東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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Contents
自己破産手続には、管財事件と同時廃止事件の2つのパターンがあります。
自己破産手続を弁護士に依頼した場合であっても、裁判所には債務者本人が行かなければならない時期があります。
審尋(しんじん)と呼ばれる裁判官との面談があり、審尋は原則、破産審尋・免責審尋の2回行われます。
審尋の種類 | 内容 | 出廷のタイミング |
---|---|---|
破産審尋 | 自己破産手続きの開始を決定するための審尋 | 破産申立書が裁判所に受理された1~2ヶ月後 |
免責審尋 | 借金の免責を認めるか否かを判断するための審尋 | 免責決定前 |
管財事件の場合、債権者集会、免責審尋期日には、債務者本人が出廷する必要があります。
同時廃止手続きの場合も、免責審尋期日には債務者本人が出廷すべきといえます。
免責審尋は裁判官が本人から直接事情を聞くことを目的としているため、本人が出席しないと免責判断に不利に働きます。
債権者集会でも出席しないと債務者が協力的でないとみられ、後の免責判断にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。
このような理由から、自己破産の手続では裁判所に足を運ぶ必要があります。
ただし、債権者集会では通常は債務者が発言を求められることはなく、やり取りは弁護士に任せ、債務者本人は出席して傍聴していればよいだけです。
特に免責審尋は重要なため、審尋期日の出廷がどうしても都合が付かないようでしたら、弁護士に相談して期日を変更してもらう方がよいでしょう。
自己破産手続きには2種類あり、手続きによって裁判所へ出廷する回数が異なります。
弁護士に依頼して自己破産を行う場合、基本的には、代理人である弁護士が出廷して手続きを済ませてくれます。
しかし、最低限、債務者本人が出廷しなければならない時期というのがあります。
また、本人申し立てで自己破産を行う場合は、すべての手続きについて裁判所に出廷しなければなりません。
自己破産手続きには管財事件と同時廃止事件の2種類があり、債務者本人が出廷しなければならない回数や時期は、管財事件と同時廃止事件とで異なります。
《破産の手続き》
破産手続きの種類 | 内容 |
---|---|
同時廃止 | 申立てと同時に廃止する破産手続き |
管財事件 | 破産管財人が手続きの監督や事務を行う |
同時廃止事件では、破産手続開始決定が出ると同時に、破産手続きを廃止が決定します。
一方、管財事件では、実際に破産手続きが行われるため、同時に廃止するということはありません。
では、管財事件になるのは、どのような場合でしょうか。
管財事件になるのは、一定の基準以上の財産がある場合や、個人事業主であるか過去に個人事業主であった場合、免責不許可事由がある場合です。
免責不許可事由に該当するのは、偏頗弁済、浪費行為や賭博、過去7年以内の自己破産などがある場合です。
また、申立人が同時廃止事件、管財事件のどちらになるかを選択することはできません。
以下では、同時廃止手続きの場合と少額管財事件の場合に分けて、その手続きの流れと、流れの中で債務者本人が出廷すべき時期とその回数について解説します。
同時廃止手続きでは、破産手続きを行うだけの財産もないことが条件となっています。
財産がほとんどないことが明らかであるため、財産の調査や換価処分をする必要がなく、債権者への配当も行いません。
自己破産手続きには、債権者への配当手続きと、債務者の免責手続きの2つの側面がありますが、このうちの債権者への配当手続きが不要となるため、手続きも簡便です。
自己破産の申し立てが行われたら、審尋と即日面接が行われ、破産手続き開始決定と同時に破産手続き廃止決定が出ます。
その後、免責決定が行われます。
同時廃止手続きで債務者本人が出廷しなければならないのは、基本的にこの免責審尋期日1回のみです。
免責不許可事由がない場合は、書類審査だけで免責手続きが済んでしまうことも多いといえます。
免責不許可事由があっても、それが軽微であり、反省と生活再建の努力がみられる場合も、書類審査だけで手続きが完了することがあります。
これらの場合は、債務者本人は裁判所に一度も出廷する必要はありません。
管財事件では、債権者への配当手続きと、債務者の免責手続きの両方が行われます。
ここでは、比較的よく行われる少額管財事件手続きを想定して説明します。
自己破産の申し立てがあったら、審尋・即日面接が行われます。
その後、破産手続開始決定が行われ、破産管財人が選任されます。
破産管財人が財産を調査し、調査が一通り終わると、免責審尋と債権者集会が行われます。
通常、この2つは同時に実施されます。
配当がなければ、破産手続廃止決定がなされます。
配当がある場合には、破産管財人の財産の調査、換価が再度行われ、再度、配当実施のための債権者集会が開催されます。
その後、免責許可決定が行われ、破産手続終結となります。
このような流れで少額管財事件手続きが行われます。
債務者本人が出廷しなければならないのは、最低2回です。
1回目は申し立て直後で、破産管財人による面接があります。
裁判官が破産管財人を選定するかどうかを判断するために、直接面接して審問をするケースもあります。
破産管財人とは、場合によっては月1回ぐらいのペースで、免責不許可事由に該当しないかどうかについての面談が行われることもあります。
2回目は、免責審尋と債権者集会が行われるときです。
このときは、裁判官による面接が行われます。
配当等があって債権者集会が再度開催される場合は、その債権者集会にも出席した方がよいでしょう。
債務者本人が裁判官と面接しなければならない「免責審尋」とはどのようなものなのでしょうか。
「免責」とは、負債の返済義務を免除するという意味です。
免責審尋とは、裁判所が、債務者を免責させてよいかどうかを判断するため、債務者本人から事情を聞くという手続きになります。
前述のように、自己破産によって配当するような財産がない場合、自己破産手続きの主な目的は、免責を得ることになるため、免責審尋は債務者にとって非常に重要です。
免責審尋の運用は、裁判所によって異なり、同時廃止手続きでは免責審尋が行われないケースもあります。
また、集団免責審尋という、免責許可に至っていないが破産手続開始決定を受けた複数の方を集め、裁判官が説明・説諭をしたうえで一人ひとりに対して順番に質問をしていくという方法をとることもあります。
免責審尋では弁護士が同席するため、特に構えて準備しなければならないというほどのことではありません。
免責審尋で裁判官から質問される内容は、自己破産した事情についてです。
支払不能の原因や状況、借金を含めた現在の財産状態について、債務者から直接聴取します。
基本的には、自己破産の申し立て時に詳細な資料を用意しているので、それを確認する内容になります。
集団免責審尋の場合はプライバシーに配慮され、免責制度についての理解を問う質問のみで、個別の自己破産した事情を尋ねられることはありません。
「住所、氏名、本籍に間違いはないか」、「申し立て内容に間違いはないか」、「免責不許可事由はないか」といった質問に、「はい」と答えていけば問題ありません。
この流れは、事前に弁護士から説明がありますし、弁護士も同席しますので、簡単な受け答えで済むでしょう。
当然のことながら、虚偽は禁物です。
質問にかかる時間は15分程度になります。
管財事件における自己破産では、債務者と破産管財人による面接が行われます。
通常は、破産開始決定後にすぐに行われますが、破産開始決定前に申し立ての直後に破産管財人が選定され、面接が行われるケースもあります。
通常は、債務者代理人弁護士同席の下、破産管財人と債務者との3者で行われます。
破産管財人による面接は、破産管財人が業務を行う上で必要な調査を行うことと、破産者の免責についての意見を目的としています。
財産を意図的に隠したり、回答を拒絶したり、または虚偽の説明をしたりすると、当然のことながら厳しい対応を迫られることになります。
また、法人・会社の破産の場合は、破産犯罪に問われる可能性もあります。
複雑なケースでなければ、代理人弁護士からの引継ぎ目的のみで面談が行われることもあります。
この場合は、代理人弁護士がすでに破産管財人に情報を共有しているため同席せず、破産管財人と債務者との2者で面談が行われることも多いといえます。
しかし、誠実な対応をしていれば、過度に緊張して臨むものでもないといえます。
なお、破産管財人との面談は通常は1回ですが、必ずしも1回と決まっているわけではなく、必要と判断されれば、複数回行われることもあります。
免責不許可事由のある事件で破産管財人が選任されると、月1回のように頻繁に面談が行われることもありえます。
以下、破産管財人による面接の内容とかかる時間についてご説明します。
借入れの原因や返済不能の状況、現在の財産状態のほかに、免責不許可事由に該当する事情があるどうかについて聞かれます。
破産法252条1項に各号には、一定の破産債権者を害する行為や、破産法上の義務に違反する行為、政策的に定められた行為の類型が挙げられており、これらに該当すると、原則として免責は認められないことになります。
このような免責不許可事由となる事情がないかどうか、また、ある場合には裁量免責にできる事情があるかどうかなどについて質問されます。
これらの質問をもとに、破産管財人は、調査結果の報告や免責についての意見を行います。
最終的には、裁判官が免責決定をする際の参考材料となります。
聞かれた質問に対して誠実に回答をしていけば、通常20分~30分程度で終わります。
破産管財人と面談する際には、質問にスムーズに答えられるよう、借金が増えてしまった経緯や、債権者の状況、財産の状況などを整理しておくとよいでしょう。
免責不許可事由がある場合は、反省の気持ちや誠意を見せるような言葉を準備しておくことも大事です。
また、破産管財人に質問することもできるので、聞きたいことがあればそれも整理しておきましょう。
裁判所へ出廷する際に気をつけておきたいポイントは以下の3つです。
裁判官には誠意を持って接し、質問には正直に答えましょう。
裁量免責が認められるかどうかの判断基準として、自己破産手続きに協力的か、虚偽の申告をしていないか、経済的更生の可能性があるかが重要です。
裁判官には、よい心証を持ってもらえるような態度、言動を心がけましょう。
最低限、借金が増えてしまった経緯や、債権者の状況、財産の状況、反省の弁などは準備しておいてください。
どうすればよいかわからないことがあったら、同席してくれる弁護士に事前に相談しておくのもよいでしょう。
出廷時のマナーとして、遅刻しないことも重要です。
病気やトラブルなどの正当な理由があって、出廷できない可能性があるときは、事前に弁護士に相談するようにしましょう。
出廷するときの服装は、特に指定はありませんが、社会人として常識的な服装をして行くべきです。
かならずしもスーツである必要はありませんが、裁判官に誠意や反省があるということを、最低限外見でもアピールできるようにしましょう。
自己破産の申し立ては、申立人の所在地を管轄する裁判所となっています。
所在地とは必ずしも住民票がある場所というわけではなく、実際に生活している場所ということになります。
弁護士に依頼する場合、この申し立て手続きは弁護士が代理で行いますので、どこの裁判所に行くかというのは気にする必要はありません。
自己破産の大きな目的の一つが、債務者の免責です。
しかし、免責不許可事由がある場合、原則としては、免責が認められません。
免責不許可事由とは破産法252条1項各号に規定されている、次のような行為です。
免責不許可事由
しかし、これらの免責不許可事由に該当する行為があったとしても、絶対に免責が認められないわけではありません。
破産法252条2項では、免責不許可自由に該当する場合であっても、諸般の事情を考慮して、裁判所が免責を許可してもよいと判断したときは、その裁量によって免責を認めることとしています。
これを「裁量免責」といいます。
裁量免責が認められる一般的な基準というものはありませんが、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情が考慮されます。
その要素としては、免責不許可事由の程度が軽微であるかどうか、破産手続に協力的であるかどうか、そして、経済的更生の可能性などです。
特に、経済的更生は、自己破産の目的の一つであるため、重要視されると考えられます。
ギャンブルが原因で自己破産に至ったのに、破産手続き中にもギャンブルを行ったり、そのために借金を重ねるなどの行為をしたりしていると、経済的更生の可能性を疑問視されかねません。
また、経済的更生の可能性を疑われるような行為も慎むようにしましょう。
実際の破産手続の運用実態は、免責不許可事由がある場合であっても、よほどのことがない限り、裁量免責を認める傾向にあります。
破産手続に協力し、家計を立て直そうと努力していれば、基本的には裁量免責が認められると考えてよいでしょう。
自己破産手続きでは、管財事件と扱われるか同時廃止事件と扱われるかで、債務者本人が裁判所へ出廷する回数や時期は異なります。
いずれにしても、債務者本人にとっては免責手続きが最大の関心事なため、裁判官から自己破産の事情や免責不許可事由などを聞かれる免責審尋は必ず出廷する必要があります。
免責審尋に本人が出席するかどうかは、裁判官の免責許可判断に大きな影響を及ぼします。
免責不許可事由に該当する事実がある場合など、免責許可されるかどうかに不安がある場合は、事前に弁護士に相談し、聞かれる内容に対しての回答を準備しておきましょう。