最終更新日:2025/9/9
会社の登記変更とは?法人登記の変更手続きの必要書類やよくある質問を解説

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
会社を設立する際には、必ず法務局で登記申請を行います。
しかし、設立後に内容の変更が生じた場合は、変更登記によって情報を更新する必要があります。
この記事では、法人の変更登記に必要な書類や手続きの流れ、よくある質問をまとめて解説します。
必要な添付書類はもちろん、将来的に変更登記の回数を減らす工夫も紹介します。これから会社を設立する人も、すでに運営中で変更登記を検討している人もぜひご活用ください。
目次
登記変更とは何か?
登記変更とは、法務局に登録されている登記内容に変更が生じた際に、最新情報へ更新する手続きのことです。
登記は個人・法人の情報や権利関係を広く公示する制度であり、その内容は常に正確である必要があります。
法人の場合、商号や所在地、役員構成などが登記情報として登録されているため、これらに変更が生じた際は変更登記が必要です。
法人登記以外のさまざまな登記
法務局では、法人登記以外にも不動産や動産、船舶、債権などの登記が行われています。
今回の記事では、株式会社や合同会社などの「法人」が登記の変更を行うケースについて解説しています。
法人登記変更が完了するまでの日数の目安
登記変更の申請から完了(登記内容の書き換え)までには、時間がかかります。
登記変更後すぐに登記簿謄本を提出する予定がある場合には、申請には十分な余裕を見ておきましょう。
登記完了までの日数は、各地の法務局によって大きく異なります。
早い場合は2~3日、長いと1カ月程度かかることもあります。
各地の法務局のWebサイトでは、登記完了予定日が公開されています。
あくまで目安ですが、スケジュールを立てる際の参考にしてください。
法人登記変更にかかる「登録免許税」のしくみ
登記変更の際には、法務局に登録免許税という税金を納めなくてはいけません。
税額は変更する登記内容によって異なります。
代表者の住所変更には1万円、事業目的や商号の変更には3万円がかかります。
会社所在地の移転には3万円または6万円がかかります。法務局の管轄内での移転なら3万円、管轄外への移転なら6万円が必要です。
登記変更に伴う費用の詳細は、以下の記事で詳しく解説しています。
登記変更の手続きの流れ
登記変更は、登記事項に変更が生じた「あと」に申請します。
つまり、会社名・役員の変更や資本金の増減が確定したあとに、変更登記を申請する必要があります。
株主総会や取締役会で変更を決議しても、実際の変更が行われるまで数日〜数カ月かかる場合があります。
その場合、申請のタイミングも変更完了後になる点に注意してください。
Step1 決議(株主総会や取締役会など)と必要書類の準備
登記変更を行うときには、変更登記申請書の作成が必要になります。
また、変更内容によってさまざまな添付書類も必要です。
多くの場合、社内決議とその証明書類が求められます。
株式会社の場合は株主総会や取締役会など、合同会社の場合は原則として社員全員の話し合いによって決議を行い、これをもとに議事録または決定書を作成します。
変更登記申請書のテンプレートは、法務局のWebサイトから、変更内容ごとにダウンロードできます。
添付書類の一覧も記載されているので、登記変更を行う際には一度目を通してみてください。
法務局に登記変更のやり方について相談できる
法務局では個人で登記変更を行う人のために、「登記手続案内」というサービスを行っています。
相談の際には、あらかじめ登記事項証明書や変更登記申請書、添付書類をできるだけ準備しておくと、スムーズに説明を受けることができます。
ただし、「登記手続案内」で相談できるのは、登記手続きの流れや登記申請に必要な書類の収集方法、申請書の記載方法などです。
実際の申請書の作成や添付書類の収集などは代行してもらえない点は、あらかじめ把握しておきましょう。
利用には事前予約が必要で、1回あたり20分以内が相談可能時間となっています。
電話あるいは窓口、Web会議サービスから相談が可能です。
参考:登記手続案内|法務局
Step2 法務局での申請
用意した書類を法務局に提出し、登記変更を申請します。
主な申請方法は以下のとおりです。
- 窓口での申請
- 郵送での申請
- オンライン(登記ねっと)での申請
それぞれのやり方について詳しく解説します。
窓口での申請
法務局の窓口に直接赴き、必要書類と登録免許税を納付することで、登記変更を申請できます。
登録免許税の納付に必要な収入印紙を法務局内で購入できるほか、即日で申請できる点などが窓口申請の大きなメリットです。
登記が完了する予定日は、法務局内に表示されています。
また、全国の法務局のWebページでも登記完了予定日が公開されているので、登記変更を行った際には確認しておきましょう。
郵送での申請
申請書と添付書類を法務局に郵送することでも、登記変更を申請できます。
郵送の際は普通郵便でも問題はありませんが、可能な限り書留やレターパックなど、到達の確認ができる方法で送付するべきとされています。
登録免許税は、別紙などに収入印紙を貼り付けて納付します。
その際に、上から消印などを押してしまうと、印影が付いた収入印紙は受理されなくなるので注意してください。
申請書には電話番号などの連絡先を必ず記載し、封筒には「登記申請書在中」と明記しましょう。
オンライン(登記ねっと)での申請
登記変更は、法務省が運営する登記・供託オンライン申請システム「登記ねっと 供託ねっと」からでも申請できます。
初めて利用する際には、申請者情報を登録したうえで申請用総合ソフトをインストールしなくてはいけません。
また、書類の提出の際には、電子証明書やそれを発行するための「鍵ペアファイル」「証明書発行申請ファイル」などの準備が必要になります。
電子証明書は認証期間ごとに手数料もかかるうえ、準備も煩雑です。
個人で利用するには、まだまだハードルが高い申請方法でしょう。
参考:登記・供託オンライン申請システム 登記ねっと 供託ねっと|法務省
法人登記変更が必要になるケースと必要書類
法人登記の変更に必要な添付書類は、変更内容だけでなく会社の状況によっても大きく異なります。
株式会社の場合、株主総会での決議が必要な内容であれば「株主総会議事録」を、それ以外のケースでは「取締役会議事録」を添付します。
合同会社では、定款変更が必要なときは「総社員の同意書」を、不要なときは「業務執行社員の過半数の一致を証する書面」を添付します。
もっとも、これは基本形にすぎず、ほかの要因で追加書類が求められることもあります。以下で代表的なパターンを解説します。


取締役や監査役の就任・辞任・退任・解任・再任(重任)
役員が変更される場合には、登記変更が必要になります。


必要書類は、ケースによって大きく異なります。
【株式会社】役員変更登記の必要書類
株式会社が役員の変更登記を行う場合、主な必要書類は以下のとおりです。
- 株式会社変更登記申請書
- 株主総会議事録
- 株主リスト
これらに加え、役員が辞任した場合は「辞任届」、死亡した場合は「死亡届(または法定相続情報一覧図の写し)」などが必要です。
さらに新しい役員が就任する場合は「就任承諾書」と、取締役会設置会社であれば「本人確認証明書」非設置会社の場合は「印鑑証明書」が必要です。
取締役会設置会社で役員全員が重任する場合は、「株主総会議事録」や「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあることを証する書面」などが必要になります。
また、登録印を押す書類がある場合は、対応する「印鑑証明書」も提出します。
【合同会社】役員変更登記の必要書類
合同会社の役員変更登記で必要になる主な書類は以下のとおりです。
- 合同会社変更登記申請書
- 総社員の同意書
定款の定めに基づく互選により、加入する業務執行社員を代表社員とする場合には、「定款」と「業務執行社員の互選による代表社員の選任を証する書面」、「代表社員就任承諾書」が必要です。
また、代表社員が法人の場合は「代表社員である法人の登記事項証明書」と「職務執行者の選任に関する書面」、「職務執行者の就任承諾書」を添付します。
業務執行社員が法人の場合は「登記事項証明書」が必要です。
法人の登記事項証明書に関しては、申請する登記所(=法務局)の管轄区域内に当該法人の本店または主たる事務所がある場合は不要です。
また、申請書に会社法人等番号を記載すれば、添付を省略できます。
事業目的・商号(社名)の変更
事業目的や商号の変更の場合、株式会社では以下の書類が必要です。
- 株式会社変更登記申請書
- 株主総会議事録
- 株主リスト
合同会社の場合は、以下の書類が必要となります。
- 合同会社変更登記申請書
- 総社員の同意書
これらに加え、商号の変更に官庁の許可や認可が必要な場合は「◯◯大臣の許可証もしくは認可書またはその謄本」を用意しましょう。
本店所在地(会社の住所)の変更
本店移転登記についても、定款の変更が必要かどうかで必要書類が異なります。
【株式会社】本店移転登記の必要書類
まずは株式会社の本店移転登記の必要書類です。
「従来の登記所の管轄内での移転」かつ「定款の内容に変更が生じない」場合、以下の書類が必要になります。
- 株式会社本店移転登記申請書
- 取締役会議事録(または取締役の過半数の一致を証する書面)
株式会社の移転先がそれまでの登記所の管轄外であるか、定款の内容に変更が生じる場合、必要書類は以下のとおりです。
- 株式会社本店移転登記申請書
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 取締役会議事録(または取締役の過半数の一致を証する書面)
どちらのケースでも、取締役会が非設置の場合は、取締役会議事録の提出は不要です。
これらをまとめると、定款の変更があった場合は株主総会議事録や株主リストが必要となり、定款の変更がなかった場合は取締役会議事録が必要になるということになります。
【合同会社】本店移転登記の必要書類
次に、合同会社の本店移転登記の必要書類です。
「従来の登記所の管轄内での移転」かつ「定款の内容に変更が生じない」場合、以下の書類が必要になります。
- 合同会社本店移転登記申請書
- 業務執行社員の過半数の一致があったことを証する書面
合同会社の移転先がそれまでの登記所の管轄外であるか、定款の内容に変更が生じる場合、必要書類は以下のとおりです。
- 合同会社本店移転登記申請書
- 総社員の同意書
これらは、定款の変更があった場合は総社員の同意書、定款の変更がなかった場合は業務執行社員の過半数の一致があったことを証する書面が必要になるということになります。
仮に定款で「総社員の同意書を業務執行社員の過半数の一致があったことを証する書面で代用できる」と定めていた場合は、本店所在地に変更があった際、業務執行社員の過半数の一致があったことを証する書面と定款を提出します。
【共通点】書類の提出先や登録免許税に注意
株式会社と合同会社のどちらも、移転先がそれまでの登記所の管轄外だった場合は、それぞれの登記所に書類を提出しなくてはいけません。
その場合、必要な登録免許税も2倍になるので注意しましょう。株式会社と合同会社ともに、3万円の2倍である6万円が必要です。


代表者の住所変更
代表者(代表取締役・代表社員)の住所も、変更があった場合は登記変更が必要です。
代表者の住所変更に必要な書類は「株式会社(合同会社)役員変更、住所移転登記申請書」のみになります。
株主総会や取締役会を開かずとも変更が可能で、登記変更を司法書士などの代理人に代行してもらう場合は「委任状」も必要です。
支店の設置・移転・廃止
支店を設置、移転、廃止する場合にも、登記変更を行います。
株式会社が支店に関する登記変更を行う場合は、以下の書類が必要です。
- 株式会社支店移転登記申請書
- 取締役会議事録
合同会社が支店に関する登記変更を行う場合は、以下の書類が必要です。
- 合同会社支店設置登記申請書
- 業務執行社員の過半数の一致があったことを証する書面
資本金の増額・減額
資本金の増額・減額があった場合も登記変更を行います。
ほかの登記変更と比較しても、資本金の額の変更は、どのようにしてそれが行われたかによって、必要になる添付書類が大きく異なります。
【株式会社】資本金の増資(額の増加)の必要書類
株式会社が募集株式の発行によって資本金を増額させる場合、必要書類は基本的に以下のとおりです。
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 募集株式の引受けの申込みを証する書面
- 払込みがあったことを証する書面
- 資本金の額の計上に関する証明書
株式会社が利益剰余金や準備金の組入れによって資本金を増額させる場合、必要書類は以下のとおりです。
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- その他利益剰余金の額に関する証明書
【合同会社】資本金の増資(額の増加)の必要書類
合同会社が、新たに加入した業務執行社員あるいは社員の出資によって資本金を増額させた場合の必要書類は以下のとおりです。
- 総社員の同意書
- 出資に係る払込み又は給付があったことを証する書面
- 増加するべき資本金の額につき業務執行社員の過半数の一致があったことを証する書面
さらに金銭以外の出資があった場合は「資本金の額の計上に関する証明書」、社員が法人である場合はその法人の「登記事項証明書」が必要になります。
合同会社が、すでにいる社員が出資価額を増加した場合の必要書類は以下のとおりです。
- 出資の価額を増加した定款の変更に係る総社員の同意書
- 出資に係る払込み又は給付があったことを証する書面
- 増加すべき資本金の額につき業務執行社員の過半数の一致があったことを証する書面
- 資本金の額の計上に関する証明書
合同会社が、資本剰余金の額の全部または一部を資本金の額とするものと定めた場合の必要書類は以下のとおりです。
- 業務執行社員の過半数の一致があったことを証する書面
- 資本金の額の計上に関する証明書
【株式会社】資本金の減資(額の減少)の必要書類
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 一定の欠損の額が存在することを証する書面
- 公告および催告をしたことを証する書面
資本金の減額に異議を述べた債権者がいた場合は、「異議を述べた債権者に対し、弁済若しくは担保を供し若しくは信託したこと又は資本の減少をしてもその者を害するおそれがないことを証する書面」が必要です。
異議を述べた債権者がいなかった場合は、その旨を申請書に記載しましょう。
法人登記変更をできるだけしないための対策
法人の登記変更は、1件につき数万円の登録免許税がかかるうえ、添付書類も複雑になるケースが多いです。
こうした費用と手間を少しでも減らすために、会社設立時の登記申請のときから取れる対策について解説します。
登記申請時の本店所在地の住所を地番までにしておく
よく勘違いされる点なのですが、登記申請時には本店所在地の住所すべてを記載しなければならないわけではありません。
たとえば「東京都◯◯区△△ 1ー2ー3 ◇◇ビル◇階◇◇号室」を本店所在地としたとします。
この場合、定款と登記申請書には以下の部分まで記載が必須ですが、それ以降は省略しても問題ありません。
- 定款
「東京都◯◯区」まで
- 登記申請書
「東京都◯◯区△△ 1ー2ー3」まで
ビル名や階数、部屋番号を省略した場合、同じビル内での移転や、ほかの階層でテナントを増やしたとしても、登記内容は変更がないので手続きを行わなくても良くなります。
ただし、住所を省略して記載すると、法務局からの重要な郵便物が届かなくなる可能性がある点には注意しましょう。
事業目的を広めに設定しておく
会社の経営が軌道に乗ったので、より大きな利益を目指すために、設立時に定めた事業目的を拡大したいと考えることもあるでしょう。
そうした場合に、毎回事業目的を付け足していくと、そのたびに登記変更が必要になってしまいます。
登記申請の時点から、将来的に行う可能性のある事業は事業目的に含めておきましょう。
記載した事業を現時点で行っていなくても、特に罰則などはありません。
また、事業目的の項目の最後に「前各号に附帯または関連する一切の事業」と記載しておけば、それまでに書いた事業目的と関連がある事業を、登記変更をせずに実施できます。
ただし、事業目的を過度に列挙すると、外部から事業内容が見えづらくなります。
特に本業と関係の薄い目的が並ぶと、金融機関などから実態が不明と判断され、取引や融資を見送られるおそれもあるため注意が必要です。
役員の任期は慎重に考慮する
会社設立時に、役員の任期を何年と定めるかはとても重要です。
株式会社の役員の任期は、原則2年です。
しかし非公開会社であれば、定款で個別に定めることで、最長10年まで延長できます。
任期満了後に、そのまま役員として再任(重任)する場合でも、登記変更が必要です。
役員の任期を2年ではなく10年ほどに延長しておけば、任期切れによる登記変更の手間を大幅に減らせます。
また、非公開会社であれば、役員ごとに任期を振り分けることもある程度可能です。
外部役員や高齢の役員、持病のある役員については、ほかの役員と任期を分けることで運営リスクを抑えられます。
ちなみに役員は、いつでも株主総会の決議に寄って解任することもできると会社法で定められています。
ただし、正当な理由なく役員を解任した場合は、残りの任期分の役員報酬などの損害賠償請求を請求されることもあるので注意しましょう。
参考:会社法第三百三十二条|e-Gov 法令検索
参考:会社法第三百三十九条|e-Gov 法令検索
資本金の額は少なくしすぎない
会社法の施行により、資本金が1円であっても会社設立ができるようになりました。
しかし、実務上は資本金があまりに少ないと、さまざまなデメリットがあります。
資本金が少ない場合、まずは金融機関からの信用が得にくくなります。
法人口座の開設に時間がかかったり、断られてしまうといった事態も起こり得ます。
また、銀行からの融資や、国や自治体からの補助金・助成金も利用しづらくなります。
資本金を少額にして会社を設立してみたものの、これらのデメリットによって資金繰りが厳しくなった場合、結局あとから増資の変更登記が必要になる可能性があります。
一般的には、資本金は「初期費用+3~6カ月分の運転資金」が適切とされています。
この額をもとに、ある程度余裕を持った資本金を用意しましょう。
スマート登記変更とは
スマート登記変更とは、あらかじめ申請しておくと、不動産登記の変更を法務局が職権で行ってくれるサービスです。
会社法人等番号の登記をすれば、会社名や事務所の住所に変更があった場合に、法務局が変更情報を確認し、変更登記を行ってくれます。
自分で変更登記手続きを行う必要がないうえ、登録免許税も免除されるため、非常に便利なサービスといえます。
ただし、スマート登記変更はあくまで不動産登記向けのサービスであり、本記事で解説した商業(法人)登記には利用できませんので注意してください。
法人登記変更のよくある質問
法人の登記変更に関して、実務上、特に問い合わせが多いポイントをテーマ別に整理しました。
登記変更の注意点やスムーズに処理するためのコツを詳しく解説します。
登記変更をしないままでいるとどうなるのか
登記変更は、会社法第915条によって登記事項に変更があった日から原則2週間以内に申請しなければならないと定められています。
それを過ぎた場合、登記懈怠(登記義務を怠った)として代表者個人に100万円以下の過料が科せられるおそれがあります。
また、金融機関が融資などを行う前の調査をした際に、登記簿上の情報と実際の状況が異なっていると、運営体制がずさんと判断されるなどのデメリットも生じます。
登記変更を12年行わずにいると【みなし解散】になる
みなし解散とは、長期間登記がされていない会社を、法務局が職権で解散させる手続きのことです。
株式会社は、最後に登記を行ってから12年間で一度も登記変更を行わないと「休眠会社」という扱いになります。
これは株式会社の役員の任期が最長でも10年であることから、12年間も登記変更がない会社は「事業を行っていない」「放置されている」とみなされるためです。
この場合、登記所から毎年10月ごろに通知書が送付されます。
この通知書を受け取ってから2カ月以内に、役員変更などの「必要な登記」か「まだ事業を廃止していない旨の届出」のいずれかを行わないと、自動的にみなし解散の登記が行われ、会社が解散してしまいます。
みなし解散後、3年以内であれば株主総会の特別決議を得たうえで、継続の登記申請をすれば、会社を継続することが可能です。
しかし一度解散したという事実は登記簿に残るため、金融機関などからの信頼は大きく損なわれてしまうでしょう。
ちなみに合同会社には役員の任期がないので、みなし解散という制度も適用されません。
しかし登記懈怠による過料は、株式会社と同じように発生します。
登記変更は必ず、変更があった日から2週間以内に行うようにしましょう。
株式会社の登記変更には株主総会と取締役会のどちらが必要なのか
登記変更をすること自体に、株主総会や取締役会決議は必要ありません。
登記変更とはあくまで、会社の登記情報に変更があった場合に、法務局の登記簿にそれを反映させることです。
そのために「どのような変更があったのか」を申請書で伝え、「その変更が確かにあったこと」を証明するために、株主総会や取締役会の議事録などが必要になるのです。
通常、会社の重要事項の変更には、それが定款変更を要するものであれば株主総会の、要さないものであれば取締役会などの決議を行います。
法務局での登記変更には、それらを滞りなく行ったことの証明として、それぞれの議事録を提出しましょう。
株主総会にも臨時と定時があるが、登記変更にはどちらの議事録が必要か
登記変更に必要な株主総会議事録は、臨時と定時どちらでも問題ありません。
ただし、定時株主総会は基本的に1年に1回だけ開かれるものです。
一方で登記変更は、変更する事項が発生してから2週間以内に手続きをしなくてはいけません。
定時株主総会の開催をいちいち待っていると、登記懈怠となってしまうケースがほとんどでしょう。
そのため、登記変更を行う際には、多くの場合で臨時株主総会が開催されます。
取締役会議事録と取締役決定書の違いとは何か
取締役会議事録とは、取締役会を開催して決議した内容を証明する記録です。
一方で取締役決定書とは、取締役会を開催せず、書面や電子で取締役が同意したことを証明する記録です。
取締役会設置会社が、取締役会を開催した場合は、取締役会議事録。
取締役会設置会社が書面決議を行ったか、そもそも取締役会を設置していない会社の場合は取締役決定書を作成します。
ただし、取締役決定書を作成する際に、取締役会設置会社が書面決議を行った場合は、すべての取締役の賛成が必要となります。
取締役会非設置会社の場合は、過半数の取締役の賛成で問題ありません。
補正が来たときはいつまでに対応すればいいのか
登記変更内容に補正があった場合、通常は申請から1週間ほどで、法務局から電話で通知されます。
この際に補正の期限も伝えられるので、その日までに修正を行い、改めて申請します。
万が一、期限についての言及がなかった場合は、こちらからいつまでに補正すればいいのかを確認しておきましょう。
期限内までに補正を行えば、申請は受理されます。
しかし期限を超えてしまうと、法務局から登記申請を「却下」され、また1から申請し直さなくてはいけません。
申請が却下された場合、送付した登録免許税は返還が可能です。しかし申請書は返還されないので、補正はできるだけ早めに行いましょう。
この記事のまとめ
登記変更は、法務局に登録した登記内容に変更が生じたときに行う手続きです。
登記事項に変更があった日から原則2週間以内に申請し、補正があった場合は期限内に修正して再提出します。
申請から登記完了までには、補正がなかったとしても1カ月近くかかることもあるので、スケジュールには余裕を持たせておきましょう。
登記申請が必要になるケースは多岐にわたり、たとえば商号・本店所在地の変更、役員の選任・解任・再任などがあります。
さらにそれぞれの場合で、必要になる添付書類や登録免許税の額も変わります。
登記変更は時間と手間のかかる手続きであるため、会社設立時からできるだけ行わずに済む工夫をしておくことが重要です。
登記変更で悩みがあれば司法書士などに相談しよう
会社の運営上、登記変更は必ず行うことになる手続きですが、必要書類の把握や準備には難しい点が多く存在します。
個人で登記変更を行うことも不可能ではありませんが、より確実かつ迅速に登記変更を行うのであれば、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
ベンチャーサポート税理士法人では、会社設立・運営に関する無料相談を実施しています。
税理士だけでなく行政書士や司法書士、社労士も在籍しているためワンストップで相談が可能です。
レスポンスの速さにも定評があるため、初めての方もお気軽にご相談ください。