任意後見制度にかかる総費用と月額の内訳と相場まとめ

財産所有者の判断能力が認知症などの理由で低下すると、預貯金をはじめとする財産管理や各種契約の締結といった法律行為が難しくなってしまいます。

そのようなリスクに備えるための対策方法の一つが、任意後見制度です。

この記事では、任意後見制度の概要はもちろんのこと、任意後見制度を利用する際の費用についても詳しく解説します。

任意後見制度とは

任意後見制度とは、判断能力に不安がある人の意思決定を支援する成年後見制度の1つです。任意後見制度の他、家庭裁判所の審判を経て後見人等を選任する法定後見制度があります。

任意後見制度の特徴は委任者の判断能力があるうちに、本人の意思によって後見人を定め、その後見人が行う職務の内容などを契約で定められることです。

委任者の判断能力が低下して初めて家庭裁判所への申立てが可能となる法定後見制度とは異なり、任意後見制度を利用するためには、本人の判断能力が低下する前に後見人をお願いしたい人と契約を締結する必要があります。

判断能力が不十分になる以前に任意後見契約を締結しておき、委任者の判断能力が低下してきたら後見人が実際に職務を始めます。

任意後見制度では、契約で定める権限内容が本人と後見人にとって非常に大きな意味を持つため、慎重に契約する必要があります。

任意後見制度の【契約・申立時】にかかる費用

任意後見制度を利用するためには、任意後見契約の締結が不可欠です。

この任意後見契約は、「誰が後見人になるのか」「後見人が何をしなければならないのか」といった事柄を定める契約です。

任意後見監督人が選任されて任意後見契約の効力が発生すると、本人や後見人が亡くなったり、破産したりするまで続きます。
契約の解除も出来ますが、正当な事由がある場合に限られ、家庭裁判所の許可が必要になります。
そのため、契約の際には慎重に内容を決めなければなりません。

任意後見契約書の作成にかかる費用

任意後見契約を締結する際には、公正証書による契約書の作成が必須です。

いくら法的に問題がない契約書であっても、任意後見制度では私文書の契約書は認められていません。公正証書になっていなければ任意後見契約としての効力はないため、公証役場で公証人に手数料を支払い、作成してもらう必要があります。

任意後見契約の公正証書を作成するための手数料は、契約１つにつき１万1,000円、登記嘱託手数料として1,400円、印紙代として2,600円、郵便切手代として600円程度の費用がかかります。

原本超過枚数加算や正本謄本の作成手数料などの費用も発生し、１枚あたり250円です。したがって、任意後見契約の契約書を公正証書で作成するには、計２万円程度の費用がかかります。

なお、依頼者が自分で最寄りの公証役場に行けない場合、公証人の出張依頼も可能です。依頼した場合、日当を１日あたり２万円、４時間以内の場合は１万円ほどを支払う必要があるうえに、現地までの移動にかかった旅費は実費で負担しなければなりません。

任意後見契約の文面の作成を依頼する費用

任意後見契約の契約書の文面は、一度契約が成立すると後から容易に変更できません。契約を後から変更する場合、変更したい内容によってはもう一度契約を結び直す必要があります。

そこで、後から問題が生じないよう、専門家である弁護士に任意後見契約書の作成および内容の確認を依頼するのも有効です。弁護士ごとに費用は大きく変わりますが、20万円程度が一つの目安と言えます。

ただし、任意後見契約の内容や財産の状況、後見人との関係などによっては、その費用が高くなる場合もあるため、注意しましょう。

任意後見制度の【成立後】にかかる月額費用

任意後見契約の締結後、実際に契約の効力が発生するときにいくつか費用が生じます。

ここからは、任意後見契約の効力が発生するときに生ずる費用の種類と相場を解説します。

任意後見人に対する月額報酬

任意後見人は任意後見契約により定められ、法定後見制度とは異なり家庭裁判所の審判により選任されるのではありません。

したがって、同居する家族など、委託者ときわめて近い関係にある人を任意後見人とするケースが多いです。

また、任意後見人に対する報酬に関する取り決めを、任意後見契約で定める必要があります。金額の決定方法は任意で、委任者と任意後見人の間で取り決めれば無報酬とすることも可能です。

しかしながら、専門家に任意後見人となることを依頼する場合は、報酬の支払いが発生します。報酬の金額は専門家ごとに自由に決定できるため、一律でいくらと決まっているわけではありません。

専門家が任意後見人となった場合の平均的な報酬の金額は、管理する財産の金額が1,000万円以下の場合は月額２万円、1,000万円超5,000万円以下の場合は３～４万円程度です。

そのため、専門家を任意後見人とした場合は、年間で24～48万円程度の報酬となる傾向にあります。

任意後見監督人に対する月額報酬

前述のように任意後見人に対する報酬は、家族などが後見人となれば無報酬とすることもできます。

しかし、任意後見監督人は、任意後見人自身や近い親族がなることはできません。弁護士をはじめとする第三者が選任されるため、報酬を支払う必要が生じるのです。

任意後見監督に対する報酬額は家庭裁判所が決定し、相場金額が公表されています。管理する財産の額が5,000万円以下である場合は、月額１～２万円くらいが目安です。

年間で12万円以上かかると考えると、少なくない費用負担が生じると言えます。

任意後見制度の費用に関するよくある質問集

ここからは、任意後見制度の費用に関する質問集を紹介します。

「任意後見の報酬に助成があるか」や「費用が払えない場合」などについて解説しているため、ぜひ参考にしてください。

任意後見の報酬は助成されますか？

任意後見制度には助成金がないため、後見人の報酬は基本的に被後見人の財産で全額を負担します。

任意後見が始まった場合、原則として本人が亡くなるまで任意後見報酬が発生するため、一定額の財産が必要です。

なお、法定後見制度には助成金があり、以下の費用の一部や全額を各自治体が負担する場合があります。

法定後見制度の利用時に助成金の支援が必要なときは、最寄りの役場の担当窓口に相談してみましょう。

後見人の費用が払えない場合はどうすればいいですか

被後見人の財産から報酬などの費用を支払えなくなった場合は、親族などの関係者が負担することになります。

この際、成年後見人の選任申し立て時に「費用負担命令」を併せて申し立てておくと、家庭裁判所が認めた場合に限り、後見人は被後見人以外の人に費用を請求できます。

ただし、費用負担命令による支払いには専門家への費用が含まれていないため、自己負担しなければなりません。

被後見人や家族の財産が不足する可能性がある場合は、各自治体の支援制度を利用してみましょう。

任意後見制度の費用などの相談は行政書士などの専門家がおすすめ

認知症などのリスク対策をしつつ財産の管理や処分を適切に行うためには、任意後見制度の利用は非常に大きな意味を持つでしょう。

被後見人の判断能力が十分なうちに、任意後見契約を結んでおくことで、将来起こりうる不測の事態にも安心して対応できます。

任意後見制度に関する疑問が生じた場合は、行政書士をはじめとする専門家への相談もおすすめです。

制度内容をはじめとする疑問の解消に向けて、ぜひご相談ください。

相続専門税理士の無料相談をご利用ください

ご家族の相続は突然起こり、何から手をつけていいか分からない方がほとんどです。相続税についてはとくに複雑で、どう進めればいいのか？　税務署に目をつけられてしまうのか？　疑問や不安が山ほど出てくると思います。

我々ベンチャーサポート相続税理士法人は、相続人の皆さまのお悩みについて平日夜21時まで、土日祝も休まず無料相談を受け付けております。

具体的なご相談は無料面談にて対応します。弊社にてお手伝いできることがある場合は、その場でお見積り書をお渡ししますので、持ち帰ってじっくりとご検討ください。

対応エリアは全国で、オフィスは東京、埼玉、千葉、横浜、名古屋、大阪、神戸の主要駅前に構えております。ぜひお気軽にお問い合わせください。