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本店所在地を自宅にする際のメリット・デメリット
この記事の執筆者 税理士 森健太郎
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
▼目次
会社の設立を行うときには、会社の本店所在地を定款に定めた上で法務局で登記を行わなくてはなりません。
このときに会社の本店所在地を社長の自宅にするケースは少なくないと思います。
個人事業主から法人成りしたばかりの事業者の方や、事業をスタートしたばかりの事業者の方の場合は経営者個人の生活スペースと会社の事業所が明確に区分できないということは珍しくないためです。
本店所在地を社長の自宅にすることにはメリットとデメリットがありますから、ここではそれらの判断材料について具体的に理解しておきましょう。
本店所在地を自宅にするメリット
本店所在地を自宅に設定するメリットとしては、具体的には以下のようなことがあります。
家賃や光熱費の一部を経費にできる
まず、賃貸アパートなどが自宅になっている場合には、支払った家賃の一部を会社の経費とすることができます(経費が多くなればなるほど利益が少なくなり、その分税金は安くなります)。
自宅の家賃は事業を行なっていてもいなくても出費として出て行くものですから、せっかくならその出費を会社の経費として扱って税金を安くするための手段にするのがお得といえます(自宅の光熱費などに関しても同様です)。
家賃や光熱費を経費とする際の注意点
ただし、家賃や光熱費を会社の経費として処理するためには、按分計算(あんぶんけいさん)を行う必要があるのには注意が必要です。
例えば、自宅の3分の1の面積を占める仕事部屋を会社のオフィスとして使っているという場合には、家賃全体の3分の1だけを会社の経費として処理するのが適切です。
もし家賃全額を会社の経費としてしまうと、税務署による税務調査が行われた際には経費としての処理を否認されてしまう可能性があります(修正申告を求められてしまいます)。
また、家賃を経費にできるのは賃貸に住んでいるような場合だけです。
持ち家の住宅ローンの支払いなどは経費として処理はできませんので注意しておきましょう。
会社設立と同時に事務所を用意できる
まったくの他人から会社の事務所にするためにアパートやマンションを借りるのは、実はそれほど簡単なことではありません。
会社の設立手続きを進めている段階では、まだ会社はこの世に存在していないわけですから、事務所の貸し手としては本当にお金を払ってくれるのかどうかが疑わしいと考えるのが普通だからです。
すでに会社の設立が済んでいる状態で事務所を探すのと、これから作る会社の本店所在地にするための事務所を探すのでは難易度に差があります。
ですから、将来的にはどこか別の事務所を借りることを考えている人も、とりあえずは自宅を本店所在地として設立登記をしておくのも一つの選択肢ということが言えます。
本店所在地を自宅にするデメリット
一方で、本店所在地を自宅にすることには以下のようなデメリットもありますから注意しておきましょう。
取引先や金融機関からの信頼感
まず、登記簿謄本を取ったときに社長の自宅住所と会社の本店所在地が同一になっているような場合、良くも悪くも「オーナー企業である」という風に判断される可能性が高いです。
新規の取引先や金融機関としてはオーナーと会社とがしっかりと分離している方が安心感が高いものです(オーナーの財布と会社の財布が一緒になっているのは嫌われます)。
自宅を外部に知られてしまう
会社のホームページなどには自社の本店所在地などを記載することが多いと思います。
社長の自宅が本店所在地と共通になっていると社長のプライベートがやや心配ということも考えられるでしょう。
自宅が本店所在地と別の場所になっていたとしても、会社代表者の住所は定款に記載しなくてはなりませんから、法務局で登記簿謄本を取得すれば誰でも社長の住所を知ることはできるという意味では同じです。
ただ、法務局にお金を払ってまで社長の自宅にいたずらをしようと考える人はまれでしょうから、自宅を本店所在地にした場合の方がややリスクは高くなると言えるかもしれません。
まとめ
今回は、会社の設立手続きを行うにあたって、会社の本店所在地を社長の自宅にするメリットとデメリットについて解説させていただきました。
これまでに会社設立に関わったことがない事業者の場合、会社の設立内容をめぐって思わぬところで将来のトラブルにつながるミスをしてしまうことは少なくありません。
本店所在地だけではなく、定款の内容をどのように決めるかについては経験豊富な司法書士や税理士といった専門家に相談してアドバイスを受けながら進めると良いでしょう。
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