最終更新日:2026/1/20
起業しやすい国は?世界基準のスコアと海外で起業するメリット・デメリットを解説

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

この記事でわかること
- 起業しやすい国はどこなのか
- 日本と他国の比較ポイント
- 海外で起業するメリットとデメリット
起業を考えるとき、多くの人は日本国内での起業を考えるでしょう。しかし世界に目を向けてみると、外国で起業するという選択肢があるのも事実です。
海外での起業は、日本国内とは違う法律、違う文化の中でビジネスをするという極めてハードルの高い挑戦となります。また同時に、大きな可能性を秘めています。
この記事では、まず世界銀行のデータをもとに起業しやすい国はどこなのか、海外で起業するメリットとデメリットについて解説します。
外国での起業を考えている人や、海外進出を視野に入れている人は、ぜひ参考にしてください。


目次
起業しやすい国はどこ?
世界銀行が発表している「Business Ready 2024」は、世界各国の企業環境を多角的に評価したレポートです。
この資料では、登記にかかる時間やコスト、税制のしくみ、資金調達、破綻処理のスムーズさなど、起業する環境が整っているかどうかが数値化されています。
世界銀行「Business Ready 2024」
世界銀行「Business Ready 2024」は、「企業が活動しやすい環境(ビジネス環境)」をスコア形式で数値化しています。
すべての国をカバーしているわけではありませんが、Business Ready 2024のスコアが高い国として、ハンガリー、ポルトガル、シンガポール、エストニアなどがあげられます。
評価ポイントについては、下記の3つの柱と10のトピックスが整理されています。
参考:Business Ready|World Bank Group
起業のしやすさの評価ポイントは?
「Business Ready 2024」の評価の柱は、次の3つです。
- Regulatory Framework(規制の枠組み):企業の活動に関係する法制度や規制の整備状況
- Public Services(公共サービス):企業が実際に公共機関から受けるサービスの利便性
- Operational Efficiency(運用効率):制度やサービスが現実に機能しているか
また、次の10のトピックスも評価指標となっています。
- 起業(Business Entry)
- 立地(Business Location)
- インフラサービス(Utility Services)
- 労働(Labor)
- 金融アクセス(Financial Services)
- 貿易(International Trade)
- 税制(Taxation)
- 紛争解決(Dispute Resolution)
- 市場競争(Market Competition)
- 破綻処理(Business Insolvency)
これらの評価ポイントを数値化して、企業が活動しやすい環境を評価しているわけです。
日本の評価は?
「Business Ready 2024」は50の国を対象としており、日本は含まれていません。ただ、2027年までに対象国を180カ国に拡大する計画があり、将来的には日本も評価対象になる予定です。
なお、Business Ready 2024の前進である、Doing Business(2021年に廃刊)では、日本は起業のしやすさの項目で106位、破綻処理で3位でした。
起業のしやすさについては、登記の手続きが複雑である点、必要な認可の取得に時間がかかったりする点が評価を下げている要因だったと考えられます。
破綻処理で上位だったのは、日本の債務処理に関する法制度が高く評価されているからだと考えられます。
もちろん、これらはあくまで過去のデータです。そして、あくまで世界銀行によるデータであるため、日本人が日本国内で起業する場合に「起業しづらい」という意味ではありません。
ニュージーランドは起業しやすい国の代表
起業しやすい国としてよく知られているのが、ニュージーランドです。
ニュージーランドは、登記制度のシンプルさや相対的な平和度の高さが評価されています。
また、ニュージーランドには「Companies Office」というシステムがあり、会社設立のオンライン申請の整備がなされています。
日本人がニュージーランドで起業・移住しやすい理由は?
日本人にとっても、ニュージーランドは起業しやすい国といえます。
その理由は、先述の治安の良さはもちろん、道路や公共交通機関などのインフラが整っていること、気候が安定していて四季があり日本と近いことなどがあげられます。
治安が良い
ニュージーランドは比較的治安が良く、2025年の世界平和度指数ランキングでは3位にランクインしています。
外国という慣れない環境で起業する場合、犯罪の恐怖がつきまとうのは大きなストレスです。また、起業初期は少人数で事業を進めるケースも多いため、安心して生活できるかは非常に大切なポイントです。
インフラが整っている
ニュージーランドには、通信環境や電力、交通インフラが安定しているため、ビジネスを始める際の障壁が少ないという特徴があります。
外国で起業する場合、国によってはインフラが整っておらず苦労することもありますが、ニュージーランドではそのような心配はほとんどないと言っていいでしょう。
気候が安定している
ニュージーランドは、南半球なので日本とは季節が逆ですが、日本と似て四季のある気候であるため、なじみやすく生活やビジネスの拠点として適しています。
気候も安定しており、年間を通して過ごしやすい環境です。
東南アジアで起業しやすい国
日本と同じアジア圏で起業したいという人も多いでしょう。アジア圏で起業しやすい国としては、シンガポール、マレーシア、タイがあげられます。
東南アジアは経済成長が続いている地域であり、スタートアップ企業も続々と進出しています。ここでは、上記3国について解説します。
なお、各国の安全情報については下記サイトからご確認ください。
参考:海外安全情報 地図からの選択|外務省 海外安全ホームページ
シンガポール
シンガポールは、オンラインの登記手続きが整備されている国の1つです。
また、法人税率が日本より低いという魅力があります。シンガポールの標準法人税率は17%で、日本の法人税(国税)は原則として23.2%です(地方税等も含めた実効税率で負担が変わるため、税率の数字だけの単純比較には要注意)。
参考:Corporate Income Tax Rates|IRAS
参考:No.5759 法人税の税率|国税庁
治安も良く、現地で生活することを考えても安心度が高い国といえます。
さらに、英語が公用語の1つであるため、日本人のみならず外国人全般にとってもビジネスがしやすい環境です。
マレーシア
マレーシアは、税率が低く、物価が比較的安い国です。人件費を抑えられるため、初期費用を抑えてビジネスを始めたい人には非常に魅力的な環境といえます。
英語が通じる場面も多いため、言葉のハードルも比較的低い国といえるでしょう。治安も安定しており、移住とあわせた起業を考える人にも人気があります。
タイ
タイは、場所によっては治安に問題がありますが、首都のバンコクは比較的治安が安定しています。
タイシルクや宝石加工といった分野を中心に、日本と取引のある企業も多く存在します。また、現地には比較的多くの日本人が暮らしています。
渡航のしやすさや現地通訳の見つけやすさという面でも、起業しやすい国といえるでしょう。生活コストが比較的安く、現地の人件費も抑えられるため、少ない初期費用でスタートできる点も魅力です。
東南アジアで起業する理由
東南アジアは経済成長が著しく、起業家からは「これから伸びる市場」として注目されています。生活コストが比較的安い国が多くあり、初期費用を抑えながらビジネスを始めたい人にも人気です。
GDP成長率
東南アジア諸国は、世界の中でもGDP成長率が高い国が多い地域です。
今まさに経済が発展している国であるため、新しい産業やビジネスのチャンスが次々と生まれています。
これから成長していくであろう市場に早い段階から参入することで、大きなリターンを得られる可能性があります。
労働人口
日本などの先進国では人手不足が社会問題となっていますが、東南アジアの国の中には、労働人口が多く、人員を確保しやすい国もあります。
若い労働者が多い国で起業することで、労働力の確保が容易になります。
ヨーロッパで起業しやすい国
ヨーロッパはインフラやビジネス環境が整っている国が多く、安定した市場で起業したい人に向いている地域です。なかでもデンマークやオランダは特に人気です。
ここでは、上記2国について解説します。例によって安全情報については下記サイトからご確認ください。
参考:海外安全情報 地図からの選択|外務省 海外安全ホームページ
デンマーク
デンマークは、インフラがしっかり整っている国です。また、登記手続きがスムーズで、オンラインで手続きすることもできます。
治安も良いため、ヨーロッパで起業する際の最初の拠点としてデンマークが選ばれることもあります。生活水準も高く、家族で移住してビジネスをスタートすることも視野に入れられる国です。
オランダ
オランダは、EU市場の物流・貿易の拠点として非常に重要な位置を占めており、起業する国としても人気があります。外国企業の進出にも積極的で、英語も広く通じるため、外国人にとってビジネスをしやすい国です。
オランダには自営業者向けの居住許可があり、日本国籍の場合は Dutch‑Japanese Trade Treaty を根拠に申請できる枠組みがあります(要件・審査あり)。
参考:Residence permit self-employed person|IND
英語が通じること、そして日本との友好的な関係があるという点でも魅力的な国といえるでしょう。
ヨーロッパで起業する理由
ヨーロッパ諸国は、安定した法制度とインフラが整っていることが特徴です。
特にEU加盟国では、ビジネス関連のルールが統一されている部分が多く、1つの国に拠点を構えることでEU全域への事業展開がしやすい環境があります。
インフラが整っている
電力、通信、交通などのインフラが高い水準で整っているため、電力不足やネット環境の不安定などでつまずきにくく、事業の立ち上げから運営までスムーズに進めやすい点も魅力です。
海外で起業するメリットとデメリット
起業は国内であっても大きな決断ですが、海外での起業はそれ以上の挑戦となります。
海外での起業には多くのチャンスがありますが、当然リスクも伴います。ここでは、海外で起業するメリットとデメリットを整理します。
メリット
海外で起業するメリットは、成長を見込める市場でビジネスができることです。すでに日本で起業している場合は、その経験を外国で活かすこともできます。また、法人税率が日本より安い国もあります。
さらに、経済が発展している国では新しいビジネスのニーズが次々と生まれるため、アイデア次第で大きく事業が発展する可能性もあります。そして海外で得た経験やネットワークは、将来的に日本で事業を展開する際にも大きな強みになります。
デメリット
海外での起業にはデメリットもあります。まず、言語や文化、法律の違いが壁になることが多いです。特に税制や労働法などのルールは国によって大きく異なるため、事前の調査や専門家のサポートが欠かせません。
また、移住を伴う場合、医療制度や生活環境の違いも考慮する必要があります。メリットとリスクをしっかり把握したうえで行動することが大切です。
起業しやすい国で大きなチャンスをつかみたいなら下調べが重要
海外での起業は、多くのチャンスと可能性を秘めています。
どの国で起業するのか、選び方のポイントはさまざまです。登記が簡単な国や経済成長が著しい国を選ぶという方法などがあります。
ただし、当然日本語は通じないため言葉の壁はあります。さらに法律の違いというハードルもあるため、信頼できるサポート体制と事前準備が重要です。
税務や労務、登記手続きは国ごとにルールが異なります。ここで紹介した起業しやすい国のポイントを参考に、専門家に相談しつつ準備を進めましょう。

















