東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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自己破産すると、それまで保有していた財産はすべて換価処分の対象となり、そのまま保有することはできなくなります。
そのため、車を持っている人の場合、その車も手放さざるを得なくなります。
しかし、車は仕事や生活に欠かせないものであり、手放すことは避けたい場合、車を残す方法もあります。
また、自己破産後に車のローンを組む方法もあるので、その内容を確認しておきましょう。
Contents
自己破産の手続きを行い、免責が認められると、借金の返済義務が消滅します。
借金の返済をする必要がなくなるため、それまで借金の返済に苦しんでいた方にとっては、大きなメリットがあります。
しかし、債務が消滅すると同時に、破産した人は保有していた財産も手放す必要があります。
預貯金や不動産、車など保有していた財産を現金に換えて、債権者への返済に充てる必要があるためです。
ただ、例外的に手放す必要のない財産もいくつかあります。
たとえば、99万円以下の現金や20万円以下の財産については、自由財産として手元に残すことが可能です。
これは、破産した人が破産後の生活を送るために必要であり、売却してもそれほどメリットがないため認められています。
車の場合も、その価値が20万円以下である場合には、換価処分されずに手元に残せます。
車の価値が20万円以下になる目安の期間は、普通自動車の場合は購入から6年、軽自動車の場合は購入から4年が目安となります。
また、10年以上経過した車の場合は、財産としての価値がゼロになることが多いといわれます。
ただし、車種によってはこのとおりではないため、買い取り業者やディーラーなどで査定してもらうのがおすすめです。
自己破産しても車を残すには、いくつかの方法を検討しなければなりません。
ここでは、その3つの方法をご紹介しますので、それぞれ検討してみましょう。
なお、これらはどれか1つを行えばいいというものではなく、すべてを行う必要があります。
車のローンが残っている場合は、そのローンの返済を行わなければなりません。
ローンが残った状態の車は、その所有権がローン会社に留保されており、完全に所有権が移転していません。
そのため、自己破産するとその車は債権者であるローン会社が引き上げます。
自身で車のローンを返済することが難しい場合は、家族などにローンの返済を依頼してみましょう。
ローンを肩代わりしてもらえば、所有権が完全に移転します。
ただ、第三者が代わりにローンの支払いを行うためには、債権者の同意が必要とされます。
事前にローン会社に連絡して、家族などが代わりにローンの返済を行うことを伝えておきましょう。
ローンの返済によって、ローン会社に車を引き上げられるリスクは回避できます。
しかし、車自体に価値がある場合は、破産手続きの中で売却されることが想定されます。
車の価値が20万円以下であれば自由財産として売却されずに済みますが、20万円を超える場合は換価処分の対象となります。
そこで、自由財産拡張の申立てを行います。
自由財産拡張の申立てとは、その名のとおり、自由財産の範囲を広げるために、裁判所に基準を変更してもらうことです。
車の場合、通常は20万円以下でなければ自由財産に該当せず、換価処分の対象となってしまいます。
しかし、生活に必要な最低限の財産であれば、20万円を超える車でも自由財産と認められることがあります。
そこで、保有する車が破産後の生活に必要不可欠なものであると申立てを行い、認めてもらう必要があります。
ただし、実際にこの申立てが認められるかどうかについて、裁判所の判断は相当厳しいものとなっています。
公共交通機関がまったくなく、仕事や生活にどうしても必要なものであると認められないと、自由財産にはなりません。
「自己破産後に車を残す」のとはやや異なりますが、自己破産以外の債務整理の方法も検討する必要があります。
というのは、自己破産以外の方法であれば財産を残せるからです。
ここで検討すべき方法としてあげられるのは、「任意整理」と「個人再生」です。
任意整理は、対象となる債務を選択して直接その債権者と交渉を行い、返済額を減額するものです。
車のローンがある場合には、車のローンを対象外とすることで、車を手放すリスクを避けられます。
また個人再生は、車のローンさえ完済しておけば、車を手放す必要性はなくなります。
いずれの方法も、自己破産ほど借金の金額を大きく減らせるわけではありません。
どれくらいの債務減額効果があるのか、よく検討しておく必要があります。
自己破産を行っても車だけは残しておきたい場合、車を手放さないで済む方法を考えるでしょう。
しかし、なかには自己破産の成立に大きく影響を及ぼす場合もあります。
絶対に行ってはいけない行為をご紹介します。
自己破産の前に、自分名義の車を他人の名義に変更しようと多くの人が考えるでしょう。
しかし、車の名義を他人に変更することは、絶対に行ってはいけません。
もし車の名義を他人に変更すると、その行為は財産を隠す行為と判断されます。
換価処分によって債権者の配当に充てられるべき財産を、自分の利益になるように隠すことは、債権者にとって不利益となります。
そのため、このような行為を行うと、自己破産しても免責が認められないこととされています。
免責が認められないと、借金の返済義務は消滅しないことになるため、自己破産しても何のメリットもありません。
借金の返済に苦しんでいる人には、多くの借入先から借金をしているケースがあります。
このような場合、借金の返済ができるようになった時には、それぞれの債権者に少しずつ返済する必要があります。
車を手放したくないという理由で、車のローンだけを優先的に返済することは認められません。
一部の債権者に対してだけ返済を行うことを偏頗弁済といい、法律によって禁止されている行為です。
もし偏頗弁済を行うと、自己破産しても免責が認められないこととなるため、メリットはありません。
車を残すために車のローンだけを完済したい場合には、家族の協力が不可欠です。
また、債権者であるローン会社に連絡して、車を残したい旨を相談する必要があります。
自己破産する前に車を売却し、そのお金で借金を返済することは問題ありません。
しかし、売却した代金を別の用途に使ってしまうと、詐欺破産罪という犯罪にあたることがあります。
そのため、自己破産する前に車を売却することは、非常に注意しなければなりません。
どのような場合には犯罪にあたるか、犯罪にならないか、非常に微妙なケースもあります。
そのため、車を売却したいと考える場合は、専門家に相談しながら行う必要があります。
車のローンが残っていることを、弁護士や裁判所に隠して破産手続きを進めようとする方もいるかもしれません。
しかし、自己破産の申し立てを行う中で虚偽の報告をしていることが分かると、免責不許可事由に該当するため、借金の免責が認められず、自己破産しても返済義務が消滅しなくなります。
また、詐欺破産罪に問われることもあるので、必ず真実を伝えなければなりません。
虚偽の申告を行っても、通帳の動きやローン会社からの申し出により発覚するので、隠すことのないようにしましょう。
自己破産する際には、基本的に車を処分せざるを得ないため、自己破産した後に車を手にする方法をご紹介します。
ただ、自己破産するとすぐにローンは組めません。
そこで、自己破産直後とローンが組めるようになってからの2つに分けて、何をするといいのか解説していきます。
自己破産した後は、ローンやクレジットカードは利用できなくなり、買い物は基本的に現金払いのみとなります。
そのため、車を購入する際にも現金を貯めておき、現金で一括購入するしかありません。
簡単なことではありませんが、自己破産直後に車を購入するにはこの方法しかありません。
車のローンが組めるようになっても、取引履歴がないまま、いきなり多額のローンが利用できるとは限りません。
そのため、少額のローンを組むなどして、取引の実績を作っておきましょう。
たとえば、スマホの端末をローンで購入し、その返済を毎月きっちりと行います。
こうすれば、ローンを組んでも問題ないと判断され、車を購入しやすくなります。
また、会社員の場合は勤務実績をしっかり残しておくことで、返済能力が十分にあると判断されます。
仮に、自己破産後何度も転職しているような状態では、新たなローンを組むことは難しいでしょう。
できるだけ1つの仕事を長く続けることで、返済能力をあげることができます。
自己破産をすると、保有していた財産は基本的にすべて手放す必要があります。
これは車も例外ではなく、たとえ生活必需品であると主張しても、20万円を超える価値がある車は換価処分の対象となります。
しかし、第三者の協力を得てローンの返済を行い、あるいは自由財産の拡張の申立てを行って、車を残す方法があります。
車を残したい場合は、自己破産を避けて民事再生または個人再生という選択をすれば、手続き後に手元に車を残せる可能性が高くなるため、まずは弁護士に相談するのも1つの方法です。
自己破産で車を手放した人も、もう一度車を購入することは可能なため、いつから車を所有できるのか確認しておきましょう。