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旧民法の消滅時効ルールとは|時効期間・改正民法との違い・経過措置を解説

弁護士 川﨑公司

この記事の執筆者 弁護士 川﨑公司

東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/kawasaki/
書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!

旧民法の消滅時効ルールとは|時効期間・改正民法との違い・経過措置を解説

この記事でわかること

  • 旧民法における消滅時効のルールと時効期間
  • 消滅時効に関する旧民法と改正民法の違い
  • 旧民法と改正民法のどちらが適用されるか判断するポイント
  • 時効期間が過ぎれば借金は自動的に消えるのか

旧民法[注1]における消滅時効の期間は、債権の種類ごとに異なり(10年・5年・3年)、一律ではありませんでした。
2020年4月1日に施行された改正民法[注1]では時効期間が整理・統一されましたが、施行日より前に生じた債権には、原則として旧民法[注1]が適用されます。
どちらが適用されるかは債権の発生時期によって判断がわかれます。
債権者から連絡を受けて自己判断で返答すると、債務を承認したとみなされ、時効の利益を失う恐れがあります。
連絡を取る前に弁護士へ相談してください。
本記事では消滅時効に関する旧民法と改正民法の違いを解説します。

旧民法の消滅時効ルールとは?

旧民法[注1]では、消滅時効期間が債権の種類や内容により細かく分かれていました。

  • 一般債権は旧民法167条1項[注1]により10年
  • 商事債権は旧商法522条[注2]により5年
  • 職業ごとの短期消滅時効は旧民法170条から174条[注1]により1年から3年

不法行為による損害賠償請求権も、異なる独自の期間が定められていました。
内容を詳しく解説します。

債権の種類内容消滅時効期間根拠条文
一般債権契約に基づく通常の債権10年旧民法167条1項
商事債権商行為によって生じた債権5年旧商法522条
短期消滅時効飲食料・宿泊料、医師の診療報酬など職業別の債権1年~3年旧民法170条〜174条
不法行為による損害賠償請求権不法行為に基づく損害賠償被害者が損害・加害者を知った時から3年、行為から20年旧民法724条

一般の債権|原則10年

個人間の借金など一般債権の消滅時効は、旧民法167条1項[注1]により原則10年です。
起算点は旧民法166条1項[注1]が定める権利を行使できる時であり、通常は弁済期にあたります。
長期間が経過するほど、起算点がいつかを示す証拠は失われやすく、正確な特定が重要です。

商事債権|原則5年

売掛金や営業上の貸付、貸金業者からの借金などは、商事債権として旧商法522条[注2]により消滅時効期間が原則5年とされていました。
5年ルールは、契約の当事者の一方でも商人にあたる場合に適用され、商人にあたるかどうかは商法の商人・商行為に関する規定に基づき判断されます。
貸金業者から借りたお金は、気づかないうちに一般債権の10年ではなく5年の商事時効が適用されているケースが多くあります。

短期消滅時効|職業別に1〜3年

旧民法[注1]では、日常的な取引を迅速に解決する目的で、職業や債権の内容ごとに1年から3年の短期消滅時効が定められていました。

  • 飲食代金や宿泊料のツケ、給料や運送料などは旧民法174条[注1]により1年
  • 弁護士費用は同法172条により2年
  • 生産者・卸売・小売の売掛金や職人の報酬、教育者への授業料は同法173条により2年
  • 医師の診療費や工事の請負代金は同法170条により3年

原則である10年よりもかなり短い期間が設定されていたため、債権者側が権利行使のタイミングを誤ると、うっかり時効が完成する点にも注意が必要です。

消滅時効期間債権の内容
1年時給や日給などの給料(旧民法174条)
歌手など演芸者の出演料(旧民法174条)
運送料(旧民法174条)
飲食代金、宿泊料(旧民法174条)
貸布団など動産の賃料(旧民法174条)
2年弁護士費用(旧民法172条)
生産者・卸売・小売の売掛金(旧民法173条)
職人の報酬(旧民法173条)
教育者に対する授業料、教材費(旧民法173条)
3年医師などの診療費、調剤費(旧民法170条)
工事の請負代金(旧民法170条)

不法行為による損害賠償請求権|知った時から3年・行為時から20年

不法行為による損害賠償請求権は、旧民法724条[注1]により、一般債権や商事債権とは異なる独自の期間で消滅していました。
1つ目は、被害者が損害および加害者を知った時から3年の主観的な基準です。

事件名:損害賠償請求

裁判所・部:最高裁判所第二小法廷
判決日:1973年11月16日
要旨:加害者を知った時の意味について、賠償請求が事実上可能な程度に知った時を指すと判断された。
出典:裁判所判例検索(最高裁判所 1973/11/16 判決)PDF

2つ目は、不法行為の時から20年の客観的な基準で、いずれか早い方の到来で権利は消滅します。

事件名:国家賠償

裁判所・部:最高裁判所第一小法廷
判決日:1989年12月21日
要旨:不法行為からの20年について、旧民法下[注1]では消滅時効ではなく除斥期間にあたると判断した。
出典:裁判所判例検索(最高裁判所 1989/12/21 判決)PDF

旧民法と改正民法では消滅時効はどう違う?

旧民法[注1]では債権の種類ごとに時効期間が細かく分かれていました。
しかし改正民法166条1項[注1]では、権利を知った時から5年、行使できる時から10年の共通ルールに整理されました。
主な変更点は次の4つです。

  • 「権利を行使できると知った時」という起算点が追加された
  • 商事時効の5年ルールが廃止された
  • 職業別の1~3年ルールが廃止された
  • 時効の「中断・停止」が「更新・完成猶予」に変更された

以下、それぞれの変更点を詳しく見ていきます。

「権利を行使できると知った時」という起算点が追加された

改正民法166条1項[注1]は、時効の起算点を2つに整理しました。
1つ目は、債権者が権利を行使できると知った時から5年の主観的起算点です。
2つ目は、権利を行使できる時から10年の客観的起算点で、旧民法[注1]から維持された基準です。
時効は、2つのうちいずれか早い方が到来した時点で完成します。
改正により主観的起算点が明文化されたため、権利を認識した債権者はより早い段階での権利行使を意識する必要が生じています。
知った時がいつかをめぐって当事者間で見解が分かれるケースもあるため、証拠の整理が重要です。

商事債権の5年ルールが廃止された

商事債権を5年とする旧商法522条[注2]の特別ルールは、改正民法[注1]により廃止されました。
改正後は、商取引で生じた債権も、改正民法166条1項[注1]が定める「知った時から5年、行使できる時から10年」の一般ルールで判断されます。
債権者は取引の発生を把握しているのが通常のため、実務上は結果的に5年で時効を迎えるケースが大半です。

職業別の1〜3年ルールが廃止された

職業ごとに時効期間を細かく分けていた旧民法170条から174条の短期消滅時効は、取引実態に合わない区分として、改正民法により廃止されました[注1]。
改正後は、飲食代金のツケなども改正民法166条1項[注1]の一般ルールで判断されるため、時効期間は実質的に延長されています。

時効の「中断・停止」が「更新・完成猶予」に変更された

消滅時効の完成を阻止する制度の呼び方も変わりました。
旧民法[注1]では、時効の進行を一時的に止める制度を「停止」、進行をリセットする制度を「中断」と呼んでいましたが、言葉と意味が結びつきにくい課題がありました。
そこで改正民法147条以下[注1]では、一時的に止める制度を「完成猶予」、リセットする制度を「更新」と改めています。
改正民法151条[注1]では、当事者間で協議を行う旨を書面で合意した場合に、時効の完成を猶予する制度が新設され、時効間際でも話し合いによる解決を目指せるようになりました。

旧民法と改正民法のどちらが適用される?|経過措置

新旧いずれの民法[注1]が適用されるかは、2020年4月1日の施行日が基準です。
民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)附則10条により、施行日前に生じた債権には原則として旧民法が適用されます[注1]。

2020年3月31日以前に発生した債権は原則として旧民法

2020年3月31日以前に発生した債権には、改正法附則10条4項により、原則として旧民法[注1]の消滅時効ルールが適用されます。
旧民法下では一般債権は10年、商事債権は5年、職業別の短期消滅時効は1年から3年でした[注1]。
例えば、2019年に個人間で貸し付けたお金であれば、2026年現在も旧民法[注1]の10年の時効期間の途中にあり、旧法に基づいた管理が必要です。

2020年4月1日以降に発生した債権は改正民法

2020年4月1日以降に発生した債権には、改正法附則10条4項の反対解釈により、原則として改正民法[注1]の消滅時効ルールが適用されます。
改正民法166条1項[注1]では、権利を行使できると知った時から5年、または権利を行使できる時から10年のいずれか早い方の到来で消滅時効が問題になります。
多くの債権は知った時から5年が基本となるため、2025年以降に発生した債権では、すでに新法に基づく時効の完成が現実の問題となり得ます。

契約日・債権発生日・弁済期によって判断が分かれる場合がある

契約日だけで旧民法と改正民法のどちらが適用されるかを判断するのは危険です[注1]。
改正法附則10条1項の括弧書きは、施行日以後に債権が生じた場合でも、原因となる法律行為が施行日前であれば旧民法の例によると定めています[注1]。
契約日と債権の発生日や弁済期がずれる、以下のようなケースには注意が必要です。

  • 継続的な貸付契約に基づく個々の貸付金
  • 継続的取引契約に基づく売掛金
  • 請負契約に基づく代金
  • 雇用契約に基づく賃金や残業代

一部返済や債務の承認、裁判上の請求があると時効の完成時期も変わるため、判断が難しい場合は個別の事情を踏まえて弁護士へご相談ください。

時効期間が過ぎれば借金は自動的に消える?

時効期間が過ぎても、借金は自動的には消えません。
民法145条[注1]により、消滅時効の効果を受けるには、債権者に対して時効を主張する意思表示である援用が必要です。
新旧どちらの民法が適用され、期間が経過しているかに加え、援用できる状態かの確認も欠かせません[注1]。

消滅時効を成立させるには「援用」が必要

援用とは、民法145条[注1]に基づき、債権者に対して消滅時効の効果を受けると意思表示する行為であり、裁判所への申立ては必須ではありません。
口頭での援用も法律上は有効です。
しかし、後から言った言わないの争いになりやすいため、法律上の要件ではありませんが、実務上は確実に証拠を残す目的で、時効援用通知書を内容証明郵便で送付する運用が一般的です。

ただし、時効期間の経過状況や、一部返済・債務の承認の有無によって援用できるかどうかは変わるため、対応する前に必ず確認しましょう。

債務を承認すると時効が更新されるリスクがある

時効が完成している可能性がある場合でも、債務者が借金の存在を認める行為をすると、民法152条1項[注1]に基づき時効が更新される恐れがあります。
一部の返済、支払いの約束、分割払いの申し出、支払猶予の依頼などは、いずれも債務の承認と判断される可能性がある行為です。
最大判昭和41年4月20日は、時効完成後に債務を承認すると、その後は信義則上、時効の援用が認められなくなるとしています。
請求元から連絡が来ている場合や、時効援用ができるかどうか判断できない場合は、返済の約束をする前に弁護士へ相談してください。
[注1]民法/e-Gov
民法
[注2]商法/e-Gov
商法

旧民法の消滅時効でお悩みの方へ|弁護士に相談すべき理由

2020年4月1日の民法改正により、消滅時効の起算点や期間は「知った時から5年、行使できる時から10年」に整理されました。
商事債権の5年ルールや職業別の短期消滅時効は廃止されました。
もっとも、旧民法と改正民法のどちらが適用されるか、時効援用ができるかどうかは、契約や請求の経緯など個別の事情によって変わります。
古い借金の請求を受けている場合は、返済を約束する前に、VSG弁護士法人へご相談ください。

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