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最終更新日:2026/2/19

相続財産清算人とは?選任が必要な場面や手続きの流れを解説

田中 千尋 (司法書士)
この記事の執筆者 司法書士 田中千尋

VSG司法書士法人 司法書士 昭和62年生まれ、香川県出身。

相続登記や民事信託、成年後見人、遺言の業務に従事。相続の相談の中にはどこに何を相談していいかわからないといった方も多く、ご相談者様に親身になって相談をお受けさせていただいております。

PROFILE:https://vs-group.jp/sozokuzei/profiletakana/

記事の要約

  • 相続財産清算人は、故人に「相続人がいない」ときに、遺産の管理・処分をする人のこと
  • 故人と関係のある「特別縁故者・受遺者・債権者」が、選任の手続きをすることがある
  • 相続財産清算人は、家庭裁判所に申立てをすることで選任してもらえる

相続財産清算人は、故人に「相続人がいない」ときに、遺産の管理・処分をする人のことです。

この記事では、相続財産清算人の概要を紹介したうえで、「必要な場面」や「選任してから、遺産を清算するまでの流れ」をお伝えします。

なお、VSG相続税理士法人では、相続に関するお悩みに無料でお答えしています。何かお困りのことがあれば、下記からお気軽にご連絡ください。

▼「相続財産清算人」については、下記の動画でも解説しています

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相続財産清算人とは?

この記事の流れ1

「相続財産清算人」は、次のような状況から相続人がいないときに、亡くなった方の遺産を管理・清算するために選ばれる人のことです。

状況

  • 故人が亡くなった時点で、法定相続人になる可能性のあった親族が全員死亡しており、相続人がいない
  • 故人に多額の借金があり、相続人全員が相続放棄をした など

相続財産清算人は、故人の遺産を清算してほしい人が、家庭裁判所に申立てをすることで選任されます。

ただし、申立人が相続財産清算人になるわけではなく、「地域の弁護士」などの法律の専門家が選ばれることが一般的です。

相続財産清算人を選任するイメージ

相続財産清算人が担う主な役割は、以下のとおりです。

役割

  • 財産の調査・管理
  • 借入金や未払金の弁済
  • 遺言の内容の実行
  • 特別縁故者への財産分与
  • 残った財産の国庫への引き渡し

つまり、持ち主のいなくなった財産を整理して、「受け取るべき人」に橋渡しをするのが、相続財産清算人の仕事です。

相続財産清算人が必要な主な場面

この記事の流れ2

相続財産清算人が必要となる、主な場面は次の2つです。

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

場面1:「特別縁故者」として遺産を受け取りたい

1つ目は、相続人ではないけれど、故人と特別な関係にあった人が「特別縁故者」として遺産を受け取りたいときです。

遺言書が残っていなくても、以下のような方は、家庭裁判所に認められることで遺産を受け取れる可能性があります。

特別縁故者の例

特別縁故者が遺産を受け取るには、「相続財産清算人」が選任されていなければなりません。

選任された相続財産清算人が「債務の弁済」と「遺贈の実行」をした後、財産が残っていれば、特別縁故者はそのなかから財産分与を受けられます。

場面2:「債権者」として債権を回収したい

2つ目は、故人にお金を貸していたり、家賃を滞納されていたりした「債権者」が、遺産から債権を回収したいときです。

債権を回収できないイメージ

故人に多額の借金があると、相続人全員が相続放棄することも考えられます。

そのようなケースでは、弁済を請求する相手がいないため、債権者は家庭裁判所に「相続財産清算人」を選任してもらってから、債権を回収する手続きをすることがあります。

なお、故人の遺言書で指名された「受遺者」も、相続人がいないと遺産を受け取れません。

ただし、このときには「相続財産清算人」ではなく、「遺言執行者」の選定の申立てをするのが一般的です。

遺言執行者については、下記の記事で詳しくお伝えしているので、必要な方は併せてご確認ください。

そのほかの場面

相続財産清算人の選任申立ては、相続放棄した「元相続人」が行うこともあります。

これは、相続放棄をしても、相続財産清算人が選任されるまでの間は、実家などの不動産について、事実上の管理責任が残る可能性があるためです。

たとえば、老朽化した実家を空き家のまま放置すると、倒壊や不法投棄などにより、近隣トラブルが発生しかねません。

こうしたトラブルを未然に防止するために、相続財産清算人を選任し、債権者への弁済などの適切な処理をしてもらうことが検討されます。

相続財産清算人の選任~遺産の清算の流れ

この記事の流れ3

相続財産清算人の選任の申立てをして、実際に遺産が精算されるまでの流れは、下記のとおりです。

ここでは、それぞれのステップを詳しく見ていきます。

ステップ1:申立ての事前準備

ステップ1

まずは、「誰が相続財産清算人の選任の申立てをできるのか」を確認しておきましょう。

申立てができるのは、故人と利害関係のある人に限られます。具体的には、次のいずれかに該当していれば、申立てが可能です※1

申立てできる人

  • 特別縁故者
  • 債権者
※1
このほかに、「受遺者・相続放棄をした元相続人・検察官」も申立てが可能

また、家庭裁判所に申立てをする際は、下記の書類が必要になるため、準備を進めておいてください。

費用 概要
申立書 ■ 様式は裁判所のWebサイトでダウンロードできる
■ 公開されている「記入例」を参考にして、作成する
財産目録相続関係図 ■ 「故人の財産」と「親族関係」をまとめた書類
裁判所が公開している書式とは、別の形式でも構わない
被相続人に関する書類 ■ 「出生から死亡までの連続した戸籍謄本」と「住民票除票または戸籍附票」を求められる
相続人の不在を明らかにする書類 ■ 故人の「父母・子ども・兄弟姉妹」など、相続人になる可能性があった人の戸籍謄本が必要
財産を証明する資料 ■ 財産目録の内容が正しいことを証明するため、「登記簿謄本」や「通帳のコピー」などが必要

ただし、ご自身が置かれている状況によって、申立てに必要な書類は変わります。

このため、事前に手続きする家庭裁判所に問い合わせて、確認しておくことをおすすめします。

ステップ2:家庭裁判所への申立て

ステップ2

必要な書類が揃ったら、「亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」に申立てを行いましょう。

家庭裁判所の管轄は、裁判所のWebサイトで確認できます。

申立てをした後は、ほとんどのケースで裁判所から「予納金」の支払いを求められます。

予納金とは?

予納金は、相続財産清算人になる弁護士への報酬や、手続きにかかる経費に充てるために、あらかじめ裁判所に納めておくお金です。

金額は「相続財産の価額」などから事案ごとに判断され、100万円ほどになるケースもあります。

予納金は、「手続きに必要な費用を、遺産の中からは支払えなかったときのための保証金」のようなものです。

預貯金などの遺産が十分にあれば、そこから必要費用に充てられるので、納めたお金がそのまま戻ってくる場合もあります。

一方、「遺産は売れない不動産ばかり」といったケースでは、予納金から必要費用が差し引かれるため、実質的に申立人の負担となります。

ステップ3:相続財産清算人の選任

ステップ3

申立てが受理されると、裁判所が地域の弁護士などを「相続財産清算人」として選任します

相続財産清算人が選任されると、そのことが官報※1に掲載されます。

官報のイメージ

官報のイメージ

引用元 官報|令和8年1月20日分

※1
法令や公告などの情報を国民に広く知らせるための、国の公式機関紙

ステップ4:債務の弁済・遺贈の実行

ステップ4

相続財産清算人が選任された後、家庭裁判所と相続財産清算人によって、次の2つの調査が進められます

調査項目

  1. 家庭裁判所:故人には、本当に「相続人」がいないのか?
  2. 相続財産清算人:故人と関係のある「債権者」や「受遺者」がいるか?

この調査のために行われるのが、「公告」という手続きです。

公告とは?

「公告」とは、広く一般の方に向けて、法的な手続きに関する重要なお知らせをすることです。

相続財産清算人に関連する公告の内容は「官報」に掲載され、心当たりのある関係者から名乗り出てもらう機会が設けられます。

具体的にここでは、以下の2つの公告がなされます。

公告の種類 公告をする主体 公告の期間
①故人に「相続人」がいるならば、名乗り出ることを求める公告 家庭裁判所 6カ月以上
②故人と関係のある「債権者」と「受遺者」に申し出ることを求める公告※1 相続財産清算人 2カ月以上※2
※1
この公告とは別に、相続財産清算人が把握している債権者・受遺者がいれば、個別に知らせなければならない
※2
①の公告期間が満了するまでの間に、並行して実施される

もし、①の公告によって「相続人」が見つかったら、故人の遺産はすべてその方へ引き渡されます

一方、相続人が名乗り出てこないときには、①②の公告期間の終了後に、次の優先順位で遺産が精算されます

優先順位 概要
①債務の弁済 申し出があった債権者に対して、相続財産清算人が遺産の中から債務を弁済する
②遺贈の実行 「債務の弁済」をしても財産が残っている場合、受遺者への遺贈が実行される

ステップ5:特別縁故者への財産分与・国庫帰属

ステップ5

「債務の弁済」と「遺贈の実行」を終えても財産が残っている場合に限り、特別縁故者は遺産を受け取れます

財産分与を受けたい特別縁故者は、「相続人捜索の公告」の期間が満了した翌日から3カ月以内に、家庭裁判所に申立てをしなければなりません。

その後、裁判所で審判が行われ、「どれほど介護に尽くしたか」などの貢献度に応じて、分与される財産の金額が決まります。

それでも残った財産があれば、最終的に国庫に引き継がれ、相続財産清算人の任務は終了となります。

相続財産清算人に関するよくある質問

最後に、相続財産清算人に関する、次の質問にお答えします。

Q1:清算人の選任にかかる「費用」は?

相続財産清算人の選任にかかる主な費用は、以下のとおりです。

費用 概要
書類の取得費 ■ 申立てに必要な書類を発行するための手数料
■ 1通あたり「数百円」ほど
収入印紙代 ■ 申立ての際に「800円分」の収入印紙が必要
郵便切手代 ■ 申立人との連絡に必要な郵便切手の代金をあらかじめ裁判所に渡す
■ 裁判所によって代金が異なる
官報公告料 ■ 相続財産清算人の選任公告の際、官報に掲載する費用として「約5,000円」かかる
相続財産清算人への報酬 ■ 遺産額や業務内容によって変動し、「数十万円」以上になることもある
■ 基本的には、相続財産の中から支払われる
予納金 ■ 手続きに必要な費用に充てるために、裁判所に納める
■ 金額は事案ごとに判断され、「100万円」ほどになるケースもある

このうち「予納金」については、相続財産の中に「現金・預貯金」が十分にあるときは、不要なこともあります。

また、相続財産清算人の選任手続きを「司法書士」や「弁護士」に依頼する場合には、別途で専門家への報酬(数十万円~)がかかります。

Q2:手続きが完了するまでの「期間」はどれくらい?

相続財産清算人が選任されてから遺産が清算されるまでは、最低でも「10カ月~1年ほど」はかかります

「相続人捜索の公告」の期間が、法律で「6カ月以上」と定められていることなどから、手続きの期間を短縮することは難しいです。

Q3:遺贈されるはずだった不動産が、借金返済のために売却されてしまったら?

相続財産清算人は、「遺贈の実行」よりも「債務の弁済」を優先して行うことになっています。

このため、たとえば遺言書に「土地をAさんに遺贈する」と書かれていても、その土地が借金返済のために売却されてしまうケースも考えられます。

そのような場合には、不動産の売却代金から債務を弁済した後、余剰金があれば、そのお金を不動産の代わりに受け取ることが可能です。

一方、売却代金がすべて返済に消えてしまった場合には、遺言があっても何も財産を受け取れません。

Q4:昔の「相続財産管理人」とは何が違うの?

2023年(令和5年)4月1日施行の民法改正により、従来の「相続財産管理人」に関する制度が見直されました。

この改正によって、以下の2点が変更されています。

変更点

  • 遺産の清算を主な目的として選任される者の名称が「相続財産管理人」から「相続財産清算人」に変更された
  • 相続の承認や放棄がされるまでの間など、相続財産の保存を主な目的として選任される「相続財産管理人」(民法897条の2)の制度も新たに設けられた

現在の「相続財産清算人」と「相続財産管理人」の違いは、下表のとおりです。

相続財産清算人 相続財産管理人
相続人 いない いる
目的 遺産の「清算」 遺産の「保存」
役割 相続人がいないため、代わりに借金の返済や遺言の実行などを行う 持ち主が決まるまで、遺産を適切に管理する

Q5:「不在者財産管理人」とは何が違うの?

「相続財産清算人」と「不在者財産管理人」の違いは、以下のとおりです。

種類 概要
相続財産清算人 ■ 相続人が「いない」(または全員放棄した)場合に選任される
■ 遺産の「清算」が目的
不在者財産管理人 ■ 相続人は「いる」けれど、行方不明で連絡がつかない場合に選任される
■ 不在者(行方不明の相続人)の財産の「管理」が目的

不在者財産管理人については、下記の記事で詳しくお伝えしています。

相続で困ったら専門家に相談しましょう

この記事では、相続財産清算人の概要や必要な場面、選任から遺産を精算するまでの流れなどをお伝えしました。

相続の場面では、「相続財産清算人」のほかにも、耳慣れない用語がたくさん登場します。

もし相続手続きを進めるなかで、わからないことや困ったことがあれば、一人で悩まずに専門家を頼ることをおすすめします。

当事務所では、相続に関する相談を無料で受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください。

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