この記事でわかること
- 主な投資信託の種類がわかる
- 投資信託の相続税評価額の計算方法がわかる
- 投資信託の相続税評価をするときの注意点がわかる
投資信託は少額かつ積立方式で購入できるため、身近な投資方法として根強い人気があります。
国内外の株式や債券、不動産や通貨なども投資対象であり、専門家によって分散投資されるので、効率的な運用も可能です。
専門知識がなくてもスタートできますが、将来的には相続財産として家族に引き継ぎされるため、相続税対策を考えておく必要もあるでしょう。
投資信託の評価は少し複雑な印象もありますが、種類(商品)別の評価方式がわかれば誰でも相続時の価値を計算できるようになります。
今回は投資信託の相続税がいくらになるか、種類別の評価方法をわかりやすく解説します。
目次
投資信託の相続税評価方法は種類によって異なる
投資信託を購入していた人が亡くなると、受益証券が相続財産になるため、種類別(商品別)に相続税評価額を計算します。
一般的な投資信託には以下のような種類があり、相続税評価額には決算日も関係するので、まずどれに該当するか調べておきましょう。
- (1)証券投資信託(MRFや外貨建てMMFなど)
- (2)上場投資信託(ETF)
- (3)上記(1)(2)以外の証券投資信託
- (4)不動産投資信託(J-REIT)
MRF(マネー・リザーブ・ファンド)や外貨建てMMF(マネー・マネジメント・ファンド)は毎日決算ですが、ETFやJ-REITは年1~4回など商品によってさまざまです。
では次に、投資信託の種類を確かめる方法をみていきましょう。
投資信託の種類を確かめる方法
金融機関や証券会社から送付される取引残高報告書を見ると、残高明細の部分で決算日がわかります。
MRFや外貨建てMMFは毎日決算が行われ、作成日の数量(口数)や評価額が記載されています。
株式が対象の投資信託であれば、インターネットで商品名(銘柄名)を検索し、上場されていれば上場投資信託となります。
なお、取引残高報告書がなければ金融機関等に取引残高証明書を請求できますが、請求は相続人や遺言執行者、相続財産管理人に限られるので注意してください。
投資信託の種類はかなり多いので、判断が難しいときは金融機関や証券会社に問い合わせましょう。
投資信託の相続税評価額の計算方法
投資信託を相続したときは、相続発生日に解約や買取請求した場合の支払額で価値を評価します。
具体的な評価方法は投資信託の種類によって変わるので、次の計算式を参考に相続税評価額を算出してください。
日々決算型の証券投資信託の評価方法
投資信託の種類がMRFや外貨建てMMFなどの日々決算型であれば、相続税評価額は以下のように計算します。
日々決算型の投資信託の評価方法
1口あたりの基準価格×口数+再投資されていない未収分配金-信託財産留保額および解約手数料
計算式に使う各要素は以下の点に留意してください。
- 1口あたりの基準価格:取引残高報告書などで確認(一般的に1口1円)
- 再投資されていない未収分配金:源泉所得税等を控除しておく
- 信託財産留保額および解約手数料:消費税を含めて計算
未収配分金がなく解約手数料等もかからない場合、相続発生時の口数が500万であれば、以下のように計算します。
計算例
相続税評価額
1円×500万+0円-0円=500万円
外貨建てMMFは日本円に換算する
外貨建てMMFの相続税評価額については、相続発生日の為替レートで日本円に換算しますが、基本的に電信買相場(TTB)を用いた換算になります。
外貨建てMMFの評価方法
1口あたりの基準価格×口数×相続発生日の最終為替レート+再投資されていない未収分配金-信託財産留保額および解約手数料
なお、相続発生日に為替の動きがなかった場合(祝日など)は、課税時期(相続発生日)にもっとも近い日の基準価格で計算します。
上場投資信託の評価方法
投資信託の種類がETFなどの上場投資信託であれば、以下4つのうちもっとも低い価額が相続税評価額になります。
- 相続発生日の終値
- 相続発生日の属する月の毎日の終値の月平均額
- 相続発生日の属する月の前月の毎日の終値の月平均額
- 相続発生日の属する月の前々月の毎日の終値の月平均額
相続発生日に終値がない場合、原則として前後のもっとも近い日の終値となり、2ヶ所以上に上場されている場合も低い方の金額を選択できます。
その他の証券投資信託の評価方法
日々決算型や上場投資信託以外の投資信託であれば、以下のように相続税評価額を計算します。
その他の証券投資信託の評価方法
1口あたりの基準価格×口数-相続発生日に解約等した場合の源泉徴収所得税額等-信託財産留保額および解約手数料(消費税含む)
基準価格の単位が1万口になっている場合は、口数を1万で割ってください。
また、源泉徴収所得税は含み益に20.315%を乗じて税額計算します。
口数500万、含み益30万円、信託財産留保額が基準価格の0.3%だった場合、相続税評価額は以下のようになります。
計算例
相続税評価額
1円×500万-(30万円×20.315%)-(500万円×0.4%)=491万9,055円
不動産投資信託(J-REIT)の評価方法
不動産投資信託は上場投資信託と同じく、相続発生日の終値または相続が発生した月の平均月額などから、もっとも低い価額を相続税評価額とします。
東京証券取引所だけの上場なので、2ヶ所以上の取引所を考慮する必要はありません。
なお、主に機関投資家が対象となる私募REITの場合、非上場であれば純資産価額や配当利回り、キャッシュフローなどを考慮するため、決算情報も必要になります。
投資信託の相続税評価をするときの注意点
投資信託の評価額は常に変動しているので、遺産分割のタイミングによっては損する可能性があります。
また、相続税以外の税金が課税されるケースもあるので、次のような点に注意してください。
相続税評価額は必ず計算しておく
投資信託の評価方法を種類別に解説したところですが、取引残高報告書などの見方がわからなければ計算ミスを引き起こしてしまいます。
計算ミスは誤った相続税申告に繋がるため、少々手間でも必ず相続税評価額を計算するようにしてください。
信託財産留保額などわかりにくい項目があれば、金融機関や証券会社に問い合わせるか、税理士に評価を依頼しておきましょう。
運用成績で価値が変動する
投資信託は株価や為替の影響を受けるため、運用成績によって基準価額が変動します。
相続発生日は1,000万円の評価額でも、投資信託を取得した日の評価が700万円だった場合、預貯金などを相続した人との間に大きな価格差が生じてしまいます。
従って、投資信託を現金化して遺産分割するなど、不公平が生じない分割方法を考えておく必要もあるでしょう。
所得税や贈与税がかかるケースもある
投資信託の利益は課税対象になるため、相続発生日よりも取得日の評価額が高かったときは、差額(利益)に対して所得税がかかります。
また、主な財産が投資信託だけであり、預貯金などがわずかな場合は、投資信託を相続する人とその他の相続人に価格差が生じます。
このようなケースでは、現金(代償金)支払いで差額を解消する代償分割もできますが、代償金が贈与とみなされ、贈与税がかかる可能性もあります。
従って、投資信託を相続する人の所得税を考慮したり、遺産分割協議書に代償分割する旨を記載したりなど、公平な遺産分割や税金対策も必要になるでしょう。
残高証明書の発行について
投資信託の金額を把握するために、証券会社・銀行で残高証明書を発行してもらいます。
残高証明書とは、証明したい日の正確な残高を記録した書類です。
投資信託を相続する場合には、被相続人が死亡した日(相続が発生した日)の残高証明書が必要です。
残高証明書は、相続人での話し合い(遺産分割協議)や、税務署への相続税申告時に活用します。
相続財産に投資信託が含まれている場合は、残高証明書が必要になるため、早めに残高証明を発行しましょう。
残高証明書の発行手続き
残高証明書の発行は、証券会社・銀行の窓口で行います。
証券口座を作った支店で手続きするのが、一番スムーズです。
残高証明書の際には、下記のような書類が必要になります。
- ・亡くなった人の除籍謄本(死亡の事実を確認するため)
- ・手続きする人は戸籍謄本(相続人であることを証明するため)
- ・手続きする人の印鑑証明/実印
- ・手続きする人の本人確認書類
- ・残高証明書の発行依頼書
これらの書類を事前に準備して、窓口で手続きを進めます。
手続きに700~800円程度の手数料がかかり、発行されるまでは1週間〜10日ほどかかります。
残高証明書の申請手続きは、相続人がひとりいれば問題ありません。
また代理人でも手続き可能ですが、その場合は相続人からの委任状が必要です。
相続税評価に残高証明書の金額をそのまま使わない
投資信託の相続税評価をするときに、残高証明書の金額をそのまま記入する人がいます。
手続き自体に問題はありませんが、残高証明書の金額をそのまま記入すると、使えるはずの控除を逃すことになります。
投資信託では、信託財産留保額といった手数料の支払いがあります。
信託財産留保額とは、投資信託を解約したときに証券会社・銀行に支払う解約費用のことです。
投資額の数%が解約費用として設定されていることが多いです。
この信託財産留保額は、投資信託の金額から差し引いて評価額を計算できます。
つまり残高証明書の金額をそのまま記入すると、信託財産保留額の手数料を引かずに、実際の金額よりも高い金額で相続税計算をすることになります。
残高証明書の金額は、あくまでも投資信託そのものの金額です。
相続税評価では、投資信託の金額だけではなく、実際の損益・源泉徴収・信託財産留保額を差し引いて計算します。
残高証明書の金額をそのまま記入すると、間違っている可能性が高いので注意しましょう。
投資信託の相続税評価は税理士に相談しよう
投資信託の相続税評価は、とても難しい作業になります。
「正しい相続税評価を出せるか不安」という人は、税務のプロである税理士に依頼しましょう。
税理士に依頼すれば、正しい相続財評価をしてくれます。
さらに計算だけではなく、相続税の対策もできます。
相続サポートセンターでは初回の相談を無料で受け付けているので、まずは無料相談の利用がおすすめです。
まとめ
亡くなった方の財産に投資信託があるときは、まず残高証明書などで種類を確認してください。
投資信託の種類によって評価方法が異なるため、間違った計算式を使うと、相続税の納め過ぎや過少申告に繋がる恐れがあります。
また、投資信託はネットで気軽に申し込めるため、亡くなった方の投資信託を家族が知らないケースもあります。
遺品整理するときには、商品パンフレットや契約締結時の交付書面などをチェックし、投資信託の有無を見逃さないようにしておきましょう。
投資信託は相続発生時と取得時の価格差も生じるので、相続税評価額がわからないときは、早めに相続専門の税理士へ相談してください。
相続専門税理士の無料相談をご利用ください
ご家族の相続は突然起こり、何から手をつけていいか分からない方がほとんどです。相続税についてはとくに複雑で、どう進めればいいのか? 税務署に目をつけられてしまうのか? 疑問や不安が山ほど出てくると思います。
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