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最終更新日:2026/3/13

相続空き家特例(3,000万円控除)の要件と手続きをわかりやすく解説

古尾谷 裕昭
この記事の執筆者 税理士 古尾谷裕昭

VSG相続税理士法人 代表税理士
東京税理士会 登録番号104851

東京、立川、千葉、埼玉、横浜、名古屋、大阪、神戸、福岡などの全国の主要都市14拠点にオフィス展開し、年間3,500件を超える日本最大級の相続税申告実績を誇る。業界最安水準となる明朗料金ときめ細かいフォローで相続人の負担を最小にすることを心がけたサービスが評判を得る。1975年生まれ、東京都浅草出身。

PROFILE:https://vs-group.jp/sozokuzei/profilefuruoya/
書籍:今さら聞けない 相続・贈与の超基本
Twitter:@tax_innovation
YouTube:相続専門税理士チャンネル【VSG相続税理士法人】

記事の要約

  • 空き家特例とは、相続した古い実家を売却した際、利益(譲渡所得)から最大3,000万円を控除できる特例のこと
  • 適用されるには「昭和56年5月31日以前の建築」「売却価格1億円以下」「相続から3年目の年末までに売却」などの要件がある
  • 2024年以降は買主による解体・改修も対象になった一方、相続人が3人以上いると控除額が2,000万円に下がる
  • 控除を利用して税金が0円になる場合でも、事前に自治体で証明書を取得したうえで「確定申告」が必須となる

親から相続した実家が空き家になっており、売却を検討しているものの「税金がいくらかかるのか不安」と感じていませんか?不動産を売却して利益が出ると、通常は多額の譲渡所得税が課せられます。

しかし、一定の要件を満たせば、売却益から最大3,000万円を差し引ける「空き家特例(被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例)」を利用できる可能性があります

この記事では、空き家特例の適用要件や2024年の法改正ポイント、手続きの流れを専門知識がない方でもわかるように解説します。

相続空き家特例(3,000万円控除)とは?

空き家特例とは、相続によって空き家となった実家を売却した際、その利益(譲渡所得)から最大3,000万円を控除できる制度です。

正式名称は「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」といいます。増え続ける空き家問題を解消するため、古い実家の売却や解体を促進する目的でつくられました。

通常、不動産を売却して得た利益には約20%(所有期間5年超の場合)の税金がかかりますが、この特例を使えば税負担を大幅に軽減、あるいは0円にできる非常にメリットの大きい制度です。

【シミュレーション】どのくらい税金が安くなるか?

特例を利用した場合としない場合で、実際に支払う税金がどれほど変わるのか見てみましょう。

計算事例

  • 実家の売却価格:4,000万円
  • 取得費(購入代金など)と譲渡費用(仲介手数料など):1,000万円
  • 所有期間:5年超(長期譲渡所得)

特例を利用しない場合

課税対象額 4,000万円 - 1,000万円 = 3,000万円

所得税・住民税(約20.315%) 3,000万円 × 20.315% = 約609万円

特例を利用する場合

課税対象額 (4,000万円 - 1,000万円)- 3,000万円(控除)= 0円

所得税・住民税 0円

このように、特例を適用できるかどうかで手元に残る金額が600万円以上も変わる可能性があります

空き家特例の適用要件

空き家特例を受けるためには、厳しい要件をすべてクリアする必要があります。大きく分けて「人」「家屋・敷地」「売却条件」の3つの視点で確認しましょう。

対象となる「人」の要件

空き家特例を適用するには、家屋を取得した「人」に関して以下の要件を満たす必要があります。

  • 相続または遺贈で取得していること:亡くなった人(被相続人)から、相続や遺言による譲渡(遺贈)でその家屋と土地を受け取った人が対象です。
  • 売却まで空き家であること:相続した時から売却した時まで、ずっと空き家(事業や貸し付け、居住に使われていない)である必要があります。

対象となる「家屋・敷地」の要件

対象となる「建物と土地」については、建築時期や利用状況など以下の条件をすべてクリアしなければなりません。

  • 昭和56年5月31日以前に建築されたこと:いわゆる「旧耐震基準」で建てられた戸建て住宅が対象です。
  • 被相続人が一人で住んでいたこと:亡くなる直前まで、親が一人で暮らしていたことが原則です。同居人がいた場合は対象外となります(老人ホーム入所等の例外あり)。
  • 一定の耐震基準を満たすか、更地にして売ること:建物付きで売る場合は、現在の耐震基準に適合させる改修が必要です。そうでない場合は、建物を取り壊して更地にして売却する必要があります。

「売却期限」と「売却価格」の要件

特例を利用するためには、売却の「タイミング」と「金額」について以下の厳格なルールが定められています。

  • 売却期限の制限:相続が開始した日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却しなければなりません。
  • 売却代金が1億円以下であること:土地と建物の合計売却価格が1億円を超えると、特例は一切受けられなくなります。分割して売却した場合も、通算して判定されるため注意が必要です。

【重要】2024年以降の法改正で変わったポイント

令和5年度の税制改正により、2024年(令和6年)1月1日以降の譲渡からルールが一部変更されました。

売却後に買主が耐震改修や解体を行う場合も対象に

これまでは、売主(相続人)が売却前に耐震改修を終えるか、更地にする必要がありました。

改正後は、売却した翌年の2月15日までに買主が耐震改修や解体を行った場合でも、特例が受けられるようになりました。これにより、現状のまま売却しやすくなるというメリットがあります。

買主が耐震改修や解体を行う場合の注意点

売主が工事費用を立て替える手間を省けるのは大きなメリットですが、以下の2点に注意する必要があります。

工事完了の期限と「特約」の重要性
譲渡の翌年2月15日までに買主の工事が完了しないと、特例は適用されません。万が一買主の責任で適用外となった場合に備え、売買契約には「税控除額相当の損害賠償を買主に請求できる特約」を必ず含めるようにしましょう。
買主が負担した工事費は「1億円以下」の判定に加算される
買主が負担する取り壊し・改修費用は、本来売主が負担すべき費用とみなされます。そのため、特例要件である「譲渡対価1億円以下」の判定には、売却価格に買主負担の工事費用を合算して計算する必要があります。

相続人が3人以上いる場合、控除額が2,000万円に

これまでは相続人の人数に関わらず1人最大3,000万円でしたが、改正後は相続人が3人以上の場合は1人あたりの控除額が2,000万円に減額されました

  • 相続人が1〜2人の場合:1人あたり最大3,000万円
  • 相続人が3人以上の場合:1人あたり最大2,000万円

手続きの流れと必要書類の集め方

特例の適用を受けるためには、単に家を売却して終わりではありません。自治体での証明書発行や、翌年の確定申告など、決められた手順を踏む必要があります。

全体の流れと必要なものを把握して、スムーズに手続きを進めましょう。

相続発生から確定申告までの4ステップ

空き家特例を利用するための大まかな流れは以下の通りです。期限に追われないよう、スケジュールに余裕を持って行動することが大切です。

①相続と物件の確認
まずは実家を相続し、その家屋が「昭和56年5月31日以前に建てられたものか」など、適用要件を満たすか確認します。不安な場合は、売却前に不動産会社や税理士へ相談しておくと安心です。
②売却(または解体して売却)
不動産会社を通じて物件を売却します。特例を受けるには売却価格が1億円以下である必要があるため、売り出し価格の設定にも注意してください。
③確認書の取得
売却前、または売却後に物件がある市区町村の窓口へ申請し、「被相続人居住用家屋等確認書」を取得します。この書類がないと、後の確定申告で特例を受けられません。
④確定申告
物件を売却した翌年の2月16日〜3月15日の間に、管轄の税務署へ確定申告を行います。必要書類をすべて揃えて申告することで、初めて控除が適用されます。

確定申告の必要書類一覧と入手場所

確定申告の際には、通常の申告書に加えていくつかの添付書類が必要です。直前になって慌てないよう、取得先を把握して早めに集めておきましょう。

  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書):税務署の窓口や、国税庁のホームページからダウンロードして入手します。売却金額や経費などを計算して記入する専用の用紙です。
  • 被相続人居住用家屋等確認書:物件が所在する市区町村の担当窓口(建築課など)に申請して取得します。特例の適用を証明する最も重要な書類です。
  • 売買契約書の写し:家を売却した際に買主と交わした売買契約書を使用します。お手元にある原本のコピーを提出してください。
  • 登記事項証明書:対象となる土地や建物の情報が記載された公的な書類で、法務局で取得します。オンラインでの請求や郵送での取り寄せも可能です。

「被相続人居住用家屋等確認書」の取得方法

この書類は、自治体が「この物件は確かに要件を満たした空き家でした」と公式に証明する非常に重要なものです。

申請には、空き家だったことを示す電気・ガスの閉栓証明書や、売却前後の写真などが必要になります。自治体での審査があるため、発行までに数週間かかることもあるため、早めに取得の準備を始めましょう

確定申告書の書き方と提出先・提出時期

確定申告の時期は、原則として売却した翌年の2月16日から3月15日までです。

管轄の税務署へ直接持参するか郵送で提出しますが、最近では国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用して、スマホやパソコンからe-Tax(電子申告)で提出することもできます。

【注意】税金がゼロになっても「確定申告」は必須

この特例を受けるには、確定申告書に必要書類を添えて提出する必要があります。

特例を適用した結果、譲渡所得税が0円になる場合でも、申告をしなければ特例は受けられません

「税金がかからないから申告しなくてよい」と考えず、忘れずに手続きを行いましょう。

ケース別Q&A!こんな場合は特例が適用される?

空き家特例は適用要件が複雑なため、「うちの実家は対象になるの?」と迷う方が少なくありません。ここでは、不動産売却の現場でよくご相談いただくケースについて、適用の可否と注意点を詳しく解説します。

親が老人ホームに入居していた場合

親が亡くなる直前に老人ホームや介護施設に入所しており、実家がすでに空き家状態だった場合でも、以下の要件をすべて満たせば例外として特例を受けられます。

  • 入所直前まで親が一人で住んでいたこと:施設に入る前は、親が一人暮らし(他の同居人がいない)をしていたことが大前提です。
  • 入所後にその家を貸し付けたり、他の人が住んだりしていないこと:空き家になった実家を、親の存命中に誰かに貸して家賃収入を得ていたり、親族が住み着いたりした場合は対象外となります。
  • 介護保険法等に規定する施設に入所していたこと:要介護認定等を受けており、対象となる老人ホーム等に入所していたことが証明できる必要があります。

兄弟など複数人(共有名義)で相続した場合

兄弟姉妹などで実家を共有名義で相続した場合、全員が適用要件を満たしていれば、それぞれが控除を受けられます。

例えば兄弟2人で相続して売却した場合、1人あたり3,000万円、合計で最大6,000万円まで控除が可能です。ただし、2024年以降の譲渡において相続人が3人以上いる場合は、1人あたりの控除上限が2,000万円に引き下げられるため注意が必要です。

建物を取り壊して更地で売却した場合

古い家屋を残したままではなく、更地にして売却する場合も特例の対象となります。

ただし、相続してから取り壊すまでの間や、更地にしてから売却するまでの間に、その土地を駐車場として貸し出したり、資材置き場として利用したりすると適用不可となってしまいます

更地にして売れば必ず適用できるわけではないため、売却までの使い方には注意が必要です。

【適用不可】相続した実家がマンションの場合

この特例は、区分所有建物登記がされている建物には適用できません。そのため、一般的なマンションは対象外となります。

戸建ての空き家を前提とした制度であるため、マンションを売却する場合には適用できない点に注意しましょう。

【適用不可】親子など、特別な関係者へ売却した場合

売却先が「特別な関係がある者」である場合、この特例は使えません。

具体的には、自分の配偶者や親、子、孫などの親族や、自分が同族社長を務める会社などへの売却は対象外となります。あくまで第三者への売却(通常の市場での取引)が前提となる制度です。

他の不動産売却に使える特例との違いや併用可否

空き家特例以外にも、不動産売却や相続時に使える強力な節税制度がいくつか存在します。

しかし、制度によっては「併用できるもの」と「どちらか一方しか選べない(併用不可)もの」があるため、注意が必要です。ご自身の状況に合わせて、最もお得になる組み合わせを選びましょう。

居住用財産の3,000万円控除

自分が住んでいるマイホーム(居住用財産)を売却した際に、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例です。空き家特例と名前や控除額が似ていますが、こちらは「自分が住まなくなってから3年目の年末まで」に売却するという期限が設けられています。

なお、空き家特例とマイホームの3,000万円特別控除は、同じ年に両方を使う場合でも、控除額をそれぞれ上乗せして受けられるわけではありません。同一年中に両方の特例を適用するケースでは、特別控除額の合計は3,000万円が上限となります。

取得費加算の特例

相続税をすでに納付している人が、相続した不動産を一定期間内に売却する際、支払った相続税の一部を「取得費(経費)」として差し引くことができる制度です。

こちらも空き家特例との併用はできず、どちらか一方を選ぶ「選択適用」となります。一般的に空き家特例の方が有利ですが、納付した相続税額が3,000万円を超える場合、取得費加算の特例の方がトータルで得になるケースもあるため、事前に専門家を交えた税額シミュレーションを行ってから選択することをおすすめします。

小規模宅地等の特例

相続税を計算する際に、亡くなった人(被相続人)が住んでいた土地などの評価額を最大80%も減額できる、非常に効果の高い制度です。

こちらは「相続税」を安くするための特例であり、「譲渡所得税(所得税・住民税)」を安くする空き家特例とは税金の種類・目的が異なるため、併用が可能です。両方の厳しい要件をクリアできれば、相続時と売却時のダブルで大幅な節税が実現します。

ただし、配偶者以外が小規模宅地等の特例を適用する場合、「相続税の申告期限(相続開始から10カ月)までの所有要件」などが絡んでくるため、売却するタイミングは十分注意しなければなりません。

まとめ

相続した空き家の売却において、空き家特例は数百万円単位の節税につながる非常に強力な制度です。

しかし、昭和56年5月31日以前の建物であることや、売却価格が1億円以下であることなど、細かい要件が多数あります。また、2024年からの法改正で「3人以上の相続なら1人2,000万円」という新ルールも加わりました。

まずは自分の物件が要件を満たしているかチェックし、不明な点は税理士や不動産会社などの専門家に相談しながら、賢く売却を進めていきましょう。

なお、VSG相続税理士法人では、グループ内に不動産会社もあるため、税金の相談だけでなく、売却までワンストップで対応することができます。相談は初回無料のため、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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