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最終更新日:2024/3/11

合同会社は自分で設立できる?流れや手続きの方法について

森 健太郎
この記事の執筆者 税理士 森健太郎

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

この記事でわかること

  • 合同会社を自分で設立するメリットとデメリットがわかる
  • 自分で合同会社を設立する際の手続きの流れがわかる
  • 合同会社を株式会社に変更する際の手続き​がわかる

近年、設立数が増えている合同会社。その理由の1つに、設立が比較的容易であるため、自分でも設立できるということがあげられます。

今回は具体的な手続きの流れを確認していきましょう。

合同会社とは

日本では2006年に認められるようになった合同会社は、比較的新しい形の会社です。

合同会社とは、会社に対する出資と会社の経営が分離されていない形態の会社です。

会社が倒産した場合には、出資者はその出資の範囲内で​責任を負い、それ以上の責任が問われることはありません。

従来から出資と経営が分離していない会社として、合名会社や合資会社という会社がありました。

しかし、これらの会社に対する出資者は、すべて無限責任社員(債権者に対し負債のすべてを負う責任)とされていました。

これに対して、合同会社の出資者は有限責任であるという点が大きく異なります

株式会社との違い

一般的に、会社の形態として一番なじみがあるのが株式会社です。

株式会社と合同会社は何が違うのか、その違いを解説します。

最も大きな違いは、出資者と会社との関係です。

合同会社の出資者は、会社の経営に必ず関わることとなります。

これに対して、株式会社の出資者は必ず経営に関わるわけではありません。

この他、株式会社では​原則​​​株式の保有数に応じて議決権が与えられ、​保有株式数の多い人の意見が通りやすくなります。

一方、合同会社は出資額に関係なく、すべての出資者に平等の議決権が付与されるという違いがあります。

他にも、以下のような違いがあげられます。

  • 合同会社の役員には任期がない
  • 合同会社は決算公告がない
  • 合同会社は上場できない

全体的に見て、合同会社は株式会社よりも設立や運営にかかるコストが軽減される傾向にあります。

自分で合同会社を設立するメリット・デメリット

合同会社を設立することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。

また逆に、自分で合同会社を設立するデメリットはないのでしょうか。

合同会社の3つのメリット

合同会社を設立して事業を行うことには、いくつかのメリットがあります。

信用力が高まる

​​合同会社は、法律的にも世間的にも「会社(法人)」ですので、​​会社で事業を行うと、信用力が高まることがメリットとしてあげられます。

個人事業主として事業を行っている場合は、その事業主に不慮の事故があると、途端に事業は停止してしまいます。

しかし、会社として事業を行っていれば、後継者を立てることで、その会社を継続することができます。

会社として事業を行う場合、その継続性が個人事業主とは大きく違うので、信用力が高まります。

また、会社を設立すると、法務局で登記手続きを行う必要があります。

登記簿謄本を確認すれば、その会社が確かに存在していることが確認できるため、第三者の立場で考えると、安心して取引がしやすくなります。

その結果、事業の拡大を図ることができる他、金融機関からの融資も受けやすくなります。

会社の経費が増え節税になる

会社で事業を行うと、個人事業主より経費の幅が広がります

​​​たとえば生命保険。​​​​個人で加入をすると、保険料をいくら支払っても「生命保険料控除」として年間最大で12万円が所得控除の上限です。​​

​​​これに対して会社名義で代表者に保険を掛けた場合、保険の種類によっては支払った保険料の4割~10割が経費になります。​​

​​保険の取り扱いは税務当局により頻繁に税制改正があるため、詳しくは税理士と相談をして加入してください。​

この他、出張に伴う旅費日当​など、個人事業主では経費にならない支出が会社では経費と認められます。

このような支出を経費にすることができれば、会社の純利益を大幅に減らし、節税をすることもできます

社会保険に加入できる

会社で人件費を支払った場合、その会社は健康保険や厚生年金に加入しなければなりません。

個人で加入する国民年金と、会社で働く人が加入する厚生年金では、その内容に大きな差があります。

厚生年金に加入する方が将来の保障は手厚くなり、また配偶者の保険料の負担を軽減できることとなります。

そのため、会社を設立して社会保険に加入すると、加入者には大きなメリットがあります。

合同会社の3つのデメリット

1人で合同会社を設立することに、デメリットとなることもあります。

会社の設立や運営にコストがかかる

会社を設立するには、定款を作成した上で、法務局で設立登記を行う必要があります。

これらの手続きは自分自身で行うこともできますが、それでも法定費用が発生します

自分で合同会社を設立する場合、定款の収入印紙代4​万​​円、登録免許税として6万円がかかります。

この費用は、自分で会社の設立に関する手続きを行っても必要になるため、準備しておかなければなりません。

​​​また、​​​税務署に提出する​法人税​申告書は、個人事業主として提出していた確定申告書とはまったく異なります。

そのため、自分で申告まで行うのはかなりハードルが高いといわざるを得ません。

​​税理士に​​​申告を税理士に依頼す​る場合​​、​10​~20​万円以上の費用がかかる​ことも​​考慮しておく必要があります。

社会保険の加入義務がある

会社を設立した場合、その会社から人件費を支払うと、社会保険に加入しなければなりません

社会保険に加入することは、その加入者にとっては大きなメリットになることは説明しました。

しかし、会社としては社会保険料の負担が増えることとなるため、必ずしも喜ばしいこととはいえない側面があります。

特に会社の業績が低迷した時期には、社会保険料の負担は重荷になることが考えられます。

とはいえ、会社は社会保険に加入するかどうかを選択することはできません。

そのため、会社を設立する際には慎重に検討する必要があります。

1人の会社では後継者問題は解決しない

会社にすると、事業の継続性が確保され、対外的にも安心してもらえるというメリットがあります。

しかし、実際に会社に関わる人が代表者1人だけの会社で、後継者がいるかわからない会社の場合、そのメリットはあてはまりません。

後継者候補がいなければ、代表者に万が一の事態が発生した場合、その会社が事業を継続できなくなる可能性があります。

そのため、実質的には個人事業主として事業を行っているのと大差はないと捉えられる可能性があります。

最終的には、会社を売却して他社がその事業を引き継ぐこともできます。

このように、少なくとも代表者が亡くなった時に、その持分を誰が承継するかについて決めておく必要があります。

自分で合同会社を設立する手順・必要書類

合同会社を自分で設立することができますが、実際にどのような手順で進めればいいのでしょうか。

その際に必要な書類も含めて、一連の流れをご紹介します。

会社の基本情報を決める

合同会社を設立することとしたら、まずはその会社に関する基本情報を決定しなければなりません

この後のすべての手続きを進めるには、まず会社の基本情報を決定することから始まります。

決定しなければならないことは数多くあるので、中でも重要なものを解説していきます。

会社の商号(名称)

会社の名称を決めなければなりません。

合同会社を設立する際は、「合同会社」という会社の種類を表す言葉を前後いずれかに必ず使うこととされています。

使用できる文字の種類や符号には制限があります。

また、他の会社とまったく同じ名称にすることができない場合もあります。

仕事をする上で支障がないよう、またできるだけ覚えてもらいやすいよう、アイデアあふれる名称を考えましょう。

事業目的

会社は、営利目的の事業活動を行う法人です。

どのような事業活動を行うかは、すべて定款に記載され、定款に記載されていない事業を行うことはできません

会社を設立する際に定款を作成するので、その前にどのような事業目的を定めるのかを考えておきましょう。

一般的には、事業目的にはいくつかの項目が羅列されることとなります。

この先行う可能性のある事業については、あらかじめ定款に記載しておくといいでしょう。

本店所在地

会社の本店は、必ずしも事務所のある場所とは限りません。

また、会社として事務所を持たないこともあります。

このような場合は、代表者の自宅を本店所在地にすることがある他、レンタルオフィスに本店を置く場合もあります。

出資金と発起人

合同会社の出資金は1円以上とされており、実質的に最低金額の決まりはないといえます。

ただ、資本金は少なくても構いませんが、会社の設立や運営には資金が必要となるので、資金の準備はしなければなりません。

発起人となった人から、出資を受け入れます。

発起人となる人は1人でもいいので、代表者だけで会社を設立することができます。

社員

基本的に、発起人として出資を行った人がそのまま設立時の社員になります。

社員は会社の業務執行権を持っており、会社の経営に直接的に関わることとなります。

複数人の社員がいる場合は、その中から代表社員を決めておく必要があります。

事業年度

個人事業主は、毎年1月~12月の1年間で会計処理を行い、決算書の作成や税金の計算を行います。

しかし、会社は自身で決算期を決めることができます

繁忙期を避け、できるだけ決算作業がスムーズに進められる時期を決算期にするといいでしょう。

定款を作成する

会社の基本情報を決定したら、その内容に基づいて会社の定款を作成します

定款は「会社の憲法」と呼ばれることもあるほど重要であり、会社の基本的な内容を決定するものとなります。

株式会社の場合は、公証役場での認証が必要になるので手続きが複雑になります。

合同会社は公証役場で認証を受ける必要はありませんが、法務局に提出する点では株式会社と同じです。​

なお、定款は紙で作成する方法と、電子的に作成する方法があります。

紙で作成した定款は、作成後に収入印紙を貼付しなければなりません

しかし、電子定款であれば、収入印紙を貼付する必要はありません。

会社の実印を作成する

会社が重要な法律行為を行う際には、その証明として実印を使用することとなります。

会社の実印として使用する印鑑は、設立登記申請を行う際に、一緒に法務局に届出を行って登録します

そのため、会社の商号などを決定したら、それにあわせて印鑑を作成するようにしましょう。

出資金の払い込みを行う

基本情報で決めた内容にしたがって、発起人が自身の出資金額の払い込みを行います

この時点ではまだ会社は正式には設立されておらず、法人名義の預金口座を作ることもできません。

そのため、発起人代表の個人口座あてに出資金を振り込むこととなります。

出資金の払い込みが行われたら、払込証明書を作成します。

この時、通帳の表紙と1ページ目、そして振り込まれた金額などの内容が分かるページのコピーをとっておきましょう。

合同会社設立登記の必要書類を作成する

法務局に、合同会社の設立登記申請を行うために必要な書類は、以下のとおりです。

  • 合同会社設立登記申請書
  • 定款
  • 印鑑届出書
  • 代表社員の印鑑登録証明書
  • 払込証明書
  • 代表社員就任承諾書
  • 登記用紙と同一の用紙
  • 登録免許税納付用台紙

法務局に登記申請を行う

すべての書類を揃えたら、本店所在地を管轄する法務局に書類を提出し、登記申請を行います

登記申請後、1週間ほど経過すると登記が完了し、会社の登記簿謄本を取得できるようになります。

合同会社の設立後に必要な手続き

合同会社を設立したら、その事実を関係する機関に届出しなければなりません。

以下の内容の届出をもれなく行いましょう。

税務署への届出

合同会社を設立したら、その本店所在地を管轄する税務署に関係する書類を提出します

届出を行う必要のある書類は、以下のとおりです。

  • 法人設立届出書
  • 青色申告承認申請書
  • 給与支払事務所等の開設届出書
  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

都道府県や市町村への届出

合同会社が納める税金には、国に対するものの他、都道府県や市町村など地方公共団体に対するものもあります。

このため、本店が所在する都道府県や市町村に、法人設立届出書を提出します

定款のコピーや登記簿謄本の写しを求められることもあるので、準備しておきましょう。

社会保険の届出

会社が人件費を支払う場合、その会社は社会保険に加入しなければなりません。

そこで、管轄の年金事務所に必要な届出を行わなければなりません

具体的には、以下の書類を提出します。

  • 健康保険・厚生年金保険新規適用届
  • 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
  • 健康保険被扶養者(異動)届

労働保険の届出

本店所在地を管轄する労働基準監督署に、以下の書類を届出します。

  • 労働保険​関係成立届
  • 労働保険概算保険料申告書

雇用保険の届出

従業員を雇用する場合は、管轄のハローワークに雇用保険に関する届出が必要になります

  • 雇用保険適用事業所設置届
  • 雇用保険被保険者資格取得届

合同会社を設立後に株式会社に変更する方法

株式会社より合同会社の設立の方が簡単なので、最初に合同会社を設立し、その後株式会社に変更することがあります。

この場合、合同会社から株式会社に変更するために必要な手続きがあります

具体的には、以下のような内容をすべて実施する必要があります。

  • 組織変更計画書を作成し、すべての社員の合意を得る
  • 債権者保護手続きを行う
  • 組織変更の公告を行う
  • 株式会社の設立登記を行う
  • 合同会社の組織変更による解散登記申請を行う
  • 税務署、都道府県、市町村、年金事務所、労働基準監督署、ハローワークに届出を行う

これらのすべての手続きを行うには、かなり手間や時間がかかります。

また、登記を行う必要があるため、そのための費用もかかります。

​​司法書士の手数料などを考えれば、最初から株式会社を設立した方が割安に済むことも考えられる​ので、この点はよく考えて最初の設立を行いましょう。

まとめ

個人事業主としての事業が軌道に乗ると、節税やさらなる事業の拡大を目指して、会社を設立する方がいます。

会社で事業を行うと、信用力がさらに増すなど、メリットになることが数多くあります​。

しかし、会社の設立や運営にコストがかかるなどのデメリットもある​ため、慎重に判断しなければなりません。

また、合同会社を設立する場合は、株式会社を設立する場合より簡単に会社を設立することが可能となります。

ただ、将来的に株式会社にしたい場合は、はじめから株式会社を設立した方がいい場合もあるので、この点も考えておきましょう。

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会社設立の手続きは、設立内容の決定から始まり、事業目的のチェック、定款認証、出資金の払い込み、法務局への登記申請を行います。株式会社の設立、合同会社の設立立手続きの基本的な流れを知り、スームーズに手続を行えるにしましょう。

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