この記事でわかること
- 遺族年金を受給できる年齢
- 遺族年金の受給要件
- 遺族年金の受給期間
- 遺族年金の受給金額
- 遺族年金の受給権がなくなるケース
- 遺族年金の受給手続の流れ・必要書類
遺族年金は、老齢年金と異なり、支給が開始される時点での対象者の年齢が一定ではありません。
また、被保険者の死亡時点で対象者が一定の年齢に達しているか、達していないことが条件となっています。
さらに、遺族基礎年金と遺族厚生年金の間でも要件が異なっています。
このため、遺族年金は何歳から何歳までもらえるのか、あるいは年齢制限がないのかがわかりにくいと思う方が多いのではないでしょうか。
今回は、遺族年金を「誰が、何歳から何歳までもらえるか」について、受給金額や受給手続などとあわせて解説します。
遺族年金を受給できる年齢とは?
遺族年金を受給できる年齢は、受給者によって制限がない場合と、制限がある場合とにわかれます。
遺族基礎年金
遺族基礎年金の場合は、配偶者と子で制限の有無が異なります。
配偶者が受給する場合
被保険者の配偶者が受給する場合、配偶者自身の年齢には制限がありません。
ただし、受給するには次に述べる子と生計を同一にしていることが条件となるため、子の年齢による条件があります。
子が受給する場合
被保険者の子が受給する場合は、「出生時~18歳になった年度の3月31日を迎える前(障害年金の障害等級1級・2級に該当する場合は20歳の誕生日を迎える前)」という制限があります。
遺族厚生年金
遺族厚生年金の場合、被保険者の妻・夫・父母及び祖父母・子及び孫でそれぞれ制限の有無や対象年齢が異なります。
妻が受給する場合
被保険者の妻が受給する場合は、妻自身の年齢には制限がありません。
制限が設けられているのは、後述する30歳未満で子のない妻である場合の「受給期間(5年間)」です。
夫が受給する場合
被保険者の夫が受給する場合、受給要件として妻が死亡した時点で55歳以上であることが必要です。
ただし、受給開始は60歳からとなります。
なお、遺族基礎年金を受給できる場合に限り、55歳~59歳の間も受給できます。
父母及び祖父母が受給する場合
被保険者の父母または祖父母が受給する場合、被保険者が死亡した時点で55歳以上であることが必要です(受給開始は60歳からとなります)。
子または孫が受給する場合
被保険者の子または孫が受給する場合は、遺族基礎年金と同様、「出生時~18歳になった年度の3月31日を迎える前(障害等級1級・2級該当の場合は20歳の誕生日を迎える前)」という制限があります。
なお、子の父または母が遺族厚生年金を受給している場合は、子は支給対象外となります。
遺族年金とは
遺族年金とは、国民年金または厚生年金の被保険者(または被保険者であった人)が亡くなった時に、被保険者の配偶者や子など、被保険者によって生計を維持されていた遺族に支給される年金をいいます。
遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があります。
遺族年金のしくみは老齢基礎年金と同じように、2階建てのしくみになっています。
遺族基礎年金
遺族基礎年金(国民年金法第15条3号、第37条~第42条)とは、国民年金の被保険者または被保険者であった方(主に自営業者は第1号被保険者、会社員や公務員は第2号被保険者、第2号 被保険者の被扶養配偶者は第3号被保険者となります。)が死亡したときに、18歳到達年度の末日(3月31日まで。障害年金1級または2級を受給している場合は20歳まで)の子がいる場合に、配偶者または子に対して支給される年金です。
遺族基礎年金は、2階建ての1階部分にあたります。
遺族厚生年金
遺族厚生年金(厚生年金保険法第32条3号、第58条~第68条)は、会社員や公務員として厚生年金に加入している(加入していた)被保険者が死亡した際に遺族に支給される年金です。
遺族厚生年金は、2階建ての2階部分にあたります。
遺族年金の受給要件
遺族年金を受給するためには、被保険者(亡くなった方)と対象者がそれぞれ所定の要件を満たしていることが必要です。
ここでは、遺族年金を受給するために必要な被保険者・対象者双方の要件をご説明します。
遺族基礎年金
遺族基礎年金の受給要件は、以下の通りです。
被保険者(亡くなった方)の要件
まず、被保険者が以下の1・2・3のいずれかに該当する必要があります。
- 国民年金の被保険者であること
- 国民年金の被保険者であった方で、日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の方であること
- 受給資格期間(被保険者期間)が25年以上あること
このうち1及び2に該当する場合は、次の「保険料納付要件」を満たす必要があります。
【保険料納付要件】
イ 死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの被保険者期間に、以下の期間が3分の2以上あること
- 国民年金の保険料納付済み期間及び免除期間
- 厚生年金保険の被保険者期間
- 共済組合の組合員期間
ロ 死亡日が2026年3月31日までの場合は、亡くなった方が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未払いがないこと
3に該当する場合は、上記の保険料納付要件は問われません。
対象者側(受け取る方)の要件
対象者側は、以下に該当する必要があります。
- 18歳になった年度の3月31日を迎える前の子のある配偶者
- 18歳になった年度の3月31日を迎える前の子
なお、子については、いずれも障害年金の障害等級1級または2級に該当する場合は20歳未満であることが要件です。
1に該当する配偶者が遺族基礎年金を受け取っている期間、または子と生計を同じくする父または母がいる間は、子は遺族基礎年金の支給対象外となります。
遺族厚生年金
遺族厚生年金の受給要件については、特に対象者側の要件(受給資格)に優先順位が設けられているなど、複雑になっているため注意が必要です。
被保険者(亡くなった方)の要件
被保険者の要件は、次の1~5のいずれかを満たしている場合となります(厚生年金保険法第58条1項)。
- 厚生年金保険の被保険者である場合に死亡した場合
- 厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で、初診日から5年以内に死亡した場合
- 1級・2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている方が死亡した場合
- 老齢厚生年金の受給権者であった方(老齢厚生年金を受給中の方)が死亡した場合
- 老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡した場合
上記の1及び2に該当する場合については、さらに以下の保険料納付要件を満たす必要があります。
【保険料納付要件】
- 死亡日の前日において、保険料納付済み期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あること(厚生年金保険法第58条1項但書)
- 死亡日が2026年3月31日までの場合は、死亡した方が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと
また、4及び5に該当する方については、以下の期間を合算した期間が25年以上ある方に限られます(厚生年金保険法第58条1項4号)。
- 保険料納付済み期間
- 保険料免除期間
- 合算対象期間
ここでの合算対象期間とは、年金の受給資格期間を計算する場合に「期間の計算にはカウントされるが、年金額には反映されない期間」を指します。
合算対象期間の例(いずれも20歳以上60歳未満の期間)
- 1986年3月以前に、国民年金に任意加入できる人が任意加入しなかった期間
- 1991年3月以前に、学生であるため国民年金に任意加入しなかった期間
- 1961年4月以降海外に住んでいた期間
- 上記のいずれかで、任意加入を行ったが保険料が未納になっている期間
対象者側(受け取る方)の要件
遺族厚生年金は、被保険者に生計を維持されていた以下の遺族のうち、最も優先順位が高い方が受給できます。
優先順位は、以下のように定められています(厚生年金保険法第59条)。
- 子のある配偶者
- 子(18歳になった年度の3月31日まで、または20歳未満で障害年金の障害等級1級・2級に該当する場合)
- 子のない配偶者
- 父母
- 孫(18歳になった年度の3月31日まで、または20歳未満で障害年金の障害等級1級・2級に該当する場合)
- 祖父母
それぞれの対象者には、以下のような注意点があります。
2について: 子のある妻、または子のある55歳以上の夫が遺族厚生年金を受給している間は、子は支給対象外となります。
3 子のない配偶者の受給要件について
子のない30歳未満の妻:5年間のみ受給できます。
子のない夫:被保険者死亡時点で55歳以上の方が受給対象となります。
ただし受給開始は60歳からとなります(遺族基礎年金を受給できる場合に限り、55歳~59歳の間受給可)。
4、5 父母または祖父母の場合、被保険者死亡時点で55歳以上の方が受給対象となります(受給開始は60歳から)
遺族年金を受給できる期間
次に、遺族年金を受給できる期間についてご説明します。
遺族基礎年金の受給期間は、以下のように画一的に定められています。
これに対して、遺族厚生年金の受給期間は、被保険者または被保険者であった方が亡くなった時点での対象者の年齢や子どもの有無などの条件によって異なります。
遺族基礎年金
遺族基礎年金の受給期間は、子どもが18歳に到達する年度の末日(3月31日)まで(障害等級1級・2級の認定を受けた子の場合は20歳を超えるまで)です。
遺族厚生年金
遺族厚生年金の受給期間のうち、支給開始時期については「被保険者が死亡した日の翌月」で共通しています。
これに対して、終期(いつの時点までか)については、受給者によって異なります。
「妻」「夫・父母・祖父母」「子・孫」のそれぞれの場合に分けてご説明します。
妻が受給する場合
子がいる妻、または被保険者(夫)の死亡時点で30歳以上の妻の場合、夫が亡くなった翌月から、原則として生涯にわたり受給できます。
ただし、再婚した場合は受給資格を失います。
30歳未満で子がいない妻の場合、夫が亡くなった月の翌月から原則として5年間受給できます。
この場合も、受給期間内に再婚した場合は受給資格を失います。
夫・父母・祖父母が受給する場合
被保険者の夫・父母・祖父母が受給する場合は、被保険者が亡くなった時点で55歳以上の場合に限り、60歳から一生涯受給できます。
ただし、遺族基礎年金を受給中の子がいる夫の場合は、60歳未満でも受給できます。
子・孫が受給する場合
被保険者の子・孫が受給する場合は、被保険者が亡くなった月の翌月から、18歳になる年度末まで(障害等級1級・2級の場合は20歳まで)受給できます。
遺族年金の受給金額
遺族年金の受給金額についても、遺族基礎年金が画一的に定められているのに対して、遺族厚生年金では個別に異なります。
それぞれについてご説明します。
遺族基礎年金の受給額
遺族基礎年金の受給額は、子の人数によって異なります。
2024年度の遺族基礎年金の受給額は、一律81万6,000円です(1956年4月1日以前生まれの方の場合は81万3,700円)。
この額に、子が2人までは1人あたり23万4,800円、3人目以降は1人あたり78,300円が加算されます。
遺族基礎年金(2024年4月~) = 816,000円+子の人数加算
遺族の家族構成 | 遺族基礎年金の年間支給額 |
---|---|
配偶者のみ | なし |
配偶者+子1人 | 105万800円 |
配偶者+子2人 | 128万5,600円 |
配偶者+子3人 | 136万3,900円 |
遺族厚生年金の受給額
遺族厚生年金の受給額は、家族構成別に異なります。
ただし、おおよその目安として「被保険者の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3相当額」といえます。
つまり、65歳から支給される老齢厚生年金の受給額のおおむね4分の3が遺族厚生年金の受給額となります。
したがって、遺族厚生年金の受給額を調べる上で、ねんきん定期便の「老齢厚生年金の報酬比例部分」の記載が役立ちます。
また、受給者自身に老齢厚生年金(老齢共済年金)の受給資格がある場合は、次の1と2を比較して金額が多い方が遺族厚生年金の受給額となります。
- 被保険者の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額
- 「上記1の3分の2」と「本人の老齢厚生年金(退職共済年金)の受給額の2分の1」の合計額
遺族年金の受給権がなくなるケース
遺族年金の受給権(受給資格)がなくなるケース(資格喪失事由)として、以下の場合が挙げられます。
遺族基礎年金の受給権がなくなるケース
遺族基礎年金の資格喪失事由に該当した場合は、その事由が生じた日から14日以内に「遺族年金失権届」の提出が必要です。
受給権者 | 受給権がなくなる場合 |
---|---|
妻 |
1.受給者本人が次のいずれかに該当するとき
2.遺族基礎年金の受給権を持つすべての子が次のいずれかに該当したとき
|
夫 | 受給権者が妻の場合と同一 |
子 | 受給権者が妻の場合の2と同一 |
遺族厚生年金の受給権がなくなるケース
遺族厚生年金の資格喪失事由に該当した場合は、その事由が生じた日から10日以内に「遺族年金失権届」の提出が必要です。
受給権者 | 受給権がなくなる場合 |
---|---|
妻 |
受給権者本人が次のいずれかに該当するとき
※4・5は2007年4月1日以降に夫が亡くなった場合に限られる |
夫 | 受給権者が妻の場合の1~3と同一 |
子 | 遺族基礎年金の「子」の場合と同一 |
父母 |
受給権者本人が次のいずれかに該当するとき 1~3については受給権者が妻の場合と同一
|
孫 | 遺族基礎年金の「子」の場合と同一 |
祖父母 |
1~3・5については受給権者が父母の場合と同一
|
遺族年金の受給手続の流れ・必要書類
ここでは、遺族年金の受給手続きの流れと必要書類をご説明します。
遺族年金の受給手続・必要書類は、年金請求書の書式が異なる以外はほぼ共通しています。
遺族年金の受給手続の流れ
遺族年金の受給手続は、以下の流れで行います。
- 年金請求書を取得して記入する
- 年金請求書に添付する書類を用意する
- 書類を提出する
年金請求書は、年金事務所や年金相談センターの窓口に備え付けられています。
また、日本年金機構のホームページからダウンロードすることもできます。
年金請求書及び添付書類は、最寄りの年金事務所または年金相談センターに提出してください。
書類提出後、2カ月以内に「年金証書」などの書類が自宅宛てに届きます。
その1~2カ月後の偶数月から、指定口座に2カ月分の年金が振り込まれます。
遺族年金の受給手続の必要書類
遺族年金の受給手続では、年金請求書と一緒に、受給資格を満たしていることを証明する書類を提出します。
必ず提出を求められる書類は以下の通りです。
書類 | 備考 |
---|---|
年金手帳または基礎年金番号通知書 | 提出できないときは理由書が必要 |
戸籍謄本(記載事項証明書) または法定相続情報一覧図の写し |
受給権発生日(年金加入者が死亡した日)以降で提出日から6カ月以内に交付されたもの |
世帯全員の住民票の写し※ | 受給権発生日以降で提出日から6カ月以内に交付されたもの |
死亡者の住民票の除票 | 世帯全員の住民票の写しに含まれている場合は不要 |
請求者の収入が確認できる書類※ | 所得証明書、課税証明書または非課税証明書、源泉徴収票など |
子どもの収入が確認できる書類※ |
中学生以下は不要 高校以上の学校に在学中の場合は、在学証明書または学生証のコピー |
役所に提出した死亡診断書のコピーまたは死亡届の記載事項証明書 | 死亡の事実・死亡日などの確認のため |
請求者(遺族)名義の年金受取先金融機関の通帳など | 請求書に金融機関の証明を添付した場合は不要 |
請求者の印鑑 |
※の書類は、年金請求書に個人番号(マイナンバー)を記入することにより添付を省略できます。
また、死亡の原因が事故であった場合には、以下の書類が必要です。
書類 | 備考 |
---|---|
第三者行為事故状況届 | 所定の様式 |
交通事故証明または事故の状況が確認できる書類 |
都道府県の交通安全センター 事故証明が取れない場合は事故内容・状況がわかる新聞の写しなど |
確認書 | 所定の様式 |
(被害者に被扶養者がいる場合) | 扶養していたことがわかる書類 源泉徴収票、健康保険証の写し(保険者番号・記号・番号 |
損害賠償金の算定書 | すでに損害賠償金が決定済みの場合は受領額がわかるもの(示談書等) |
その他、個別に提出が必要な書類があります(他の年金を受給している場合の当該年金証書など)。
まとめ
遺族年金には、子のいる配偶者または子が受給できる遺族基礎年金と、子の有無にかかわらず受給できる遺族厚生年金の2種類があります。
受給できる年齢でみた場合、遺族基礎年金は子どもが受給する場合の終期、遺族厚生年金は夫・父母・祖父母の始期と子ども・孫が受給する場合の終期については明確に定められています。
大黒柱を失った家庭の支えとして心強い制度である遺族年金ですが、妻が優遇されている現在の制度を見直す動きがある他、遺族年金自体が廃止される可能性もあるなど、近い将来大きな変化が見込まれています。
制度や支給金額についてなど、わからないことがあれば年金事務所や年金相談センターに聞いてみましょう。
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