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合同会社vol.2 合同会社の定款作成方法|記載事項の詳細と注意点・紙と電子の違いなど
この記事の執筆者 税理士 森健太郎
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
基本事項が決まり、会社設立の準備が完了したら、会社の根本ルールである「定款」の作成に取り掛かります。
合同会社の場合、株式会社よりも比較的簡単に定款を作成することができます。
また内容も会社の運営に関するルールを細かく定めることができますから、事業がスタートした後のことも考えながら作成するようにしましょう。
定款の記載事項は大きく分けて3つ
定款に書く事項としては、大きく分けて次の3種類があります。
- 1. 絶対的記載事項
- 2. 相対的記載事項
- 3. 任意的記載事項
これら3つの内容について具体的に見ていきましょう。
絶対的記載事項
絶対的記載事項とは「定款に必ず含めないといけない内容」のことです。
もし記載するのを忘れてしまうと定款が無効となってしまいます。
絶対的記載事項として定めておかなくてはならない事項としては以下の6つがあります。
- ・会社の商号(名称)
- ・会社の事業目的
- ・本店の所在地住所
- ・社員(出資者)の氏名、及び住所
- ・社員全員が間接有限責任社員であること
- ・社員の出資する目的とその価額
会社の商号(名称)
設立する会社の社名を記載します。
略式ではなく、正式名称で記載するようにしましょう。
合同会社を意味する「LCC」も使用はできません。
合同会社の商号を決める際は以下のルールを守る必要があるので留意しておきましょう。
- ・最初か最後に「合同会社」を入れる
- ・使用可能な文字には制限がある *¹
- ・「○○事業部」といった一部門を表す文言は使えない
- ・公序良俗に反する文言は使用できない
- ・有名企業と誤解されるような文言は使用できない
*¹漢字・ひらがな・カタカナ・ローマ字(大小)・アラビア文字(算用数字)・符号(「&」「’」「,」「-」「.」「・」)は使用可能。
ただし、「合同会社○○&」のように符号を最初と最後に持ってくることはできません。
会社の事業目的
どのような事業を行うのかを記載します。
注意したいのが、定款に記載した以外の事業を行うことはできない点です。
将来的に事業の幅を広げたいと考えている場合は、可能性のある事業を全て記載しておくことをおすすめします。
ただし、あまりに多くの事業目的を記載してしまうと、口座開設や融資を受ける際に、銀行側から「実態があるのかどうか」を怪しまれることもあるので注意が必要です。
本店の所在地住所
その名のとおり、会社の住所を記載します。
会社の住所は、正式に記載する必要はありません。
むしろ、「東京都新宿区」といった具合に区や市までに留めておくのがおすすめです。
そうすることにより、同一行政区画内で移転する際に定款を変更しなくて済むからです。
社員(出資者)の氏名、及び住所
社員、つまり出資者の氏名および住所を記載します。
合同会社の社員は出資者であり、経営者でもあります。
そして実際の業務にもあたります。
株式会社でいう「社員=従業員」ではないことをこの機会に覚えておきましょう。
また法人の場合は名称を記載することになります。
社員全員が間接有限責任社員であること
社員(出資者)全員が間接有限責任社員であることを必ず記載します。
有限責任とは、会社が事業に失敗して負債を返せなくなっても、経営者個人に返済の義務はないということを言います。
そのため社員は出資した範囲内でのみ責任を負うことになります。
社員の出資する目的とその価額
該当社員が出資した形態(現金・現物など)を記載します。
金銭での出資の場合は、目的や価額の記載は必要ありません。
現物を出資した場合は、その資産の価格おしくは評価基準額を記載します。
相対的記載事項
相対的記載事項とは、「必ずしも記載する必要はないけれど、会社のルールとして定めておきたいことがある」ときに記載しておける事項のことです。
そのため、相対的記載次項に記載しなくても、定款自体が効力を失うことはありません。
ただし、記載がない場合は、その事項に法的効力を持つこともないので注意が必要です。
簡単にいうと「この点に書かなかったとしても定款自体は有効。でも、この点にルールを作りたい場合には必ず定款に書かないとダメ」ということですね。
相対的記載事項に該当する事項としては、以下のようなものがあります。
- ・業務を実際に行う社員(執行社員)の定め
- ・代表社員の定め(社員が複数人いる場合)
- ・利益の配当に関する事項(出資金額にかかわらず自由に決められます)
- ・社員の退社に関する定め(出資金額の払い戻しに関するルール)
- ・持分の相続に関する定め(社員が亡くなった時に払い戻しにより持分を回収するなど)
- ・解散の事由(特定の条件を満たしたときには解散すると定められます)
- ・会社の存続期間(期間を区切って事業を行いたい場合)
- ・残余財産の分配の割合(解散時に残った会社財産を誰がいくら取得するか)
任意的記載事項
任意的記載事項は、「必ずしも定款に書くという形でルールを作らなくても良いけど、定款に書いても良い」という事項のことです。
任意的記載事項は定款以外の方法によってルールを定めてもOKな項目ということになります。
任意的記載事項として定められることが多い事項としては、以下のようなものがあります。
- ・社員総会をどのような条件で開催し、何について決める権限を持たせるか
- ・会社の事業年度に関する定め(税金計算のために重要になります)
- ・業務執行社員や代表社員の人数等
- ・社員の報酬に関する事項(こちらも税金計算とのからみで重要です)
合同会社は組織運営の自営度が高い
この定款にいろんなルールを記載することによって、会社の運営方法を当事者の希望に沿う形で行えることは、合同会社の大きな特徴(メリット)ということができます。(定款自治という言い方をすることがあります)
株式会社では複数の経営者を置く場合には監査役を設置しなくてはならないなど、組織運営のルールが法律で厳密に定められています。
会社組織のあり方をしっかりと定めることにもメリットはありますが、同族経営の会社やオーナーに強い権限を持たせたいような場合には合同会社による定款自治を選択することにはメリットがより大きいと言えるでしょう。
このような意味で、株式会社はある程度大きな規模の組織に、合同会社は家族経営的な小規模な事業者が選択しやすい制度ということができます。
(ただし、アップルジャパンなどの大きな企業であっても合同会社を選択しているケースもありますから、結局は当事者の運営スタイルによる面も大きいですが)合同会社と株式会社の違いについてはコチラをご確認ください。
定款を作成する時の注意点
定款作成時は以下のような点に注意しなければいけません。
- ・表紙の会社名は正式名称で
- ・記載事項は簡単に変更できない
- ・修正ペンなどでの修正はNG
なお、会社のルールを定める方法は定款に書くことだけではありません。
単に社内の規則としてルールを定めても良いですし、頻繁に内容が変わるようなことであれば定款に書くよりもこれらの方法を用いた方が望ましいケースもあります。
表紙の会社名は正式名称で
表紙に記載する会社名に略式(LCC)は使用できません。
また表紙に記載する日付については、作成日は定款を作成した日にちを記載します。
会社設立日は登記申請後に記入するので、定款作成時点では空欄としておきましょう。
記載事項は簡単に変更できない
いったん定款に書いた事項については、変更を行うためには原則として総社員の決議が必要になるほか、法務局に登録免許税を支払って、登記を行わなくてはなりません。
変更項目 | 登録免許税 |
---|---|
会社の商号 | 3万円 |
事業目的 | 3万円 |
本店・支店の所在地変更 | 移転前・移転後で管轄が同じ法務局の場合:3万円
移転前・移転後で管轄が違う法務局の場合:6万円 |
資本金 | 3万円 |
代表社員 | 1万円
※資本金1億円以上の場合は3万円 |
業務執行社員 | |
代表社員の氏名・住所 | |
業務執行社員の氏名・住所 |
会社を運営していくにあたって、めったに変更することが考えられないような重要なルールについては定款に任意的記載事項として記載しておくと良いでしょう。
修正ペンなどでの修正はNG
定款作成後に誤字脱字を発見した場合、修正ペンでの修正や、ペンで塗りつぶしての修正はできません。
修正したい場合は修正箇所に二重線を引き、その上に正しい文章または文字を記入しましょう。
そして修正したことが分かるように、最終ページに「第〇条中 〇文字削除 〇文字加入(または挿入)」と記載し、訂正印として発起人全員の実印を押印します。
電子定款と紙の定款の違い
合同会社、株式会社ともに定款を電子的な記録方法(CD-ROMなど)によって作成するか、通常の紙面で作成するかを選択することができます。
紙と電子の違いは以下のとおりです。
紙 | 電子 | |
---|---|---|
印紙税 | 4万円 | 0円 |
専用ソフト等 | なし | PDF作成ソフト、各種カードリーダが必要 |
紙で定款を作成する場合には、印紙税(4万円)を負担しなくてはならないため、現在は電子定款を利用するケースが多くなっています。
ただし、電子定款を利用するためにはAdobe AcrobatのようなPDF作成ソフトや、各種のカードリーダを買いそろえる必要があります。
これらは通常数万円の出費となりますから、せっかく電子定款によって印紙代を節約しても、結局意味がない…ということにもなりかねませんから注意が必要です。
なお、電子定款を作成するのに司法書士などの専門家に会社設立の代行を依頼した場合には、専用ソフト等を購入する必要はありません。
つまり印紙代、専用ソフト等の購入代が0円になるということ。
しかし当然のことながら依頼料は発生します。
この依頼料には、専用ソフト等の購入額とおおよそ同額を支払うのが業界の標準です。
そのため「電子定款+専門家に依頼」と「電子定款+自力で手続き」にかかる費用は同じになります。
専門家は会社設立の手続きを年間で何百件も請け負っている人たちですから、手続き上の不備が生じるようなことは普通ありません。
自分で手続きをしても、専門家に依頼しても発生する費用が同じなのであれば、専門家に依頼して会社設立を行うのが賢明と言えます。
定款はいつ必要?
定款が必要となるのは、たとえば行政に許認可申請をしたり、金融機関で口座を開設したりするといった、会社が手続きを行う際です。
定款は基本的に会社に保存されているので、無くさないようにしておきましょう。
定款が必要になる場面
先でも少し触れましたが、定款認証後は、以下のような場面で定款の写しを求められる場合があります。
- ・金融機関と新規に取引を開始する時
- ・会社設立の旨を税務署に届ける時
- ・許認可申請時
- ・各種助成金の申請時
定款はコピーを提出することになります。
そのため提出時には定款のコピーと、そのコピーが偽物でないことを証明する原本証明を用意する必要があります。
定款の閲覧方法
最後に、定款を閲覧する方法を紹介します。
・定款の閲覧請求権利を使用する
会社の債権者には、定款の閲覧を請求する権利があります。
定款は本店および支店への設置が義務づけられているため、営業時間に訪問して定款の閲覧請求権利を行使すれば、いつでも自由に定款を閲覧することができます。
・登記事項証明書を請求する(一部の閲覧のみ)
内容は限定されますが、登記事項証明書を請求することで定款を閲覧することができます。
閲覧請求権利と違い、登記事項証明書の請求に資格は必要ありません。
法務局に行けば誰でも請求することができますが、交付には数百円の手数料がかかります。
万が一、定款を無くしてしまった場合にも原子定款を閲覧する方法はあります。
詳しくはコチラの記事をご覧ください。
まとめ
合同会社の定款は比較的簡単に作成できます。
しかし作成上のルールを遵守しておかないと、せっかく作った定款が意味のないものになってしまいます。
また、定款の作成は紙でも電子でも費用にそれほどの差は出ません。
そのため電子定款を選択する人が増えていますが、電子定款で作成する場合は、自身で作成しても専門家に依頼してもかかる費用はほぼ同じ。
むしろ自身で作成する方が、専門的な知識が必要になったり、専用ソフト等の購入・設定などの手間がかかったりします。
そのため、会社の定款作成は専門家に依頼することをおすすめします。