合資会社とは?特徴・メリット・デメリットなどをわかりやすく解説
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
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1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
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この記事でわかること
- 合資会社とはどんな会社かわかる
- 合資会社以外の会社の種類がわかる
- 合資会社から他の会社へ変更することはできるのかわかる
合資会社とは、どのような会社のことを言うのでしょうか。
会社には5つの種類があり、それぞれ特徴があります。
この記事では、合資会社とその他の会社との違いや、それぞれの会社のメリット・デメリットなどをわかりやすく解説します。
また、合資会社から別の種類の会社に変更できるかどうかについてもご紹介します。
目次
合資会社とは
合資会社とは一言で言うと、無限責任を負う出資者(無限責任社員)と間接責任を負う出資者(有限責任社員)とで成り立つ会社です。
他の株式会社や合同会社、合名会社と違って出資者が2人必要となります。
これまた合名会社と同様、あまり見かけない法人形態であります。
合資会社の無限責任者社員と有限責任社員
合資会社を構成する有限責任社員と無限責任社員とは、どのような人のことをいうのでしょうか。
この両者の特徴や違いについて、解説していきます。
無限責任社員
無限責任社員とは、会社が債権者に対して負う返済義務を、個人的に連帯しなければならない社員のことです。
基本的には会社が抱える債務は会社が返済義務を負い、会社の財産を使って返済しますが、会社が債務の返済に行き詰った場合には、無限責任社員が会社に代わって債務の返済が必要です。
無限責任社員は、会社の債務がなくなるまで、私財を投げ打ってでも、借金をしてでも返済しなければなりません。
会社の債務を個人が直接負うこととなり、このことを直接責任と言います。
有限責任社員
有限責任社員とは、会社が債権者に対して返済義務を負う際に、出資額の範囲内で責任を負う人のことです。
もし会社が債務の返済に行き詰った場合、会社に財産がなくなっても、有限責任社員個人が債務の返済を行う必要はありません。
ただし、会社に出資した金額は、会社の資産価値がなくなることでゼロになることもあります。
出資額の範囲内で、間接的に会社の債務の返済に対する責任を有するため、このことを有限間接責任を負うと言われます。
かつては合資会社の無限責任社員は経営の全般に携われるのに対し、有限責任社員は全てに携わることはできないという規定になっていましたが、会社法施行により業務執行権限面での区別は無くなりました。
また社員の立場の譲渡についてですが、無限責任社員と業務を執行する有限責任社員は他の社員(有限責任社員も含む)全員の承諾が、業務を執行しない有限責任社員については業務を執行する社員の承諾が必要となります。
合資会社のメリット・デメリット
合資会社のメリットとデメリットを見ていきましょう。
メリット | デメリット |
---|---|
①定款での柔軟な運用が可能 ②合名会社と同様、希少価値はある | ①無限責任社員の法的責任は重い ②最低でも2人必要 ③有限責任社員も債権者から直接請求を受ける立場にある |
合資会社のメリット
合資会社のメリットとしてあげられるのは、定款を自由に定められることです。
定款は、会社の基本を定めるものであり、「会社の憲法」と呼ばれることもあります。
合資会社には株主総会がないことから、会社法などの法律に反しない限り、自由に定款を定めることができます。
合資会社のデメリット
合資会社のデメリットとなるのは、無限責任社員が会社のすべての責任を負うことです。
会社の事業がうまくいかなかった場合には、会社が潰れる可能性だけでなく、個人もすべての財産を失ってしまう可能性があるのです。
また合資会社は、最低でも2人以上で設立しなければなりません。
意見や考えの一致する人と会社を設立できるのか、そして2人のうち1人がいなくなった場合に代わりの人を探せるのか、大きな問題となることがあります。
合資会社とその他の会社の違い
合資会社とその他の会社の違いを見ていきましょう。
合資会社を含め会社の種類は4種類、今は設立できなくなった有限会社を含めると5種類です。
株式会社 | 合同会社 | 合資会社 | 合名会社 | |
---|---|---|---|---|
資本金 | 1円以上 | 1円以上 | 規定なし | 規定なし |
出資者 | 1人以上 | 1人以上 | 2人以上 | 2人以上 |
責任の範囲 | 有限責任 | 有限責任 | 有限責任・無限責任 | 無限責任 |
設立費用 | 25万円~ | 10万円~ | 6万円~ | 6万円~ |
最高意思決定機関 | 株主総会 | 社員の過半数 | 社員の過半数 | 社員の過半数 |
決算公告義務 | あり | なし | なし | なし |
登記書類の種類 | 定款 | 定款 | 定款 | 定款 |
上場の可否 | 可 | 不可 | 不可 | 不可 |
役員の任期 | 規程あり | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
これらの特徴はどういったもので、利点と欠点はどこにあるのか?ここでは順に各会社が持つ特徴等を紹介していきます。
なお、これら4種類の会社はさらに出資の単位で2つに分けられます。
- 株式会社…株式を出資の単位とする会社
- 持分会社(合同・合名・合資会社)…持ち分を出資の単位とする会社
わかりやすく言うと、株式は1株につきいくらと決まっていて、あとはその株式を何株持つかによって発言権は変わってきますが、持分会社の場合は1人がいくら出資したかによって発言権が変わります。
株式会社
株式会社とは、株式を発行して集められた資金で設立する会社のことです。
日本で最もポピュラーな会社形態と言えるでしょう。
合資会社を含む持分会社との大きな違いは、出資者と経営者が異なることです。
また法人としての知名度も抜群で信用度も高いのですが、色々と法規制がかけられています。
- 株式会社の定款には公証人の認証手続が必要
- 役員の任期が株式譲渡制限のある会社であれば最長10年、そのような制限のない会社であれば任期は2年
- 役員変更の登記が12年間されていないと自動的に休眠会社になる
その他にも決算公告や利益が出たときの株主への配当の制限など色々ありますが、他の会社に比べて制約が多いのが株式会社の特徴です。
また、会社設立の手続きも他の会社と比べて提出資料が多く、難しいため注意が必要です。
株式会社のメリット・デメリット
株式会社のメリットとデメリットを見ていきましょう。
メリット | デメリット |
---|---|
①法人としての知名度が高い ②信用度が高い ③大規模な運営が可能 | ①会社の設立時のコストが高い ②役員の任期があり、その都度更新登記が必要 ③登記を放置しておくと、抹消されるリスクがある ④その他、法律で様々な規制がある ⑤株主は会社の全ての事柄に口を挟めるわけではない |
株式会社のメリット
株式会社の最大のメリットは、知名度が高く、社会的な認知度が高いことです。
そのため、金融機関や取引先からの信用度も高くなる傾向にあります。
また、新たな出資者からの資金調達がしやすくなるなど、大規模な運営に適した会社の形態と言えます。
株式会社のデメリット
株式会社のデメリットは、設立や運営にコストがかかることです。
設立時の定款認証や登記、その後の定期的な公告や役員変更登記を行うためには、まとまった費用が必要となります。
登記を行わずに放置していると、最悪の場合、その法人の登記が抹消されることがあります。
たとえ会社の運営がうまくいっていても、事務手続きを行わなかったことが原因で、会社の存続の危機に陥ることがあるため、注意が必要です。
合同会社
合同会社は2006年の会社法施行と共に生まれ、今回紹介する法人形態の中では一番若い法人形態です。
アメリカではLLCと呼ばれることが多く、日本では日本型LLCとも呼ばれています。
合同会社の特徴は自由度が高いことです。
株式会社の良いところと他の合名会社・合資会社のメリットを両方取ってできた法人形態といってもいいでしょう。
- 資本金に制約がない
- 定款で自由に会社設計ができる
- 会社の設立登記に公証人の認証が不要
そのほかにも、会社設立の税金でいうと株式会社の設立には登録免許税が最低でも15万円は必要ですが、合同会社の場合は6万円で済みます。
また合同会社の出資者(社員)は株式会社の株主と異なり、経営全般に参画できるのも特徴の1つです。
さらにその会社から離れる場合(法律用語では「退社」といいます)には、株式会社と違って出資した金額を払い戻してもらうことができます。
不運にも会社が倒産してしまったような場合は、債権者から直接請求を受けるようなことはありません。
合同会社のメリット・デメリット
合同会社のメリットとデメリットを見ていきましょう。
メリット | デメリット |
---|---|
①株式会社に比べて自由度が高い ②設立時に定款の認証は不要 ③設立時の負担が株式会社に比べて低い ④出資者の責任は有限 | ①生まれて間もない制度のため、認知度は低い ②出資者が会社から離れると、払戻をしなければならない場合がある |
合同会社のメリット
合同会社のメリットとしてあげられるのが、設立のしやすさです。
定款の認証を法務局で受ける必要がなく、登記費用も安く済みます。
また、合同会社には株主総会がないため、出資者である社員だけで意思決定を行うことができます。
そのため、迅速な意思決定が可能となり、小回りの利く経営が可能となります。
合同会社のデメリット
一方、合同会社のデメリットは、その知名度の低さです。
まだ制度自体が新しく、合同会社に対する信頼度・信用度はまだまだ低いのが現状です。
また、合同会社に対する出資者である社員は、出資者であるとともに経営者でもあります。
しかし、経営方針などで対立が生じ、退社する社員がいる場合には、必ずその出資額を払い戻す必要があります。
株式会社のように、所有と経営が分離しないため、社員の入れ替わりや事業承継をしにくいと言えます。
合名会社
会社法が施行されて合同会社の設立が認められるようになり、近年では合名会社を見かけることは少なくなりました。
合名会社の特徴は合同会社と同様に、広く定款による運営が認められている点です。
そのため、株式会社に比べて規制が少なく、柔軟な設計ができます。
ただ合名会社の出資者、いわゆる社員には重い責任(無限責任を負うということ)が伴います。
先の株式会社や合同会社の出資者は間接有限責任という形態でした。
具体的には、出資したお金が返ってこない、会社の債権者からの請求を受けることはないということです。
ところが合名会社の社員は会社の債権者から直接請求を受ける、それも責任の範囲は無限です。
出資者は重い立場を負う代わりに、会社の運営全般に携わることができます。
そして無限責任社員の有り様がそのまま会社の運営に反映されていきますので、社員としての立場の譲渡は他の社員全員の承諾が必要となります。
また社員の立場を譲渡してその会社から離れたとしても、一定の範囲での責任は伴います。
合名会社のメリット・デメリット
合名会社のメリットとデメリットを見ていきましょう。
メリット | デメリット |
---|---|
①定款で柔軟な会社設計ができる ②強いて言えば、希少価値が高い | ①責任が非常に重い ②責任の重さから、社員の募集が難しい |
合名会社のメリット
合名会社のメリットは、柔軟な会社の運営が可能なことです。
これは、合名会社は無限責任社員だけで構成されており、出資者は従業員でもあるためです。
出資者は会社の運営にも直接関わっており、自身の意思を経営に反映させることができます。
合名会社のデメリット
合名会社のデメリットは、出資者は全員が無限責任社員であり、会社の運営に対して個人的な責任を免れられない点です。
会社の運営に対して、個人で責任を負うこととなるため、会社がリスクを負わないような選択をせざるを得ないケースもあります。
有限会社(新規設立できない)
有限会社はかつて有限会社法という法律で規律されていましたが、現行の会社法下で設立することはできません。
会社法施行前の株式会社は資本金が1,000万円必要でしたが、有限会社の最低資本金は300万円でした。
また取締役等の役員の任期はありませんでしたので、株式会社よりもハードルが低く、設立しやすい存在であったと言えるのかもしれません。
ただ株式会社と違って、出資者は50人までという制約がありました。
では、有限会社は今後抹消されてしまうのでしょうか?
結論から言いますと、抹消されることはありません。
有限会社は新たに設立することはできませんが、いま存在している会社については会社法や整備法という法律で規律されています。
総会での議決権や役員の任期等は旧有限会社法の規律に従っていますが、特例有限会社として株式会社と類似の存在として扱われています。
出資者としての権利の譲渡も、総会の決議等の内部的な要件が必要ですが、概ね株式会社の株式の譲渡と同じ扱いです。
合資会社から他の会社の種類に変更はできる?
現在、株式会社、合同会社、合名会社、合資会社の間で組織変更して新形態の法人にすることは可能です。(有限会社は株式会社にのみすることが認められています。株式会社等から有限会社への変更は認められていません。)
そのため、会社の成長度合いに応じて会社の種類を変更することも視野に入れて置いてもいいのかもしれません。
例えば、手軽につくりやすい合同会社からスタートして、事業規模が大きくなってきたので株式会社へと種類を変更するというやり方です。
まとめ
これまで有限会社を含めた5種類の会社形態について見てきました。
それぞれの会社には特徴があり、メリット・デメリットがあります。
いま現在考えておられる事業と今後の事業展開を加味して、どの法人が最もふさわしいのかを検討してみてください。
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