東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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目次
弁護士特約とは、交通事故などの解決を弁護士に依頼した場合、相談料や着手金、報酬金などの弁護士費用を一定額まで保険会社が負担するオプション契約です。
自動車保険や火災保険などのオプションで、毎月の保険料は200~300円程度とまとまった資金がなくても弁護士に相談可能です。
「むちうち程度で弁護士に依頼?」と思われるかもしれませんが、高額な治療費が必要になるケースもあるため、決して軽く考えることはできません。
「弁護士費用特約」とも呼ばれ、加入すると以下の補償が受けられるので、備えを充実させたい方はぜひ参考にしてください。
弁護士特約に加入すると、以下の弁護士費用を保険会社が負担してくれます。
法律相談料 | 10万円まで |
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弁護士費用や裁判費用 | 300万円まで |
法律相談は初回のみ無料としている弁護士も多数いますが、一般的には30分あたり5,000~1万円程度が相場となっています。
弁護士費用には着手金や報酬金、実費や日当が含まれています。
相手と争う金額が1,000万円程度にならない限り、300万円を超えるケースはほとんどありません。
示談交渉の決裂で裁判に発展した場合、裁判所への支払いと弁護士費用を合わせても、300万円を超えることはほぼないでしょう。
弁護士特約に加入した場合、被保険者(契約者)だけではなく、一定範囲の家族や同棲中のパートナーも補償の対象です。
特約を1台目の契約車両に設定すると、被保険者とその同居家族が契約車両以外に搭乗していたときも、弁護士費用が補償されます。
なお、被保険者と別居している以下の人には補償がありません。
弁護士特約を使えるのは基本的に自動車同士の事故、またはバイク(原付バイクを含む)が関連する交通事故です。
自転車の事故や歩行中の事故、自転車対歩行者の事故は対象外になっているケースが多いので注意してください。
本来であれば弁護士特約が使える事故でも、以下のようなケースは弁護士費用の補償がありません。
重過失とは、無免許運転や酒酔い運転、薬物を使用中の運転や時速30キロ以上のスピード違反、故意に発生させた事故などです。
地震や噴火、洪水や暴動などによる事故も特約の対象外となるので注意してください。
むちうちは後遺障害等級の認定が難しく、示談交渉も自分で対応することが多いため、慰謝料や治療費が引き下げられる可能性があります。
ただし、弁護士特約を利用すると以下のメリットがあるので、被害者が治療費を自己負担するなど、不本意な状況になる可能性は低いでしょう。
交通事故の被害で労働能力を喪失した場合、相手方に後遺障害慰謝料を請求できます。
しかし、後遺障害等級に認定されていなければなりません。
むちうちはレントゲンやCT、MRI検査でも証明が難しく、医師も患者の損害賠償請求までは考慮していないケースが一般的です。
交通事故に詳しい弁護士は追加検査の必要性などを医師に助言するので、後遺障害等級が認定されやすい診断書を作成してもらうことができます。
むちうちは神経の損傷によって発生しますが、レントゲンやCT、MRIの画像検査を受けても、発見されない場合が多いので要注意です。
神経学的検査も治療方針の決定が目的になっており、事故直後は腱反射などをテストしますが、治療の終了時期には検査が行われないケースがあります。
事故直後の検査結果は後遺障害診断書に記載されない場合が多いので、むちうちを特定できる画像がなければ、後遺障害の認定は難しいでしょう。
後遺障害は書面のみで審査されるため、後遺障害診断書の内容や画像検査が不十分だったときは、高確率で非該当になります。
交通事故の被害者にも何らかの過失がある場合、過失割合に応じた損害賠償責任を負うため、加入している保険会社が示談交渉をします。
一方、自分に過失がない「もらい事故」は相手に対する損害賠償責任がないので、示談交渉は自己対応しなければなりません。
自分で示談交渉すると相手の保険会社に主導権を握られてしまい、相場よりも低い示談金で納得させられる可能性が高いでしょう。
しかし、弁護士特約に加入していれば弁護士に依頼できるので、不本意な内容で示談がまとまることはありません。
追突事故の場合、一般的に加害者と被害者の過失割合は「10対0」です。
追突事故の発生原因は加害者側の不注意が多いので、被害者は過失なしと判定されるでしょう。
ただし、過失がない追突事故でむちうちになった場合、加害者に対する賠償責任を負わないため、自分が加入している保険会社に示談交渉を依頼できません。
示談交渉は被害者側が不利になるケースが多いので、弁護士特約に加入している方は、必ず弁護士に示談交渉を依頼してください。
むちうちの治療や車両の修理に自動車保険を使うと、保険の等級が下がってしまうため、翌年以降の保険料が上がります。
しかし、弁護士特約は保険の等級に影響しないため、弁護士に示談交渉などを依頼しても、翌年の保険料が上がることはありません。
弁護士費用特約を使っても保険の等級は下がりません。
ただし、以下の補償を受けると、翌年の等級が下がるので注意してください。
1等級下がる事故
3等級下がる事故
車両や対物などの補償については、等級に影響する可能性があります。
交通事故の慰謝料には以下の算定基準があり、もっとも高額になるのは弁護士基準です。
自賠責基準 | 自賠責保険から支払われる最低限の補償 |
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任意保険基準 | 加害者の任意保険から支払われるが、自賠責基準と大きな差はない |
弁護士基準 | 過去の判例を参考にしており、自賠責基準の2~3倍になるケースもある |
自賠責基準で算定した慰謝料は最低限の補償となるため、不足分を任意保険で補いますが、金額に大きな差はありません。
一方、弁護士基準は過去の判例に基づいており、被害者が真に必要とする慰謝料を算定できます。
弁護士以外が用いることは困難な算定基準なので、相場よりも低い金額を提示されたときは、弁護士特約を利用してみましょう。
むちうちは通院日数があまり多くならないため、慰謝料が増額しにくい後遺症です。
自賠責保険の入通院慰謝料は以下のように計算しますが、支払額に対象日数が影響するので、むちうちの場合は低額になるケースが多いでしょう。
自賠責保険の入通院慰謝料
日額4,300円×対象日数
対象日数は以下のどちらか短い方を選択します。
弁護士に依頼して慰謝料を増額できたとしても、弁護士費用が増額分を超えてしまうと、結果的には赤字になります。
むちうちは比較的軽い後遺障害となるため、獲得した損害賠償よりも弁護士費用が高くなってしまう可能性があります。
弁護士特約を利用すると費用倒れになるケースがほとんどないので、気兼ねなく弁護士に依頼できるでしょう。
弁護士費用が損害賠償の増額分を超えると、賠償金よりも弁護士費用が高くなるため、「費用倒れ」が発生します。
むちうちは慰謝料が低額になりやすいので、弁護士費用特約を利用せずに弁護士へ相談すると、費用倒れになる確立が高いでしょう。
一般的な弁護士費用は相談料が5,000円~1万円程度になり、着手金や報酬金も含めると最低20万円はかかります。
通院期間が3ヶ月程度の場合、保険会社の入通院慰謝料は約38万円になりますが、弁護士基準で計算しても53万円程度です。
増額分は15万円程度しかないので、約5万円の費用倒れになるでしょう。
弁護士特約を利用するタイミングは示談交渉の開始前、または示談交渉が難航したときです。
しかし、むちうちの場合は症状固定する頃になるでしょう。
症状固定の時期は保険会社とトラブルになりやすいので、以下を参考に対応してください。
治療を続けてもこれ以上の改善が見込めない状態を「症状固定」といい、治療費の支払いを打ち切られるケースが一般的です。
むちうちは3~6ヶ月で症状固定すると考えられているため、痛みやしびれが残っていても、保険会社から治療費の支払い打ち切りを言い渡される可能性が高いでしょう。
保険会社は個別の症状を考慮しないので、症状固定の時期が弁護士特約を利用するタイミングといえます。
今後の治療費を自己負担することがないよう、打ち切りを伝えられたときには必ず弁護士に相談してください。
交通事故の被害でむちうちの後遺障害が残ったときは、以下の流れで弁護士特約を利用してください。
ほとんどの弁護士特約は事前承認を必要としているので、弁護士に依頼する前に保険会社への連絡が必要です。
基本的に弁護士は自分で選べますが、保険会社が弁護士を指定するケースもあります。
弁護士特約を利用するときは、交通事故や後遺障害の認定に詳しい弁護士がおすすめです。
法律事務所などのホームページを参照し、交通事故の相談件数や解決実績が豊富な弁護士を選ぶとよいでしょう。
弁護士と契約書を締結した後は、保険会社に契約内容を伝えてください。
受任した弁護士が連絡する場合もあるので、よく確認しておきましょう。
後遺障害の等級は14級から1級まであり、むちうちが認定された場合は12級13号、または14級9号になるケースが一般的です。
要介護となる1級や2級よりも軽くみられてしまうため、症状固定と同時に治療費を打ち切られる可能性が高いでしょう。
むちうちの原因がもらい事故であれば、保険会社との示談交渉も自分で対応しなくてはなりません。
特約を利用せずに弁護士に依頼すると数十万~100万円程度の費用になりますが、弁護士特約に加入していれば、争う金額が低くても費用倒れになることはありません。
交通事故の被害に遭うとむちうちになる可能性が高いので、弁護士特約で補償を充実させておきましょう。