

東京弁護士会所属。
メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。
前職の経験を生かし、ビジネスの実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。

大企業や有名企業だからといって倒産しないとは限りません。
年商数百億円規模の企業や上場企業でも、資金繰りの悪化や特定事業への依存などをきっかけに、民事再生法・会社更生法・破産法による法的整理に至るケースが相次いでいます。
本記事では、近年倒産した有名企業の事例から、倒産に共通する危険サインを解説します。
自社に同じ兆候がないかセルフチェックし、資金繰りの悪化に気づいた段階で弁護士に相談すれば、経営破綻を防ぐ選択肢が広がります。
Contents
近年は、知名度の高い企業や売上規模の大きい大企業であっても、資金繰りの悪化から民事再生・会社更生・破産などの法的整理に至るケースが少なくありません。
実際に倒産・法的整理に至った代表的な5社の事例をもとに、資金繰り悪化の背景や選択された手続きを確認し、自社にも起こりうる危険サインを見ていきます。
| 企業名 | 年 | 業種 | 手続きの種類 | 負債総額 | 主な原因 |
|---|---|---|---|---|---|
| マレリホールディングス | 2022年 | 自動車部品 | 民事再生 | 約1兆1,856億円 | 主力取引先の販売不振 |
| ユニゾホールディングス | 2023年 | 不動産 | 民事再生 | 約1,262億円 | EBOに伴う多額の借り入れ |
| 船井電機 | 2024年 | 電子機器 | 破産 | 約469億円 | 価格競争による営業赤字 |
| マツオインターナショナル | 2025年 | アパレル | 会社更生 | 約111億円 | コロナ禍の販売不振 |
| オルツ | 2025年 | 情報通信 | 民事再生 | 約24億円 | 売上高の架空計上による信用喪失 |
自動車部品大手のマレリホールディングス(旧カルソニックカンセイ)は、世界23カ国に150以上の拠点をおき、従業員4万人を超える大企業でした。
2022年3月に私的整理の一種である事業再生ADRを申請しましたが、金融機関との合意形成に至らず不成立となり、同年6月に法的整理である民事再生法の適用を申請しました。
負債総額は約1兆1,856億円です。
私的整理は債権者全員の合意が前提のため、一部金融機関との調整難航で不成立となるリスクがあります。
弁護士が初期段階から関与していれば、私的整理と法的整理のどちらが適切かを早期に見極められた可能性があります。
不動産・ホテル事業を展開していたユニゾホールディングスは、2020年に敵対的買収への対抗としてEBOを実施し、約2,050億円の借入を抱えました。
加えてホテル事業がコロナ禍で収益悪化し、資金繰りが行き詰まったため、私的整理によるスポンサー支援を模索します。
しかし、2023年5月償還の無担保社債100億円の原資を確保できず、同年4月に民事再生法の適用を申請しました。
負債総額は1,261億9,800万円です。
社債の償還期限という明確なタイムリミットがあったため、弁護士が早期に関与していれば結果が変わっていたかもしれません。
私的整理と法的整理の判断期限を明確にして並行準備を進めていれば、より有利な条件での再建を目指せた可能性があります。
FUNAIブランドで知られる船井電機は、親会社が買収した脱毛サロン運営会社への投資が経営を圧迫しました。
同社のネット広告代金未払いについて親会社の連帯保証が判明し、グループ全体に信用不安が波及しました。
あわせて2024年に入り役員交代が相次ぐなど経営体制が混乱し、2024年10月24日に破産手続開始決定を受けました。
負債総額は469億円です。
本業の家電事業が健全に見える時期があったにもかかわらず、関連事業への投資・保証がグループ全体を巻き込みました。
契約段階から弁護士が関与し、保証の範囲や解除条件を適切に設計していれば、関連会社の経営悪化が波及するリスクを軽減できた可能性があります。
婦人服ブランドを展開していたマツオインターナショナルは、2019年8月期に売上高176億円まで拡大していました。
しかし百貨店の閉店や売り場面積縮小に加え、コロナ禍による店舗休業・客足減少が重なり業績が急速に悪化しました。
スポンサー候補企業との基本合意を経て、2025年12月11日に大阪地裁へ会社更生法を申請し、同日保全管理命令を受けました。
負債総額は約111億円で、関連会社の松尾産業を含むグループ2社の合計額です。
主要販路の構造的な縮小という、自社の努力だけでは止められない外部環境の変化への対応が遅れると、業績悪化が長期化しやすい実態を示しています。
販路縮小の兆候が見えた段階で弁護士が関与していれば、スポンサー探しや事業譲渡の検討を前倒しできたでしょう。
より選択肢の多い状態で再建を進められた可能性があります。
AI関連事業を展開していたオルツは、2024年10月に上場しましたが、2025年に売上高の過大計上疑惑が発覚しました。
第三者委員会の調査により判明した循環取引による複数年にわたる架空売上計上額は、100億円超とされています。
同社は同年7月30日に民事再生法を申請し、8月6日開始決定、8月31日に上場廃止となりました。
上場から1年足らずでの破綻は、不正会計発覚時の信用失墜の速さを示す事例です。
早期に弁護士が関与していれば、調査と並行して法的整理の準備を進め、事業価値の毀損を抑えられた可能性があります。

ここまで紹介した5つの事例は、直接的な原因こそ異なりますが、資金繰り悪化に気づいてから対応するまでのタイムラグが長い点で共通しています。
民事再生法・会社更生法・破産法いずれも、支払不能や債務超過が手続開始の原因となります。
自社に共通する兆候がないか確認しましょう。
売上減少や利益率低下を一時的な不調と見誤ると、対応が遅れて資金繰りが急速に悪化します。
ユニゾホールディングスも、私的整理によるスポンサー探しに1年以上を費やす間に社債の償還期限が迫り、選択肢が限られていきました。
税金・社会保険料・家賃・リース料の支払い遅れは、資金繰り悪化の危険サインです。
民事再生法は支払不能の恐れがある段階から申立てが可能です。
早期に資金繰り表を作成して弁護士へ相談すれば、法人破産・民事再生など複数の選択肢を検討しやすくなります。
売上の多くを一部の取引先・親会社・店舗・ECモールなどに依存していると危険です。
取引停止や需要減少が起きた際に、安定していた会社でも一気に資金繰りが悪化します。
マツオインターナショナルも、主要販路である百貨店の閉店・縮小が長期的な売上減少につながりました。
特定の販路や取引先への依存は、自社の努力だけによらない外部環境の変化の影響を受けやすい弱点です。
資金繰りが悪化する前に、取引先の分散や販路見直し、不採算事業の整理を検討し、早い段階で弁護士へ相談しましょう。
売上規模が大きくても、借入返済・人件費・家賃・リース料などの固定費が重いと倒産リスクが高まります。
ユニゾホールディングスも、EBO成立に伴う約2,050億円の重い返済負担がホテル事業の収益悪化と重なり、資金繰りを直撃しました。
製造業、不動産・ホテル業、アパレル、飲食業など固定費や在庫負担が大きい業種は特に注意が必要です。
借入返済のために新たな借入を重ねている場合は危険サインです。
早期に弁護士へ相談し、リスケジュールや借換え、法人破産・民事再生・事業譲渡などの選択肢を検討しましょう。
金融機関から追加融資を断られた段階では、資金繰りの選択肢が限られ始めています。
マレリホールディングスやユニゾホールディングスも、事業再生ADRなど私的整理によるスポンサー支援や金融機関との合意形成が不成立に終わりました。
それが法的整理への移行の引き金となっています。
返済猶予中や、スポンサー探しの難航、代表者個人の資金による補填なども危険サインです。
外部からの資金調達ができなくなった時点が、事実上のタイムリミットです。
資金が尽きる前に弁護士へ相談し、法人破産・民事再生・事業譲渡の可否を整理しましょう。
倒産原因は売上不振だけでなく、不祥事・製品事故・不正会計・コンプライアンス違反も含まれます。
オルツも、上場からわずか1年足らずで大規模な不正会計が発覚し、上場廃止・民事再生に至りました。
他の事例と異なり、信用の毀損自体が引き金となって資金調達力を一瞬で失う点が特徴で、発覚から法的整理までのスピードも極めて速いのが実情です。
信用低下により取引停止・融資姿勢の悪化・顧客離れが同時に進みます。
問題が表面化した段階で弁護士に相談し、債権者対応・再建可能性・法人破産の判断の整理が重要です。

倒産リスクは売上だけでなく、資金繰り・滞納・借入状況・取引先依存・代表者保証などを総合的に見て判断する必要があります。
以下のセルフチェックで自社の状況を確認し、複数該当する場合は資金が尽きる前に弁護士へ相談し、法人破産・民事再生・事業譲渡などの選択肢を検討しましょう。
3カ月先の入金・支払い予定を把握できているかは、資金繰りの安全性を判断する重要な基準です。
通帳の残高だけで資金繰りを把握している企業は、季節変動や取引先の支払い遅延など、予期しない事態が起きた際に対応が後手に回りやすくなります。
月末や支払日の直前になって慌てて資金を確認している状態は危険サインです。
早めに資金繰り表を作成し、3カ月先までの見通しを立てたうえで、事業が継続できるかの見極めが重要です。
税金・社会保険料・家賃・リース料の滞納は、資金繰り悪化の典型的な危険サインです。
金融機関からの借入と異なり、リスケジュールの交渉余地が限られます。
滞納が続くと延滞金や督促に加え、差し押さえによる店舗・設備の喪失につながる恐れがあります。
当事務所では、社会保険料等の負担増から滞納が生じた建築関連業の事案で、代表者が自宅居住の継続を強く希望されたケースを取り扱いました。
申立前から方針を明確にし、リースバックを活用して適正な時価評価のもと、法人破産の手続き後も住み慣れた自宅に住み続けられた事例があります。
滞納が始まった段階で、税務署・自治体との分納交渉とあわせて早期に弁護士への相談が重要です。
売上の多くを一部の取引先・販路・親会社グループに依存していないか確認しましょう。
上位数社で売上の大半を占めている企業は、そのうち1社の取引縮小や支払い遅延だけで資金繰りが大きく変動します。
取引先別の売上構成比を算出し、上位数社への依存度を数値で把握するのが確認の第一歩です。
取引停止や需要減少が起きても耐えられるよう、販路の分散や新規開拓、不採算事業の整理の早めの検討が重要です。
取引先への依存度が高い場合は、契約条件の見直しについても弁護士に相談できます。
借入返済のために新たな借入を重ねていないか確認しましょう。
返済原資を本業の収益ではなく新たな借入でまかなう状態が続くと、借入総額が増加し続けます。
いずれ新規の借入自体が難しくなった時点で資金繰りが破綻します。
返済額が利益を上回っている、短期借入を繰り返している、代表者個人の資金で補填しているなどの状態は危険サインです。
資金が尽きる前に弁護士へ相談し、金融機関とのリスケジュール交渉や、民事再生・法人破産・事業譲渡といった選択肢を検討する必要があります。
金融機関から追加融資を断られていないか確認しましょう。
金融機関は財務状況や返済能力を審査したうえで融資判断を行います。
追加融資を断られる時点で、金融機関側がすでに返済能力に懸念を持っている表れといえます。
この段階に至ると、自力での資金調達はさらに難しくなります。
返済猶予中である、保証協会付き融資の追加が困難になっている、事業計画の見直しを要請されている点も危険サインです。
資金調達が難しくなる前に弁護士へ相談しましょう。
リスケジュールの交渉や私的整理・法的整理、事業譲渡によるスポンサー確保など、金融機関以外の選択肢も含めて検討する必要があります。
代表者保証の有無を確認しましょう。
会社が金融機関から融資を受ける際に代表者が連帯保証をしている場合、会社の倒産は代表者個人の返済責任に直結します。
自宅・預貯金・家族の生活にまで影響が及ぶ恐れがあるでしょう。
当事務所では、価格競争による資金繰り悪化でサービス業の法人が破産し、代表者も連帯保証のため同時に破産に至った事案があります。
管財人と交渉して売掛金の円満回収を実現し、代表者個人の負担を最小限に抑えました。
経営者保証に関するガイドライン等を活用すれば、一定の要件のもとで個人保証の解除・整理を検討できる場合もあります。
法人の整理方針とあわせて、代表者個人の保証債務の整理・軽減についても弁護士への相談が重要です。
5つの事例は、資金繰り悪化・取引先依存・過剰債務・信用低下など、原因は違えど共通する危険サインを抱えていました。
セルフチェックで複数該当する場合は、資金が尽きる前に法人破産・民事再生・事業譲渡などの選択肢を検討する段階です。
中小企業であれば迅速な法人破産による清算、事業の継続を目指す場合や大企業であれば民事再生・会社更生・事業譲渡が検討対象になります。
あわせて、代表者保証がある場合は個人資産への影響も整理する必要があります。
VSG弁護士法人では、債権者対応の代理や取引先との交渉、代表者の個人保証リスクの軽減まで、税理士・司法書士と連携しながら法人の状況に応じた対応をご提案しています。
お早めにご相談ください。