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最終更新日:2023/3/13

家族を会社の扶養に入れるには?社会保険加入の手続きや必要書類を解説

社会保険労務士 西村兆潔
この記事の執筆者社会保険労務士 西村兆潔

ベンチャーサポート社労士法人 社会保険労務士。
大学を卒業後に、都内にある社会保険労務士事務所での勤務経験を経て、ベンチャーサポートに入社。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-nishi

家族を会社の扶養に入れるには?社会保険加入の手続きや必要書類を解説

この記事でわかること

  • 社会保険の扶養に入ることができる条件を知ることができる
  • 家族を社会保険の扶養に入れるための手続きがわかる
  • 扶養に入れない人は自分で社会保険に加入しなければならないことがわかる

配偶者などの家族を社会保険の扶養に入れる手続きは会社で行います。

この記事では、社会保険の扶養に入る条件や手続きの流れ、ケース別に必要書類を解説していきます。

社会保険の扶養とは

扶養とは、収入が少なく生計を立てることができない人を、その家族や親族が援助することをいいます。

社会保険の場合、会社の従業員が被保険者となります。

そして、その被保険者の家族・親族のうち一定の人については、社会保険の扶養に入ることができます。

この時、扶養に入れてもらう家族・親族のことを、被扶養者と呼びます。

社会保険の被扶養者と、所得税の計算上の被扶養者はその定義が異なります。

いずれかの扶養になっても、もう一方の扶養になれないこともあるため、注意しましょう。

社会保険の扶養に入る条件

社会保険の扶養に入るには、「被扶養者になれる親族の範囲」と「被扶養者の収入額」のどちらの条件も満たす必要があります。

また年齢も75歳未満と定められています。

75歳以上の人は、後期高齢者医療保険の被保険者となるからです。

ここからは、被扶養者の2つの条件を詳しくみていきましょう。

被扶養者になれる親族の範囲

被扶養者になれる親族の範囲は、大きく分けて2種類あります。

(1)被保険者の配偶者、直系尊属、子ども、孫、兄弟姉妹で、おもに被保険者の収入により生計を維持している人

この場合は、被保険者により生計を維持されていることが条件となる一方、同居の必要はありません

たとえば、子どもが大学に通うために下宿している場合などもこの被扶養者に含まれます。

(2)被保険者と同居していることを条件として、被保険者の収入により生計を維持している以下の人

  • ①(1)に該当しない被保険者の三親等以内の親族
  • ②被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母及び子ども
  • ③②の配偶者が亡くなった後の父母及び子ども

(1)より広い範囲の人を被扶養者とすることができますが、この場合は同居が前提となっています

三親等以内の人には、叔父や叔母、甥や姪などが含まれます。

被扶養者になれる収入の金額

親族の範囲を確認したら、次に収入金額についての条件を確認します。

大きな収入がある人の場合は、たとえ配偶者や子どもであっても被扶養者になることはできません。

被扶養者となることができる収入の条件は、以下の2つです。

  • 年間収入が130万円未満であること
    ただし、60歳以上または障害年金受給者の場合は、180万円未満とされています。
  • 被保険者の収入金額の2分の1以下であること

この2つの条件のいずれも満たしていなければなりません。

たとえば、被保険者の収入金額が240万円、配偶者の収入金額が125万円の場合、①は満たしますが②を満たしません。

そのため、被扶養者になることができないのです。

また、別居している人が被扶養者になるには、その人の年間収入が130万円(あるいは180万円)未満だけでは条件を満たしません。

この場合は、被保険者からの仕送り額がその人の収入金額より多いことが条件となっています。

家族を社会保険の扶養に入れる手続き

被扶養者となる人は、扶養者に扶養されている家族であり、その状況が変化することで増えたり減ったりすることがあります。

社会保険の被扶養者となる人が増えると、保険料の負担をしないで保険が適用される人が増えることとなるため、無条件で被扶養者になることはできません。

そこで、被扶養者が増えた場合には、扶養に入れるかどうかを確かめるために所定の手続きを行う必要があります。

被扶養者になるためには、健康保険被保険者(移動)届を提出しなければなりません。

また、異動届以外に提出を求められる添付書類が数多くあります。

被扶養者の状況に応じて必要な書類を準備し、その書類を異動届と一緒に提出しなければなりません

健康保険被扶養者(異動)届を作成する方法

家族を新たに社会保険の被扶養者とする場合、どのようなケースでも「健康保険被扶養者(異動)届」を作成しなければなりません

健康保険被扶養者(異動)届
引用:日本年金機構

「事業主記載欄」には、会社が事業所の所在地や名称、事業主の氏名、電話番号を記載します。

「A.被保険者欄」には、被保険者が自身の氏名や生年月日、個人番号、年収などを記載しましょう。

BからDの項目については、該当する被扶養者に応じて、必要な項目を記載してください。

【ケース別】家族を社会保険の扶養に入れるときの必要書類

 被扶養者
配偶者子ども父母甥・姪
健康保険被扶養者異動届
被扶養者の戸籍謄本・戸籍抄本か住民票の写し
収入を確認することができる書類-
被保険者世帯の全員が記載されている住民票---

家族を社会保険の扶養に入れるときには、健康保険被扶養者(異動)届とともに被扶養者に該当することを証明した添付資料が必要です。

この添付資料は、被扶養者の立場によって異なります。

ここからは、ケース別に社会保険の扶養に入れるときの必要書類を見ていきましょう。

ケース1:結婚した配偶者を被扶養者にする

  • 健康保険被扶養者(異動)届
  • 被扶養者の戸籍謄本・戸籍抄本か住民票の写し
  • 収入を確認することができる書類(退職証明書や雇用保険被保険者離職票のコピー、確定申告のコピー)

家族を新たに社会保険の被扶養者とする場合で多いのが、結婚して配偶者を被扶養者とする場合です。

配偶者を被扶養者にする場合は、健康保険被扶養者(異動)届の「B.配偶者である被扶養者欄」を使用します。

また、添付書類として、被扶養者の戸籍謄本・戸籍抄本か住民票の写しを提出して、被保険者との続柄が確認できるようにします。

ただ、被保険者と被扶養者になろうとする人がともに個人番号を届出書に記載していれば、添付書類は不要とされます。

被扶養者になる場合、配偶者の収入金額が条件を満たすか確認しなければなりません。

結婚して退職している場合は、前の事業所から発行された退職証明書や雇用保険被保険者離職票のコピーを提出します。

また、収入がある場合には、課税証明書または非課税証明書の提出が必要です。

雇用保険を受給している場合は、雇用保険受給資格証のコピーを提出しましょう。

さらに、確定申告をしている人は、その確定申告書のコピーを提出しなければなりません。

ただ、事業主の証明があればこれらの添付書類は不要となるため、実際は収入を証明する書類は提出しないことが多いでしょう。

ケース2:生まれた子どもを被扶養者にする

  • 健康保険被扶養者(異動)届
  • 被扶養者の戸籍謄本・戸籍抄本か住民票の写し

配偶者を被扶養者にした後に子どもが生まれて、その子どもを被扶養者にすることがあります。

子どもを被扶養者にする際は、健康保険被扶養者(異動)届の「C.その他の被扶養者欄」を使用します

子どもの氏名や生年月日、個人番号や続柄などを記載します。

添付書類は、配偶者の場合と同じく、続柄確認ができるものが必要となります。

戸籍謄本や住民票などを提出しますが、個人番号が記載されている場合には添付書類は不要です。

ケース3:父母を被扶養者にする

  • 健康保険被扶養者(異動)届
  • 被扶養者の戸籍謄本・戸籍抄本か住民票の写し
  • 収入を確認することができる書類(退職証明書や雇用保険被保険者離職票のコピー、確定申告のコピー、年金額の改定通知書)

父母を社会保険の被扶養者とする場合は、健康保険被扶養者(異動)届の「C.その他の被扶養者欄」に個人情報を記載します。

また、続柄を確認できる書類の取扱いは、配偶者や子どもの場合と同じです。

さらに、父母を被扶養者とするためには、その収入金額が確認できる書類が必要です。

父母が年金を受給している場合は、年金額の改定通知書など、現在受給している年金の額がわかる書類を提出しましょう。

ケース4:甥・姪などを被扶養者にする

  • 健康保険被扶養者(異動)届
  • 被扶養者の戸籍謄本・戸籍抄本か住民票の写し
  • 収入を確認することができる書類(退職証明書や雇用保険被保険者離職票のコピー、確定申告のコピー、年金額の改定通知書)
  • 被保険者世帯の全員が記載されている住民票

甥や姪などを社会保険の被扶養者とする際は、健康保険被扶養者(異動)届の「C.その他の被扶養者欄」に情報を記載します。

続柄の確認書類、収入の確認書類が必要となる点は、ここまで紹介してきたケースと同じです。

ただ、甥や姪などを被扶養者とする際は、追加で被扶養者になろうとする人が被保険者と同居していることを証明する書類が必要です。

被保険者世帯の全員が記載されている住民票を取得し、提出しなければなりません。

社会保険の扶養に入れるときの注意点

配偶者などが社会保険の被扶養者になるかどうかで問題になるのは、収入が130万円未満になるかどうかです。

この年収130万円未満の計算の仕方は、税金計算などとは大きく異なっているため注意しましょう。

年収の金額は前年の実績ではない

年収130万円未満という場合、前年の年収が130万円未満かどうかで判断すると思っている方も多いでしょう。

しかし、実際は前年の実績を用いて判断するわけではありません。

扶養に入ろうとする月の直近3か月の収入から1月あたりの平均収入を計算し、その額を12倍するという計算方法になります。

前年の年収が130万円未満でも、被扶養者になれない場合があるので注意が必要です。

失業給付や健康保険の傷病手当金も含まれる

年収という場合、普通は給料や事業上の収入で、課税対象となる金額をいうものと考えます。

しかし、社会保険の被扶養者になる場合は、失業手当や傷病手当金などの非課税所得も収入金額になります

そのため、失業給付や傷病手当金があるために被扶養者になれないというケースもあります。

退職した場合などは被扶養者になることができる

結婚して退職した場合など、扶養に入った後の収入が発生しないことが見込まれる場合があります。

このような場合は、扶養に入る前に収入があったとしても、扶養に入ることができます。

2022年10月より社会保険の適用が拡大

一定以上の収入がある人は、社会保険の被扶養者になることができず、自らが社会保険に加入しなければなりません。

通常は収入が130万円未満でなければならないとされていますが、2016年10月からは以下のような基準が設けられています。

  • 従業員数501人以上
  • 労働時間が週20時間以上
  • 月額賃金が88,000円以上
  • 勤務期間が1年以上の見込み
  • 学生でない

以上5つの基準にすべて当てはまる場合、社会保険の被扶養者になることはできず、社会保険に加入しなければなりません。

さらに2022年10月には基準の一部が改正され、より社会保険の適用範囲が拡大しました。

  • 従業員数101人以上
  • 勤務期間が2か月を超える見込み

社会保険の加入範囲は拡大することとなるため、これまで被扶養者となっていた人も、扶養に入れなくなることがあります。

扶養に入れないなら社会保険への加入が必要

社会保険の適用拡大によって被扶養者になれなかった人は自分で健康保険料を負担しなければなりません

自身の勤務先で社会保険に加入するか、あるいは市区町村で国民健康保険に加入する手続きを行う必要があります。

この手続きを怠ってしまうと、健康保険に加入していない状態になってしまうため、忘れないようにしましょう。

まとめ

国民皆保険制度がとられている日本では、健康保険に加入するのはすべての人にとって重要なことです。

健康保険に加入していないことで、医療費が全額自己負担になってしまうからです。

社会保険に加入している人の家族は、一定の条件を満たせば社会保険の扶養に入ることができます。

この場合、被扶養者は健康保険料の負担をしなくても社会保険に加入できるため、大きなメリットがあります。

加入するための条件や必要書類などをよく確認しながら手続きを進めましょう。

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