最終更新日:2024/4/24
就任承諾書とは?提出期限や書き方を紹介(記載例あり)
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
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YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
この記事でわかること
- 就任承諾書の概要
- 就任承諾書が必要になるケース
- 就任承諾書の書き方【テンプレート付き】
- 就任承諾書の提出期限
会社を設立するときは法務局へ登記申請書を提出しますが、役員を選任した場合は就任承諾書の提出も必要です。
就任承諾書は会社の設立後に提出する場合もありますが、提出を省略できるケースもあるので、どのようなタイミングで必要になるのか理解しておくとよいでしょう。
また、就任承諾書の書き方には厳密なルールがあり、使用する印鑑にも注意しなければなりません。
今回は、就任承諾書の提出が必要になるケースや提出期限、就任承諾書の書き方などをわかりやすく解説します。
目次
就任承諾書とは
就任承諾書とは、会社が役員を選任した際、選任された人が役員就任に承諾している旨を証明する書類です。
商業登記法第54条には取締役等の変更の登記が定められており、「就任を承諾したことを証する書面」に該当する書類が就任承諾書です。
会社と役員は委任・受任の委任関係になるため、役員に就任させたい人がいるときは、本人の承諾を得なければなりません。
ただし、取締役と代表取締役では就任承諾書の扱いが異なるので、以下を参考に手続きをしてください。
取締役の就任承諾書
会社が取締役を選任して本人が承諾したときは、人数分の就任承諾書を作成します。
会社設立時の発起人ではない人が取締役になるときも、取締役の就任承諾書を作成し、すべて管轄法務局へ提出することになります。
代表取締役の就任承諾書
取締役会を設置しない会社の場合、取締役は代表取締役を兼任するため、株主総会で取締役を選任し、本人の承諾を得て就任承諾書を作成します。
取締役が1名でその人が会社の発起人の場合は、会社設立時の定款で選任の記載をすれば代表取締役の就任承諾書の提出は不要です。
就任承諾書は必要?
就任承諾書は会社の設立時に役員を選任したとき、または役員変更があったときに法務局へ提出しますが、必要かどうかはケースバイケースです。
具体的な状況は、以下を参考にしてください。
会社の設立時
登記申請書に就任承諾書を添付する場合、「設立時取締役、設立時代表取締役及び設立時監査役の就任承諾書」の右側に通数を記載します。
就任承諾書を作成しないときは、通数の代わりに「設立時取締役及び設立時代表取締役の就任承諾書は定款の記載を援用する」と記載しておきましょう。
ただし、電子定款の場合には、定款を援用できませんので、「就任承諾書」が必要です。
役員の就任や変更
新たな役員が就任したときや、役員変更があったときも就任承諾書の作成が必要です。
就任承諾書以外にも、前任の役員が辞任していることを証明する必要があるため、辞任届や死亡届(死亡の場合)などを法務局に提出します。
ただし、役員に選任された人が就任を承諾しており、株主総会の議事録に承諾した旨を記載していれば、就任承諾書の作成は不要です。
株主総会の議事録については、「就任承諾書は、株主総会議事録の記載を援用する。」の一文も記載してください。
就任承諾書の書き方と記載例
就任承諾書を作成するときは、以下の記載例を参考にしてください。
取締役の住所氏名や、会社名の書き方にも細かなルールがあるので注意しましょう。
就任承諾書の記載例
就任承諾書の記載例は以下のようになります。
就任承諾書をパソコンで作成したときは、A4サイズで印刷します。
日付けや取締役の住所氏名、会社名の書き方については以下を参考にしてください。
就任承諾書の書き方
就任承諾書の各項目は、以下のように記載します。
- 日付:取締役が就任を承諾した年月日
- 取締役の住所:取締役個人の印鑑証明書と同じ住所を記載
- 取締役の氏名:取締役個人の印鑑証明書と同じ文字で氏名を記載
- 会社名:株式会社などを(株)と省略せずに記載
- 取締役の押印:取締役個人が印鑑登録している実印を押印
住所には「○-○○-○○」などの略記号が使えないので、必ず「○丁目○○番地○○号」と記載してください。
また、氏名も印鑑証明書に合わせる必要があるため、「澁沢」を「渋沢」などに略して記載することは認められません。
会社名も定款どおりに記載するので、株式会社を(株)と省略しないように注意してください。
印鑑は必ず実印を使い、作成ミスがあったときに備え、就任承諾書の上部に捨印も押しておくとよいでしょう。
就任承諾書の提出期限
株主総会の決議によって新たな役員が就任したときは、就任の日から2週間以内に法務局へ登記申請書に添付した就任承諾書を提出しなければなりません。
就任承諾書の提出期限を過ぎると、以下のような重いペナルティがあるので注意しましょう。
就任承諾書を期限後に提出したときのペナルティ
取締役の就任後、2週間以内に登記申請を行い就任承諾書を提出しなかった場合、会社の変更登記を怠ったものとみなされるため、100万円以下の過料になる可能性があります。
過料が決定した場合、金額に納得できなければ裁判所に不服申立てもできますが、申立て期限は過料の通知を受け取った日から1週間以内です。
また、就任承諾書の提出を怠ったまま取締役などの名刺を使うと、登記事項証明書を確認した取引先から信用されなくなる恐れもあるでしょう。
「提出が1日遅れになっただけ」など、単なるタイムラグでも会社の信用を損ないかねません。
登記事項証明書が現行化されていない場合、新規業務の許認可申請も認められなくなるので、新たな役員が就任したときは、速やかに就任承諾書を提出するようにしましょう。
まとめ
新たな取締役を選任して本人が承諾したときは、必ず法務局に就任承諾書を提出しておきましょう。
中小企業には取締役を選任しても所定の手続きを行っておらず、経営体制と登記事項の内容が食い違っているケースがあるので、注意が必要です。
会社の重要事項を登記した場合、必ず第三者に閲覧されるので、取締役などの役員情報も現行化しておかなければなりません。
就任承諾書の作成は特に難しくありませんが、定款変更や法務局への提出などに対応できないときは、ベンチャーサポートの無料相談を気軽に利用してください。