この記事でわかること
- 相続時に債務調査が必要な理由がわかる
- 債務調査の方法4つがわかる
- 被相続人に借金があったときの対処法がわかる
被相続人(亡くなった方)の財産には、プラスの財産とマイナスの財産があります。
プラスの財産には預貯金や現金、不動産などがあり、相続すれば何らかの利益になります。
一方、借金や未払金などの債務をマイナスの財産といい、相続を承諾した場合は返済や支払い義務を引き継がなくてはなりません。
しかし債務は家族に知らされていないケースも多いので、相続後に高額な借金が見つかる可能性も考えられるでしょう。
被相続人の債務は家族の生活にも大きく影響するため、いくら債務があるのか調査しておく必要があります。
今回は被相続人の債務調査をわかりやすく解説しますので、「もしかしたら借金があるのでは?」と気になっている方はぜひ参考にしてください。
目次
相続時に債務調査が必要な理由
被相続人の財産を相続人同士で分割するときは、まず下準備として財産調査が必要になります。
預金や現金がいくらあるのか調べることになりますが、被相続人に借金があると考えられる場合は、債務調査もしておかなければなりません。
プラスの財産・マイナスの財産どちらもはっきりさせておけば、相続を承諾するか、相続放棄するかを判断しやすくなります。
「債務があるかどうかわからない」「債務は知っているが金額がわからない」という方は、次の方法で債務を調査することができます。
なお、債務調査は義務ではなく任意なので、最初から相続放棄すると決めていれば債務調査は不要です。
債務調査の方法4つ
被相続人の債務には個人間の借金や、銀行・消費者金融等からの借入れが考えられます。
それぞれ次のような調査方法になりますが、まず被相続人の遺品を整理して、債務の手がかりを見つけておきましょう。
被相続人の遺品を整理する
被相続人の債務は遺品整理するうちに発覚するケースが多いので、まず被相続人の自宅を入念に調査しましょう。
ポイントを絞れば効率的に調査できるので、以下の項目をチェックしてください。
- 被相続人あての郵便物
- 机の引き出しやキャビネットなど
- 預金通帳
債務があるときは、支払督促や返済状況の明細などが送付されている場合があるので、被相続人あての郵便物は必ず確認しておきましょう。
机の引き出しやキャビネットからは、債務関係の契約書類(金銭消費貸借契約書など)が見つかるケースもあります。
また、銀行やカード会社への返済は預金通帳からもわかるので、出金(引落し)の記録も確認してください。
パソコンや携帯電話も確認する
遺品整理するときは、被相続人が使っていたパソコンや携帯電話も確認しましょう。
申し込みから借り入れまでネットで完結する借金もあるので、郵便物のチェックだけでは見逃してしまいます。
被相続人あてのメールをチェックして、債権者からの督促がないか調べておきましょう。
また、消費者金融等の公式サイトや、個人ページへの自動ログインが登録されているケースもあるので、ブラウザのブックマーク(お気に入り)も調べておきましょう。
全国銀行個人信用情報センター(KSC)に照会する
被相続人に銀行系の借金がありそうな場合は、全国銀行個人信用情報センター(KSC)に照会すると銀行系の借金があるかどうかがわかります。
全国銀行個人信用情報センターは全銀協(全国銀行協会)が運営しており、銀行系のローンやクレジットカードなどの情報を調査できます。
照会できる人は法定相続人に限られており(相続の場合)、照会方法も郵送受付けのみとなっています。
照会に使用する「登録情報開示申込書」は以下のリンクから入手できますが、照会者によって準備する添付書類が違うので、詳しくは以下の連絡先で確認してください。
なお、照会には1,000円分の定額小為替、またはコンビニで購入できる本人開示手続き利用券(1,200円程度)が必要です。
- フリーダイヤル:0120-540-558
参考:全国銀行個人信用情報センター
法定相続人による開示請求手続き(KSC)
株式会社シー・アイ・シー(CIC)に照会する
消費者ローン等のクレジット系であれば、株式会社シー・アイ・シー(CIC)へ債務を照会できます。
照会できる人は法定相続人に限られますが、照会方法は以下の3つに対応しています。
- 郵送照会:申込みから10日程度で開示報告書が到着
- インターネット照会:毎日8:00~21:45で利用可能
- 窓口照会:平日10:00~12:00および13:00~16:00で利用可能
郵送の場合は1,000円分の定額小為替を同封し、インターネット照会はクレジットカードで1,000円を一括払いします。
窓口照会は現金500円ですが、全国に7拠点しか設置されていないため、手数料は2倍でも郵送やインターネットが便利でしょう。
照会の際には戸籍謄本などの書類も必要なので、以下の連絡先で詳細を確認してください。
- 全国共通ダイヤル:0570-666-414
株式会社日本信用情報機構(JICC)に照会する
消費者金融等からの借入れであれば、株式会社日本信用情報機構(JICC)に債務を照会できます。
債務者本人であればスマートフォンの専用アプリで照会できますが、相続の場合は郵送または窓口照会に限定されています。
また、照会できる人も法定相続人や2親等以内の血族、または代理人弁護士等に限られます。
手数料が1,000円かかり、同額分の定額小為替やクレジットカードで支払いますが、郵送の場合は開示情報の受け取りに以下のオプションを利用できます。
- 速達郵便:300円(税込)
- 本人限定受取郵便:300円(税込)
- 速達+本人限定受取郵便:600円(税込)
なお、照会に必要な書類等は以下の連絡先で確認してください。
- サポートダイヤル:0570-055-955
被相続人に借金があったときの対処法
相続を承諾するかどうかは、被相続人の財産状況から判断することをおすすめします。
プラス財産が多ければ相続を承諾し、マイナス財産が多ければ相続放棄も選択できます。
「借金の返済義務は免れたいが、どうしても相続したい財産がある」という状況であれば、限定承認も検討するべきでしょう。
単純承認
相続の承諾を「単純承認」といい、特に手続きは必要ありません。
相続開始から3ヶ月を経過する、または3ヶ月以内に相続財産を処分した場合は、自動的に単純承認が成立します。
被相続人に債務がないときや、債務があっても問題なく返済できるようであれば、単純承認を選択してもよいでしょう。
なお、債権者は法定相続分に応じて返済請求できるので、遺産分割協議で特定の相続人が全額負担するように決めたとしても、債権者に対しては主張できません。
相続放棄
被相続人の借金が高額な場合は相続放棄も選択できます。
相続放棄すると最初から相続人ではなかったことになるので、現金や預貯金などの財産は相続できなくなりますが、借金を引き継ぐ必要もなくなります。
ただし、家庭裁判所へ申し立てて相続放棄を認めてもらうことになり、期限は相続開始を知った日から3ヶ月以内です。
3ヶ月の熟慮期間中に相続財産を使ってしまうと、自動的に単純承認が成立するので注意してください。
また、相続放棄によって次順位の人が相続人となり、同じく相続放棄する場合は、先順位の人が相続放棄したことを知った日が期限までの起算日になります。
なお、相続放棄は単独手続きできるので、他の相続人の同意は不要です。
限定承認
限定承認とは、相続したプラス財産の範囲内で債務を負担する制度です。
プラス財産を債権者への返済に充てて、残った財産を相続する仕組みですが、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申立てしなければなりません。
「借金は背負いたくないが自宅だけは残したい」など、相続放棄できない状況であれば限定承認を検討するとよいですが、手続きはかなり複雑です。
また、限定承認は相続人全員の同意が必要であり、単独手続きはできません。
特殊な制度といえますので、自己判断する前に専門家のアドバイスを受けておいた方がよいでしょう。
まとめ
相続が発生したときは、まず被相続人の財産を調査してください。
プラスの財産・マイナスの財産、どちらが多いかで単純承認や相続放棄を判断するため、財産の全容把握はかなり重要です。
特に債務調査は相続放棄や限定承認の判断に欠かせないので、必ず各機関へ照会しておきましょう。
ただし、相続放棄や限定承認の期限は相続開始から3ヶ月以内です。
家族の葬儀や法事などを考慮すると、債務調査できる期間はそれほど長くないため、財産の全容がわからないうちに期限が到来するかもしれません。
「債務調査の時間を確保できない」「すべて調査できるか不安」という方は、少しでも早く相続の専門家へ相談することをおすすめします。
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