最終更新日:2025/6/13
【記入例あり】法人設立届出書の書き方とは?画像で提出先や注意点を解説

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
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YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
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会社を設立した際には、法務局で登記申請を行ったあとも、さまざまな機関へ書類を提出しなくてはいけません。
そうした書類のなかでも法人設立届出書は、複数の機関に、異なる期限内に提出すべき書類です。
そのため、初めての会社設立では、混乱してしまう人も多いです。
ですが、書き方と注意点さえ押さえておけば決して難しい書類ではありません。
この記事では、法人設立届出書の実際の画像をもとに、書き方や提出先、注意点について解説します。
会社設立を考えている、あるいは行っている人は、ぜひ参考にしてください。
目次
法人設立届出書とは
法人設立届出書とは、税務署や都道府県などへ税金を納めるために、設立した法人の概要を記して提出する書類です。
すべての営利法人は、この法人設立届出書を適切な機関へ提出しなくてはいけません。
これを提出しないと税務署などに「新しい法人ができた」という情報が伝わらず、重要な書類が送られてこなかったり法人口座を開設する要件を満たせなかったりなど、会社の運営に大きな悪影響を与える可能性があります。
法人設立届出書の提出先と期限
法人設立届出書は、会社設立時に3枚(東京23区内では2枚)を各所に提出する必要があり、提出期限もそれぞれ違います。
主な提出先と期限は以下のとおりです。
- 納税地を管轄する税務署:設立日から2カ月以内
- 都道府県税事務所:設立日からおよそ1カ月以内
- 市町村役場:設立日からおよそ1カ月以内
提出期限が2カ月以内で余裕のある税務署をついつい後回しにしてしまいがちですが、納税に関する大事な書類やお知らせを受け取るためにも、まっさきに提出しておいたほうが安心です。
都道府県税事務所と市町村役場への提出期限は、自治体ごとに別の期限が定められているので、自分の本店所在地を管轄する事務所を調べて問い合わせてください。
また、東京23区では市町村役場への提出が不要なので、税務署と都税事務所の2カ所へ提出することになります。
法人設立届出書はどこでもらえるのか
法人設立届出書は、各提出先の機関の窓口やWebサイトから入手できます。
提出先によって法人設立届出書のフォーマットはわずかに異なりますが、記載内容はほぼ一緒です。
ただし、提出先に合致したフォーマットの法人設立届出書をそれぞれ作成しなくてはいけない点には注意してください。
よくあるミスとして、税務署用の法人設立届出書を、都道府県税事務所や市町村役場に持っていってしまうといったケースがあります。
これらは基本的に不受理となってしまうので、必ず提出先に合致したフォーマットの法人設立届出書を準備しましょう。
本記事では特別な記載がない限り、税務署へ提出する法人設立届出書について解説しています。
控えを作成しておこう
法人設立届出書の控えは、金融機関での口座開設や融資申請の際に要求されることがあるので、必ず取っておきましょう。
控えは、手書きではなくコピーでも構いません。
控えには提出年月日も記録し、適切に保管、管理してください。
令和7年1月から控えに判は押されなくなる
以前は法人設立届出書の提出の際に、窓口の場合は直接、郵送の場合は返送用封筒や切手を同封して、税務署などの受理印が押された控えを確保しておくのが一般的でした。
しかし令和7年1月から、国税庁ではデジタル・トランスフォーメーション(DX)化の一環として、申告書等の控えに収受日付印を押さなくなりました。
金融機関各所にも、今後各種の事務において申告書などの控えを求めないように周知しています。
しかしそれだけでは不安な場合は、窓口あるいは郵送で交付されるリーフレットに、申告書などを収受した日付と税務署名を記載してもらえるので、そちらを確保するようにしましょう。
参考:令和7年1月からの申告書等の控えへの収受日日付印の押なつについて|国税庁
法人設立届出書と開業届の違い
法人設立届出書と混同されやすい書類に、開業届があります。
開業届も税務署に届け出る書類の一種ではありますが、これは「個人事業」を開業したことを伝えるためのものであり、法人設立を伝えるための法人設立届出書とはまるで異なるものです。
どちらも国税庁のウェブサイトなどからダウンロードできますが、間違えないように注意しましょう。
【画像付き】法人設立届出書の書き方
ここでは実際の法人設立届出書の画像をもとに、具体的な書き方について解説します。
手元に定款や登記事項証明書(履歴事項全部証明書)を用意し、それらを参照しながら記入してください。
1.年月日
法人設立届出書を税務署に提出する年月日を記入します。
郵送の場合は、投函した日で問題ありません。
2.税務署名
本店所在地を所轄する税務署の名前を記入します。
正式な名称がわからないときは、国税庁のホームページから確認することができます。
3.整理番号
これは太い枠線の中に入っているため記入すべきと思われがちなのですが、税務署が書類を整理するために割り振る番号なので、事業者側からの記入は不要です。
書類の下部に「税務署処理欄」という箇所がありますが、そちらも同じように記入は不要となっています。
4.本店又は主たる事務所の所在地
この欄には、登記事項証明書に記載した本店所在地または主たる事務所の住所を記載します。
電話番号は、固定電話を設置していない場合は携帯電話の番号でも問題ありません。
5.納税地
基本的には本店又は主たる事務所の所在地と同じになるので、「同上」と記入しましょう。
6.法人名
定款あるいは登記事項証明書に記載してあるとおり、略称や通称ではない正式名称を記入します。
7.法人番号
法人番号とは国税庁により定められた13桁の番号です。
これは設立登記の手続きが完了した日の16時以降、あるいは国税庁の翌営業日11時以降に「法人番号公表サイト」にて確認できます。
タイミングによっては、法人設立届出書を提出する時点で法人番号が掲載されていないこともありますが、その場合は空欄でも問題ありません。
8.代表者氏名
会社代表者の氏名を記入します。株式会社であれば代表取締役、合同会社であれば代表社員の氏名になります。
仮に該当する人物が複数いる場合は、そのうちの1人の名前だけで問題ありません。
9.代表者住所
会社代表者の住所を記入します。電話番号は、本店又は主たる事務所の所在地の欄と同じように携帯電話番号でも大丈夫です。
10.設立年月日
登記事項証明書に記載されている「会社を設立した年月日」を記入します。
事業開始日などと混同しないように注意してください。
11.事業年度
定款で定めた事業年度を記入します。
事業年度は税務署にとっても把握しておきたい情報なので、万が一定款などで事業年度を定めていないという場合であっても、法人設立届出書を提出する段階で決定しておきましょう。
12.設立時の資本金又は出資金の額
法人登記申請の際に定めた資本金あるいは出資金を記入します。
現物出資があった場合は、その金額も含めます。
13.消費税の新設法人に該当することとなった事業年度開始の日
資本金の額が1,000万円以上に該当する会社は、「10.設立年月日」に記入したものと同じ日を記載します。
資本金の額が1,000万円未満の場合は、空欄となります。
仮にインボイス制度などのため、設立時から課税事業者に登録する場合も、資本金が1,000万円未満であれば空欄で大丈夫です。
14.事業の目的(定款等に記載しているもの)
定款に記載している事業目的をそのまま記入します。
ただし、記入する内容が多岐にわたり、この欄に書ききれない場合は、概要を簡潔に記入するだけでも問題ありません。
15.事業の目的(現に営んでいるまたは営む予定のもの)
定款には記載していないが今後行う予定の事業があれば、追記が必要になります。
基本的には14の項目と同じなので、「同上」で大丈夫です。
16.支店・出張所・工場等
本店以外の支店などがあれば、その名称と所在地を記入します。
とくにない場合は、空欄のままで大丈夫です。
17.設立の形態
法人設立の形態について記入する欄ですが、自分がどれに当てはまるかが分からずに困る人が多い箇所でもあります。
1~5の番号が割り振られていますが、個人事業主が法人成りした場合は1を選びます。
カッコ内には、個人事業主だった頃の所轄税務署や整理番号を記入します。整理番号は税務署から送られてくる確定申告のお知らせなどで確認できます。
それ以外の新設法人の場合は5を選択して、カッコ内に「新設法人」と記入すれば大丈夫です。
現物出資があった場合も、基本的には4ではなく5を選択して下さい。
18.設立の形態が2~4である場合の適格区分
ここは「17.設立の形態」で2~4を選んだ場合、記入が必要になります。
1か5を選んだ場合は空欄のままで大丈夫です。
19.事業開始(見込み)年月日
すでに事業を開始している場合は、「10.設立年月日」に記入したものと同じ日を記入します。
まだ事業を始めていない場合は、開始予定日を記入しましょう。
20.「給与支払い事務所等の開設届出書」提出の有無
給与支払事務所等の開設届出書は、会社が給与あるいは役員報酬を支払う場合に必要となる書類です。
たとえ一人会社で社長だけが役員報酬を得る場合であっても、提出しなければなりません。
給与支払事務所等の開設届出書を提出する場合は「有」に丸をつけます。
21.関与税理士
会社設立時点で関与税理士や顧問税理士がいる場合は、法人設立届出書の作成を代行してもらえます。
その際に税理士の氏名や事務所所在地を、税理士自身がここに記入します。
ここでいう関与税理士とは、依頼を受けて申請書等の作成を代行する税理士のことです。
税理士に相談等をしただけの場合は、関与税理士ではないので記入は不要です。
いずれにせよ事業者側は、この欄に記入することはありません。
22.添付書類
法人設立届出書を税務署に提出する際の添付書類は、平成31年の税制改正以降、基本的には定款等の写しだけになりました。
「1 定款等の写し」に丸をつけ、もしそのほかに添付書類がある場合はその名称を記入しましょう。
また、都道府県税事務所や市町村役場に提出する際には、定款の写しに加えて登記事項証明書が必要になるので注意してください。
23.税理士署名
ここは、関与税理士がいる場合に、その税理士が署名する欄になります。
法人設立届出書に添付する書類について
以前は法人設立届出書を提出する際に、設立時の貸借対照表や出資者名簿、設立趣意書などのさまざまな添付書類を用意する必要がありました。
しかし平成31年の税制改正によって、現在は税務署への提出には定款の写しのみ、都道府県税事務所や市町村役場への提出には定款の写しと履歴事項全部証明書の2つを用意するだけで手続きを進められるようになりました。
履歴事項全部証明書は、手数料を支払えば誰でも全国の法務局で発行できます。
オンラインでも申請できますが、そのままダウンロードはできず、窓口か郵送で受け取ることになります。
法人設立届出書のよくある質問
法人設立届出書は、この記事の内容と照らし合わせながらであれば比較的簡単に作成できるでしょう。
しかし実際に作成するなかで、あるいは完成したあとに以下のような問題が出てくることもあります。
法人設立届出書を作成する際によくある質問に対して、回答していきます。
記載箇所の内容がわからない・忘れてしまった
法人設立届出書は、記載内容の多くを定款と履歴事項全部証明書で確認することができます。
これらは添付書類として一緒に提出するものでもあるので、あらかじめ用意したうえで記入していくとスムーズに書類作成を進められます。
どうしてもわからない箇所があった場合は、税務署の相談窓口や税理士などに相談してみましょう。
税理士と顧問契約などを結んだ場合、こうした必要書類の作成を代行してくれるケースも多いです。
提出期限に間に合わなかった
法人設立届出書の提出期限は、税務署には設立日から2カ月以内、都道府県税事務所や市町村役場にはそれぞれ地域によって違いますが、おおよそ設立日から1~2カ月以内となっています。
実際は、こうした提出期限に間に合わなかったとしてもとくに罰則はありません。
法人設立届出書は、期限超過後も必要書類がそろってさえいれば提出できますし、基本的には問題なく受理されます。
しかし、提出が遅れたことで税務署からの書類が届かず、税務上の不利益を被るケースもありますし、金融機関での口座開設や融資なども通りにくくなってしまいます。
余計なトラブルを避けるためにも、必ず法人設立届出書は期限内に提出するようにしましょう。
提出したあとに不備に気づいた・変更があった
法人設立届出書に何らかの不備があった場合は、税務署からの指摘を受けることになります。
その場合は、指摘された手順に従い、訂正した書類を再提出しなくてはいけません。
事業年度や納税地、資本金の額などに変更があった場合は、新たに異動届出書を作成して提出しましょう。
まとめ
法人設立届出書は税務署などに提出する書類で、会社を設立した際には2~3枚をそれぞれの提出先に合ったフォーマットで作成します。
提出期限については、税務署が会社設立日から2カ月以内、都道府県税事務所などはそれぞれ独自の期限を設けています。あらかじめ確認したうえで早めに作成しましょう。
また、添付書類には定款の写しと履歴事項全部証明書が必要なので、それらも忘れずに準備しておかなくてはいけません。
法人設立届出書の控えには、かつては各自治体の受領印が必要でしたが、現在は税務署はそうした押なつを行わなくなりました。
しかし、控え自体は各所で必要になることがあるので、提出する前に必ずコピーなどを取っておきましょう。
法人設立届出書について悩んだら税理士や司法書士に相談しよう
法人設立届出書は、記入する内容自体はシンプルです。ただ、複数枚を作成する必要がありますし、提出先の期限やフォーマットもさまざまです。
金融機関の口座開設でも、税務署への法人設立届出書の提出が大前提となっている場合も多く、会社を設立した際にはできるだけ早めに、そして確実に提出しておきたい重要書類の1つです。
もし法人設立届出書などの書類作成について悩んだり、誰かの手を借りたいと思ったときは、税理士などへの相談をおすすめします。
適切な記入の仕方や提出期限についてのアドバイス、あるいは書類作成そのものの代行などを依頼することができます。
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