最終更新日:2024/2/6
会社設立代行は0円で起業可能?本当に得するかどうかの考え方
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
インターネットで“会社設立”と検索すると「0円で会社設立」「会社設立無料」といった文字がたくさん並びます。
普通に考えると、”怪しい””どこか別の部分でお金を取られるのでは?”と勘ぐってしまいますよね。
なぜ、会社設立を無料で代行できる業者がいるのか?
怪しい業者ではないのか?本当にちゃんとした会社が設立できるのか?
そんな疑問の真実を暴きます。
1 なぜ0円で設立できるのか?
まず会社設立にかかる料金を整理します。0円で会社設立という場合の”0円”とは専門家の手数料が無料になるという意味で、
本当に1円もかからずに会社が設立できる訳ではありません。これはどの専門家、どのホームページでも共通の事実です。
では、専門家の手数料以外の実費の部分はいくらかかるのでしょうか?
1-1 会社設立にかかる費用の内訳
会社設立と一言に言っても、色々な種類があります。ここでは一般的な株式会社と合同会社に焦点をあてて設立にかかる費用を見ていきます。
株式会社の設立費用
- 収入印紙代:40,000円(電子定款の場合は0円)
- 定款認証手数料:50,000円
- 謄本手数料:約2,000円
- 登録免許税:150,000円※
合同会社の設立費用
- 収入印紙代:40,000円(電子定款の場合は0円)
- 謄本手数料:約2,000円
- 登録免許税:60,000円※
※厳密には資本金の額×0.7%と上記金額のいずれか大きい金額
設立代行業者は必ず電子定款を利用して、設立費用をより安くしてくれるので、0円設立を依頼した場合、
株式会社で202,000円、合同会社で62,000円というのが会社設立の実費となります。
そして、この金額は自分で設立した場合も、代行業者を使った場合も基本的に前金で準備しなくてはなりません。
キャンペーンでこの実費からさらに値引くと書いてあるケースもありますが、キャッシュバックやサービスの値引きのことで
設立時にお金が必要なことは間違いないでしょう。
1-2 会社設立を代行する専門家と報酬
設立代行業者の運営元を見てみると、一般企業だったり、税理士だったり、行政書士だったり様々ですが、
実は、法務局への設立登記を代行できるのは唯一「司法書士」のみです。
ただ、だからと言って司法書士が運営している業者を探さないといけないかという事はなく、
どの運営元であっても、社内もしくは提携先に司法書士がおり、どこに依頼してもその点では問題にならないでしょう。
司法書士に会社設立登記を依頼した場合の相場はだいたい5~10万円程度です。
7年前くらいまでは0円設立をしている業者もなく、実際にこの相場で設立を依頼する人がほとんどでした。
この手数料が値崩れをおこし、現在の0円設立が乱立する状況となっています。
1-3 0円の業務とその条件
では、設立代行業者は過去5~10万円の報酬をもらえていたこの業務を0円で代行できるようになったのでしょうか?
そのほとんどは「税理士による設立代行」が答えです。
会社を設立すれば、経理や今後の税金の申告という作業が発生するため税理士との顧問契約を結ぶ会社が多いです。
税理士との顧問契約を結ぶかどうかは社長の考え方次第なのですが、決算や税金申告を自分で覚えて自分で作業するのは
現実的ではありませんし、それができる経理を雇おうと思えば、税理士と契約するよりも大きな出費になります。
そういった会社設立直後のお客さんを獲得したい税理士が、その顧問契約を結ぶことを条件に0円で会社の設立を代行しているのです。
もし設立代行業者の運営が税理士でないのに0円の設立をしているのであれば、後ろに提携している税理士がいたり、
そういう税理士にお金をもらって、お客さんを紹介しているのが実情でしょう。
1-4 設立代行会社ごとの違い
税理士の顧問契約を結ぶ、という0円設立の条件についてはどの業者もほぼ共通です。
ただ、この顧問契約書の内容は各社まちまちで、慎重にチェックする必要があります。
中には、毎月の費用は2万円以下と安くても、決算料や年末調整費用がバカ高いケースだったり、
契約から2年間は解約ができず、解約した場合は高額の違約金が発生するような契約書だったりします。
この内容によって、その設立代行業者が良心的か悪質かがある程度見抜けるでしょう。
2 しわ寄せとして、別の料金が割高になっているのか?
税理士の顧問契約の代わりに0円で会社が設立できるというのはお分かり頂けたと思います。
では、そこで利益が出せなかった税理士は、別の部分でその利益を稼ごうと、割高な料金設定をするでしょうか?
怪しい0円設立にひっかからないために冷静に分析してみましょう。
2-1 業務を0円にしたしわ寄せ
設立代行業務でタダ働きしたのだから、その分の利益は毎月の顧問料で取り戻そうとしてくるのでは?
と思うのは自然でしょう。
この考えについては、それぞれの税理士がどういう考えで料金設定をしているかが分からないので正解をズバリとは答えられませんが
たとえば、会社設立を0円で手伝ったお客さんと、すでに会社を持っていて新しく税理士契約を結んでくれたお客さんとを比べたときに
前者の料金のほうが高ければ、しわ寄せと考えられます。
ただ、そういった料金設定をしている税理士はほとんど居ないようです。
私が知っている税理士事務所の料金表や、知人に聞いてもそういうケースを聞いたことがありません。
2-2 0円設立代行をしていない専門家との比較
別の考え方をしてみましょう。
0円設立代行をしている税理士と0円設立代行をしていない税理士の料金表を見比べてみるとどうでしょうか。
こちらも両社で差はつかないようです。今はインターネットで料金比較ができる時代ですので、そこに差があれば
0円設立代行でお客さんは取れても、ホームページを見た別のお客さんは、割高に感じて他の税理士に逃げられてしまうからです。
今、税理士は新規のお客さんを取るために広告費を使って色々な工夫をしています。
その広告費を使うかわりに、設立代行の無料サービスもしているというのが実態でしょう。
2-3 別の部分を割高にしているかどうかは業者による
とはいえ税理士事務所も利益を出さないと経営できませんので、顧問料に利益部分は含まれています。
それが適正か割高かは客観的には確認できないのが真実でしょう。
同じ値段でも丁寧な顧問サービスをしてくれることもあるので、これは契約したユーザがその料金で満足するかどうか
という主観的な判断しか下せそうにありません。
3 自分で設立した場合のメリット
では0円設立代行業者にあえて頼まずに、自分一人で会社設立の登記を完了する場合のメリットを考えてみます。
自分一人でやる場合は、基本的には電子定款ではなく紙の定款を使用するでしょうからまず4万円余分にかかることになりますので、デメリットからスタートします。
それでも自分で会社設立をすると、会社法について自分で調べることになり、その知識がつくというのが最大のメリットです。
事業目的など定款についても、自分の思うように文章を作れる自由度があります。
もちろん、この文章は公証役場で認証を受けなければいけないので、かなり制限された自由ではあります。
また自由に作ってしまった結果、専門家ならリスク回避として当然のように記載する項目を漏らしてしまっていたり失敗のリスクも伴ないます。
ただ、0円で設立してもらったという”専門家への借り”を作らなくて済むので、税理士の契約を強制されるということがありません。
会社を設立してしばらくは税理士の顧問料を支払う余裕がない場合にはこちらを選択するしか仕方ないでしょう。
4 会社設立0円代行会社はホントに得か?
会社設立0円代行のカラクリについてかなり詳細に見てきました。
では、自分が会社設立するときは結局、何を選べばよいのでしょうか?
4-1 会社設立代行会社も様々!?代行会社を選ぶ比較ポイント
会社設立代行会社も代行してくれる範囲が異なったりします。設立手続きの全てを代行してくれない場合も多くあります。
例えば、定款の作成及び認証のみを行っていたり、定款や登記申請書等の書類作成のみを代行する場合などです。代行範囲が異なればもちろん代行費用も異なってきます。また、代行といってもメールやクラウド上でのチャットのみでしかサポートしてくれない場合が多く、直接対面してのやり取りや相談を請け負ってくれるのは、設立後の税務顧問等についてもサポートをする税理士の設立代行といえるでしょう。
4-2 0円代行会社を利用したほうが良い人
0円設立代行会社を利用するかどうかは、あなたの状況によって決めるべきで、すべてのユーザにとっての正解が決まっているわけではありません。
会社を設立した後、税理士に経理・税金申告を依頼したいという方は、絶対に0円代行会社を利用すべきです。
0円設立代行をやっている税理士とやっていない税理士の差はサービスの質ではなく、単に新規顧客の獲得に積極的かそうでないか
という差ですので、わざわざ0円設立代行をしてない税理士を選ぶメリットは無いと言えるでしょう。
逆に、会社設立後すぐに税理士との契約をしたくない人は、0円代行会社は避けましょう。
ただしその場合でも、自力で設立するのではなく、数万円の設立手数料を支払って専門家に依頼すべきです。
専門家に依頼すれば収入印紙代4万円がかからないので、自分で設立するよりも安くなる可能性もありますし、
何より会社法、税法などの設立にまつわる法律を自分に有利なように使えるからです。
設立項目の判断を1つ間違えただけで、設立後の法人税が数百万円変わってくることも実際に起こります。
4-3 0円代行会社はこう利用しよう
会社設立をする場合は、無料面談だけでも専門家にしてもらい意見を取り入れるべきです。
時間があれば司法書士と税理士という具合に2社くらいの面談を受けたほうが良いかもしれません。
すぐに税理士と契約を結ぶ金銭的な余裕の無い方は、必要最低限の法律知識を自分できっちり調べながら
自力で設立しましょう。
適切な経理と税金対策をしていこうという方で、デキる経理を雇うほどの人件費の余裕が無いという方は、
積極的に0円代行会社を利用してみて損はないと思います。