東京弁護士会所属。
メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。
前職の経験を生かし、ビジネスの実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。
新型コロナの影響で打撃を受けている業種として、よく取り上げられているのは飲食店です。
接待や飲食で新型コロナの感染者が出ており、飲食店に対して時短営業などが呼びかけられているため、ニュースでも新型コロナの影響が大きい業種としてよく飲食店を目にするのではないでしょうか。
しかし、新型コロナの影響を受けているのは、飲食店業界だけではありません。
衣服の製造や販売を担うアパレル業界にも、新型コロナの影響が出ているのです。
アパレル業界へのコロナの影響について、倒産件数などを見てみましょう。
新型コロナの影響で、どれくらいの企業が倒産しているのでしょうか。
また、アパレル業界の倒産件数は、他の業界と比較してどうなっているのでしょうか。
東京商工リサーチのデータによると、2020年6月15日の段階での新型コロナ関連倒産は245件、2021年5月31日の段階では累計1,475件となっています。
2020年4月のデータでは、月80件のペースで企業が新型コロナ関連倒産をしており、6月に入ってさらに加速すると分析されています。
2020年6月のデータでは、最も倒産件数の多い業種は飲食業で37件、次いで旅行業界が35件、アパレル企業の倒産件数はその次に多くなっています。
また、2021年5月のデータでは、飲食業が最も多く268件、次いで建設業が138件、アパレル企業が127件、宿泊業が79件となっています。
2020年6月、2021年5月ともに、アパレル企業の倒産件数は、3番目に多くなっています。
なお、このアパレル企業の倒産情報は、あくまで倒産件数のみです。
新型コロナの影響で自主的に廃業したケースなども含めると、数はさらに増えると考えられます。
コロナの影響をデータで見ると、各業種の中でもアパレル企業へのコロナの影響が大きいことがわかるのではないでしょうか。
日本の小売業などのコンサルティングを30年以上行ってきたマッキンゼーは、日本の消費は新型コロナなどの影響で落ち込んでいると見ています。
アパレル業界の消費の落ち込みの度合いは、飲食店業界と同水準だとマッキンゼーは分析しているのです。
つまり、倒産件数こそ飲食店業界の方が多くなっていますが、消費という観点から見れば、アパレル業界も同様の苦境にあるということです。
新型コロナの影響をどう乗り切るかが、アパレル業界の課題になります。
アパレル業界では、新型コロナの影響により大手が倒産して注目を集めました。
レナウンの倒産は大きなニュースになり、アパレル業界だけでなくニュース媒体などで大きく取り上げられました。
レナウン以外にも、アパレル業界の会社がいくつも新型コロナの影響で倒産しています。
ここからは、実際に倒産したアパレル企業や事業縮小したアパレル企業の事例を見ていきましょう。
アパレル企業の倒産として最初に思い浮かぶのは、アパレル企業の中でも大手であるレナウンの倒産ではないでしょうか。
レナウンは1902年創業のアパレル会社で、「ダーバン」をはじめとした30以上のブランドラインを展開しているアパレル企業でした。
衣服の製造販売から、雑貨の企画・製造販売まで手掛ける老舗企業でもあります。
レナウンは新型コロナ流行以前から業績不振が続いていました。
特に主力であるアパレルの業績が振るわない状態で、中国の親会社や技術投資への遅れなども原因のひとつではないかと言われています。
アパレル業界の競争が激化したことや、出店していた百貨店への客足が鈍ったことなども要因となり、新型コロナ関連倒産となりました。
アパレル大手ではありましたが、企業が業績不振などで弱っていたところにコロナの影響を受けてしまい倒産という結果になったわけです。
新型コロナにより苦境に立たされたのは、レナウンだけではありません。
上場しているアパレル大手の会社でも、経営が厳しいところは少なくないのです。
苦境に立たされている大手アパレルメーカーとしては、東証一部上場の三陽商会があります。
三陽商会は、百貨店での販売を主力としているアパレル企業で、海外ブランドとも多数ライセンス契約があることで有名です。
かつて契約していた海外企業としては、バーバリーなどが有名でしょうか。
三陽商会は4期連続の赤字になっており、新型コロナ禍の中で苦戦を強いられています。
この他にも、アパレル企業大手のオンワードホールディングスは、2020年2月期に国内外の店舗を700店あまり閉店しています。
店舗の売上が低迷しているため、今後はデジタル方面へとシフトする予定で動いています。
大手アパレルメーカーも新型コロナの影響により苦境に立たされると同時に、新型コロナ禍の世界でどのように経営するのか、決断を迫られています。
セシルマクビーは、渋谷の若者を中心に支持されていた海外ブランドです。
セシルマクビーは年々売り上げが減少しており、時代に合わせて方向転換をはかりましたが、アパレル企業はライバルがひしめいているのが現状です。
方向転換しても売り上げ増とはいかず、セシルマクビーは新型コロナ禍の2021年2月に日本国内の全店を閉店し、独自性の高いブランドに注力する方向で動いています。
セシルマクビーの全店閉店をアパレルのひとつの歴史の終わりと見ることもできますし、新型コロナの影響を少なからず受けた末の閉店と見ることもできるのではないでしょうか。
新型コロナなどの影響により苦戦を強いられているのは日本だけではなく、海外でも大手アパレル企業をはじめとして、経営不振や経営破綻などが起きています。
日本でも有名なローラアシュレイは、英国のアシュレイ夫婦が立ち上げたブランドです。
イギリスの花園を思わせる柄が人気を呼びましたが、消費者のアパレルの好みの変遷により売上が減少してしまい、さらに新型コロナによる消費低下が追い打ちをかける形で経営破綻したのです。
なお、ライセンス契約を結んでいる伊藤忠商事によると、日本での展開については特に影響はないという話です。
ただし、ローラアシュレイという世界的にも知られるアパレル企業が、新型コロナで打撃を受けた点については注目したいものです。
ローラアシュレイの他にも、世界最古の紳士服メーカーでアメリカを代表するアパレル企業のひとつである、ブルックス・ブラザーズも破綻しています。
ブルックス・ブラザーズは、仕事のスーツ離れなどが原因で、近年は売り上げが落ちていたといわれます。
スーツやネクタイなどを主力としていたブルックス・ブラザーズは、まさに新型コロナ以前に体力が低下していた状態でした。
不採算店の閉店など経営状況の改善をはかりましたが、そこに新型コロナ禍が起きてしまい、経営改善策が功を奏する前に倒産したのです。
新型コロナは日本のアパレル業界に大きな打撃を与えましたが、海外のアパレル企業にも同様に大打撃を与えています。
新型コロナの影響を受けて倒産や事業を縮小しているアパレル企業には、どのような特徴があるのでしょうか。
新型コロナの影響を受けやすいアパレル企業には、次のような特徴があります。
新型コロナの影響で倒産や事業を縮小をしているアパレル企業には、新型コロナの影響が出る前からすでに売り上げが落ちていた企業や、赤字が続いていた企業が少なくありません。
もともと弱っている状態のところに、さらに新型コロナの影響を受け、耐え切れずに倒産した例が多くあります。
つまり、新型コロナの影響を受けやすいアパレル企業の1つ目の特徴は「新型コロナ流行前から赤字や売り上げ減少が続いていた企業」といえます。
また、オフィス系のアパレル企業も新型コロナの影響を受けています。
スーツなどのアパレルは、仕事がある限り売り上げは安定するという印象があるかもしれません。
しかし、近年はスーツ離れが起きており、オフィス用スーツは売り上げが低迷していました。
そこに新型コロナの影響により在宅ワークが加速し、さらなるスーツ離れが起きてしまったのです。
在宅ワークをするときは普段会社でスーツを着ている人も「特にスーツを着用しない」というケースが少なくないため、低迷に新型コロナによる働き方の転換がさらなる打撃になってしまいました。
新型コロナの影響を受けやすいアパレル企業の2つ目の特徴は、「スーツなどオフィス系のアパレル企業」といえます。
一方、ユニクロやワークマン、西松屋チェーンなど、前年を超える売上を計上している企業もあります。
特にユニクロは、時価総額がアパレル業界で世界一となっています。
同じ業界でも勝敗が分かれる結果となっていますが、ほとんどの企業は赤字で、特に百貨店は危機的な状況です。
新型コロナの影響を受けやすいアパレル企業の3つめの特徴としては「百貨店とキャッシュレス決済への依存度が高い」ことです。
百貨店などは、新型コロナの影響により客足が減少しました。
山形県唯一の百貨店である大沼が倒産し、ニュースにもなりました。
百貨店などへの依存度が高いと、出店料や客足のバランスが崩れ、売り上げが落ち込みやすい状況です。
また、推進されていたキャッシュレス決済への依存度も影響に関係します。
キャッシュレス決済は、販売から入金までタイムラグが生じます。
キャッシュレス決済にはコストもかかるため、キャッシュレス決済が増えるとアパレル企業は手数料などの負担増となることも問題になります。
出店やキャッシュレス手数料による負担増、売り上げ回収のタイムラグ、このような事情が重なり、新型コロナの影響をより大きくしてしまう側面があります。
新型コロナによるアパレル企業への影響についてご紹介しました。
新型コロナは、2021年5月時点では未だ収束の気配がなく、アパレル業界の先行きも予想が難しい状況です。
経営状況や企業の今後のことを考えておくべき転換期に差し掛かっているのかもしれません。
経営や資金繰りなどで気になることがあれば、まずは弁護士などの専門家に相談してみてはいかがでしょうか。