東京弁護士会所属。
メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。
前職の経験を生かし、ビジネスの実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。
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まずは、新型コロナの影響による倒産情報から見ていきましょう。
新型コロナの影響で、どのような業種の会社がどれくらい倒産しているのでしょうか。
新型コロナ倒産情報の中でも代表的な企業の倒産ケースや、負債額の大きな企業の倒産ケースもご紹介します。
新型コロナ関連倒産は、2021年5月10日16時の段階で1422件となっています。
そのうち、法的整理に入っている企業が1301件で、事業停止が121件です。
新型コロナ関連倒産の多い業種は、飲食店、建設・工事業、ホテル・旅館、アパレル小売、食品卸などとなっています。
倒産件数は、飲食店は233件、建設・工事業は128件で、以下、ホテル・旅館、アパレル小売、食品卸の順に倒産件数が多くなっている状況です。
なお、この新型コロナ関連倒産の件数はあくまで倒産件数であり、自主的な廃業などは件数として含まれていません。
続いて、代表的な企業や負債額の多いコロナ倒産情報の事例を紹介します。
事例株式会社レナウンの新型コロナ倒産情報
株式会社レナウンは、元東証一部上場の大手アパレルメーカーです。
新型コロナ関連の倒産情報として、大きなニュースになりました。
株式会社レナウンの負債は約138億円でしたが、事業譲渡で破産手続き開始決定までの間に負債額を縮小させています。
レナウンは、かつて日本有数の売上高を誇った会社で、高級紳士服などのブランドを展開しているアパレル会社としてもよく知られていました。
レナウンの主要販路は百貨店で、近年、百貨店の閉店や客足の減少などにより赤字状態に陥っていました。
新型コロナによる客足や売り上げの低下が拍車をかけ、新型コロナ倒産に至ったといわれています。
事例株式会社丸う田代の新型コロナ倒産情報
株式会社丸う田代は、明治時代に創業した老舗の練り物屋です。
かまぼこを主力に、はんぺんやちくわなどを製造・販売しており、他にも塩辛などの水産加工品の仕入れや販売を行っていました。
株式会社丸う田代の練り物といえば、農林水産大臣賞や水産庁長官賞など受賞した食品としても有名です。
この会社は、観光客の減少や同業者との競争により、苦戦を強いられていました。
新型コロナの影響によりさらに売り上げが減少し、新型コロナ倒産となりました。
負債額は、2020年3月の時点で約24億円です。
事例株式会社法律新聞社の新型コロナ倒産情報
株式会社法律新聞社は、昭和20年創業の法律系の出版会社です。
法律の仕事をする人向けの法律新聞をはじめとして、法律関係の出版を行っていました。
特に有名なのは、全国の弁護士の情報を集約した「全国弁護士大観」ではないでしょうか。
昔は、弁護士へ依頼するときなどは全国弁護士大観で弁護士の素性などを調べていましたが、近年はインターネットで簡単に情報が集まるようになりました。
そのため、株式会社法律新聞社の業績は厳しい状況になり、新型コロナによる影響などが拍車をかけた結果、倒産に至ったのです。
事例株式会社ANGELOの新型コロナ倒産情報
株式会社ANGELOは、2013年に創業した不動産賃貸業の会社です。
会社の代表が、新聞配達や販売店の店長時代から行っていた不動産賃貸業を法人化した会社で、多数のマンションや駐車場などを所有していました。
代表が著書も出し、テレビにも出演していたことで、会社の知名度だけでなく代表の知名度も高い会社です。
株式会社ANGELOは新しく取得した賃貸物件の運用が不調で、広告宣伝費が会社を圧迫していました。
その結果、取引先への支払い遅延が発生し、経営状態のずさんさも問題になったのです。
経営再建のために不動産管理会社に事務を委託しましたが、今度は不動産管理会社ともトラブルになり、最終的に倒産となりました。
2021年1月8日付で裁判所の管理下になっており、保全管理命令を受けています。
保全管理命令とは、破産の申立てから破産開始決定までの間に債務者(代表)が財産の散逸や処分、企業価値の棄損などを行うリスクがある場合に使われる手続きです。
事例富岡管理株式会社の新型コロナ倒産情報
富岡管理株式会社は、食品を中心としたディスカウントストアを運営していた会社です。
「大黒屋」の名前で、横浜や東京、川崎などを中心に出店し、食品の他にも日用雑貨などの卸も手掛けていました。
富岡管理株式会社はM&Aにも積極的で、M&Aを使った自社グループ拡大を行っていました。
M&Aで買った企業の中には債務超過の企業もあり、以前から経営に影響が出るのではないかと不安視されていました。
富岡管理株式会社は、不採算店舗を閉鎖したうえで食品スーパーなどを譲渡、株主総会での解散決議により現在に至ります。
コロナの影響で倒産している業種や会社には、どのような特徴があるのでしょうか。
ここでは、倒産の多い業種や倒産している企業の特徴を解説します。
帝国データバンクの資料によると、新型コロナの影響により最も倒産の多い業種は飲食店でした。
また、ホテルや旅行関係の会社も倒産件数が多くなっています。
新型コロナの流行により、外出自粛や飲食店の時短営業が行われており、感染リスクから旅行を控えている方も多い状況です。
海外からの観光旅行客も減り、観光業界は新型コロナによって前代未聞の影響を受けたといわれています。
新型コロナへの感染を防ぐために、外出を自粛する人が多い状況では、どうしても外食や旅行関係の企業が影響を受けてしまいます。
この他にも、アミューズメント系事業の会社などで売り上げ減少や倒産が起きているのも、外出自粛が影響していると考えられます。
新型コロナの影響で倒産件数が多い業種には、アパレル系企業もあります。
外出自粛によって外出する機会が減ると、外出用の衣服を新たに買う必要がなくなります。
また、在宅ワークへと切り替える会社も多くなり、出勤に必要なビジネス用のスーツなども不要になり、今まで家の中で着ていた服でも問題なく仕事ができます。
その結果、全体的に服飾関係の需要が減っています。
コロナの影響で倒産する企業の特徴として、外出に関係する企業という特徴があります。
新型コロナで倒産する企業の3つ目の特徴としては、新型コロナ前から経営難が続いていた企業である点が挙げられます。
以前から企業の経営状況が良くなく、そこへさらに新型コロナの影響を受けてしまい、倒産に至ったと考えられます。
新型コロナの影響による企業の経営破綻は、以前は飲食店などの小規模事業者に多く見られましたが、現在では中堅以上の企業にも広がっています。
商工リサーチによると、負債10億円以上の破綻件数は、昨年4月~6月は初めての緊急事態宣言の影響もあり30件でしたが、その後は、7月~9月は10件、10~12月は14件と少し落ち着いていました。
しかし、今年1~3月には20件となり、明らかに増加傾向にあります。感染拡大の影響による経営破綻は、大手企業にも影響がでつつあることがわかります。
新型コロナ流行がなかなか収束しない場合、今後どのようになるのでしょうか。
コロナ倒産情報の3つ目として、今後の見通しについて説明します。
ワクチンの摂取率が高い国では感染者が激減していることから、コロナの収束は、ワクチンの普及がカギになると考えられます。
新型コロナは世界的に流行しており、収束の見通しが立っていません。
現時点では「いずれ新型コロナは収束するだろう」と資金繰りや経営を工夫して耐えている経営者も、状況が長引けば士気が低下して、廃業などを決める可能性があります。
経営者の士気が低下すると、連鎖的に従業員の士気も低下するリスクがあります。
外食や旅行などが新型コロナにより影響を受けると、外食店だけでなく飲食の材料を卸す企業にも影響は波及します。
たとえば、外食店への客足が減ると外食店自体も利益が落ちますが、その外食店と取引している食品卸も利益が落ち込みます。
お客さんがたくさん来ると食材を多く仕入れてくれますが、客足が減るとその分だけ仕入れる食材も少なくなるため、外食企業やホテル、旅館などに材料を卸す企業も影響を受けて、業績が悪化する傾向にあります。
帝国データバンクによると、食品卸も倒産件数の多い業種です。
現時点ですでに倒産数は5番目なのに、今後も新型コロナが収束しなければ影響はさらに深刻になる可能性があります。
これは、観光業についても同じことが言えます。
旅館やホテルなどに足を運ぶお客さんが減少すると、観光関係の企業の売上が減少するため、今後、観光関係の企業の業績悪化や倒産などにもさらなる影響が出ると考えられます。
今回は、最新の新型コロナ倒産情報について解説しました。
新型コロナは、いろいろな業種に影響を及ぼしています。
新型コロナによって企業に影響が出ると、その企業の関連業種にも影響が出て、回りまわって社員や経営者の生活にも影響が出てしまいます。
新型コロナの倒産情報をこまめにチェックし、世の中がどのように動いているのか、そしてどのような影響が出ているのか、情報を把握しておきましょう。
資金繰りや経営などに不安があれば、早い段階で専門家に相談して対策しておくのもおすすめです。