最終更新日:2022/6/6
資金繰り表とは?作成方法や準備するもの・活用方法まとめ
ベンチャーサポート税理士法人 税理士。
大学を卒業後、他業種で働きながら税理士を志し科目を取得。
その後大手税理士法人を経験し、現在に至る。
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この記事でわかること
- 資金繰り表とはどのような書類かを知ることができる
- 資金繰り表を作成する方法を知ることができる
- 資金繰り表を使ってどのような利用方法があるかがわかる
会社を経営する上で、利益を計上できるかどうかは事業の成否を分ける大きなポイントとなります。
ただ、この他に、会社の資金繰りに問題がないかどうかを知ることは事業を継続するために大切なことです。
会社の資金繰りの状況を分析し、あるいは今後の資金繰りの予測をするために、資金繰り表を作成する必要があります。
資金繰り表の作成方法やその活用法など、幅広くその内容を確認しておきましょう。
目次
資金繰り表とは
会社の経営を安定的に行うためには、会社が利益を上げることが大切です。
しかし、利益を計上していても、資金繰りがうまくいかずに事業が継続できないということもあるため、資金繰りもまた重要です。
そこで、資金繰りの状況を把握し、あるいはこれからの資金の出入りを予測するため、資金繰り表を作成することが求められます。
資金繰り表には、実績にもとづいて作成する実績資金繰り表と、今後の資金繰りを予測する予定資金繰り表の2つがあります。
その用途に応じて、2つのタイプの資金繰り表を使い分けることが求められます。
経営状態のどこに問題があるのかを明らかにしたい場合には、過去の実績から探すのが堅実ですので、実績資金繰り表の作成をしていきます。
資金繰り表を作る際には、日ごと、月ごと、年ごとといった期間に応じて作ることができます。
日々の資金の出入りが大きい場合には、日ごとに資金の状況を把握し、資金がショートしないように注意しなければなりません。
また、一般的には月ごとの資金繰り表を作成し、その資金状況を把握することが多いといえます。
資金繰り表の作成に必要なもの
資金繰り表を作成するために必要となるのは、(1)エクセルを使うことができるパソコンと、(2)試算表の2つです。
また、金融機関からの借入を行っている場合は、(3)借入金の返済予定表が資金繰り表の作成に必要となります。
これらを準備しておくことで、資金繰り表の作成は簡単な作業となるはずです。
資金繰り表の作成方法
それでは、実際に資金繰り表を作成してみましょう。
資金繰り表で大事なのは、お金の出入りとなるため、慣れるまでは損益計算との違いに苦しむかもしれません。
しかし、一度その作成方法を知れば、意外に簡単に資金繰り表を作ることができるようになるはずです。
ここでは、月ごとの資金繰り表を作成する方法をご紹介します。
エクセルシートを準備する
いきなり何の準備もなしに資金繰り表を作成することはできません。
試算表から資金繰り表を作成するために、いくつか準備しておくべき内容をご紹介します。
まずは、エクセルシートで試算表の金額を入力することができるよう、入力用のファイルを作っておきます。
試算表の金額は、貸借対照表・損益計算書のいずれの金額も使用します。
そのため、1つのファイルに「資金繰り表」「貸借対照表」「損益計算書」の3つのシートを作っておきます。
試算表の金額を入力する
試算表の金額を入力していきます。
損益計算書のシートには、損益計算書の勘定科目をそのまま入力していきましょう。
一方、貸借対照表のシートには月の初めの金額と終わりの金額を入力し、1か月間の変動額が計算できるようにしましょう。
資金繰り表の枠組みを作成する
資金繰り表は、通常、1か月ごとの資金収支について計算し分析するように作成します。
ただ、その1か月で資金が増えたのか、あるいは減ったのかがわかればいいわけではありません。
具体的にどのような理由で資金が増減したのか、その分析ができるように資金繰り表を作成する必要があります。
資金繰り表の形式は、1つだけではありません。
ただ、根本的な考え方はどのような場合も同一であると考えられることから、代表的なものでその枠組みを確認しておきましょう。
資金繰り表は、月初の現預金の残高から始まり、月間の現預金の収支を加味して、月末の現預金残高を求めるという流れになります。
収支の要因としては、経常収支と財務収支の2つに分けることができます。
このうち、経常収支は本来の事業活動にともない発生するものです。
経常収入となるものは、売上高やその他の収入があります。
また、経常支出になるものには、仕入高や人件費、様々な経費などがあります。
毎月発生する金額の大きな費目については、一目でわかるようにその項目を設けておきます。
また、それ以外の費目については、その他の欄に合計額を記載します。
一方の財務収支の代表は、借入をした場合に発生する収入と、借入金を返済した場合の支出です。
金融機関からの借入金と、役員個人からの借入金を区分して、それぞれの金額を集計するようにします。
複数の金融機関から借り入れをしている場合は、金融機関ごとに集計すると、より精度の高いものとなります。
また、借入金利息の支払いやリース料の支払いも、財務支出に含まれます。
資金繰り表の構造としては、経常収支と財務収支の金額を集計して、月間の現預金の増減額を計算します。
そして、月初の現預金残高に、先ほど計算した増減額を加減算することで、月末の現預金残高を求めることができるのです。
資金繰り表の計算式を設定する
資金繰り表の枠組みを作成したら、貸借対照表や損益計算書から自動的に金額が計算されるよう、計算式を設定します。
まず現預金の月初の残高と月末の残高ですが、貸借対照表の月初と月末の金額から集計するようにします。
次に、経常収支の金額を設定します。
経常収入は、損益計算書から月間の売上高の金額と連動するようにします。
ただ業種によっては、売上が発生してもすぐには現金収入が発生せず、売掛金が発生することもあります。
このような場合は、「売上高+月初の売掛金残高-月末の売掛金残高」で売上収入を計算します。
また、その他の収入の項目には、雑収入など営業外収益の金額を集計するようにします。
経常支出については、項目ごとにその支払金額を計算するようにします。
このうち仕入高の項目は、現金仕入れだけであれば損益計算書の仕入高をそのまま使うことができます。
ただ、実際には仕入のタイミングでは買掛金を計上し、実際の支払いは翌月以降となる場合もあるでしょう。
この場合は「-(仕入高+月初の買掛金残高-月末の買掛金残高)」で仕入支出の金額を計算します。
それ以外の費用の中にも、発生時には未払計上して、実際の支払いは翌月以降になるものがあります。
この場合は「-(費用の額+月初の未払金残高-月末の未払金残高)」で経常支出の金額を求めることとなります。
一方、発生と同時に支払いを行う費用については、損益計算書の金額をそのまま経常支出の金額とすることができます。
財務収支の金額は、月初と月末の借入金の残高や、支払利息の計上額と連動するように設定します。
貸借対照表に金融機関ごとの借入金の残高を入力すれば、資金繰り表に自動的に連動させることができます。
算式を設定して、貸借対照表や損益計算書から資金繰り表で自動的に計算できるよう、正確に設定しましょう。
資金繰り表の活用方法
作成した資金繰り表は、どのように活用していくといいのでしょうか。
資金繰り表の本来の作成目的にとどまらない、様々な活用方法を史っておくといいでしょう。
将来の資金繰りを予測する
資金繰り表の一番の利用方法は、会社の資金が不足しないかどうかを確認することです。
資金繰り表で会社の現預金がマイナスになってしまう場合は、売掛金などの債権の現金化を早めることで対処できます。
また、一時的に金融機関から借り入れを行って、資金不足になるのを防ぐことができますし、買掛金などの支払い期日を延ばして、資金不足になるのを防ぐ場合もあります。
売上や仕入の条件の見直しを行う
資金繰り表を作成すると、売上高は増えて利益も確保できているのに、資金不足になってしまうことがあります。
これは、売上が発生しても現金収入を確保するまでに時間がかかる一方で、仕入に関する支払いが発生することが要因です。
このような場合は、売上についての収入時期や仕入に関する支払い条件を見直す必要があります。
早い段階でこれらの条件の見直しを行わなければ、黒字倒産の原因となる可能性もあります。
設備投資や借入金の返済を進める
資金繰り表で資金不足が予測される場合もあれば、逆に資金に余裕があることが確認できる場合もあります。
資金繰り表で余裕があることが確認できた場合は、その資金の活用法を考えることで、さらに事業を発展させることができます。
設備投資を行って、業務の効率化や事業の拡大を図ることもできますし、あるいは借入金を前倒しで返却することで利息の負担を圧縮することができます。
まとめ
会社の業績を見る場合、多くの人は損益計算書でどれだけの利益があるかに注目します。
しかし、会社の事業を継続するためには、利益を計上していればいいというわけではなく、資金面の不安がないことも重要です。
資金繰り表を作成して、会社の資金状況をしっかりと管理しておくことが求められます。
また、資金不足になりそうな時には対処法を考えて、資金不足になるのを未然に防ぐことができます。