東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/kawasaki/
書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!
自己破産の手続きを行う際、申し立てを行う人(破産しようとしている人)は、種々の手数料として一定の金額を裁判所に対して納付しなければなりません。
この「一定の金額」を「予納金」と呼び、破産法第22条に規定されています。
破産手続開始の申し立てをするときは、申立人は、破産手続の費用として裁判所の定める金額を予納しなければならない。
予納金の内訳は、「手数料」「官報広告費」「引継予納金」「予納郵券」です。
以下では、この4つについて解説していきます。
なお、今回は破産者に目立った財産がなく、破産管財人が選任されずに手続きが終了する「同時廃止」の案件を中心としています。
ただし、「引継予納金」については、破産管財人が選任されない場合と、選任される場合とでは、かかる費用が大幅に変動しますので、「引継予納金」の解説では、破産管財人が選任されない場合と選任される場合について記載しています。
消費税率の引き上げに伴い、官報広告費についても、増額となります。
例として、千葉地方裁判所での同時廃止では、11,644円→11,859円に増額となります。
また、管財事件(個人)の場合は、18,205円→18,543円に増額となります。
破産案件の内容について、若干の変動はありますが、個人の破産の場合は、1,500円です。
納付は、1,500円分の収入印紙にて行います。
破産手続開始決定が裁判所から出されると、申立人の情報は官報(政府発行の機関紙)に掲載されます。
すなわち、申立人が破産手続を開始したことが公開されることになります。
官報広告費は、裁判所によって金額が変わってきますので、要確認です。
たとえば、東京地方裁判所では、官報広告費が11,859円なのに対し、横浜地方裁判所では、11,644円となっています。
引継予納金は、申立人に一定の換金可能な財産があり、財産を換金後、債権者に配分する「破産管財人」を選任した場合に発生する費用です。
したがって、破産管財人が選任されない「同時廃止」の場合は、「引継予納金」は不要となります。
破産管財人が選任された場合、その費用の相場は20万円~となっています。
東京地方裁判所をはじめとした各裁判所では、費用相場を抑える「少額管財」制度を採用していますが、一部「少額管財」を採用していない裁判所もあります。
ただし、この20万円という費用は、自己破産の申し立てを弁護士に代理を依頼した場合です。
自己破産の申し立てを弁護士に依頼せず、自ら行った場合は、「少額管財」制度を利用することができないため、引継予納金は最低50万円程度かかることになります。
予納金の支払いは一括払いが原則ですが、一括払いが困難な場合は、分割での支払いが認められている場合があります。
たとえば、東京地方裁判所・東京地方裁判所立川支部では、4回までに分割した支払いが認められています。
一方、引継予納金の分割払いを認めている裁判所は非常に少ないため、引継予納金の分割払いを検討している場合は、管轄裁判所が引継予納金の分割払いを認めているかどうかを確認しておく必要があります。
「郵券」とは、郵便切手のことで、債権者への通知(郵便)にかかる費用は申立人が負担することになっています。
郵送費(切手代)を破産手続の際にあらかじめ納めておくことから、「予納郵券」と呼ばれます。
この費用は、裁判所や債権者の数(郵送先数)によって変動しますが、おおむね5,000円程度と考えられます。
また、あらかじめ納付した金額(切手代)が余った場合は、その分を返却されます。
例として、東京地方裁判所では、予納郵券が4,200円、東京地方裁判所立川支部では、予納郵券が3,630円となっています。
自己破産の申し立てを行う際には、種々の手数料がかかります。
その手数料は案件や管轄裁判所によって一定ではありません。
特に、破産管財人が選任されない場合(同時廃止)と破産管財人が選任される場合(少額管財)の場合とでは、かかる費用が大きく異なります。
すなわち、前者は、「引継予納金」が必要なく、後者の場合は、「引継予納金」が必要となります。
そして、この「引継予納金」は破産申し立てを弁護士に依頼した場合は20万円程度で抑えられますが、自ら破産申し立てを行った場合は、最低50万円の費用がかかってきます。
自己破産は、債権から逃れる最終手段ですが、破産するのも一定額以上の手数料がかかります。
したがって、自己破産に際しては、いかにコストを抑えられるかがポイントとなってきます。
自己破産では、専門家の力も借りながら手続きを進め、コストを抑え、最終的には「免責許可」の決定を得ることが目的となります。
なお、自己破産にかかる手続きの処理に必要な期間(自己破産の申し立てから「免責許可/不許可」までの期間)はおよそ2~5ヶ月程度であるようです。
やや長丁場となりますが、手続きの流れや費用をしっかり理解して手続きを円滑に進められるように準備して置くことが必要かと思います。