東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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自己破産は、債務者である個人が借金を返済できなくなったときに、裁判所に申立てをする手続きです。
自己破産の申立てが認められると、債務者の借金は税金を除いてすべて免除されます。
ただし、自己破産が認められるには、裁判所が選任した破産管財人が債務者の所有財産を徹底的に調べる必要があります。
自己破産を検討されている方の中には、「破産管財人に携帯電話の中身も調べらるの?」「自己破産したらスマホが使えなくなるの?」と心配されている方は多いのではないでしょうか。
この記事では、自己破産したときの携帯電話やスマホの取り扱いについて詳しく解説します。
Contents
自己破産手続きの過程で、携帯電話やスマホは調べられません。
自己破産の手続きで調べられるのは、債務者の所有財産・借金額・借金の原因の3つです。
まず、調査対象となる財産は、不動産(土地・建物)や自動車、株式などの有価証券、保険、20万円以上の財産などです。
借金額は、銀行や金融機関などの債権者から開示された取引履歴や債務者の通帳記録などから調べられ、借金の原因は破産管財人から債務者へのヒアリングによって調査されます。
自己破産は、債務者の借金と財産を洗い出し、財産を処分(換金)して債権者に平等に返済する手続きです。
そのため、自己破産の対象となる借金はいくらなのか、債権者に分配できる所有財産がどれぐらいあるのか、自己破産を認めてもよい状況かなどを確認する必要があり、上記のような調査は必須です。
基本的に債務者の財産や借金額は記録やヒアリングなどで確認できるため、わざわざ債務者の携帯やスマホの中身を調べる必要はありません。
ただし例外的に、債務者がネットギャンブルを行っていた疑いがある場合は、破産管財人から携帯やスマホの調査を求められる可能性があります。
たとえば、オンラインカジノなどで借金を作ってしまった方は注意が必要でしょう。
自己破産した人は、その後も携帯やスマホを使い続けることができるのでしょうか。
自己破産後の携帯を使えるかどうかは、利用料金や携帯端末代の支払い状況によって異なります。
携帯電話やスマホを利用している状況としては、主に以下の3つが考えられるでしょう。
ここからは、自己破産した人の携帯やスマホがどのように取り扱われるか、それぞれのケース別に解説します。
自己破産した時点で、利用料金の滞納や未払いなどがなくきちんと支払いを続けており、携帯本体の端末代も完済済みであれば、問題なく使い続けることができます。
携帯電話会社の利用規約にも、「契約者が自己破産したら解約する」といった規定はありません。
その後も滞納することなく利用料金を支払い続ければ、今使っている携帯をそのまま利用することができます。
ただし、スマートフォンの本体が20万円以上の場合は注意が必要です。
稀なケースではありますが、スマートフォンの本体が20万円以上と高額な場合は、一定以上の価値のある財産として処分対象とみなされる可能性があります。
自己破産したときに、携帯の利用料金を滞納している場合や未払いがある場合、利用を継続することは難しいでしょう。
自己破産をすると、利用料金の滞納や未払いは借金として扱われるため、自己破産によって支払い義務は免除されます。
しかし、契約している携帯電話は料金未払いのため、強制解約となってしまいます。
また、携帯を強制解約された場合、その契約者は携帯電話会社のブラックリストに載ります。
詳しくは後述しますが、その場合、今後同じ携帯電話会社で新規契約をすることは難しくなる可能性があります。
携帯料金の滞納や未払いがある場合は、弁護士に相談する前に全額支払っておくのが望ましいでしょう。
携帯電話本体の端末代を分割払いしている場合で、自己破産したときに、端末代の分割払いが残っている場合も利用を継続できない可能性があります。
携帯電話本体の分割払いは、契約者と携帯電話会社のクレジット契約を交わすことで成り立っています。
つまり、携帯電話会社が携帯の端末代を立て替え、それを契約者が毎月分割して返済する形となっています。
そのため、自己破産においては、端末代の未払い分も借金として取り扱われてしまうため、支払いが免除され強制解約となる可能性があります。
また、最近は携帯端末の分割代金と利用料金がセットとなるプランが多く、両者の切り分けが難しい場合があります。
携帯電話会社によっては、利用料金と端末の分割代金を切り離した設定となっている場合や、端末の分割代金と利用料金を切り分ける交渉が可能な場合もあります。
端末代の分割代金が残っていても、利用料金に滞納や未払いがなく、今後も支払いを継続できる見込みがあれば、これまで通り携帯を使用できる可能性もゼロではありません。
まずは、弁護士に支払い状況をきちんと伝え相談することをおすすめします。
先述したとおり、基本的に利用料金の滞納や分割払い中の端末があると携帯を使用できなくなります。
ただ、以下の方法によって、使用し続けられる可能性があります。
ここから、それぞれの方法について詳しく解説します。
まず、同居していない家族や友人などの第三者に支払ってもらう方法があります。
自己破産手続き中に、自分自身で携帯の利用料金の滞納分などを一括で支払うのは非常に危険なためです。
自己破産手続き中に、債務者本人が未納分の料金などを一括返済する行為は偏頗弁済と呼ばれ、特定の債権者を特別に扱っているとみなされます。
これは、法律上の「債権者平等の原則」に違反する可能性があり、偏頗弁済が発覚すると、自己破産が認められなくなる可能性があります。
そのため、自己破産による強制解約を避けるために、自分で一括返済することは絶対に避けましょう。
また、同居している家族などに支払ってもらうのも避けた方がよいでしょう。
自己破産手続きでは、債務者を含む家計全体をみて支払い能力の有無を確認するため、同居人がいるとその世帯の収支を調べられます。
同居している家族が携帯の滞納分や未払い分を支払ってしまうと、一括して支払える経済力があるとみなされ、自己破産が認められなくなる可能性があります。
同居していない親族や親しい友人にお願いし、支払ってもらうようにしましょう。
また、事前に弁護士に相談し許可をもらった上で、携帯の滞納分や未払い分を支払う方法があります。
先述したとおり、偏頗弁済は避けなくてはなりませんが、携帯電話やスマートフォンなどの生活必需品や自己破産で免除されない税金に関しては、例外的に支払いを認められることがあるためです。
ただし、自分で勝手に支払ってしまうことはリスクが高いので、必ず弁護士に相談して、返済の許可をもらうようにしましょう。
先述した方法が使えず、やむなく携帯が強制解約となり、使えなくなってしまうケースがあります。
日常生活において、携帯電話やスマートフォンが使えないと、家族や友人とも連絡がとりにくくなり、仕事にも支障をきたす可能性があり非常に不便です。
このような場合は、以下の4つの対処法を試してみるとよいでしょう。
ここからは、それぞれの対処法を詳しく解説します。
まず、TCAに加盟していない格安Simを利用する方法があります。
TCAとは、電気通信事業者協会の略称であり、大手の携帯電話会社などが多く加盟している団体です。
自己破産した場合は、契約していた携帯電話会社を債権者として、TCAのブラックリストに登録されます。
そうなると、他の加盟している携帯電話会社にも自己破産の情報が共有されることとなるため、債務者が他の携帯電話会社に新規契約を申し込んでも、TCAの情報によって断られてしまう可能性があります。
多くの携帯電話会社はTCAに加盟していますが、一部の格安Simを取り扱う携帯電話会社はTCAに加盟していないことがあります。
TCAに加盟していない会社であれば、自己破産の情報が共有されておらず、新規契約できる可能性があります。
また、大手の会社と比べて利用料金が安いため、滞納や未納なども起こりにくくなるでしょう。
ただし、利用料金や端末代の支払い方法がクレジットカードに限られることはあります。
自己破産すると5年~10年はクレジットカードを作れない可能性があるので、支払い方法については事前によく調べておきましょう。
レンタル携帯電話を利用する方法があります。
最近は、レンタル携帯電話会社が携帯電話会社とキャリア契約し、顧客に携帯電話やスマートフォンを貸し出すサービスが増えています。
ただし、この場合も料金の支払い方法がクレジットカードに限られることがあるので、注意しましょう。
また、一般的に携帯電話会社とキャリア契約するよりも料金が割高に設定されていることもあるため、利用前によく確認しておくことをおすすめします。
携帯電話やスマートフォンの契約時に預託金制度を利用する方法があります。
預託金制度とは、過去に利用料金や端末代の滞納や未払いがあった人でも、事前にまとまったお金を携帯電話会社に預けることで、契約が可能となる制度です。
預託金額は携帯電話会社によって異なりますが、大体5~10万円ほどが相場となります。
仮に契約途中で滞納が発生した場合は、預託金から滞納分が補填され、減った分を追加で預託する流れとなります。
不動産の賃貸借契約の敷金や、保証金のようなものをイメージすると分かりやすいでしょう。
ただし、この制度を使えるのは一部の携帯電話会社に限られるため、事前に預託金制度の利用が可能か確認しておくことをおすすめします。
家族の名義で契約する方法です。
自己破産をすることによってブラックリストに登録されるのは本人のみで、家族の情報は登録されません。
そのため、配偶者や両親、成人した子どもの名義であれば契約することが可能となります。
ただ、契約者と使用者が異なると、利用規約に反するとして携帯電話会社に断られるケースもあるため、少々難易度が高い方法ではあります。
また、仮に家族の名義でキャリア契約できたとしても、携帯電話会社に無断で債務者が使用していた場合、名義貸し行為という禁止行為にあたる可能性があります。
携帯電話会社に無断で契約者以外が使用していたことが発覚すると、今後その携帯電話会社で契約することができなくなる可能性があるので事前に確認をするようにしましょう。
仮に家族名義で契約できたとしても、携帯電話の機種変更やプラン変更を行う際に契約者の委任状が必要であることや、ショップで修理を依頼する際に契約者本人の同意が必要となるなどの制限を受けることもあります。
他の方法に比べて少々携帯電話を利用する間の自由度が低い方法なので、色々試した結果どうしても使えない場合に検討することをおすすめします。
自己破産をしても携帯やスマホを調べられることはなく、料金や端末代の未払いなどがなければ特に問題なく使えます。
ただし、滞納などがあると強制解約となる可能性があるので、弁護士に相談する前に完済しておくことをおすすめします。
どうしても返済が難しい場合は、弁護士にどうするのがベストか相談し、意見を聞くようにしましょう。