この記事でわかること
- 相続の基本となる相続順位や相続割合を理解できる
- 父の再婚相手と前妻の子の相続割合がわかる
- 父の再婚によって生じるトラブル内容がわかる
- 父の再婚によって生じるトラブルの回避策がわかる
- 父に隠し財産があった場合の調査方法がわかる
婚活は若い世代だけのものではなく、近年は熟年結婚や熟年再婚も増えています。
女性に比べ男性の再婚率は高いようですが、問題となるのが前妻との間に実子がいる場合であり、父の再婚相手と揉めてしまうこともあります。
特に父親の遺産に対する権利関係は正しく理解されていない場合が多く、遺産分割も難航するなど「争続」に発展するケースも少なくありません。
今回は父親の再婚相手と前妻、また前妻の子の相続割合などについて詳しく解説します。
目次
父の再婚相手と前妻の実子の相続割合
離婚した妻(前妻)に相続権はありませんが、前妻との間に子がいれば、その子は父親の財産を相続する権利があります。
父と子の血縁は続くため前妻の子であっても法定相続人であり、父の再婚相手(現在の配偶者)に次ぐ第1順位の相続人となります。
ただし、遺産の配分内容は遺言の有無や子の人数によって変わるため、法定相続分や相続人の範囲を正しく理解する必要があるでしょう。
では父の再婚相手と前妻の子ではどのような相続割合になるか、基本的な相続割合や相続順位を踏まえて解説します。
配偶者と子どもの法定相続分
まず相続の基本知識として、配偶者と子どもの相続順位や相続割合を解説します。
亡くなった方に配偶者がいる場合、配偶者は常に相続人であり、子どもは第1順位の法定相続人になります。
遺言がない場合は法定相続分を目安に遺産を分けますが、相続人が配偶者と子ども2人であれば次のような相続割合になります。
- ・配偶者の法定相続分:財産の1/2
- ・子どもの法定相続分:財産の1/2(2人いるのでそれぞれ1/4)
子どもの法定相続分は1/2ですが、2人の場合は1/4、3人いれば1/6というように子ども同士で等分します。
なお、法定相続分はあくまでも目安であり、相続人同士の話し合い(遺産分割協議)で全員が同意すれば配分の変更も可能です。
父の再婚相手と前妻の子が相続人の場合
再婚後に父親が亡くなった場合、前妻との間に子がいれば父の再婚相手と前妻の子が相続人になり、法定相続分は以下のようになります。
- ・父の再婚相手の法定相続分:財産の1/2
- ・前妻の子の法定相続分:財産の1/2(複数いる場合は等分する)
実の父親が新たな伴侶とともに暮らすことは親族にとって望ましい状況といえますが、遺産相続においては取り分を侵害される結果となります。
父親が再婚しなければ第1順位の相続人である前妻の子が100%相続できたので、父の再婚相手と前妻の子は利益相反関係にあるといえるでしょう。
父の再婚相手に連れ子がいた場合の相続
熟年再婚では父の再婚相手に連れ子がいるケースも多く、場合によっては連れ子が相続権を持つこともあります。
本来、連れ子には実親の相続権しかありませんが、養子縁組をすれば母親の再婚相手は養親となり、連れ子は養親の法定相続人になります。
仮に前妻の子が2人、父の再婚相手に連れ子が2人いたとすると、相続割合は以下のようになります。
- ・父の再婚相手の法定相続分:1/2
- ・連れ子(養子)の法定相続分:1/4(2人いるのでそれぞれ1/8)
- ・前妻の子の法定相続分:1/4(2人いるのでそれぞれ1/8)
連れ子が相続人になると前妻の子の相続分は大きく変わるため、養子縁組については慎重に検討する必要があるでしょう。
父が遺言書を残していた場合
遺言には法的な強制力があり、亡くなった方の最後の意思表示として尊重されるため、父親が遺言を残していれば原則として遺言に従います。
ただし相続人と受遺者(遺言により遺産を譲り受ける人)全員の合意があれば、遺産分割協議への切り替えも可能です。
もし「再婚相手に全財産を渡す」など、前妻の子の相続権を無視した遺言内容であれば、実子としては到底納得できないでしょう。
しかしこのようなケースで受遺者(父の再婚相手)の同意を得ることは難しく、話し合いを行っても決着しない場合が殆どです。
自分の相続分が侵害されている場合は「遺留分減殺請求」によって一定額を取り戻せるため、後ほど詳しく解説します。
父の再婚によって起きる相続トラブル例
一般的な相続の場合、相続人が増えることで相続税の負担軽減になりますが、父の再婚相手が加わる場合は事情が異なります。
配偶者の権利は手厚く保障されており、立場的にも前妻の子より父の再婚相手に優位性があるため、前妻の子に不利益が生じることもあります。
では父親の再婚によってどのようなトラブルが生じるか、具体例を見てみましょう。
父の再婚相手に財産の半分が渡る
配偶者は常に相続人となるため、父の再婚相手には最低でも財産の1/2が保障され、前妻の子(実子)の取得分は減少します。
しかし法律で定められているとはいえ心情的には納得できず、父の再婚相手と前妻の子が敵対関係になるケースもよくあります。
父親が高齢となり、いつ相続が起きてもおかしくない状況であれば、将来の相続人と父親双方で連絡を取り合うことも必要でしょう。
実子に不利な遺言内容になっている
人生の終焉を世話してくれた後妻に多くの財産を残したいと考える方は多いようです。
前妻の子が成人し経済的にも自立していれば、「子どもは自立しているから大丈夫。
しかし後妻の老後が心配」と考えるのは自然な流れです。
しかし財産全てを後妻に譲るなど、偏った遺言を残した場合は大きなトラブルに発展する可能性が高いので注意が必要です。
もし再婚相手が相続する財産に自宅も含まれていた場合、子どもは実家を失うことになります。
金銭的な利害もありますが、実家が他人の手に渡ることに抵抗感のない人は少なく、精神的なダメージを負う場合もあるでしょう。
要件を満たした遺言は偏った内容でも成立するため、再婚相手を優先しすぎると実子の取り分を侵害してしまいます。
遺言を残す際には、死亡後のトラブルを想定した遺産配分を考えておくべきでしょう。
遺産分割協議が難航する
遺言がなく、相続人同士で遺産分割協議する場合、父の再婚相手と前妻の子では話し合いがまとまらず長期化するケースが多いようです。
特に分割できない自宅などの不動産が主な財産の場合、相続人の間で自宅争奪戦が繰り広げられることもあります。
遺産分割協議の成立には相続人全員の同意が必要なため、話し合いが決着しなければ各種相続手続きができないなどさまざまな弊害も生じます。
相続人全員の同意がなければ預貯金の解約にも応じてもらえず、不動産の場合は法定相続分に応じた共有状態になります。
共有不動産の固定資産税は共有者全員で負担(連帯債務)しますが、相続人同士に確執があれば支払いに関するトラブルも生じるでしょう。
また共有状態が長引くと次の相続が発生し、共有者が雪だるま式に増えていくため解決はさらに困難となります。
高額な相続税を支払う場合もある
相続税が発生する場合「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」を使えば税負担の軽減または非課税相続も可能です。
配偶者の税額軽減では1億6千万円、または配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額まで相続税はかかりません。
小規模宅地等の特例では、一定条件を満たすと自宅の相続税評価額が8割引き(330㎡まで)になります。
しかし相続人が確定していない未分割状態であれば、相続税申告の際に各種特例が使えません。
未分割のまま申告し、後日「更正の請求」を行うこともできますが、遺産分割協議が決着した場合に限られます。
遺産分割の話し合いがまとまらなければ、父の再婚相手、前妻の子双方に不利な状況となるでしょう。
遺言書があっても遺留分侵害額請求権は使用できる
一定の相続人には遺留分侵害額請求権があり、父の再婚相手が全財産を相続するなど不利な遺言であっても、前妻の子は遺留分を取り戻せます。
遺留分は兄弟姉妹を除く法定相続人に保障される最低限の取り分であり、権利者と遺留分の割合は以下のようになっています。
- ・配偶者と直系卑属(子や孫)の遺留分:法定相続分の1/2
- ・直系尊属(父母や祖父母)の遺留分:法定相続分の1/3
遺留分は「遺留分減殺請求」の意思表示によって取り戻すことができ、一般的には内容証明郵便で父の再婚相手に通知します。
ただし遺留分減殺請求は金銭債権に限られるため、不動産の所有権などは請求の対象外となります。
父の再婚による相続トラブルを回避する方法
相続の際には相続人それぞれの思い入れが交錯し、トラブルが発生すると円満解決は難しくなります。
財産の所有者がいなくなるとさまざまな問題が一気に表面化するため、トラブル回避には父親の意思表示が重要になるでしょう。
生前にできるトラブル回避策には以下のようなものがあるので、対応可能なものはぜひ実践してください。
養子縁組は慎重に検討する
再婚相手の連れ子と養子縁組すれば、養子も第1順位の相続人となるため前妻の子の相続分は減少します。
普通養子縁組であれば養子は養親と実親両方の相続権があるので、前妻の子(実子)に遺産を多く残す場合は養子縁組しない選択肢もあります。
生命保険を活用する
受取人を指定できる生命保険は遺産分割協議が必要ないため、遺産配分にアンバランスが生じる場合は前妻の子を受取人にするとよいでしょう。
主な財産が自宅家屋と敷地の場合は、生命保険の活用もおすすめです。
遺言書を残す
相続発生後のトラブルが想定される場合は遺言書を残すようにしてください。
相続人全員の要望を叶えることは不可能かもしれませんが、遺言書があることで財産の帰属先も明らかになり相続が決着します。
遺言書については法的に有効であることが証明される公正証書遺言をおすすめします。
隠し財産の存在を明らかにする
再婚した父親の財産は後妻の管理下にあり、前妻の子には不透明な状況になっています。
財産内容の詳細がわからなければ「父の再婚相手が隠しているのではないか」との疑いから確執も生じます。
遺言書を作成する場合は同時に財産目録も作成し、遺産の内容や状況がわかるようにしてください。
遺産相続時に隠し財産を調査する方法
父親の隠し財産が想定される場合は銀行や法務局、役場などで調査を行ってください。
銀行口座については相続人の請求による残高証明や取引履歴の発行が可能なので、利用していたと推測される銀行で手続きを依頼してください。
不動産の場合は法務局で登記事項証明書を取得できますが、地番や家屋番号が必要となります。
権利証や納税通知書から地番や家屋番号を確認し、役場の担当窓口で名寄せ帳(固定資産課税台帳)を取得すれば不動産すべてを確認できます。
また負債内容によっては相続放棄の検討も必要なため、通帳の明細や金融機関からの郵便物なども調べておくとよいでしょう。
まとめ
一般的な相続でも、親という抑止力がなくなった途端に揉め事が発生する場合もあり、再婚であればさらに問題はエスカレートするでしょう。
問題が発生している相続は決着しないまま長期化するケースが多いため、孫の世代にまで引き摺ってしまう可能性もあります。
父の再婚相手と前妻の子が揉めないためには、父親がどのような相続対策を行うかが重要となります。
しかし良かれと思った対策が裏目に出ることもあるため、専門家の意見を聞いておくべきでしょう。
トラブルが想定されるようであれば、相続に詳しい弁護士や司法書士、税理士のアドバイスを受けるようにしてください。
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