記事の要約
- 未支給年金とは、亡くなった方が受け取れずに残った年金のこと。一般的には亡くなった時期に応じて1~3カ月分を受け取れる
- 請求できるのは、亡くなった当時に生計を同じくしていた遺族のみ。相続放棄をしていても受け取れる
- 年金の支給が止まっても、未支給年金は自動では振り込まれない。請求の期限は5年
年金を受給していた方が亡くなったとき、まだ支払われていなかった分は「未支給年金」として、遺族が受け取ることができます。
年金をすでに受給しており、過去分の未請求などがない一般的なケースでは、未支給年金は亡くなった時期に応じて1~3カ月分となります。
ただし、年金を請求しないまま亡くなった場合や、繰下げ待機中に亡くなった場合などは、3カ月を超える未支給年金が発生することもあります。
なお、請求できるのは故人と「生計を同じくしていた」遺族に限られ、自身で請求手続きを行わなければ支給されません。
この記事では、未支給年金について、請求できる対象者や受け取れる金額、手続きの流れ、税務上の取り扱いまで詳しくお伝えします。
なおVSG相続税理士法人では、相続に関するご相談を無料で受け付けておりますので、相続でご不安なことがございましたら、お気軽にご連絡ください。
目次
未支給年金とは「故人が受け取っていなかった年金」
未支給年金とは、「本来であれば亡くなった方に支給されるはずだったが、まだ受け取られていなかった年金」のことです。
未支給年金が発生する主な理由は、公的年金制度が「後払い」のしくみになっているためです。
公的年金は偶数月の15日に、その「前月」と「前々月」の2カ月分が支払われます。
たとえば、6月15日に振り込まれるのは、4月分と5月分の年金です。

また、年金を受給していた方が亡くなった場合、死亡した月までの年金は、全額受け取る権利があります(日割り計算はされません)。
したがって、年金受給者が亡くなった月までの分として支払われるべき年金のうち、まだ受け取っていない全額が「未支給年金」となります。

未支給年金は、国民年金や厚生年金などの「公的年金」だけでなく、企業年金をはじめとする「私的年金」でも発生します。
この記事では、主に「公的年金」の未支給年金を中心に取り上げます。
未支給年金を請求できる人
未支給年金は、相続人であれば誰でも受け取れるというものではありません。
請求できる人の条件と順位を確認しましょう。
条件は「生計を同じくしていた」こと
未支給年金を請求できる人は、受給者が亡くなった当時、その方と「生計を同じくしていた」遺族に限られます。
「生計を同じくしていた」とは、主に以下のような状況を指します。
- 亡くなった方と同居していた
- 亡くなった方と住民票上、同一世帯であった
- 住民票上は別世帯だが、仕送りなどの経済的な援助関係があり、定期的な音信や訪問があった
未支給年金の請求において、「同居」は必須要件ではありません。
たとえば、故人が介護施設に入所していた場合や単身赴任していた場合でも、「定期的な仕送りがあった」「健康保険の扶養親族になっていた」などの事実があれば、生計同一関係が認められる場合があります。
なお、故人と住民票上の住所が異なる場合は、通常の必要書類に加えて「生計同一関係に関する申立書」の提出が必要です。
別居していたケースでは、民生委員や町内会長、入所先施設の施設長といった第三者による証明を求められることもあります。
請求者には優先順位がある
未支給年金を請求できる遺族には、以下の優先順位が定められています。
- 配偶者
- 子ども
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 上記以外の3親等内の親族
自身より先順位の方がいる場合は、原則として請求できません。
ただし、先順位の方が故人と生計を同じくしていなかったときは、後順位の方が請求権者となることがあります。
判断が難しいときは、年金事務所に確認しましょう。
なお、同順位の方が複数いるときは、そのうちの1人が代表して未支給年金を請求します。
請求できる人が誰もいないとき
故人と生計を同じくしていた遺族が1人もいない場合、未支給年金を受け取ることはできません。
未支給年金は「相続財産」ではなく、請求する遺族の「固有の権利」(遺族の生活保障を目的とした権利)とされているためです。
そのため、未支給年金は遺産分割協議の対象にもならず、相続人同士で分け合うこともありません。
未支給年金はいくらもらえる?
未支給年金の額は、年金受給者が亡くなった時期によって異なります。
通常の未支給年金は亡くなった時期により1~3カ月分
年金が偶数月の15日に2カ月分ずつ支払われる関係上、未支給年金は「亡くなった月」と「亡くなった月の支給日の前か後か」で、次の3パターンに分かれます。
| 亡くなった時期 | 未支給年金 | 例 |
|---|---|---|
| 偶数月の支給日より前 | 3カ月分 | 4月10日に死亡 → 2月分・3月分・4月分 |
| 偶数月の支給日以降 | 1カ月分 | 4月20日に死亡 → 4月分 |
| 奇数月(日付を問わず) | 2カ月分 | 3月に死亡 → 2月分・3月分 |
たとえば、4月20日に亡くなった場合、2月分・3月分は4月15日にすでに振り込まれています。
そのため、未支給年金は死亡月である4月分(1カ月分)のみです。
一方、同じ4月でも10日に亡くなった場合は、4月15日の振込が行われる前であるため、2月分・3月分に加え死亡月である4月分を合わせた、計3カ月分が未支給年金となります。
なお、支給日の15日が土日祝日に重なるときは、その直前の平日に繰り上げられます。

金額の目安は年金証書で確認できる
未支給年金の1カ月あたりの受給額は、故人が生前受け取っていた年金額とほぼ同額です。
おおよその目安は、年金証書や直近の年金振込通知書で確認できます。
年金振込通知書
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引用元 日本年金機構
ただし、年金証書に記載されている金額は、「年金の受給権が発生した当初」のものです。
その後の法改正や物価、賃金の変動に伴う年金額改定により、実際の支給額とは異なる場合があります。
複数の公的年金を受給していた場合は、それぞれについて未支給となっている年金額を確認します。
企業年金などの私的年金については制度や運営主体が異なるため、別途確認が必要です。
死亡後に故人名義の口座へ年金が振り込まれた場合
年金受給者の死亡後に、故人名義の口座へ年金が振り込まれることもあります。
たとえば、年金支給日直前に亡くなった場合は、金融機関および日本年金機構の事務処理がすでに完了しているため、通常どおりの支給日に年金が入金されていることがあります。
このうち、死亡月分までに対応する年金は未支給年金として扱われます。
一方、死亡月の翌月以降の年金が振り込まれた場合は過払いとなり、返納が必要です。
未支給年金の請求手続き
国民年金・厚生年金の未支給年金は、次の手順で請求します。
- 必要書類を準備する
- 年金事務所へ提出する
- 決定通知書を受け取り、振込を確認する

ここからは、各ステップを詳しく確認しましょう。
なお、「私的年金」については、利用している制度によって請求方法が異なるため、給付元に手続きを確認しましょう。
ステップ1:必要書類を準備する
ご自身が請求できることを確認したら、必要書類を準備します。
主な必要書類は、以下のとおりです。
- 年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書
- 亡くなった方の年金証書
- 亡くなった方と請求する方の続柄が確認できる書類(戸籍謄本など)
- 亡くなった方と請求する方が生計を同じくしていたことがわかる書類(亡くなった方の住民票の除票、請求する方の世帯全員の住民票など)
- 受け取りを希望する金融機関の通帳などのコピー(省略できる場合あり)
- 生計同一関係に関する申立書(亡くなった方と住民票上の住所が異なる場合)
- 請求者のマイナンバーが確認できる書類
ポイント1:年金受給停止と未支給年金の手続きは同時に行える
前提として、年金受給者が亡くなったときは、年金の支給を止めるため「年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書」を提出します。
名称のとおり、未支給年金の請求書と1つの書式にまとめられており、年金受給停止手続きと未支給年金の請求は同時に済ませることができます。
なお、亡くなった方のマイナンバーが日本年金機構に収録(登録)されている場合、死亡届の提出は省略できます。
マイナンバーの収録によって「死亡届」を省略できても、「未支給年金」は請求手続きをしなければ受け取れません。
年金の支給が止まったことで「手続きが終わった」と思い込み、そのまま未支給年金を請求しないままになってしまわないようご注意ください。
ポイント2:請求者は「公金受取口座登録制度」を利用できる
請求者自身の「公金受取口座」を受取先に指定し、請求書に「マイナンバー」を記入することで、通帳などのコピーの添付や請求書にある「金融機関による口座証明」欄の証明が不要になります。
ステップ2:年金事務所などへ書類を提出する
書類は年金事務所へ郵送するほか、予約のうえ年金事務所や街角の年金相談センターで手続きできます。
電子申請「e-Gov」からも手続きが可能です。
最寄りの相談窓口は、日本年金機構のWebサイトから確認できます。
一部の共済年金については共済組合への提出が必要となるため、該当する場合は年金事務所や加入していた共済組合に確認しましょう。
ステップ3:決定通知書を受け取り、振込を待つ
請求書を提出後、日本年金機構で支給審査が行われます。
書類を提出しても、すぐに未支給年金が振り込まれるわけではない点にご留意ください。
提出後の大まかな流れは以下のとおりです。
- 審査を経て「未支給【年金・保険給付】決定通知書」が郵送される(請求書の受付から支払いまでは、おおむね3カ月が目安)
- 通知書に記載された内容にもとづいて振り込まれる
未支給年金の振込日は、通常の年金支給日(偶数月15日)とは異なり、審査が完了した順に個別に設定されます。
具体的な振込日は送付される決定通知書に明記されますので、到着時にご確認ください。
なお、審査の結果、要件を満たさないと判断された場合は「不該当通知書」が届きます。
これらの通知書類は「請求者の住所」に郵送されます。
請求後に転居の予定がある場合は、年金事務所へ速やかに住所変更の届出を行いましょう。
【注意】未支給年金の請求期限は「5年」
未支給年金の請求権は、「年金の支払日の翌月初日」から起算して5年を経過したときに時効により消滅します。
たとえば、未支給年金が3カ月分ある場合、各月ごとにそれぞれの請求期限があります。
手続きをしないまま年月が経つと、古い月の分から順に受け取れなくなっていきます。
書類の紛失や失念を防ぐためにも、速やかなお手続きをおすすめいたします。
また、遺族年金の受給権がある場合は、未支給年金の請求書と併せて提出することが可能です。
一度の手続きで済むよう、事前に必要書類を整理しておくと効率的です。
未支給年金にかかる税金
未支給年金は相続税の対象にはならず、受け取った遺族の一時所得として所得税の課税対象となります。
相続税はかからない
公的年金の未支給分は「亡くなった方の財産」ではなく、「請求権を持つ遺族固有の財産」とみなされます。
遺産分割協議の対象にはならず、相続財産に加算されることもありません。
したがって、未支給年金は相続税の課税対象外です。
受け取った人の「一時所得」として扱われる
未支給年金は、受給した遺族の「一時所得」として所得税の課税対象となります。
一時所得には、年間で合計50万円の特別控除があります。
その年にほかの一時所得がなければ、受給した未支給年金の総額が50万円を超えない限り、所得税の確定申告は不要です。
ただし、生命保険の満期保険金や解約返戻金など、ほかの一時所得がある場合は合算する必要があります。
ご自身のケースで確定申告が必要かどうか判断が難しいときは、税理士などの専門家に相談してみることをおすすめします。
私的年金(企業年金・iDeCo等)は扱いが異なる
確定拠出年金(iDeCo、企業型DC)や企業年金などの「私的年金」における死亡一時金や未支給年金については、制度ごとに課税関係が異なります。
公的年金の未支給年金とも制度や課税関係が異なり、年金受給権や死亡一時金が相続税の対象となる場合もあるため、加入している制度ごとに確認が必要です。
未支給年金と遺族年金との関係
年金受給者が亡くなったとき、遺族が受け取れる可能性のある給付は未支給年金だけではありません。
ここからは、未支給年金と遺族年金の関係を紹介します。
未支給年金と遺族年金は両方受給できる
未支給年金と遺族年金は、それぞれ目的が異なる給付制度です。
未支給年金は「死亡月までに受け取れなかった年金」であるのに対し、遺族年金は「遺族の今後の生活を支えるための年金」です。
それぞれの受給要件を満たしていれば、未支給年金と遺族年金の両方を受け取ることができます。
なお、年金事務所への手続きも同じタイミングで請求書を提出することができます。
要件の違いにより、一方のみ受け取れる場合もある
未支給年金は「生計を同じくしていた(生計同一)」ことが受給要件です。
一方、遺族年金の「生計維持」では、生計を同じくしていることに加えて、原則として遺族側に一定の収入要件があります。
そのため、両者の受給要件は同じではありません。
したがって「遺族年金の受給要件は満たさないものの、未支給年金は請求できる」というケースも十分にありえます。
ほかの給付との違い
遺族が受け取れる主な給付と、未支給年金との関係は以下のとおりです。
| 給付 | 受け取れる人 | 未支給年金との関係 | 税金 |
|---|---|---|---|
| 未支給年金 | 故人と生計を同じくしていた3親等内の親族など ※配偶者には、一定の要件を満たす事実婚関係の方も含まれる |
― | 受け取った方の一時所得(所得税の対象) |
| 遺族年金 | 故人に生計を維持されていた配偶者や子どもなど | 要件を満たせば併給できる | 相続税・所得税ともに非課税 |
| 死亡一時金 | 国民年金の保険料を納めた方が、年金を受け取らずに亡くなった場合の遺族 | 原則として年金を受け取っていた方には発生しない | 相続税・所得税ともに非課税 |
未支給年金に関するよくある質問
Q1:相続放棄をしても、未支給年金は受け取れる?
Q2:同じ順位の人が複数いる場合は、先着順となるの?
Q3:想定していた金額より少ない理由は?
Q4:故人が年金受給の繰下げ中に死亡した場合の請求はどうなる?
Q5:未支給年金をもらいすぎた場合、どうすればいい?
まとめ:未支給年金は生計を同じくしていた遺族が請求できる
今回は、未支給年金についてお伝えしました。
- 未支給年金とは、亡くなった方が受け取れずに残った年金のこと。一般的には亡くなった時期に応じて1~3カ月分を受け取れる
- 請求できるのは、亡くなった当時に生計を同じくしていた遺族のみ。相続放棄をしていても受け取れる
- 年金の支給が止まっても、未支給年金は自動では振り込まれない。請求の期限は5年
VSG相続税理士法人では、グループ内の税理士・司法書士・行政書士・社会保険労務士などと連携し、お客様の相続に関するご相談にワンストップで対応しています。
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