記事の要約
- 遺産分割の方法には、「現物分割・代償分割・換価分割・共有分割」の4つがある
- 可能なときは「現物分割」を選ぶと、シンプルな手続きで平等な遺産分割が実現しやすい
- 「共有分割」は、遺産分割協議がまとまらないときの最終手段で、基本的には選ぶべきではない
「遺産の分け方には、いくつかの方法があると聞いたけれど、どれを選ぶのが正解なの?」
遺産分割の方法には、下記の4つがあります。
- 現物分割
- 代償分割
- 換価分割
- 共有分割
この記事では、これらの分割方法の詳細を解説したうえで、ご自身の状況に最適な方法の選び方をお伝えします。
なお、VSG相続税理士法人では、相続に関するご相談を無料で承っております。遺産分割についてお困りのことがあれば、下記からお気軽にご連絡ください。
目次
▼「遺産分割」については、下記の動画でも解説しています
遺産分割とは?

遺産分割は、亡くなった方(被相続人)が遺した財産について相続人全員で話し合い、「誰が・どの財産を・どれほど受け取るか」を決める手続きです。
相続が発生すると、亡くなった方の財産はいったん、相続人全員の「共有財産」となります。
この共有状態を解消し、それぞれの財産の新しい持ち主を決めるのが遺産分割の目的です。
遺産分割の手続きは、一般的に下記の優先順位で進められます。
| 優先順位 | 概要 |
|---|---|
| ①指定分割 | 故人が遺言書を残していた場合は、原則として遺言の内容に従って遺産分割する |
| ②協議分割 | 遺言書がない場合、相続人全員で話し合う「遺産分割協議」で遺産の分け方を決める |
| ③調停分割・審判分割 | 遺産分割協議がまとまらない場合、家庭裁判所の調停や審判を利用して解決を図る |
本記事では、このうち「②協議分割」を行う際に知っておくべき、遺産分割の方法をお伝えしていきます。
遺産分割の「4つの方法」と「メリット・デメリット」

遺産分割の方法とそれぞれのメリット・デメリットは、下表のとおりです。
| 分割方法 | 詳細 |
|---|---|
| 現物分割 |
【概要】 財産をそのままの形で各相続人に分ける 【メリット】 【デメリット】 |
| 代償分割 |
【概要】 特定の人が財産を多くもらう代わりに、ほかの人に代償金を払う 【メリット】 【デメリット】 |
| 換価分割 |
【概要】 不動産などを売却して現金化し、そのお金を相続人で分ける 【メリット】 【デメリット】 |
| 共有分割 |
【概要】 1つの財産を複数の相続人の共有名義にする 【メリット】 【デメリット】 |
以下では、それぞれの分割方法について、詳しく見ていきます。
方法1:現物分割
現物分割は、「実家の土地・建物は母親が、預貯金は長男が、株式は二男が相続する」というように、財産ごとに取得する人を決める方法です。

広い土地がある場合に、土地を2つに分けて(分筆して)、それぞれ別の人が取得するケースも現物分割に含まれます。

現物分割のメリットは、「財産の売却」や「代償金のやりとり」がなく、手続きがシンプルになることです。
このため、相続人同士でトラブルにならないのであれば、現物分割がベストな選択肢だといえます。
しかし、一般的には財産によって価値が大きく異なることから、相続人の間で取得額に差が出やすく、その不公平感から揉める原因になることがあります。
方法2:代償分割
代償分割は、特定の人が価値の高い財産を取得する代わりに、ほかの相続人に対して、自分の財産から「代償金」を支払って調整する方法です。
たとえば、「長男が評価額5,000万円の実家を相続する代わりに、二男に対して自分の預貯金から2,500万円を支払う」といったケースが該当します。
これにより、実質的には、兄弟で2,500万円ずつ平等に分けたことになります。

代償分割では、不動産などの分割が難しい財産を、特定の人が単独で引き継ぐことができます。
また、ほかの相続人も現金を受け取れて「公平な分割」を実現できるのは、代償分割のメリットです。
ただし、財産を引き継ぐ人に、代償金を支払えるだけの十分な資金力がなければ、代償分割は選択できません。
方法3:換価分割
換価分割は、遺産を売却して現金に変え、その現金を相続人で分ける方法です。
たとえば、「実家を5,000万円で売却し、諸経費を引いて残った現金を兄弟で半分ずつ分ける」といったケースが該当します。

換価分割では、財産を現金化することで、1円単位まできっちりと公平に分けられます。
また、相続税の納税資金が手元にない場合は、売却代金を納税に充てられるのもメリットです。
一方で、想い出の詰まった実家などを手放すことになり、売却の手間や仲介手数料などのコストがかかる点はデメリットだといえます。
さらに、財産の売却によって利益が出た場合は、譲渡所得税がかかることもあります。
方法4:共有分割
共有分割は、1つの財産を複数の相続人で「共有」する方法です。
たとえば、「実家の土地・家屋を、長男と二男で1/2ずつの持分で共有にする」ようなケースが該当します。

共有分割を選べば、話し合いで分け方が決まらなくても、「とりあえず法定相続分で共有しておく」というかたちで、一応の合意形成ができます。
しかし、不動産を共有状態にすると、将来その不動産を売却したり、建て替えたりする際に、共有者全員の同意が必要になります。
こうして権利関係が複雑になり、事実上「塩漬け」の不動産になってしまうリスクがあることが共有分割のデメリットです。
以上のことから、共有分割はできるだけ避けることをおすすめします。
【フローチャート】自分に合った「分割方法」の選び方

ご自身に合った分割方法を知りたい場合は、以下のフローチャートを参考にしてみてください。

ここでは、フローチャートの結果をもとに、分割方法の判断基準について詳しく見ていきます。
バランスよく資産があるなら「現物分割」
相続財産の中に「不動産」がなく、預貯金や有価証券※1のみであれば、そのまま「現物分割」で、法定相続分どおりに分けやすいです。

また、相続財産に不動産が含まれている場合でも、ほかの預貯金などが十分にあれば、上手に調整して、法定相続分どおりの分割が可能です。

現物分割は、もっともシンプルに平等な分け方が実現する方法です。
そこで、遺産分割協議の場では、現物分割ができないか検討するところから始めることをおすすめします。
- ※1
- 故人が事業を行っていて、遺産に「自社株」がある場合は、基本的に後継者がすべて相続したほうがよいため、「代償分割」などを検討することになる
不動産を継ぎたい人がいるなら「代償分割」
次の3つの条件にすべて当てはまるのであれば、「代償分割」が適しています。
- 不動産を継いで、そこに住んだり、貸し出したりしたい人がいる
- 不動産以外に遺産が少なく、1人が不動産を相続してしまうと、不平等な分け方になってしまう
- 不動産を継ぎたい人に、ほかの相続人に代償金を払えるだけの資金力がある
このようなケースでは、「不動産を継ぐ人」が「別の相続人」に代償金を払うことで、法定相続分どおりの遺産分割が実現します。

もし、不動産を継ぎたい人に資金力がない場合でも、下記のような対応をすることで、代償分割をできる可能性があります。
- 相続人同士の合意のうえ、代償金を分割払いにしてもらう
- 広い土地なら、一部を分筆して売却し、代償金を作る
また、故人の配偶者が今の家に住み続けたい場合、「配偶者居住権」を設定することで、支払う代償金を抑えられます。
「不動産を相続したいが、代償金を払える資金力はない」という場合は、お気軽に当事務所までご相談ください。ご事情をお伺いしたうえで、最適な対応をアドバイスいたします。
不動産を誰も利用しないなら「換価分割」
遺産の中に「不動産」があるものの、誰もその不動産を利用する予定がなければ、「換価分割」を選ぶのがおすすめです。
その不動産を売却して現金化することで、1円単位で法定相続分どおりに分け合うことも可能になります。
なお、相続した不動産を売却する際の流れや、かかる税金については下記の記事で詳しくお伝えしているので、併せてご覧ください。
話し合いがまとまらない場合の最終手段「共有分割」
いくら話し合いをしても、「現物分割・代償分割・換価分割」のいずれの方法でも同意できないときは、「共有分割」を選択することになります。
ただし、遺産を共有状態にすることは、あくまで「問題の先送り」に過ぎません。
安易に共有分割を選ぶ前に、もう一度「換価分割で不動産を現金化できないか?」「代償金を分割で払えないか?」などを話し合うことを強くおすすめします。
遺産分割に関するよくある質問
最後に、遺産分割に関する次の質問にお答えします。
Q1:遺産分割協議は、どのように進める?
遺産分割協議は、次の流れで進めます。
- 相続人を確定させる
- 相続財産を把握する
- 分割方法のたたき台を準備する
- 相続人全員で分割方法を話し合う
- 代表相続人を決める
- 遺産分割協議書を作成する
この記事でお伝えした遺産分割の方法は、「④相続人全員で分割方法を話し合う」の場面で検討することになります。
無事に遺産分割協議がまとまったら、「遺産分割協議書」を作成しましょう。

「遺産分割協議の進め方」と「遺産分割協議書の作成方法」は、それぞれ下記の記事でお伝えしているので、併せてご参照ください。
Q2:遺産分割は、いつまでに終わらせるべき?
「遺産分割」自体には、「いつまでに終わらせなければならない」という法的な期限はありません。
しかし、相続税が発生する場合、申告・納付の期限は「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内」と定められています。
もし期限内に遺産分割が終わっていないと「未分割申告」をせざるを得ず、下記の制度を適用できないため、一時的に多額の納税が必要になるリスクがあります。
そのため、実務上は「故人が亡くなってから10カ月以内」を目安に、遺産分割を完了させることをおすすめしています。
Q3:分割方法を話し合うとき、遺産の評価額はどう決める?
遺産分割をする際の「財産の価額」は、次の基準で評価することが多いです。
| 財産の種類 | 評価の基準 |
|---|---|
| 預貯金 |
■ 「被相続人が亡くなった日」時点での残高 ■ 葬儀代などを立て替えた人がいれば、その金額を考慮して分割するのが一般的 |
| 不動産 |
■ 相続税申告がある場合は、「路線価」や「倍率方式」による相続税評価額※1が多い ■ 相続税申告が不要な場合や、分割方法で揉めているときなどは、「固定資産税評価額」や「実勢価格(時価)」を参考にすることもある |
| 株式・投資信託 | ■ 「遺産分割をする日」時点の価格 |
| 金(ゴールド) | ■ 「遺産分割をする日」時点の価格 |
- ※1
- 「小規模宅地等の特例」を適用できる土地は、適用前の相続税評価額を用いる
なお、「相続税の申告」をする際の各財産の評価は、国税庁が定める方法に従わなければなりません。詳細は、下記の記事をご参照ください。
Q4:借金も複数の相続人で分割できる?
借金などのマイナスの財産は、原則として法定相続分に応じて各相続人が自動的に引き継ぐことになるため、遺産分割協議で自由に分割できません。
相続人同士の話し合いで「長男がすべての借金を返済する」などと決めることは可能ですが、これはあくまで身内での取り決めに過ぎません。
お金を貸していた債権者に対し、「借金はすべて長男が引き受けたから、私には請求しないで」と主張することはできないのでご注意ください。
もし借金の額が、預貯金や不動産などの「プラスの財産」よりも多い場合は、相続放棄も検討するようにしましょう。
遺産分割で困ったら専門家に相談しましょう
本記事では、「遺産分割の4つの方法」と「ご自身の状況に合った方法の選び方」をお伝えしました。
もし、記事をご覧いただいても「自分たちだけで決めるのは不安」という場合は、相続の専門家に相談してみるのも一手です。
当事務所では、初回の相談を無料で承っておりますので、お気軽にご連絡ください。



