会議所や商工会の相談料はたいてい無料ですし、役所と違って民間団体のため気楽に相談できるというメリットがあります。
設立手続き以外にも経営のアドバイスをもらえることもあり、人脈作りにも役立ちます。
しかしデメリットもあり、民間団体であるがために情報が不確かな場合があります。
商工会議所や商工会に行かなくては相談できず、書類自体は自身で作るしかないため手間が増えてしまいます。
おまけ 東京開業ワンストップセンター
東京限定になりますが、東京都が開設している東京開業ワンストップセンターもおすすめの相談先です。
東京開業ワンストップセンターのメリットは、会社設立の相談から登記申請、定款の認証、税務署への届け出などをまさにワンストップで行うことができる点です。
しかし全国に1つしかないため地域がかなり限定されるというデメリットがあります。
専門家に依頼するなら
専門家に依頼する場合、自身でしなくてはいけないことはメールや電話などでの打ち合わせや印鑑証明の取得など、かなり少なくなります。
自身で手続きするより格段に手間が減り、スピーディーに会社を作ることができます。
専門家に依頼するにはお金がかかりますが、先ほどもお話ししたように、専門家は電子定款によって4万円分を浮かすことができます。
実は自身でがんばっても専門家に依頼しても、設立にかかるお金はそんなにかわらないのです。
専門家に依頼すると一口でいっても、世の中に専門家はたくさんいます。
どの分野の専門家に依頼すればよいのかは、あなた自身で見極めなくてはいけません。
専門家それぞれの得意な分野を知っておきましょう。
専門家の特性を理解して活用しよう!
会社設立にかかわる専門家は、主に行政書士・司法書士・税理士の3つです。
それぞれに得意な課題が異なっているため、頼みたいことに合わせて依頼する必要があります。
課題 | 得意な専門家 |
---|---|
定款作成 | 行政書士 |
会社登記手続き | 司法書士 |
資金調達 | 税理士 |
税務関連 | 税理士 |
行政書士
会社に欠かせない定款の作成は行政書士が得意です。
定款の作成を行政書士に依頼するメリットは、間違いのない定款によってスムーズに会社設立手続きを行うことができる点にあります。
行政書士が作成した定款は法的に問題がないことはもちろん、会社運営にも支障がないよう組み立てられているため安心です。
たとえば相対的記載事項が抜けているといったミスを防ぐことができます。
行政書士は許認可の取得手続きにも強いですから、設立時に行政書士事務所と繋がりを作っておけば、今後もなにかと役に立ちます。
しかし行政書士のデメリットもあります。
行政書士の業務分野は多岐にわたっているため、会社設立手続きに強い行政書士でないとメリットを受けることができないという点です。
また行政書士は会社設立登記手続きができないという法律上の縛りがあり、登記は司法書士に別途依頼することになり、その分費用がかかってしまいます。
司法書士
司法書士は登記手続きの専門家であり、日本で登記手続きを代理できるのは司法書士だけと法律で定められています。
司法書士は登記だけでなく定款の作成や電子認証も可能です。
そのため司法書士に依頼すれば会社設立手続きはすべて任せることができ、この点が司法書士最大のメリットです。
ただデメリットもあり、行政書士に比べると費用が高くなる傾向があります。
行政書士も司法書士と提携してワンストップで設立手続きすべてを行っていることも多いため、司法書士のメリットが薄れつつあるという人もいます。
税理士
税理士も会社設立手続きを行うことができます。
税理士のメリットは、設立手続きよりもむしろ設立後にあります。
設立後の税務や資金獲得などについてアドバイスやサポートを受けることができるのです。
会社設立の確定申告はややこしいため、設立後はいずれ税理士と契約し、お世話になることになります。
設立時から信頼できる税理士を見つけることができれば、将来も安心です。
ただしデメリットもあり、税理士も登記手続きは司法書士に依頼しなければいけないため、その分の費用がかかります。
税理士は合う合わないの差が大きな専門家ともいわれており、会社の経営方針に合う税理士と出会えるかという難点もあります。
まとめ
会社設立手続きは大きく分けて4ステップのため、法務局や商工会議所などの無料相談窓口を活用すれば自身でも行うことができます。
しかし4ステップの中にも細かな注意点がたくさんあるため、自力でやるとかなりの時間がかかることが多いです。
手間を省きさっさと会社を設立したいなら、専門家に依頼するのがおすすめです。
会社設立手続きの専門家には行政書士・司法書士・税理士がいますが、それぞれに特徴があります。
メリット・デメリットをよく把握し、課題に合った専門家を選びましょう。