この記事でわかること
- 法定相続人の順位と範囲を図で理解できる
- 相続分と相続割合を図で理解できる
目次
相続人とは
相続人とは、被相続人の遺産を相続する人です。
実際に遺産を引き継いだ人のことを相続人というため、例えば被相続人の配偶者や子供であっても、遺産を引き継いでいない場合には、相続人には該当しないこととなります。
反対に、配偶者や子供のように被相続人と近い関係にあった人ではなくても、遺産を相続することがあります。
この場合も、実際に遺産を相続した人が相続人となるのです。
相続人と法定相続人の違い
相続は民法の第五編に定めがあり、第五編の第二章で相続人が定められています。
ここに定められた相続人を法定相続人といいます。
法定相続人とは、相続権を有している人です。
法定相続人は、配偶者と血族相続人(被相続人の子、直系尊属、兄弟姉妹)で、それぞれ相続順位と相続分が定められています。
相続人とは、その権利により遺産を相続する人のことです。
ただし、法定相続人が必ず相続人になるわけではありません。
法定相続人であっても遺産分割協議の結果、遺産を何も相続しないことや、相続放棄してしまう場合もあります。
実際に遺産を相続しなければ相続人とはなりませんし、相続放棄すればそもそも最初から法定相続人ではないこととされるのです。
相続人の範囲を図で解説
配偶者は他の血族相続人とは違って相続順位の枠外の存在で、被相続人が亡くなった時に配偶者がいれば必ず相続人になります。
つまり、配偶者がいれば配偶者と血族相続人が相続し、配偶者がいなければ血族相続人が相続します。
血族相続人には下表のように相続順位が定められていて、先順位の血族相続人がいない場合に、後順位の血族相続人に相続権が移ります。
血族相続人の相続順位 | 被相続人との関係 | 代襲相続の有無 |
---|---|---|
第一順位 | 子 | あり(再代襲あり) |
第二順位 | 直系尊属(両親など) | |
第三順位 | 兄弟姉妹 | あり(再代襲なし) |
常に相続人:配偶者
配偶者は、被相続人の夫または妻で、正式に戸籍に記載された人ですが、あくまでも相続開始時に配偶者だった場合に限られますので注意してください。
離婚した元妻や元夫は相続人ではありません。
離婚した元配偶者と子供の相続については、こちらの記事で詳しく説明しているのでご覧ください。
また、内縁関係の場合も配偶者ではないので、相続人にはなれません。
第一順位:子
子については、被相続人のすべての子が含まれます。
胎児
相続開始時の胎児は、胎児の状態で相続の権利を持っていますが、流産や死産になった場合は相続人にはなれません。
出生してから相続人の権利を行使することができます。
前婚の実子や認知している子
被相続人が過去に結婚していた場合、離婚後に疎遠になったとしても前婚の実子も相続人です。
婚姻していなくても認知した子がいれば相続人になります。
養子
被相続人が婚姻したときに配偶者に連れ子がいた場合は、連れ子はそのままでは相続人になれません。
子が相続人になるためには、被相続人と養子縁組をして、養子になる必要があります。
血縁関係がなくても養子縁組をしていれば、養子も相続人です。
養子は、養親が亡くなった場合に実子と同じ相続権がありますが、養親と実親の両方の相続権を持っているので、実親が亡くなった場合にも実子としての相続権があります。
ただし、特別養子縁組によって実親との親子関係を断った場合は、実親の相続人になることができません。
養子縁組と相続については、こちらの記事で詳しく解説しているので、ご覧ください。
孫が相続人になるケース(代襲相続)
子の方が被相続人よりも先に死亡した場合、孫がいれば相続権はそのまま引き継がれて孫が相続人になります。
これを代襲相続といいます。
孫も先に亡くなっている場合は曽孫が相続人になり、これを再代襲相続といいます。
子や孫のような繋がりを直系卑属といいますが、直系卑属の再代襲は理論的には無限に続きます。
現実にはあり得ないくらい先の世代でも直系卑属であれば相続人になります。
ただし、子が養子の場合の代襲相続には注意が必要です。
養子縁組をした後に生まれた子どもは養親の孫として直系卑属になりますが、養子縁組の前に生まれていた子どもは連れ子にすぎないため、代襲相続人になることはできません。
第二順位:直系尊属
直系尊属は、父母や祖父母のように直通する系統の親族で、前の世代の人のことです。
父母と祖父母がともに健在の時は、より近い親等の父母が相続人になります。
直系尊属は第二順位なので、第一順位の子(及び子の代襲相続人)がいない場合に相続人になります。
第三順位:兄弟姉妹
第一順位の子(及び子の代襲相続人)がおらず、第二順位の直系尊属も既に亡くなっている場合に、兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹も既に亡くなっている場合には、兄弟姉妹の子が代襲相続します。
しかし、兄弟姉妹の子も亡くなるなどして相続権を失った場合は、兄弟姉妹の孫は相続人にはなりません。
兄弟姉妹の代襲相続は一代限りで、再代襲はありません。
相続順位と相続分を図で解説
法定相続人の範囲や順番だけでなく、相続分の割合も民法によって定められています。
被相続人に配偶者がいるときの相続分割合は次の通りです。
配偶者の割合 | 血族相続人の割合 | |
---|---|---|
子 | 1/2 | 1/2 |
直系卑属 | 2/3 | 1/3 |
兄弟姉妹 | 3/4 | 1/4 |
なお、血族相続人が複数人いるときは、相続分を人数で等分して相続します。
ここからは、ケース別にそれぞれの法定相続人の相続分の割合を見ていきましょう。
- 配偶者と子が相続人
- 配偶者と孫(代襲相続)が相続人
- 子がいない配偶者と両親が相続人
- 兄弟姉妹が相続人
- 配偶者がいないときの相続分割合
配偶者と子が相続人
被相続人に子がいる場合は配偶者と子が相続人になります。
被相続人に前婚があり、前妻との間に実子がいたときには、前婚の実子も相続人です。
婚姻していなくても認知した子がいれば相続人になります。
この場合、子はすべて同じ相続割合になります。
従ってこの図の場合には
- 配偶者の相続分は1/2
- 子は1/2を3人で分けるため、1人当たりの相続分は1/6
なお、前妻及び愛人は相続人ではありません。
配偶者と孫が相続人(代襲相続)
被相続人の子が先に亡くなっている場合は、代襲相続で孫が相続します。
孫がいるので、父母も兄弟姉妹も相続人ではありません。
従ってこの図の場合には、
- 配偶者の相続分は1/2
- 孫の相続分は1/2
孫が複数名いるときは人数で等分します。
嫁は義父の相続人ではありません。
子がいない配偶者と両親が相続人
被相続人に子がいない場合、相続人は配偶者と直系尊属です。
父母と祖父母がともに健在ならば、父母が相続人になります。
直系尊属は被相続人の父母及び祖父母であり、配偶者の父母や祖父母は相続人ではありません。
従ってこの図の場合には
- 配偶者の相続分は2/3
- 被相続人の父母の相続分は1/3を2人で分けるため、1人当たりの相続分は1/6
兄弟姉妹が相続人
被相続人の子が亡くなり孫もいない場合、直系尊属が相続人になりますが、直系尊属も亡くなっている場合は、兄弟姉妹が相続人になります。
しかし、兄弟姉妹も亡くなっている場合は、兄弟姉妹に子がいれば、その子(甥または姪)が兄弟姉妹の相続分を代襲相続します。
従ってこの図の場合には
- 配偶者の相続分は3/4
- 甥(または姪)の相続分は1/4
しかし、甥(または姪)も亡くなっている場合は、兄弟姉妹の代襲相続は一代限りのため、甥(または姪)に子どもがいても相続人にはなれません。
配偶者がいないときの相続分割合
被相続人に配偶者がいない場合は、すべて血族相続人が相続順位に従って相続します。
つまり、第一順位の子(代襲相続あり)、第一順位がいない場合は第二順位の直系尊属、第二順位もいない場合は第三順位の兄弟姉妹が、すべてを相続することになります。
この場合、同じ相続順位に複数人いる場合は、人数で等分して相続します。
配偶者や子どもがいない場合の法定相続分や相続人については、以下の記事で詳しく説明しているのでご覧ください。
法定相続人が相続人でなくなる場合
法定相続人でも相続人ではなくなる場合があります。
相続放棄をした場合や、相続欠格事由・相続廃除によって相続権を失った場合が当てはまります。
相続放棄をした場合
相続には財産だけでなく負債も含まれます。
被相続人に多額の借金があったような場合は、相続放棄をすることがあります。
相続放棄をすると、相続権は他の相続人に移ります。
同一順位の相続人が全員相続放棄をすると、次の順位の相続人に権利が移ります。
しかし、相続放棄では代襲相続は生じないので、子が相続放棄をしても孫に相続権は移りません。
相続権を失う場合
遺言書の偽造や犯罪に関わった場合などは、相続欠格事由・相続廃除によって相続権を失うことがあります。
この場合には、悪いのは本人だけなので相続権を失うのは本人に限られ、代襲相続ができます。
相続人がいない場合
相続人が誰もいないときはどうなるでしょう。
被相続人が独身で子どももなく、親兄弟もいない場合もあります。
また、法定相続人はいても全員が相続放棄をした場合は、相続人は誰もいなくなります。
このような場合は、家庭裁判所が相続財産管理人を選任し、相続財産管理人が相続財産を清算します。
行方不明でも相続人
行方不明の人も相続人です。
相続人の中に、どこにいるか誰も知らない人がいた場合、それでも相続人であることに変わりはありません。
行方不明の人の相続分は、家庭裁判所に不在者財産管理人を選任してもらって、管理してもらうことになります。
不在者財産管理人は、行方不明の人の居所がわかった時に、預かっていた相続分の財産を渡して任務を終了します。
ただし、行方不明の人が失踪宣告を受ける要件に当てはまる場合は、失踪宣告を受けて相続人から除外することができます。
行方不明の相続人がいるときの相続については、以下の記事で詳しく説明しているのでご覧ください。
遺言があったとき
有効な遺言があるときは遺言が優先されます。
遺言で指定された人に遺産をもらい受ける権利があります。
相続順位に基づいて相続人が決まるのは、有効な遺言がないときです。
しかし、遺言の内容に属さない相続財産があるときは、その分は法定相続人が相続します。
まとめ
相続人の範囲と相続分を図でわかりやすく解説し、あわせて知っておいた方がよいと思われる注意点も解説しました。
相続は人の一生の中でたびたび経験するようなことではありません。
相続トラブルになってしまった場合や、ご心配なこと、納得のいかないことがある場合は、早めに弁護士に相談するとよいでしょう。