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最終更新日:2021/4/9

会社設立の発起人とは|意味や役割・取締役との違いをわかりやすく解説

この記事では、会社設立における発起人の役割や取締役との違いについて解説します。

会社法と発起人の位置づけ

会社法が定める会社設立の手続きと発起人

会社法とは、会社の設立・株式発行・機関設計・帳簿計算・定款変更から解散・清算まで、会社の骨格を網羅した法律です。

その中で会社法は、会社の設立に関して厳格に手続きを定めています。

そのうちの1つでも間違いがあれば、会社は設立できません。

そして会社法で定めたルールのもと、粛々と手続きを進めるのが発起人です。

では誰が発起人になるのかといえば、会社法26条では定款に署名・押印をした者がその責を担うとされています。

つまり、会社の設立に深くコミットしていたとしても、定款に署名しなければその人は発起人ではありません。

責任の帰属を明確にするため、会社法26条では上記のような条文を定めているのです。

発起人の資格

民法で定める成年後見人等や相続人に関しては、その権利の行使が第三者に大きな影響を与えることもあり、厳正な欠格事項が規定されています。

一方で未成年者や破産者、刑罰を受け執行猶予中の者であっても発起人になることはできます

一方で取締役に関しては、成年被後見人や成年被保佐人、会社法などで刑の執行を受けることがなくなって2年を経過していない者、それ以外の犯罪で刑の執行を受けている者ななど明確な欠格事項を定めています(ちなみに未成年者は欠格事項に該当しません)。

発起人がそのまま取締役に選任されるケースは少なくないので、その場合には欠格事項への留意が欠かせません。

発起人の役割

発起人の役割は会社の設立に関し、設立時取締役の選任・会社の憲法である定款の作成・出資や株式など資本金の払い込み・その他開業準備や営業活動とされています。

会社設立の流れは、発起人組合の設立から始まり、定款の作成と公証人による認証、発起人による株式引き受け・出資の履行、会社の設立登記と進みます。

ちなみに発起設立ではなく募集設立の場合には、株式引受人による引受・払込と創立総会の開催といった手続きを踏まなければいけません。

発起人の責任

会社法では、「発起人はその職務を怠り、会社に損害を与えた場合には、その損害を賠償しなければならない」と定めています。

加えて、悪意又は重大な過失により第三者に損害を与えた場合にも賠償しなければいけません。

その他、現物出資や財産引受の価額が、定款に記載された価額を大幅に割り込む場合には、発起人と設立時取締役は連帯して損害額の補填を行わなければいけません(裁判所の選任した検査役による検査を受けている場合や、職務を忠実に履行していると認められる場合を除きます)。

ちなみにこの賠償義務は連帯責任が原則で、他の発起人・設立時取締役による損害も連帯して賠償しなければいけません。

ただし、株主総会の同意があった場合には、賠償義務が免除されます。

取締役との違い

会社法では、会社の必須機関として株主総会と取締役を定めています。

つまり、この2者が会社の意思決定および運営を担っているわけです。

一方で発起人の役割は、取締役選任を含めた会社の設立です。

設立後の運営は、取締役にバトンタッチされるわけです。

日本の創成期を伝える古事記の「国生み」に例えれば、日本列島を作り出したイザナミ・イザナギは発起人、産み落とされた大八島の神々が取締役というわけです。

さらに分かりやすく言いますと、発起人が会社を作り、作った会社を経営していくのが取締役ということになります。

会社を作るためには、誰かがお金を出す必要があります。このお金を出すのが発起人です。

発起人は会社を設立する際、必ず1株以上は引き受けなければならないことになっています。

株を引き受けるということは、出資をするということです。

出資をして株式を引き受けた発起人は、会社設立後は株主となります。

株主は会社の所有者ですが、取締役ではありません。

取締役は、会社設立後は株主総会で選任されますが、設立時は発起人が選任します。

発起人は出資をしつつ会社を作る作業を行いますが、会社が成立した後は所有者という立場に回り、成立した会社を経営していくのは取締役の仕事となるのです。

もっとも、取締役は株主総会の決議で解任されたり、新たに選任されたりすることがあります。

発起人は、会社成立後は株主として取締役の選任・解任権を通じて会社の経営に関わっていくことになります。

なお、発起人は会社を設立する際に自分自身を取締役に選任することもできます。

この場合は、会社成立後の発起人は「株主」と「取締役」の立場を兼ねることになりますが、このようなケースはたくさんあります。

会社は一人でも設立することができ、その場合は同じ人が「発起人」となり、会社成立後は「株主」兼「取締役」となります。

発起人が複数人複数名いる場合に気をつけるべきこと

発起人の人数に制限はありません。
一人でも構いませんし、何名かの発起人と共同して会社を設立することもできます。

発起人が一人だけの場合も、複数名いる場合も、どちらにもメリットはあります。

一人で会社を設立する場合は自分の思うとおりに会社を設立することができますし、会社設立のためのさまざまな作業もマイペースで行うことができます。

ほかの人と意見をすり合わせる必要がないぶん、スピーディーに、スムーズに会社を設立することも可能になります。

一方、何名かの発起人で共同して会社を設立する場合には、資金やスキル、人脈などさまざまな面で力を合わせることができます。

そうすることによって大きな規模の会社を設立することができますし、多方面で事業を展開することも可能になるでしょう。

ただし、何名かの発起人と共同して会社を設立する場合には、気をつけておかなければならないことがいくつかあります。

最低50%を超える出資をすること

発起人は会社を設立する際に最低1株を引き受けて、設立後は株主になります。

会社の重要な事項は株主総会の決議で決められますが、その際の議決権は株式の出資割合に応じて決まります。

「普通決議」については、出席した株主の議決権の過半数(50%超)で決議されます。

普通決議で決められる主な事項としては、以下のようなものがあります。

  • ・取締役などの役員の選任や解任、報酬の決定
  • ・配当金の決定
  • ・決算報告の承認

会社にとって特に重要な事項を決める「特別決議」については、出席した株主の議決権の3分の2以上(67%以上)で決議されます。

特別決議で決められる主な事項としては、以下のようなものがあります。

  • ・資本金の減少
  • ・定款の変更
  • ・事業の譲渡や譲受の決定
  • ・会社の解散

つまり、最低でも自分が50%を超える株式を保有していないと、株主総会で自分の意見が通らなくなる可能性が高くなるのです。

これでは会社経営の実権を握るのは難しくなってしまいます。

できれば67%以上の株式を保有しておきたいところです。

違う意見を持った人を共同発起人にしない

会社を設立するに際して、発起人はさまざまなことを決めなければなりません。

会社の名前に始まり、事業の目的、資本金額、発行可能株式数、設立時の発行株式数、事業年度(決算期)、取締役の選任、その他の役員を置くかどうか、などなど、決めるべきことはたくさんあります。

これらの事項を決めるために発起人会を開催することになりますが、そこでも議決権は引受けた株式の出資割合によって決まります。

したがって、ここでも最低50%%超、できれば67%以上の株式を引き受けるべきと言うことが言えます。

ただ、そもそも会社を設立する時点で、明らかに違う意見を持った人を共同発起人にしないということも重要です。

将来の意見の対立も見通しておく

会社を設立する際には共同発起人と意見が合致していても、設立した会社を経営していくにつれて、やがて意見が対立してくることはよくあります。

人の考え方は状況によって変わりますし、ときの経過によって変わることもあるのです。

仮に2人の発起人で会社を設立するケースで、当初はお互いに信頼し合っていたので株式の持ち分比率を50%ずつにしたとしましょう。

この場合、株主総会で2人の意見が割れると「過半数」の決議を得ることはできません。

つまり、会社にとって重要な事項を何も決めることができなくなり、経営がストップしてしまうのです。

このような事態を避けるためにはたとえ信頼し合っていても主従関係をつけておく必要があります。

具体的には、株式の持ち分比率について、「50:50」ではなく「51:49」のように、わずかでも差をつけておくことです。

会社設立までの時間に余裕を見ておく

一人で会社を設立する場合は、人と力を合わせることはできないものの、他人の意見やスケジュールに拘束されることがないのでスムーズに作業を進めることができます。

それに対して、発起人の人数が増えれば増えるほど、意見のすり合わせに時間を要するようになります。

打ち合わせや発起人の開催にしても、各人の日程調整が必要なので日数が余計にかかりがちです。

スピーディーに会社を設立するためには、発起人の人数はできる限り少ない方が望ましいでしょう。

まとめ

発起人の役割について、会社法で定める設立の手続きと絡めて解説しました。

会社法の定める会社設立手続きは厳正であり、ミスは許されません。

発起人に資格は求められませんが、選任された発起人はその責任を全うすべく努めないと、法令違反に問われることもあるので、充分肝に銘じましょう。

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